『ヒカリゴケ ケツエン』

ヒカリゴケ ケツエン [DVD]ヒカリゴケ ケツエン [DVD]
(2009/06/24)
ヒカリゴケ

商品詳細を見る

漫才の相方を選ぶというのは、なかなか容易なことではない。例えば、同じ学校の同じクラスで気の合う仲間とコンビを結成したとしても、そのコンビが売れるとは限らないし、長続きするとも限らない。仲の良さはコンビネーションに直結するかもしれないが、面白さには直結しないのである。逆に、私生活では合わないだろう人間とコンビを結成して、大当たりするということもある。もちろん、逆も然り。正解も不正解も曖昧なお笑い界において、相方選びというのは実に難しいことなのだ。

そんな漫才の相方に、身内を選ぶというのはどういう心境なのだろうか。そのコンビで正解かもしれない。でも、不正解かもしれない。面白い漫才が作れるかもしれないけれど、そのコンビが売れるとは限らない。そんな漫才の相方に、身内を選択する……どうもコンビ別れし辛いようなイメージがあるのだが、どうなのだろうか。僕には姉妹が二人いるのだが、そのどちらかと漫才コンビを結成し、数年間活動を続けてみるが、芽が出る気配も無いし売れる気配も感じないので、コンビを解消するとなったとき、僕は姉妹にコンビ解消を迫れるのだろうか。……ちょっとだけ想像してみたけれど、よく分からない。

ヒカリゴケは、叔父さんと甥っ子によって結成された漫才コンビだ。叔父と甥の関係にあるとはいえ、二人の年の差は四年しか違わない。というのも、甥っ子である国沢の母親は、弟である片山と二十歳も年が離れているためだ。その関係性について彼らは、よく漫才の冒頭で「サザエさんに出てくるカツオとタラちゃんの関係」と説明している。分かりやすい前例があって良かったなあ、などと理由無く安心してしまうのは僕だけなのだろうか。また余談だが、彼らが所属している松竹芸能には、いとこ同士によって結成されたなすなかにしというコンビも存在している。本当に余談だな。

その関係性は、彼らの漫才においても頻繁に取り上げられる。例えば、国沢がやりたいということを片山にお願いすると、「甥っ子が頭下げてんのに断れる叔父さんが何処におる?」と言って、そのお願いを受け入れたりする。ただ、そうやってあえてネタに取り入れている点を除けば、ヒカリゴケが叔父と甥の関係にあるということは、それほどネタのメリットとなっていないように思う。いや、むしろデメリットになってしまっていると言えるのかもしれない。

というのも、ヒカリゴケの漫才は基本的に「モテない片山が気持ち悪いことを言って、国沢にツッコまれる」スタイルなのだが、この漫才において二人の関係は『国沢>片山』なのである。が、叔父と甥という血縁上の上下関係は、『片山>国沢』だ。そして彼らは、常に漫才の冒頭で叔父と甥の関係について説明している。その結果、序盤と本筋とで二人の上下関係がズレてしまっているのだ。これが例えば中川家のように、情けない兄としっかりした弟という印象を与えれば良いのだが、現在の彼らはそのギャップを武器に出来ていない。その為に、ヒカリゴケの漫才は、その叔父と甥という関係性を殆ど活かせていないどころか、むしろネタの妨げにしてしまっているのである。

とはいえ、叔父と甥という関係があるからこそ、僕たちはヒカリゴケというコンビを記憶出来ていると言えなくもない。一言でコンビの関係を説明できるということは、間違いなく他のコンビの何倍も有利だ。知名度を上げるための武器はある。あとは、ネタを磨くだけだ。デメリットをメリットに変えられるまで、その漫才の精度を上げ続けてもらいたいものである。


・本編(31分)
『コンパ』『腹話術』『散歩』『中卒ラップ』『腎臓移植』『スーパーモデル』『ジャンケン』

・特典映像(12分)
「いっせいの絵日記」

『ナンシー関リターンズ』

ナンシー関 リターンズ Nancy Seki Returnsナンシー関 リターンズ Nancy Seki Returns
(2009/06/13)
ナンシー関

商品詳細を見る

事前に面白いと分かっている本を読むという行為が、あまり好きではない。何故なのかというと、既に面白いと分かっている本を読んで、「面白かった」だとか、「参考になった」だとか思ってしまうのは、なんだか本を出した人(出版社であれ著者であれ)に“してやられた”ような気持ちになってしまうからだ。

