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『小林賢太郎テレビ3』(2012年10月17日)



2011年8月24日にBSプレミアムで放送された『小林賢太郎テレビ3 ~ポツネンと日本語~』に未放送映像を追加した特別編集版を収録。コントユニット「ラーメンズ」の頭脳であり、自作の舞台を手掛ける劇作家であり、“ポツネン氏”に扮して一人きりのステージを繰り広げるパフォーマーでもある小林賢太郎の表現者としての魅力が凝縮されている。演出を手掛けるのはNHKエンタープライズ・チーフディレクターの小澤寛。小澤氏はこれまでの『小林賢太郎テレビ』でも演出を担当している。


番組のサブタイトルにあるように、本作のテーマは「日本語」。二人の外国人が怪しげな日本語を声に出して勉強する姿を描いたコント『日本語学校』シリーズで注目を集めた小林にとっては、永遠の課題であるといえるだろう。時に日本語を意味から解き放ち、時に日本語を分解して新たな言葉を創作し、時に日本語のニュアンスだけを抽出してきた『日本語学校』のシステムは、今もなお、小林の日本語に対するアイデンティティとして根底に存在している。そんな彼が、改めて日本語と対峙したとき、どんな笑いが生まれるのか。

オープニングアクトは『学校でアナグラム』。“黒板消し”“そろばん”“文化祭”などのように、学校と関わりの深い道具や行事の名前の文字を並べ替えて、まったく別の意味の言葉に変えてしまうパフォーマンスだ。……と、この説明だけだと、なんだか難しくて面倒臭そうに感じられるかもしれないが、その結果として生み出された言葉がバカバカしくて、なかなか面白い。分かりやすくイラストで可視化されているのも嬉しいところ。続く『そういうことではない展』も、言葉を可視化したコントである。ただ、こちらは実際に使われている言い回しが、そのまま絵や物体などのアートとして具現化している。話の種、社長の器、貧乏くじ……だからなんだと思わなくもない。でも、だからこそ、良いのである。

その後も日本語をテーマにした映像が続く。壺となった小林が日本語の釈然としない表現に平然と切り込んでいく『思う壺』、ロバート秋山の『トカクカ』を彷彿とさせる『トツカク』(もちろん発表されたのはこっちの方が先)、神社の一角でひっそりと繰り広げられる紙芝居の顛末とは?『ムゴン』、全ての言動が擬音だけで表現されている時代劇『擬音侍 小野的兵衛』……と、実に興味深いラインナップとなっている。個人的には『のりしろ』がお気に入りだ。三つの異なるシチュエーションが、それぞれの状態を表すオノマトペ(「トコトコ」「カチカチ」「カンカン」など)で不思議なつながりをみせていく。小林は似たようなコントを以前にラーメンズでもやっていた(『モーフィング』『同音異義の交錯』)が、テレビならではの凝った舞台美術とシンプルで端的な構成に魅了されてしまった。オチも美しい。

……と、ここまで本作の内容を評価してきたが……この『小林賢太郎テレビ』というシリーズ全体にいえることだが、一般的にはあまり知られていない小林の実力を視聴者に知ってもらうためなのか、番組内で彼のことをやたらと持ち上げようとするきらいがある。それが、むしろ一般の視聴者を遠ざけているような気がしないでもないのだが、実際のところはどうなのだろう。例えば、既にそれなりの知名度を得ているバカリズムがメインの『番組バカリズム』のように、何の紹介も説明もなく、唐突に番組が始まったとしたら、どういう風に受け止められるのだろうか。一度、試してもらいたい。そういう何も知らない視聴者をアッと驚かせる仕掛けこそ、小林賢太郎の真骨頂だと思うので……。


■本編【63分】
「イントロダクション」「学校でアナグラム」「そういうことではない展」「ドキュメンタリー」「思う壺」「のりしろ」「トツカク」「言葉ポーカー」「ムゴン」「ワインレストランにあるまじき風景」「思う壺」「擬音侍 小野的兵衛」「御存知!擬音侍 小野的兵衛」「お題コント制作ドキュメンタリー」「お題コント「双方向テレビ」」「学校でアナグラム」
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『番組バカリズム2』(2015年7月22日)



2014年7月18日にBSプレミアムで放送されたバラエティ番組『番組バカリズム2』を収録。バカリズムがこれまでにライブで演じてきたパフォーマンスの再演に加え、豪華ゲストを迎えて撮り下ろされた新作映像も披露された、とても充実した内容となっている。演出は前作と同様、『バカリズムマン対怪人ボーズ』を手掛けた住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)などの前作にも参加していたクリエイターたちが今回もスタッフとして名を連ねている。


本作も見どころが多い。

トーク番組で起こったビミョーな事態を描いた『歌う人生劇場』では、角田晃広(東京03)演じる人生の渋みを噛み締めた熟年男性の前に、とある理由で登場するでんぱ組.incのギャップがとにかく面白い。バカリズムが作詞、前山田健一(ヒャダイン)が作曲を手掛けた無駄にクオリティの高いオリジナルソングは必聴だ。一方、警察署の取調室を舞台に、とある事件の目撃者と彼から証言を得ようとする刑事のやりとりをイラストで表現した『目撃者』では、豊本明長(東京03)が醸し出す独特の雰囲気が笑いに大きく貢献している。何を考えているのか分からない、得体のしれない者同士の不条理で無意味な会話が無感情で進行していく様が素晴らしい。