勿論、出している側というのは、少なからず読者を“してやられた”と感じさせるようなものを生み出していきたいという意向を持って本を出版しているのだから、どのような本を読んだところで“してやられた”と感じたとしても、それは当然のことと受け入れるべきなのだろう。ただ、僕が考えている“してやられた”と、出版社が出そうとしている“してやられた”は、少しばかり違っている。僕があまり好きではないと思うのは、その“してやられた”と思わせられるだろうと感じさせている本を購読して、まんまと“してやられた”気持ちになってしまう自分が好きではないのだ。例えるなら、あからさまに罠だと分かっている場所に足を突っ込んで、罠にかかって「罠だったのか!」とのたまっているように感じるのである。なんだか間抜けっぽいイメージだ。

そのために、僕はメジャーな作品をあまり好まない。嫌いというわけではないが、あまり積極的に読むことはない。読んでみたら、面白いのかもしれない。いや、きっと面白いのだろう。あれだけテレビやネットで話題になっている作品だ。個人的な嗜好と合わなかったとしても、何かしら感じることは出来るだろう。でも、買わない。読まない。見ない。いや。厳密に言うと、買おうと思わない、読もうと思わない、見ようと思わない。家族の誰かが買ってきたとしても、興味が湧かなければ読まない。僕はこれまで、そういうスタンスで生きてきたのである。

ナンシー関もまた、僕にはとてもメジャーな存在だった。テレビ番組評論と言えば、兎にも角にもナンシー関。インターネット上で見られるテレビ評論系ブログの多くは、ナンシーの文体を模倣しているし、そうでなかったとしても、ナンシーの存在を少なからず意識している。世間一般での知名度はそれほどではないのかもしれないが、テレビ番組評論家としてのナンシーは、間違いなくメジャーだったのである。

そんなナンシーが新刊を発売した。知っている人は知っているだろうが、ナンシー関は2002年にお亡くなりになられている。つまり、これは既に亡くなった人が書いていた文章を、新刊として売り出した本なのである。その出版背景に何があったのかは知らないが、どうも死人の財産で儲けようという魂胆を感じさせる一品だ。メジャーな作品に“してやられた”と思わせられるのも好きではないが、出版社が儲けの精神をあからさまに剥き出している作品も、それほど好きではない。以上二点の理由により、この新刊本はスルー……するつもりだったのだが、うっかり立ち読みをしてしまったところ、これがうっかり面白かったものだから、うっかり持ち合わせもそこそこにあったもので、うっかりレジに持っていってしまい、うっかり精算を済ませ、うっかりじっくり読み始めてしまったのである。そしてやはり、まんまと“してやられた”のであった。ああ、情けなや。

立ち読みの際に僕が心を惹かれたのは、本の最初に掲載されていた『「彫っていく私」ナンシー関自伝』というエッセイだった。名目上はエッセイということにしているが、そこに綴られている内容は何から何まで嘘である。嘘も嘘、嘘八百とはこのテキストのことだって言っても良いくらいに嘘ばっかである。その嘘つきっぷりは、本文の導入から突き抜けている。

昭和37年夏、私はオホーツク海に浮かぶ離島に生まれました。父はプエルトリコ系の中国人、母は三代続いた生粋の江戸っ子。東京は築地の魚河岸で出会った2人は互いにひかれ合い、周囲の反対を押し切って、北へ北へと逃げたのです。


ちなみに、この本の巻末に掲載されているナンシー関のプロフィールには、「ナンシー関は青森県青森市でガラス店を営む日本人の両親のもとに生まれる。」とある。どっちが事実なのかは、確かめるまでもない。どうしてナンシーがこの様な嘘自伝を書いたのかについて、本書では一切触れられていない。ただ、この嘘自伝が文章として面白いということだけは、確かである。かなり面白かったので、誰か実写化してくれ。三木聡あたり、しっくり来そうな気がするのだが。

この次に掲載されているのは、『ナンシー関の消しゴム偉人伝』というコラム集である。タイトルの通り、ナンシーが歴史上の人物について綴っているコラムである。その第一回連載に登場するのが「プレイボーイのバイトくん」(雑誌のプレイボーイのことである。そういう類いの性質を持ったアルバイターのことではない)というのが、なんとも捻くれている。が、それ以後の連載は、ちゃんと偉人・有名人を取り上げている。ちなみに、第一回の連載でバイトくんが取り上げられた理由だが、

とてもえらいし、皆さん素直で真面目な高青年だ。問題は私の自宅のインターホンだ。呼び鈴が鳴り、私がインターホンに出ると、彼らは「プレイボーイです」と一言名乗る。岡田真澄だって開口一番、そんな挨拶はしないだろう。やはり偉人である。


ちゃんと芸能ネタにも触れているあたりが、実にナンシーである。

これ以降のコラムは、全てテレビ・芸能系のものだ。それらについて紹介するのも良いが、今でも世間的には「ナンシー関=テレビ評論」というイメージが定着しているだろうから、あえてそのイメージを再確認する必要もないだろう。それに、テレビ評論の部分については、既に「はてなでテレビの土踏まず」さんがレビュー済だ。僕があえてテレビ評論部分について書いたところで、二番煎じ、柳の下のドジョウ、コロリ転げた木の根っこというものである。ちょっと意味が違うか。

ちなみに、今回の記事は土踏まず氏のブログにトラックバックしているのだが、果たして届いているのだろうか。というのも以前、田中裕二(爆笑問題)が書いた本について触れた記事で、氏のブログにトラックバックを送ったのだが、まるで反映される気配がないのだ。嫌われているか、どちらかのブログの機能に不備が生じているということだろう。出来れば後者であってもらいたいものだが、前者の可能性も無きにしも非ず。思い当たる節も、無きにしも非ず。困ったもんだ。

とにかくここで感想文を終わらせようと思うのだが、このまま終わってしまっては締まりが悪いと思うので、個人的にちょっと今の時期にタイミングが良いと思ったコラムを紹介して、この感想文を終わらせたいと思う。そのコラムとは、琴錦の女性問題について触れられたものである。と、ここで引用しようと思ったのだが、そのコラムが非常に長くて引用が面倒くさいので、やめることにする。……ダメか。無責任か。いや、そうは言ってもね、本の内容をブログの記事に引用したり抜粋したりするのは、並大抵のことでは出来ないのである。本当に面倒くさいのである。2ちゃんねるコピペブログとはワケが違うのである。ワケが。あっちはコピーアンドペーストで済むが、こっちは全文打ち込まなくちゃならない。なので、最後の部分のみを引用することにする。結局するのかよ。

お相撲さん以外の「拝まれる存在」を、私は昭和天皇ぐらいしか知らない。拝まれるということは、我々には想像もつかない難行であることだろう。その難行を強いておきながら「埼玉のA子さんはどうするんですか」はバチが当たるぞ。いいじゃないかそんなこと、お相撲さんなんだからさ。


このコラムを読んでいて、僕は即座に先日の朝青龍についてのバッシング記事を思い出した。知らない人のために説明すると、朝青龍が朝稽古を休んでオールナイトニッポンの収録に参加し、更にファンタの新コマーシャルの撮影に臨んだことが、一部報道で叩かれているのである。実に下らない。下らないが、こういう記事をまともに受け取り、怒りを露わにするような人もいるのが現実だ。そこで、このコラムである。このコラムで書かれていることは、事の重大さの差こそあるものの、現在の朝青龍に通じる部分も少なくない。相撲取りなんだから、いいじゃない。それで、いいのだ。

……これで締まりが良くなったかどうかは、知らぬ存ぜぬの方向で。どーかひとつ。

なんとなくショック。

お笑いパーフェクトBOOK (キネ旬ムック)お笑いパーフェクトBOOK (キネ旬ムック)
(2009/06/25)
不明

商品詳細を見る

こんなんが出たらしい。シロートの僕が言うのもアレだが、自分がいつかやろうとしていたことを先にやられてしまったという悔しい気持ちが、ハンパじゃないくらいに湧きあがってきている。というか、純粋に凄いな。はんにゃ、関根勤、伊集院光、高田純次、バナナマン、劇団ひとり、千原ジュニア、バカリズム、ボーズ、バッファロー吾郎、矢野・兵動、東京03、キングオブコメディ、サンドウィッチマン、オリエンタルラジオ、ライセンス、NON STYLE、しずる、ジャルジャル、ななめ45°などの芸人にインタビューを敢行? お笑いのすべてがわかる充実の特集記事やコラム群? ああ、絶対に面白いよコレ。もー!なんてモノ出しちゃうのー!(※既に書きましたがシロートが言ってます) おのれキネ旬!