過去のライブからは、試合の後に開かれた陸上選手の謝罪会見の理由とは?『はやすぎた男』(from『バカリズムライブ「運命」』)、話し合いが終わった後の会議室に残った同僚の女性社員にとあるお願いを切り出す『見よ 勇者は帰りぬ』(from『バカリズムライブ「SPORTS」』)、定番として確固たる地位を築き上げている昔話『浦島太郎』の理不尽に対してバカリズムが苦言を呈する『昔話に関する案』(from「バカリズム案7」)の三本を再演。残念なことに、前作にはあった番組オリジナルの改変は見られない……が、バカリズム自身も「“裏”の代表作といっても過言ではない」と語る『見よ 勇者は帰りぬ』をNHKの番組に持ってきたという事実を噛み締め、素直にその恐るべき決断を讃えたいと思う。とにかくオチが……。

しかし、やっぱり見てもらいたいのは、俳優をゲストに迎えたショートドラマ。とりわけ、浅野忠信演じる記憶を失ってしまった男がこれまでの人生で関わってきた様々な人たちと面会することで自分が何者なのかを思い出そうとする『川崎貴俊』……も、非常に良かったのだが、私のオススメは夏帆が出演している『好き?』だ。舞台はとある駐車場。車中で恋人たちが次に何処へ行こうかと話しているのだが、彼氏(バカリズム)は携帯ゲームに夢中で彼女(夏帆)の話をまともに聞こうとしない。そんな彼氏の反応に腹を立てた彼女は、ゲームを取り上げて「私のことが好きじゃないんだ!」「じゃあ、好き? 私のこと好き?」と痴話喧嘩にありがちなことを求める。そこで、前向きではないながらも、彼女の質問に答えようとしたとき、彼氏の目はとある光景にくぎ付けになる……。

日常で遭遇するかもしれない可能性がある危機的状況の現実味を帯びた緊張感と、それを打破する衝撃的な展開が素晴らしい。この台本はオークラが担当。これはこれでいい仕事をしている。だが、この『好き?』という作品は、夏帆の演技が無ければ成り立たない。あのシーンの夏帆の演技を見てもらいたい。あの、口角を上げながら○○を××した挙句△△している夏帆を見てもらいたい。むしろ、夏帆の演技を見るためだけに、本作を鑑賞してもらいたいとすら思う。それほどに、いい表情をしているので……。

ちなみに、2015年3月に放送された『番組バカリズム3』のDVDは11月25日にリリース予定。私は放送内容を確認していないが、若林正恭(オードリー)や菜々緒をゲストに迎えたコントを繰り広げているという。楽しみだ。


■本編【59分】
「はやすぎた男」「歌う人生劇場」「ろうそくの火を消せそうな発音の人間関係ベスト3」「好き?」「見よ 勇者は帰りぬ」「目撃者」「川崎貴俊」「昔話に関する案」

■音声特典
バカリズムによる音声解説

『番組バカリズム』(2014年4月23日)



2013年7月14日にBSプレミアムで放送されたバラエティ番組『番組バカリズム』を収録。過去の単独ライブで披露されたコント・パフォーマンスにアレンジを加えて再演したり、番組のためのオリジナルソングを制作して合唱団に歌わせたり、従来のバラエティに独自のエッセンスを加えたVTRを撮影したりするなど、芸人・バカリズムの才能が存分に詰め込まれている。演出は『バカリズムマン対怪人ボーズ』を手掛けた住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)など、バカリズムと縁深いクリエイターたちが軒並み参加している。


本編は一時間に満たないが、見どころはいっぱいだ。

例えば、飯塚悟志(東京03)とのユニットコント『僕らのドライブ』。飯塚からの誘いでドライブに付き合わされたバカリズムが、その計画性の無さについて順を追って批判し始める。お互いのクセの強いところが上手く台本に反映されていて、とても面白かった。二人の日常を切り取ったかのようなリアリティ。最初はバカリズムが飯塚をガンガン責め立てていたのに、ちょっとしたきっかけで立場が逆転してしまう展開もスリリング!

真木よう子をゲストに迎えたVTRコント『ポリンコピン』も良かった。真木から「実は私はポリンコピンなの」と告白されたバカリズム。しかし、ポリンコピンが何なのか分からないので詳細を訊ねるのだが、話を聞けば聞くほど答えにたどり着けない……というナンセンスな味わいがたまらない。コントを演じているとは思えないほどにシリアスな空気を纏った真木の演技も見事。最高の棒読みを見せる場面は是非とも見ていただきたい。

それから忘れてはならないのが『言葉に関する案』。バカリズムが自作の「いろは歌」を披露しているのだが、とてもクオリティが高いのに、どうしようもなくバカバカしい内容になっていて、感心したい気持ちと笑いたい気持ちがぶつかり合ってしまう。結果、笑っているんだけれど。ネタ自体は『バカリズム案6』で既に披露されたものだが、ちゃんとテレビ用に新作が用意されているので、見逃さないようにしてもらいたい。

だが、この作品の一番の見どころ(もとい「聞きどころ」)は、バカリズムによる音声解説だろう。普段の単独ライブDVDでは何も語らないバカリズムが、ネタの背景や撮影の裏話をそれなりにちゃんと語っている。個人的には『ポリンコピン』の解説が面白かった。真木よう子に出演を正式に依頼したタイミング、撮影の裏話、『ポリンコピン』というコントの出自に至るまで、非常に興味深い話が飛び出していた。まさか、あの人のあの行動が、アドリブだったとは……。

バカリズムという芸人を知るに最適な一枚。ただ、富山県の人にだけは、絶対に見せないでください。


■本編【59分】
「番組バカリズムのうた」「イケなくて…」「ボクと富山県」「休日バカリズム」「僕らのドライブ」「ワンルームだった場合 住みにくい形の都道府県ベスト3」「ポリンコピン」「心霊バカリズム」「言葉に関する案」