『アメトーーク』肥後という男シーズン2

今週の『アメトーーク』、とにかく“肥後大陸”が素晴らしかった。芸人のドキュメンタリーとは思えないほどに、まったりのんびり。一人ぼっちのリーダー肥後は、とにかくマイペースで良い。ことあるごとに「疲れたなあ」とか言ったり、ボウリング球を拭く布で顔を拭いたり。マトモな生き方が出来ない人間のオーラがハンパじゃない。下着姿で川に入り、「風邪引くよ!」とマネージャーに怒られている姿なんか、とてもじゃないがプロの芸人の姿とは思えない。他の芸人による肥後イジりとか、常識クイズとか、そんなことはどーでもいい。とにかく、リーダーがまったりしてさえいれば、それで良いとさえ思える。そんなVTRを見た土田のコメント「ホッコリしますよね」。いや、まったく。出ている側も見ている側もせわしない時代に、とってもホッコリとしたVTRだった。ああ、先週とは違った意味で面白かった。

『サイクロンZ ハイパーソウル 〜スーパーヒーロー参上〜』

サイクロンZ ハイパーソウル 〜スーパーヒーロー参上〜 [DVD]サイクロンZ ハイパーソウル 〜スーパーヒーロー参上〜 [DVD]
(2009/06/24)
サイクロンZ

商品詳細を見る

特に思い入れのない芸人について語るのは、なかなかに難しい。なにせ基本的に興味が無いので、その芸人の過去について語れるほどの知識はないし、その芸について考えようとしていないから深く触れられない。おまけに、文章に気持ちが込めることもままならない。。これは別に、その芸人が面白くないからということではなく、ただ単に、僕が魂で受信している電波の波長と、その芸人が発している電波の波長が大きくズレているというだけの話なのである。なんだかアブない話をしているようだが、要するに、そんな状態なのにもかかわらず、その芸人のDVDを購入し、あまつさえ感想文を書こうとしている僕が間違っているという話なのである。

というわけで、サイクロンZについて書くのだが。先の文章で触れているように、僕はサイクロンZという芸人に思い入れがない。もちろん、彼のネタで笑ったことはあるし、そのネタはそれなりに面白いと思っているのだけれど、どうも彼のネタに深い関心を持てないのである。その理由について考えてみるに、どうやら僕が彼のネタからサイクロンZという芸人の姿を見出せないという点が大きいようだ。

サイクロンZのネタには、大まかに言って二つのパターンがある。一つは、サイクロンZというヒーローに変身して、様々な悩みを解決していくという漫談ネタ。漫談というよりは、コントに近いか。そしてもう一つは、振付師に扮したサイクロンZが、振り付けと称して“あてぶりコント”を披露するというものだ。“あてぶりコント”というのは、まず先にショートコントを披露した後で、そのショートコントの動きがヒット曲の歌詞に合った内容だということを観客に気付かせることで、笑いを生み出すというスタイルのネタである。テレビに出始めたころのサイクロンZはヒーローネタを主に披露していたが、世間的にはあてぶりネタの方がサイクロンZのネタとして浸透しているのではないかと思う。

が、実はこの“あてぶりコント”は、サイクロンZによって編み出されたオリジナルのネタではない。このスタイルは、今から六年前に活動を休止したコンビ、底ぬけAIR-LINEが生み出したスタイルである。ただ、サイクロンZのブログに底ぬけのメンバーだった古坂と彼のツーショット写真が掲載されていたことを考えると、それは単なるパクり芸というわけではなく、むしろ底ぬけの芸人としての意志をサイクロンZが引き継いだと言えるのかもしれない。まあ、彼のネタがパクリであろうとパクリでなかろうと、それは大した問題じゃない。

問題なのは、サイクロンZが他人の芸を純粋に取り入れてしまっているという点だ。もしも、普通の芸人が他人の芸風を引き継いだとしたら、その芸にプラスアルファとなる要素を組み込もうと考えて然るべきだろう。が、サイクロンZは、底ぬけがあてぶりコントとして披露していたネタと、ほぼ同じロジックを使ってネタを生み出している。はっきり言ってしまうと、単なるコピーになってしまっているのだ。それは即ち、サイクロンZという芸人の自己の薄さを意味している。芸人としてのポリシーが、彼には圧倒的に足りないのだ。

そんなサイクロンZが、他の芸人よりも圧倒的に秀でている要素がある。それは、どんなキャラクターを演じているときにも滲み出てくる、華やかさだ。彼は既に芸歴十年を越えているらしいのだが、いわゆる芸人の泥臭さをまったく匂わせていない。この華を活かした上で、確実に笑えるフォーマットを発見することが出来れば……サイクロンZはあてぶりコント以上の大ヒットを決めることが出来るかもしれない。でもしか、でもしか。


・本編(28分)
『殺し屋漫談』「OPENING」『歌ハメダンススクール Mr.ゼティ』「超NO力者 ザ・マスクマンさん1」『予言者ノストラダマス』「超NO力者 ザ・マスクマンさん2」『お悩み解決 前向き戦士!サイクロンZ』

・特典映像(8分)
「サイクロンZ プロトタイプ」『歌ハメダンススクール(大人の事情バージョン)』

『ゆってぃ ちっちゃい事は気にするな 〜ワカチコTOUR2009〜』

ゆってぃ ちっちゃい事は気にするな 〜ワカチコTOUR2009〜 [DVD]ゆってぃ ちっちゃい事は気にするな 〜ワカチコTOUR2009〜 [DVD]
(2009/06/24)
ゆってぃ

商品詳細を見る

『爆笑レッドカーペット』で初めてゆってぃを見たときは、てっきり日野誠が芸人デビューを果たしたものだと勘違いをしてしまい、とっても驚いた。日野誠というのは、“自称アイドル”として活動している謎の男のことだ。理解できないかもしれないが、そういう男がいるのである。世界は広い。彼は今でも自称アイドルとして活動しているらしいのだが、果たしてそれで食っていけるのだろうか。謎だ。まあ、日野誠のことはどうでもいい。とにかく、初めてゆってぃを見たとき、その日野誠と間違えて大いに驚いたのだ。しかし後で、ゆってぃの正体が実はとーどーゆーただと知ったときは、それよりもずっと驚いた。

とーどーゆーたというのは、かつてマンブルゴッチというコンビで活動していた人力舎所属の芸人だ。コンビ解散後はグーニーズというトリオを結成していたが、それも数年の活動の後に解散している。その後、特に音沙汰がなかったので、てっきり芸人を廃業したか、或いはくすぶってしまったものだと思っていたのだが。まさか、この時期に芸人としてブレイクすることになるとは、まったく思ってもみなかった。それにしても、とんでもないイメチェンだ。聞いた話によると、正統派漫談を目指していたにもかかわらず、事務所から「アイドル路線で行け」との指令が下ったのだそうだ。指令を下す方も下す方だが、その指令を受け入れる方も受け入れる方である。

そんなゆってぃのネタは、“アイドル目指して12年”な彼が、これまでに体験してきた悲観的出来事を「ちっちゃいことは気にするな!」というキャッチフレーズとともに、次々と披露していく自虐漫談だ。そのスタイルは、ダンディ坂野の自虐トークの様でもあるし、にしおかすみこの女王様キャラ漫談の様でもある。いや、むしろその両方の要素を混合して出来上がったものが、ゆってぃの漫談だと言えるのかもしれない。しかし、ゆってぃのネタは、彼らの芸風を真似ただけの、単なるコピーではない。