■音声特典
バカリズムによる音声解説

うまるが来たりてダラダラと。『干物妹!うまるちゃん』

最近、動画配信サイト「ニコニコ動画」でテレビ番組が公式に配信されていることを知ったので、とりあえずテレビ東京系とフジテレビ系のチャンネルを登録して『ゴッドタン』や『こじらせナイト』あたりを見ている。いい時代になったものだ。地元では遅れ放送になっている『ゴッドタン』や、地元ではそもそも放送されていない『こじらせナイト』を、海外の動画サイトでコソコソとあげられている動画としてではなく、公式に配信されている動画として放送直後に見られるなんて、私が子どもだった頃には考えられないことである。よく、書籍を取り扱った販売サイトよりも書店で本を買った方がいい理由として、「偶然の出会いに巡り合うことがある」というものが挙げられているが、それに似たような出会いが、この動画サイトを通じて起こるかもしれない。是非とも、若いうちから下らない番組と出会い、人生に宜しくない影響を受けていただきたい所存である。ようこそ地獄へ!

で、この「ニコニコ動画」での配信を通じて、最近の私がすっかりハマってしまっているのが、『干物妹!うまるちゃん』というテレビアニメである。そのストーリーは「容姿端麗、品行方正、成績優秀、スポーツ万能という絵に描いたような完璧女子高生・土間埋(どま うまる)。しかし、その正体は、誰にも見つかることなく自宅でテレビゲームやネットサーフィンに勤しみながらジャンクフードやコーラを貪る“干物妹”だったのだ!」……というもの。『彼氏彼女の事情』の序盤を思わせる設定だが、その正体が外に漏れることによって生じるドラマなどは皆無に等しく(少なくとも現時点では)、基本的にはうまるのグータラぶりとそれに呆れながらも突き放せない兄・タイヘイの日々が描かれている。いわゆる日常モノといえるのかもしれない。正直、アニメとしてはさほど面白いモノではないのだが、オープニングテーマのノリの良さに惹かれて、なんだかんだで見続けている。


UMR! UMR! うまるを讃えよ!(※例の映画は未見)

ストーリーに突出しているところがないからこそ、キャラクターに引っ掛かるところがないからこそ、そこには既存の安心感のようなものがあり、そのために初期衝動の余韻だけでゆるりゆるりと見てしまっているのかもしれない。現在、『うまるちゃん』は全12話中第8話まで配信されている。今のところ、ゆるーいぬるーい日々の描写が延々と続いているのだが、ここから最終話に向けて、どんなめくるめく展開が待っているのか。……何も待っていないような気がしないでもないが、とりあえず楽しみである。

金曜の夜の笑える悪夢『怪奇恋愛作戦』

怪奇恋愛作戦 Blu-ray BOX怪奇恋愛作戦 Blu-ray BOX
(2015/04/15)
麻生久美子、坂井真紀 他

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「キャーッ!」。美女の叫びが町中に響き渡る金曜深夜。その時、事件は現場ではなく、テレビの中で起こっている。三人のアラフォー女性が数々の怪異に惑わされながらも友情で立ち向かっていく『怪奇恋愛作戦』は、笑いとブキミと哀しみが交差する連続ドラマだ。主人公である三人の女性を演じているのは、無頓着で素っ頓狂な役を演じれば天下一品の麻生久美子、清純派女優の皮を被ったミラクルコメディエンヌ坂井真紀、結婚して少し幸せ太りしたがタモリを魅了した色気は今も健在の緒川たまき。そんな、いずれ劣らぬ美しくも面白き三人の周りを、仲村トオル、犬山イヌコ、山西惇、池谷のぶえ、かもめんたる等の超個性的な面々が固めている。ああ、濃ゆい。

登場人物が濃ければ、ストーリーも濃い。人造人間を操って意中の相手と無理矢理に結婚しようと企む博士のみっともなさと、彼によって別の人間の姿に変えられてしまった怪人の哀しさが溢れ出た「21世紀のフランケンシュタイン」。若者たちから若さを吸い取る化け物との死闘をコメディタッチで描いた「妖怪 年食い」。坂井真紀演じる音楽教師と恋に落ちてしまった、非業の運命を背負う少年の切ないラブストーリー「闇夜の少年」。時に笑えて、時に驚いて、時に泣けて……混沌とした世界観からは想像も出来ないエンターテインメントの王道を行く展開に、もう目が離せない。シリーズ監督を務めている、ケラリーノ・サンドロヴィッチの手腕が如何無く発揮されているおかげだろう。有難いこっちゃ。現時点で第六回まで放送されている。今からでも、まだ遅くはないぞ。女王蜂が歌う『ヴィーナス』が流れるオープニングだけでも見るべきだ。あのグロテスクなのに最高にカッコイイ映像は一見の価値がある。


金曜の夜、笑えて泣けるブキミを貴方に。

『ゲームセンターCX 有野の挑戦 in 武道館』

ゲームセンターCX 有野の挑戦 in 武道館 [DVD]ゲームセンターCX 有野の挑戦 in 武道館 [DVD]
(2014/07/02)
有野晋哉

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有野晋哉(よゐこ)がテレビゲームの攻略に挑戦する“有野の挑戦”をメインに構成されたバラエティ番組『ゲームセンターCX』。当ブログでは、あまり『ゲームセンターCX』関連の作品を取り上げていないが、この番組のDVD-BOXはリリースされるたびに欠かさずチェックしている。なんなら、購入した当日に必ず鑑賞しているくらいだ。もしかすると、普通のネタDVDよりも楽しんで観ているかもしれない。