ダンディ坂野やにしおかすみこの漫談は、間合いや展開を大事にしたオーソドックスな漫談芸が下地となっている。しかし、ゆってぃの自虐漫談は、ネタの基本的な流れが完成しており、その上に幾つもの自虐漫談やアドリブを組み込んでいる。例えるなら、通常の漫談が一本のスパゲティで、ゆってぃの漫談は数本に分けられたマカロニだ。変な例えだが、そういうことなのである。その為に、ゆってぃの漫談は通常の漫談に対し、非常にシンプルに出来ている。余計な解説を含まず、観客が考える間を必要としないような分かりやすいネタ。そんなネタを、幾つも幾つも詰め込んでいるのだ。それはつまり、ゆってぃの漫談は通常の漫談に比べて、各段に手数が多いことを意味している。昨年末、M-1グランプリに向けて“漫才の手数論”なる理論がお笑いフリークの間を駆け抜けていったが、ゆってぃもまたその流れを汲んだ一人だったのである。うーん、恐ろしい。別に恐ろしくはないか。

その特異なキャラクターと芸風で注目を集めているゆってぃだが、その芸歴は十四年と長い(北陽と同期に当たるそうだ)。この千載一遇のチャンスを、彼がみすみすと見逃すことはないだろう。たぶん。きっと。おそらくは……うん。ゆってぃが如何にして、これからのお笑い界で生き残っていくのか。温かい目で見守っていきたいと思う。何様だ。


・本編(35分)
『ワカチコ1』『なで肩の男』『ワカチコ2』『過去と向き合う男』『ワカチコ3』

・特典映像(2分)
「ワカチコポージング解説」

『Wエンジンの惚れてまうやろーっ!! 〜モテない男の心の叫び〜』

Wエンジンの惚れてまうやろーっ!! 〜モテない男の心の叫び〜 [DVD]Wエンジンの惚れてまうやろーっ!! 〜モテない男の心の叫び〜 [DVD]
(2009/06/24)
Wエンジン

商品詳細を見る

Wエンジンというコンビがいる。名前を聞いてもピンとこない人がいるかもしれないので補足するが、片割れが「惚れてまうやろー!」と絶叫するコントを披露しているコンビのことである。その絶叫を担当しているメガネの男がチャンカワイと言い、男が絶叫する原因を作っている女に扮している男がえとう窓口という。言うまでもなく芸名なのだが、それにしても凄い名前だと思う。いや、チャンカワイはまだ分かるのだが、えとう窓口という名前はそうそう思いつくものじゃない。とてつもない才能すら感じさせている。目立たない方なのに。

彼らが披露しているコントは、常に同じ展開で構成されている。チャンカワイ演じるモテない男が、えとう窓口演じる女の誘惑っぽい行動に翻弄されて惚れ込みそうになるが、最終的には裏切られてしまい、絶叫する。いつも同じ。違うコントも出来るようで、『爆笑オンエアバトル』ではヒーローもののコントを披露していた(今作収録)。まあ、それもまたチャンカワイの容姿に対するコンプレックスがああだこうだと言われるようなネタなので、基本的なスタイルは大して変わらないと言って良いのかもしれない。

そんなWエンジンのコントは、モテない男性を揶揄しているというイメージが強い。というか、たぶん意識している。かつて、彼らが“宴人”と名乗っていた頃のネタは、現在のWエンジンとしてのネタとは大きく違っていたので、恐らくは試行錯誤の結果として、現在のスタイルが生まれたのだろう。が、それにしたって、当のモテない男にしてみれば、たまったもんじゃない。特にお笑い好きの分野は女性人口が高いことを考えると、なにやらうすら寒い気持ちになってくる。モテない男性を演じる二人の男と、それを観て客席で笑う女性客たち。うーん、想像しただけで鳥肌が立つぜ。

……そんな印象を持ってもおかしくはない筈なのだが、不思議とWエンジンのネタからは、そういったモテない男の単なる悲哀を笑っているという印象を受けない。その理由は、チャンカワイが「惚れてまうやろー!」と絶叫しているところにあるのだろう。「惚れてまうやろー!」という言葉は、その場の状況に対する感想の意味を持つと同時に、誘惑の行動を取っている女に対する批判としての意味も持っている。女の誘惑に付き合う自分と、その状況を客観的に捉えている自分。その二面性が、Wエンジンのコントを単なる悲劇とは違った世界にしているのだ。だからこそ、オチでチャンカワイが「気をつけなはれや!」と観客に向けて提言するのも、単なる負け惜しみには聞こえない。

Wエンジン自身が、そういう思惑を持ってネタを展開しているのかどうかは、今のところ不明である。先にも書いたように、現在のスタイルは試行錯誤の末に完成されたものだろうから、色々と試験的にネタを作り上げていった結果、そういう方式が出来上がっただけなのかもしれない。そう考えると、彼らがなんだかとんでもないコンビにすら見えてくる。気のせいかな。気のせいかもしれない。


・本編(33分)
「モテない男が惚れてしまうコント」21連発!

※無観客収録。長編コント『ヒーロー』も収録。

次回の『爆笑トライアウト』

遊び屋(マセキ芸能社)
ゴールドラッシュ(トゥインクル)
JJポリマー(ホリプロコム)
ジューシーズ(東京吉本)
夙川アトム(Ash & D)
ニッチェ(J・D・W)
100W(ワタナベ)
マッチポンプ(松竹芸能)
三浦マイルド(大阪吉本)
レッドクリスマス(SMA)

夙川アトムが二度目のトライアウト参戦。一度トライアウトを勝ち上がっても、本戦で勝ち上がれなければ再びトライアウトに戻ってしまうということらしい。厳しいなあ。ジューシーズニッチェ三浦マイルドといったレッドカーペット経験組に加え、さりげなくサブカル方面で注目され始めているJJポリマーの名が。なんだか面白い回になりそう。

2009年7月の購入予定

08『ラバーガール ソロライブ 「さよならインドの空に」
08『ジャルジャルの戯 3
22『オードリー DVD
22『子どもさんかん日』(出演:内村光良・さまぁ〜ず他)
24『アンガールズ 単独ライブ 「UNGIRLS PRO」
24『快楽亭ブラック 大変態
26『チハラトーク#4
26『チハラトーク#-4

ラバーガールの単独ライブ、ジャルジャルのDVD収録用ライブ、アンガールズの単独ライブ、ウッチャンとさまぁ〜ずによる演劇公演と、注目度の高い作品が揃っている七月。その中でも、特に注目度が高い作品が、『オードリーDVD』。聞いた話によると、単独ライブとベストライブの様子を収録しているとか。ケイダッシュ的にも、かなり気合が入っているのだろうなあ。ただ、最近の彼らを見ていると、なんだかあまりに消費されすぎていて、テレビ的に生き残れるのか不安で仕方ない。いや、なんだかんだで大丈夫な気はするんだけど……どうかなあ。

『爆笑オンエアバトル』六月二十五日放送感想文

・二位:スマイル『漫才:居酒屋のバイト』(501kb)
どうもスマイルに対しては「ツッコミいじり」のイメージが強かったのだけれど、今回のネタはしっかりとウーイェイよしたかが毒舌系のボケとして際立っていた。途中からのスピード感ある展開も、これまでのようにクッチャクチャにならず、ちゃんとテンポ良く。ただ、芸風がキングコングみたいになってきているのが、ちょっと気になる。ここはキャイ〜ンの路線で行ったら面白いと思っていたので、落ち着いた方に行っちゃったなあ……という感じ。

・七位:えんにち『漫才:声を使った仕事』(417kb)
アイパー滝沢が繰り出すアウトローなボケは、相変わらず面白い。キャラクターが立っているのに、ここまで飽きられていないというのも凄いなあ。後半の映画ナレーションのくだりは畳み掛けていたけど、逮捕された人がストレートに出てきた場面で少し失速したかな。何気に無傷の十連勝。ネタの安定感はバツグンだな、ホント。

・四位:トップリード『コント:赤ちゃん』(457kb)
史上最強にハートフルなコントだったなあ。どんなに無茶苦茶な状況でも、全て赤ちゃんの可愛らしさで終結するというハートフルっぷり。また演技力があるんだよなあ。肉離れにこだわる奥さんも面白かった。オチも意外で良かった。去年のオンエア以後、トップリードのコントは本当にハイクオリティになってきてるなあ。次の笑魂シリーズには、是非とも彼らを!