この番組の魅力は、なんといっても有野晋哉のおちょくり芸が存分に発揮されている点にある。プレイしているゲームの内容をおちょくり、手助けにやってきたADの仕草や性格をおちょくり、時にはロケ企画に映り込む一般の人たちのことまでおちょくる。通常、こういう芸人はあまり好かれない傾向にあるが、ワードセンスの高さと柔軟な姿勢がおちょくりのもたらす印象を緩和している。有野がダメゲーマーである点も大きいだろう。プレイミスにコンティニューミス、果ては操作方法を忘れてしまうほどのダメさ加減が、視聴者の優越感を上手にくすぐり、それでも真剣にクリアを目指す姿勢が、優越感を親近感へと転化させるのである。……多分な!(八割方テキトー)

本作には、そんな『ゲームセンターCX』が放送開始10周年を迎えた記念として、2013年11月5日に武道館で開催した“有野の挑戦”の模様が収められている。とはいえ、観客を入れた上での挑戦なので、いつものように完全攻略するわけではなく、番組が提示した五つの課題に有野が挑戦する形式を取っている。作業服を着たおっさんがゲームをプレイしている様子を7,000人が見守るという、なんともシュールな画が楽しめるぞ。番組ではお馴染みのスタッフも登場し、何処にも出せない究極の内輪ネタを堪能することが出来る。ていうか、個人的に見たことのないスタッフも出てきたのだが、あの人は誰だったんだろう……。

挑戦しているゲームは、「パンチアウト」「魔界村」「スーパーマリオブラザーズ」「ベスト競馬 ダービースタリオン」「ストリートファイターⅡ」。「パンチアウト」と「ベスト競馬 ダービースタリオン」はこれまでDVD未収録だったが、「ベスト競馬 ダービースタリオン」の挑戦回は本作に収録されている。……それなら、「パンチアウト」の挑戦回も収録した方が、バランスが取れていたのではないかと思うのだが。どうも、その辺の詰めが甘い。とりあえずイノコMAXが悪いことにしておこう。

ここから感想。武道館での挑戦ということで、それなりに期待値が上がっていたのだが、はっきり言ってそこまでの内容ではなかった。先述の通り、客前での収録で時間が限られていたために、挑戦内容を番組側が提示する形式になってしまったことが原因だろう。ナマで観ていると臨場感も味わえたのかもしれないが、テレビ画面ではどうしても物足りなさを感じてしまった。一本のゲームを24時間かけてひたすらプレイする『ゲームセンターCX 24 ~課長はレミングスを救う 2009夏~』という先駆者的企画の存在も大きかったのかもしれない。まあ、10年を経て、元来の“有野の挑戦”に戻ってきたともいえるが(※元々、“有野の挑戦”はゲーム完全攻略が目的ではなく、ゲームの隠し要素を有野が実際にプレイして発見するための企画だった)。まあ、それにしたって、「戦え!課長ファイター 合いの手講座」と「戦え!課長ファイター カーディガンズVer.」は不必要だったと思うが。そんなモン要れる余裕があるなら、『パンチアウト』を(以下略)

ボリュームもイメージしていたよりちょっと短め。武道館ライブが収められているDISC1の収録時間が172分と書かれていたから、これはけっこう楽しめるのかなと思っていたけれど、蓋を開けてみると武道館ライブは2時間くらいで、残り時間はほぼ大反省会に使われている。そんな1時間近く反省しなくても。あと「戦え!課長ファイター 合いの手講座」と「戦え!課長ファイター カーディガンズVer.」もDISC1に収録。だから、そんなモ(以下略) 一つのドキュメンタリーとして観るのではなく、こういうイベントがあったんだという記録作品として観た方がいいのかもしれない。この反省を踏まえて、2023年のさいたまスーパーアリーナでのイベントの時には、ちゃんとした内容にしておいてほしいものである。いや、ホントに。

ちなみに、ある意味では武道館ライブよりも悪ふざけな『ゲームセンターCX THE MOVIE 1986 マイティボンジャック』は、9月2日にリリースされる予定とのこと(ブルーレイ同時発売)。私は劇場で鑑賞しましたが……オススメは……うーん……。


■DISC1【172分】
「有野の挑戦 in 武道館 スペシャルエディション」
特典「有野の挑戦 in 武道館 大反省会」
特典「戦え!課長ファイター 合いの手講座」
特典「MV 戦え!課長ファイター カーディガンズVer.」

■DISC2【115分】
「武道館ドキュメント ディレクターズカット版」(オーディオコメンタリー有)
有野の挑戦「ベスト競馬 ダービースタリオン」

『小林賢太郎演劇作品「振り子とチーズケーキ」』

小林賢太郎演劇作品『振り子とチーズケーキ』 [Blu-ray]小林賢太郎演劇作品『振り子とチーズケーキ』 [Blu-ray]
(2014/05/21)
竹井亮介、小林賢太郎 他

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こんな感じになる筈じゃなかった。

そんな風に考える機会が増えたような気がするのは、私が年を取ってしまったからなのだろうか。思えば、若い頃の私は、あまりにも楽観的に将来を捉え過ぎていた。漠然とした目標地点と、そこを目指そうとする努力の怠り。そして今、目の前に浮かんでいた夢や希望は相変わらず浮かび続けたままで、後ろには堕落の日々が犬のフンの様に転がるばかり。こんなことではいけない! と奮起する気にもならず、また堕落に埋没する我が心の愚かさにはもはや目も当てられない。

しかし、考えてもみれば、この浮世を生きる人々の夢の大半は、夢は夢のまま、実現することなく排水溝へと流れていく運命にある。考えてもみよ、世界中の宇宙飛行士志願者たちが全員宇宙飛行士になったらば、宇宙は宇宙飛行士でいっぱいになり、スペースシャトルは通勤電車の様なぎゅう詰め鮨詰めハシ詰んめな状態になってしまうではないか。夢の間口はいつでも窮屈、入りたくても入れない。それが分かっているから、そもそもハナから目指さない。でも、憧れている。行きたいのか。行けないのか。行きたくないのか。どうせ、行けるわけがないのか。何もかもを諦めてしまうのか。では、諦めてしまった後に、何が残るのか。