・五位:上々軍団『漫才:アニマル童謡ハンティング』(449kb)
「童謡」をテーマにした漫才は数あれど、こういう創作系のネタは珍しいなあ。しかも、ボケらしいボケがないというのが、凄い。あえて笑いを取ろうとするような歌じゃなくて、本当にありそうな歌を創作している。だから、普通だったら作った歌自体がボケになるところを、彼らは童謡を創作しているという事実だけをボケにして、尚且つ笑いにしている。笑いのネタとしては弱いかもしれないけど、上々軍団ならではの笑いというのを、このネタははっきりと提示しているんじゃないかなあ。いやー、面白かった!

・八位:インポッシブル『コント:必殺仕事人2009』(369kb)
『爆笑トライアウト』でも披露していたスタイルのネタを、違うバージョンで。前回と同じなのかなあ……と思っていたら、途中で「引っ越しの坂井!」が出てきて、大爆笑。そこでそれを出すか。これがオチだったら、もうちょっと数字が高かったかもしれない。こういう、下らないことを全力でやってる感じ、やっぱり好きだなあ。相変わらず平成ノブシコブシな印象を受けちゃったけど(笑)

・三位:あきげん『漫才:モテる理由』(465kb)
メガネで小太りな秋山がモテている理由について語る。前半のモテている理由を強引に説明していく展開はなかなか面白かったけど、後半の飲んでコールが暴走していく展開はイマイチ。テンポは良かったんだけどなあ。どうもここは、軽率な感じが芸として立っていない感じがして、見ていて落ち着かないんだよなあ。改めてオジンオズボーンの凄さを実感してしまう。次のオンエアに期待。

・五位:スーパーマラドーナ『漫才:一匹狼の侍』(449kb)
ボケ役がツッコミ役のジャマばかりするスタイルの漫才。ちょっと中川家っぽいか。後半は、あまりにジャマばかりするボケ役に嫌気がさしたツッコミ役が、本編に必要のない役割ばかりを与えるという展開。これがなかなか面白かった。ただ、最後の「これまでの全部やれ!」は、流れ星の漫才ぽかったかな。まあ、専売特許ではないし、良いんだけど。

・一位:ななめ45°『コント:W再会』(505kb)
とある喫茶店で父と息子が再会を果たすのだが、実はその喫茶店のオーナーが父の父(息子の祖父)で、やたらとややこしいことになる……というコント。こういう人間関係のゴチャゴチャとしたコントが上手くなってきたなあ。二人(父と息子)が同時に追求して、二人(祖父と父)が同時に謝罪する流れには爆笑した。ちなみに、ななめ45°が通常回で一位になるのは四度目。しかも三度目は、今年の二月。忘れすぎだ!

・オフエア組
ロマンチックセクシー(353kb)
鬼ヶ島(317kb)
パップコーン(265kb)
慶(261kb)
恋愛小説家(233kb)
花香芳秋(229kb)
ジェニーゴーゴー(161kb)

無傷の九連勝中だったパップコーンが、初めてのオフエア。無傷の十連勝を迎えたえんにちと明暗分かれる結果となった。モノマネ師、花香芳秋はまさかの再戦。あまり支持を得られず。かつては五連勝を記録したこともあるジェニーゴーゴー、初の最下位。自己最低キロバトルを更新してしまった。

・オンバトプレミアム:ノンスモーキン
コント『グリコ大王』を披露。通常回で披露してきた『ジャンケン大王』『あっち向いてホイ大王』の改変版。じゃんけんの歌を長々と歌う定番のボケは、なんか安心して笑ってしまう。グリコ大王が変則的に進む流れは、バカバカしくて面白かったなあ。

続きを読む

プロフィール

Author:菅家
お笑いDVDコレクター。大学一年の頃にラーメンズのDVDと出会って以後、若手芸人が発表したDVDを出来るかぎりチェックし続けている。が、最近は面白いテレビ番組が増えてきて、ちょっとチェックを怠り気味。ちなみに、好きな番組は『しゃべくり007』『アメトーーク』『爆笑オンエアバトル』など。

連絡先はこっち。
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

検索フォーム
最近の記事
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
カウンター
近隣住民
あわせて読みたいブログパーツ
個人的名盤
リンク