小林賢太郎が手掛ける演劇作品第9弾『振り子とチーズケーキ』は、冒険旅行に憧れる図書館員が偶然拾った日記帳を持ち帰った日の出来事が描かれている。登場人物は二人だけ。図書館員の“私”(竹井亮介)と、“私の心”(小林賢太郎)。誰の落とし物なのかを確認するために日記帳を開いた“私”は、その持ち主である女性の自由奔放な生き方に驚かされる。世界中を旅し、世界中の食べ物を口にして、世界中の男たちと交流する。一体、彼女は何者なのか。彼女の理想の男性像から当人へと辿り着くべく、日記を片手に“私”は“私の心”と自問自答を繰り返していくのだが、やがて“私”はそこに自らの理想を描き出してしまう。気が付けば……そこには、劣等感が浮かび上がっていた。理想とする自分と現実の自分。その広すぎるギャップから、理想そのものから目を逸らし、そして……「どうせ俺なんて!」

【独身文系男子に捧ぐ。】というキャッチコピーが示しているように、この作品は決して外向的とはいえない独り身の男たちに向けられた作品だ。私もそういう人間なので、作中のメッセージがやたらと突き刺さった。心が闇へと落っこちていく瞬間、するりと希望からこぼれてしまう瞬間、そのさり気なさがたまらない。だが、それでいて、メッセージ性に固執しているわけでもない。いつものラーメンズよろしく、言葉遊びを用いた笑いや個性的で愛らしいキャラクターたちに満ちたステージを楽しめる。むしろ、だからこそ、このメッセージがド直球で突き刺さる。前作『ロールシャッハ』は、メッセージの内容が重過ぎたために、些か現実離れした話として受け止めてしまったが、本作はパフォーマンスとメッセージがきちんと釣り合った、素晴らしい作品だったと思う。

上手く生きられない孤独な人たちのための寓話、是非に。


■本編(93分)
出演:竹井亮介、小林賢太郎

テレビドラマ『なぞの転校生』

なぞの転校生 Blu-ray BOX(5枚組)なぞの転校生 Blu-ray BOX(5枚組)
(2014/05/14)
中村蒼、本郷奏多 他

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1967年に刊行された眉村卓の小説『なぞの転校生』を原作としたテレビドラマ。企画・脚本を岩井俊二が担当しているだけあって、基本的には日常的な風景が描かれているにも関わらず、その映像はとても幻想的。かつて、自分が10代だった頃、興味本位で鑑賞した『リリイ・シュシュのすべて』や『花とアリス』もこういうのだったっけ。そこで描かれているもの全てが美しくて、私はすっかり心を奪われてしまった。特に杉咲花が可愛くてねえ……完璧じゃないですかね。まさか、こんなにも繊細な作品を『湯けむりスナイパー』『勇者ヨシヒコと魔王の城』『みんな!エスパーだよ!』が放送されていた時間帯で見られるとは。監督は『青空のゆくえ』『夜のピクニック』『天国はまだ遠く』などの映画を監督した長澤雅彦。いい仕事をしています。

ドラマ『福家警部補の挨拶』

福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)
(2008/12)
大倉 崇裕

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ドラマ版『福家警部補の挨拶』を見終える。第一話から欠かすことなく鑑賞し続けていたのだが、はっきり言って、そんなに面白くはなかった。『刑事コロンボ』『古畑任三郎』を彷彿とさせる倒叙形式にはコーフンしたし、脇を固める稲垣吾郎・柄本時生も良い演技を見せていた。主人公の福家警部補を演じる檀れいには少し違和感を覚えたが(福家のキャラクターと檀れいのビジュアルに多少のズレが……)、否定するほどではなく、似合わない役を立派に演じきれていたと思う。

犯人の言い分を福家の一言でシャットアウトするエピソードの終わらせ方も、テレビドラマとは思えない鋭い切れ味を感じさせてくれた。特に、第2話『禁断の筋書』、第4話『月の雫』、第6話『愛情のシナリオ』の最後は、こちらの背筋がゾクゾクッとするくらいに素晴らしいエンディングだった。ストーリーがほぼ一つの個室だけで展開している第9話『或る夜の出来事』も、実験的で面白かったなあ。“シティボーイズ”きたろうと“やっぱり猫が好き”室井滋というキャスティングが、もうたまらなかったなあ。

それでも、最終的に「そんなに面白くなかった」と感じさせられてしまう理由は、このドラマがミステリー以外の部分を描こうとしたからだろう。もう少し直接的に表現すると、このドラマは福家警部補の過去を匂わせることで、物語に深みを加えようとしたのである。だが、先にも述べたように、『福家警部補の挨拶』は『刑事コロンボ』『古畑任三郎』の流れを汲んだ倒叙形式である。犯人の犯行を先に見せる倒叙形式において、メインとなるべきなのは、犯人であり、被害者であり、事件の背景だ。事実、コロンボや古畑について、一般的に知られていることといえば、その喋り方や真偽曖昧な家族構成に過ぎない。彼らがどのような事件に遭遇し、どうやって危機を乗り越えてきたのか、視聴者は画面に映し出されるドラマでしか知ることは出来ない。

なのに、『福家警部補の挨拶』は、最終回が近づくごとに福家の過去を強く匂わせるようになっていき、気が付けば、肝心の事件よりも福家の存在が肥大している事態に。そういう刑事ドラマを否定するつもりはないが、『福家警部補の挨拶』はそういう刑事ドラマじゃないだろ! で、それだけでもかなりガックシきているのに、最終回の展開が、まんま『踊る大捜査線』の青島と室井で、更に脱力。それまで寛容に受け入れてきた私も、思わず「このクソみたいなプロット書いたのは誰だあっ!!」と、海原雄山ばりに駆け込みたくなってしまった(何処にだよ)。

ところどころに作り手の気合いが感じられる作品だっただけに、良い意味での人間臭い部分を紋切型な刑事ドラマ展開で潰してしまっていたのは、本当に残念だった。原作のトリックを映像用に分かりやすく改変していたりして、けっこう頑張っているところは頑張っていたんだけれどなあ。残念だ、本当に残念だ。

余談。テレビドラマの影響を受けて、大倉崇裕による原作本を購読したのだが(文庫化されている『福家警部補の挨拶』『福家警部補の再訪』)、文章表現が実に端的で非常に読みやすく、面白かった。ドラマ版福家の様な熱っぽさはなく、むしろまったくの無感情で犯人に立ち向かう福家の姿は、清々しいほどに事務的だ。……これ、このままドラマ化した方が、もしかしたら……。個人的に気に入っているエピソードは、『最後の一冊(挨拶)』『マックス号事件(再訪)』『相棒(再訪)』。とりわけ『マックス号事件』は船上での殺人事件を福家が捜査するというドラマチックな設定で、非常に面白かった。これこそ映像化に向いているのではないかと思うのだが……予算の都合なのかなあ……。

『コナン・ドイルの事件簿』

コナン・ドイルの事件簿 DVD-BOX シャーロック・ホームズ誕生秘史コナン・ドイルの事件簿 DVD-BOX シャーロック・ホームズ誕生秘史
(2005/10/28)
イアン・リチャードソン、ロビン・レイン 他

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世界で最も有名な私立探偵“シャーロック・ホームズ”を世に送り出した作家アーサー・コナン・ドイルが、かつて学生だった頃に師事した医学教授・ベル博士とともに数々の難事件を解き明かすミステリードラマ。どちらも実在の人物だが、無論フィクションである。ストーリーは基本的にオリジナル。ホームズの事件そのものを原作とはしていない。とはいえ、ところどころにホームズを思わせる要素が盛り込まれていて、ミステリードラマであると同時に、ホームズが生まれるまでのストーリーとしても楽しむことが出来る。映像全体から漂う陰惨でどんよりとした空気も、ホームズの世界そのもの。その素晴らしい出来に、『シャーロック・ホームズの冒険』『名探偵ポワロ』『ミス・マープル』などの古典的ミステリードラマ好きな僕は、完全にのめりこんでしまった。ただ、少し残念なことに、最後はイマイチ消化しきれていない。そもそも、このドラマは「ドイルがホームズを殺した」時期から当時を回想する形式で始まっているのだが、最終話にその設定が全く反映されていないのである。おかげで、話自体は楽しめるのに、なんとなく釈然としない後味になっている。てっきり第1話の冒頭でドイルが「潮時だよ……」と語った理由が明かされると思ったのだが……なんとも惜しい。

患者の眼 コナン・ドイルの事件簿 (文春文庫)患者の眼 コナン・ドイルの事件簿 (文春文庫)
(2005/07/08)
デイヴィッド・ピリー、日暮 雅通 他

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こちらはドラマ原作本。あまり売れなかったようで、これ以後のシリーズは翻訳されていない。

『氷菓』

氷菓 限定版 第1巻 [DVD]氷菓 限定版 第1巻 [DVD]
(2012/06/29)
中村悠一、佐藤聡美 他

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米澤穂信原作の青春ミステリー小説をアニメ化した作品。神山高校古典部に所属する面々が、日常で起こった謎を推理で紐解いていく。ミステリー作品といえば、謎めいた殺人事件だとか、失われた重要書類を発見するだとか、謎の怪人と対峙するだとか、そういった違法的な出来事を解決するイメージしかなかったので、この作品の日常の中にふっと湧いた謎を解決するスタイルは非常に新鮮で面白かった(後で知ったことだが、このようなスタイルのミステリーは“日常の謎”というジャンルとして確立されているらしい)。事件の規模があくまでも日常から逸脱していないのに、物語としては非常に重厚で後味がほろ苦いのも魅力的だ。なんとなく手に取った私は、その世界観にすっかりのめりこんでしまって、一気に最後まで鑑賞してしまった。元来、ミステリー映画が好きな人間ではあったのだが、よもやここまでハマってしまうとは……。

物語は、古典部の文集“氷菓”に秘められた謎を追う【氷菓】編、文化祭に向けて2年F組が制作していた未完成のミステリー映画の結末を推理する【愚者のエンドロール】編、文化祭の最中に起きた連続盗難事件の犯人を追う【クドリャフカの順番】編という三つの長編と、いくつかの短編作によって構成されている。当然のことながら、長編作品はいずれもしっかりと面白いのだが、個人的にはむしろ、その日常性に特化している短編にこそ魅力を感じた。例えば、第6話『大罪を犯す』では、授業の進行状況を勘違いしていた数学教師が、どうしてそのような間違いを犯したのかを推理する。言葉にすると、本当にどうでもいいことのように思えるが、これがなかなかスリリングで面白いのだ。幾つかの数少ない素材から、おおよその答えへと辿り着く行程が非常に気持ちいい。スリリング性と素材の少なさでいえば、第19話『心あたりのある者は』が秀逸だ。生徒を呼び出す校内放送のちょっとした内容から、その意図を推理する。少ないきっかけでここまでしっかりと推理できるものなのか!と、凡人たる私はひたすら感動するばかりであった。

無論、アニメーション作品としても、よく出来ている。多感な古典部の面々は感情豊かに表情を変えていて、とても魅力的に見えるし、そんな彼らを包み込むリアルな背景も世界観をしっかりと構築している。目立たない程度に流れているBGMも効果的だ。盛り上がる場面ではしっかりと盛り上げてくれるし、不穏な場面ではじんわりと不安を煽り、不必要な時には流れない。わきまえている。演出面においては、初期の段階では少々やりすぎている感が否めないこともあったが(主に、古典部に謎を持ち込んでくるヒロイン・千反田えるが「私、気になります!」とお決まりの台詞を口にするシーン)、回を重ねるごとに落ち着いてきた。

とにかく面白かった。いい作品だった。いつか、また続編が作られると大変に嬉しい。

『つり球』

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(2012/11/21)
逢坂良太、入野自由 他

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江の島へと引っ越してきた男子高校生・真田ユキは、他人とコミュニケーションを取ることが苦手で、これまでに親しい友人を持ったことがなかった。ところが、同じ日に転校してきた自称・宇宙人のハルに強引に釣りをするように言われ、“釣り王子”という恥ずかしい異名を持つクラスメートの宇佐美夏樹からの指導を受けることに。当初は嫌がっていたユキだったが、少しずつ釣りに対して興味を抱くようになり、気が付けばどっぷりとハマってしまう。また、釣りを通じてハルや宇佐美と交流を深めていくうちに、三人の間に熱い友情のようなモノが芽生え始める。そんなある日、江の島に不思議な現象が巻き起こる。その原因は……?


“青春”と“SF”に“釣り”の要素を盛り込んだ作品である。一見すると上手く絡み合わない様にも見えるこれらの三要素が、不思議としっくり……どころか、反発し合うことなく一つの作品の中でしっかりと混ざり合わさっている。しかも、それらの要素は決しておつま程度の扱いではなく、完全なるド直球で取り入れられているから恐ろしい。主要人物たちは紆余曲折を経て着実に友情を深めていくし、宇宙からの生命体によって地球が侵略の危機に晒されるし、釣りのハウツーも手を抜くことなくきちんと描かれている。そんな緻密な台本の上で、個性豊かな登場人物たちが動き回るのだから、面白くならないわけがない。繊細で緊張すると般若の様な顔になってしまう主人公の真田ユキ、自称宇宙人で不可思議な言動ばかり取り続けるハル、母親を亡くして家族と少しギクシャクしている“釣り王子”の宇佐美夏樹、そんな三人のことを観察している謎の高校生(25歳)アキラ・アガルカール・山田。この、シリアスとコミカルのごった煮にしたような面々によって、話は更に面白味を増していく。何処に出しても恥ずかしくない傑作といえるだろう。

ただ、難点として、全体的に女性ウケを狙っている感が強く出過ぎている。主要人物たちはいずれも線が細く、いわゆる草食系男子の雰囲気が強い。彼らはいずれも不器用で、その思想の違いからぶつかり合うたび、過剰に距離を縮めている(肉体的な意味でも、精神的な意味でも)。女性たちは、そんな彼らと一線を引いていて、そこにはあくまでも男の世界が広がっている。……はっきり言ってしまうと、ボーイズラブ臭が強いのである。特にユキとハルの距離感は尋常じゃない。最終回間際の二人のやりとりは、まるですれ違いによって離れ離れになりかけた恋人たちの様だ!

その点さえ気にならなければ、一見の価値あり。

舞台版『芸人交換日記』

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(2011/11/16)
若林正恭、田中圭 他

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2011年8月に東京グローブ座で上演。原作は鈴木おさむの同名小説で、彼は本作の脚本・演出も担当している。“イエローハーツ”という架空の売れないお笑いコンビが、お互いのことをもっと知るためにに交換日記を始めるという設定の元、その日記に書かれている内容を中心に展開するストーリー。イエローハーツを演じているのは、田中圭と若林正恭(オードリー)。

若手芸人について詳しい鈴木が手掛けているだけあって、売れない芸人の卑屈さや芸の転換を迎えるきっかけなどはかなりリアルに描かれている。芸人としての立場をいいことに粗い生き方をする甲本、対して芸人としてマジメにネタを考えている田中の描写も現代的でいい。実在のお笑いコンビに関するエピソードを思わせる展開も幾つか見受けられた。……だからこそ、あまりにもチープな落としどころに不満が残る。ここまで、ここまで若手芸人の葛藤を描いておきながら、どうしてあんなにベタで退屈なオチに持って行ってしまったのか。「ベタだからこその重厚感があるんじゃないか!」と言いたいのかもしれないが、あれはいっそ陳腐である。細かいことを書いてしまうとネタバレになるので書かないが、あの終盤の展開を、俺は「フィクションに逃げた」と解釈する。甲本を○すことで、その陰鬱な状況に無理矢理終止符を打ったのだ。あーっ、しゃらくせえ。

あと、フジファブリックの『若者のすべて』で盛り上がるタイミング、あそこじゃないような……?

『世界鳥居紀(奇)行 IN サイパン』

世界鳥居紀(奇)行 IN サイパン [DVD]世界鳥居紀(奇)行 IN サイパン [DVD]
(2012/08/22)
鳥居みゆき

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鳥居みゆきの海外ロケーション企画DVD第二弾。前作ではエキゾチックなタイの魅力を全力でアピール(?)していた鳥居みゆきが、今回は自身初の写真集を撮影するためにサイパンへと飛ぶ。彼女を撮影するのは、これまで数百冊の写真集を世に送り出してきたというカメラマン・山岸伸。数多くの女性をカメラに収めてきた山岸氏の手にかかれば、流石の鳥居も大人しく……する訳もなく、最終的に写真集は出版されないことに。……本作は、その波乱に満ちた撮影風景の全てを収めたドキュメンタリーだ。

まさかまさかの第二弾である。あれほど面白くなかった前作でも、それなりに評判は良かったということなんだろうか。しかし、稀代の女性芸人・鳥居みゆきを題材に扱っているにも関わらず、十把一絡げの放送作家が雁首揃えて考えたような戯言を映像化したとしか思えない作品の評判が、果たして本当に良かったのか。甚だ疑問である。

と、いきなり前作のことをこき下ろしてみたが、本作はそれに比べて幾らかマシになっている。少なくとも、ホテルの部屋を勝手に改造したり、見知らぬ車に勝手に乗り込んだりするような、前作に見られたあからさまな演出は控えめだ。フェイクドキュメンタリー作品として、それなりに見られるものになっているといってもいいだろう。正直、鳥居のマネージャーが山岸に詰め寄られるシーンではけっこう笑わせてもらったし、海辺での撮影におけるアクシデントを受けて大混乱に陥る鳥居の姿などは、あまりテレビでは見られない質のリアクションだったのではないかと思う。それらに満足できなくても、今の鳥居が水着姿で驚天動地の顔芸を見せているという稀少性だけで、どうにか納得もできるだろう。エンドロールでは、ちゃんとしたグラビアとして撮影された写真も公開されているし。

ただ、終盤の展開だけは、どうも良くない。一応、本編のオチに関わることなので詳しくは書かないが、そのオチに至るまでの展開があまりにも急すぎるのである。オチそのものに関しては、そこまで問題は無い。ただ、あんなに強引な展開にしておいて、このオチにしてしまうのかという不満は残る。もとい、それまでに使える要素は幾つもあった筈なのに、どうしてそれらを使わなかったのかという疑問が残る。例えば、必要無さそうな物が詰め込まれている鳥居の旅行カバンとか、鳥居が宿泊しているホテルの部屋に置いてある自画撮り用ビデオカメラとか、先にも書いた山岸に詰め寄られる鳥居のマネージャーとか、オチに利用できる要素は幾つもあるのである。これらを利用せずに、どうしてもあのオチにしなくてはならなかった理由が存在するのか。どうも、よく分からない。

第三弾が出るのかどうか、現段階では分からない。出なくてもいいとは思うが、第一弾よりも着実に軌道修正されているので、もしかしたら次あたりで傑作が出来るのでは……という気持ちもある。不安そこそこ、期待そこそこ。出したければ出せばいいし、出したくなければ出さなくてもいい。そのくらいの感じで、待ってみてもいい気がしないでもない(キレが悪いね、どうも)。


■本編(74分)

小林賢太郎演劇作品『ロールシャッハ』

小林賢太郎演劇作品「ロールシャッハ」 [Blu-ray]小林賢太郎演劇作品「ロールシャッハ」 [Blu-ray]
(2013/05/15)
小林賢太郎、久ヶ沢徹 他

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その国は、国土を広げるために島から島へと開拓を続け、ついには「世界の果て」と言われる大きな壁にぶつかった。壁の向こうを目指すため、見た目も性格も全く異なる4人の男が招集される。訓練をかさねるうちに彼らは、この作戦に裏があることに気がつく…。上質な笑いと、劇場空間ならではのあっと驚く仕掛けが散りばめられた、エンターテインメント演劇作品です。


小林賢太郎が“正義”について描いた演劇作品。具体的な内容について書いてしまうとネタバレになってしまうので書けないが、簡単に説明すると「それ『ガンダム』で見たよ」なメッセージが込められている。良くも悪くもテンプレ的な正義論で、観ている側を「いや、まあ、確かに、そうなんだけど……」と何か釈然としない気持ちにさせる。また、このメッセージが終盤で唐突に存在感をアピールしてくるため、それまでのエンターテインメントな世界観に対してちょっとだけバランスが悪い。「ちょっとくらいならいいじゃない」と思われるかもしれないが、この「ちょっと」の影響で、メッセージのテンプレ感がより際立ってしまっているのだから始末が悪い。前作の『トライアンフ』よりは大きく改善されているとはいえ、小林にはまだまだ強いメッセージが込められた演劇をこなすのは厳しそうだ。

しかし、メッセージ部分を除けば、純粋にエンターテインメント演劇としてクオリティは高かった。キャラクターの個性はそれぞれ際立っていたし(久ヶ沢徹のおバカ筋肉キャラは相変わらず面白い!)、それぞれが抱えているコンプレックスもとてもリアリティがあって親近感が持てた。中でも、辻本耕志演じる串田が抱えていたコンプレックスなどは、ネット上で無責任な批評を重ねている人間であれば突き刺さるところがあったのではないだろうか……私には刺さってませんからね、ええ。演出も面白い。小林賢太郎演じる天森が愛して止まないアメコミ風の世界を舞台上で再現していたのには驚いたし、楽しかった。ある意味、この舞台の主役ともいえる、壁を突破するための大砲も、舞台の画を引き締める良い存在感を放っていた。……だからこそ、彼らが正義と対峙する場面は、もうちょっと丁寧に描いてほしかったんだよなあ。言葉の上ではとても慎重に表現していた様に思うけれど、もっと感覚的に、正義について考えさせられる流れが欲しかった。

ただ、そう思う一方で、小林はこれを意図的にやったのではないかという疑念も。というのも、本作はあまりにも全年齢層を意識していたからだ。シンプルなストーリー、個性豊かなキャラクター、遊び心に満ちた演出、ストレートなメッセージとの対峙、そして大盛り上がりのエンディング……。それはまさしく、子どもから老人まで楽しむことが出来るエンターテインメントショー。ただ、分かりやすくするためであったとしても、作品自体のクオリティを落とすのは宜しくない。だからこそ、更なる成長に期待したい。


■本編(123分)
■出演
久ヶ沢徹 竹井亮介 辻井耕志(フラミンゴ) 小林賢太郎
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

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https://twitter.com/Sugaya03

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