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発売情報 ~ワイセツなヒト~

快楽亭ブラック 猥褻犯 [DVD]快楽亭ブラック 猥褻犯 [DVD]
(2008/12/19)
快楽亭ブラック、

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快楽亭ブラックが、自身にとって五枚目のDVDが発売される。今年だけで、五枚。出しすぎだと思う。一月に『非国民』、二月に『破廉恥』、六月に『不敬罪』、九月に『大迷人』が発売されたが、この十二月に発売されるのは『猥褻犯』。明らかに、あの事件の人をモデルとしたジャケット写真なのが、なんともたまりませんな。

収録されている演目は、『山田洋次作 まむし』『人性劇場』『聖水番屋』の三演目。タブー無用のハチャメチャ落語、今年の最後にブラック師が見せるのは、一体どんな噺なんでしょうかネ。楽しみです。……というか、金が無いな(笑) どうすべか。
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十一月二十七日放送 感想文

マシンガンズ『漫才:ケータイ説明書・居酒屋』(509kb)
世間に対するグチを煮詰めた所謂ボヤキ漫才を発展させて、新しい“あるあるネタ”に昇華したという印象。ただボヤキを連発させるだけではなく、ところどころで休息の時間を置いているあたりも上手い。ちょっと良い風が吹いてきてるんじゃないかな、今。

井上マー『コント:アトラクションの添乗員』(497kb)
設定にはそれなりに従順なので、コントとしての完成度はそこそこ高いけれど、それを破壊するだけのボケがないので、面白味の点ではイマイチといった感じ。前に見せていた、小ネタばっかり積み重ねるようなネタよりは面白かったけれど、これはちょっと支持されすぎなんじゃないかしらん。

エレファントジョン『漫才:バイトの面接』(393kb)
息子の写真を持ち出してきたところに、アメデオ時代の末期を感じた。確か当時もこういう、トリッキーな漫才をやっていたはず。そっちで勝負しても意味無いのになあ。……ただ今回、森枝が実はパパであるということを押し出していたのは、なかなか悪くないのではないかと。独身の加藤とのギャップを取り入れたネタを作っていけば、支持率も上がるんじゃないか? それにしても、なんか凄いオチだったなあ。ああいうのを戦慄が走るというんだろうか。

どきどきキャンプ『コント:母との再会』(453kb)
なんというか、危なっかしいネタを持ってきたなあ……という印象。ヘタしたら観客、引いてたんじゃないかなあ。あの世界観に客を引きずり込むことが出来なかったら、確実にオフエアされてたよ。そこを、もう力ずくで引っ張っていた。……というか最近、ツッコミ役を入れ替えたのかな。いや、岸のツッコミは悪くないから良いんだけど。なんかこう、違和感が。

や団『コント:空気読めない講座』(377kb)
別にダメってわけじゃないんだけど、なんとなく『エンタの神様』でやってる姿が頭に浮かんだ。しかし、「空気読めない講座」なのに、それを進行している本間が空気を読めなさそうというのは、なんともアレだ。本間と伊藤は、立場を入れ替えたほうが良いんじゃないかと思うが……まあ、余計なお世話か。コント自体は悪くなかったけど、最後の花言葉だけは蛇足。

・オフエア組
スーパーマラドーナ(317kb)
ザ・ゴールデンゴールデン(301kb)
オジンオズボーン(273kb)
名刀長塚(257kb)
キンデルダイク(225kb)

今回の出場を持って、オジンオズボーンがオンエアバトルからの卒業をブログで表明。ますだおかだ・アメリカザリガニに続く松竹勢として2001年に初参戦し、若さ溢れる漫才を披露し続け、三度のチャンピオン大会に出場していた彼らも、遂に卒業と思うと、なにやら切ないものがある。そのオジンオズボーンの悲壮感漂う敗者コメントの後で、今回が初出場だったキンデルダイクが意欲的なコメントを残していて、なにやら切ない気持ちになった。

・オンバトヒーローズ:だいたひかる

・次回
アルコ&ピース、カオポイント、しんのすけとシャン、スマイル、ツィンテル(初)、なすなかにし、二レンジャー、ハマカーン、Bコース、ラブカップル

過去24回出場しているオジンオズボーンと同様、今期での卒業が確実視されている23回出場のハマカーン。今期はキロバトルが伸びていないので、ここで好結果を叩き出さなくてはならないが……どうなるか。あと、このところネタが荒れている感が否めないスマイルの動向が、気になるところ。

『アンジャッシュ児嶋一哉ソロコントライブ vol.1「タンピン」』

アンジャッシュ児嶋一哉 ソロコントライブVOL.1 「タンピン」 [DVD]アンジャッシュ児嶋一哉 ソロコントライブVOL.1 「タンピン」 [DVD]
(2008/11/26)
アンジャッシュ児嶋一哉

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アンジャッシュほど、芸人らしくない芸人はいない。見た目にインパクトは無いし、キャラクターも弱いし、声も特徴的じゃない。というか、あんまり声も出ていない。だから、バラエティ番組で他の雛壇芸人たちと共演しても、なんだか違和感がある。それは例えば、他の雛壇芸人たちが立ち上がっているときに、静かに座り込んでいたおぎやはぎの様な違和感ではない。妙な素人臭さが漂っている、とでも言うのだろうか。もしもコント師としての才能が開花していなければ、アンジャッシュは今の地位を勝ち取ることは出来なかっただろう。たぶん。

そのアンジャッシュの片割れ、児嶋一哉がソロライブを行った。コンビの片割れが一人で舞台に立つこと自体は、さほど珍しいことではない。過去にも、千原兄弟の千原ジュニアや、ラーメンズの小林賢太郎、はりけ~んずの前田登らがソロライブを行い、その様子がDVD化されている。ただ、それらの芸人たちは、いずれも自身の芸に独自の個性を見出している芸人たちばかりだ。だからピンになっても、それぞれの個性が濃密に噴出している。

しかし、アンジャッシュに関しては、そういった個性が見えてこない。そもそもアンジャッシュのコントは、三谷幸喜演劇に代表される“すれ違い”というオーソドックスな手法を用いたものが多く、それがアンジャッシュコントの持ち味とされているが、逆に言うと、手法以外の個性がそれほど露出されていないということでもある。アンジャッシュはコントクリエイターとしては確かに一流だが、一方で、そのクリエイティブな部分以外の弱さは否めなかった。そのため、このソロライブではどんなネタが披露されるのか、まったく予想が出来なかった。

結論から言うと、アンジャッシュ児嶋のソロライブ『タンピン』は、それほど児嶋自身の個性を主張するものではなかった。どちらかというと、アンジャッシュとしてのコント手法を、ピンでどれだけ表現できるのかということを思案した、そんなライブだった様に思う。ただ、だからといって、このソロライブは無意味なものだったのかというと、そんなことはなかった。二人が一人になっただけ、手法の濃度は格段に増しており、アンジャッシュのコントの更に深淵を見たかのような気持ちになるライブではあった。

特にその伏線の数に驚愕させられたコントがある。アンジャッシュの“すれ違い”の手法を応用したソロコント、『おぼえてない…』だ。その詳細を書くと、どうしてもネタバレになってしまうので書けないが、短い時間の中で、異常な数の小ネタ・トリックが詰め込まれているコントで、その完成度の高さ(バカさ)には、思わず目を見張った。「え!? そこが繋がるの!?」と、何度も声にした。しかも、それらの小ネタは、更に以後のコント・幕間映像にも繋がっていく。独立した点の集団は、一本一本が線となって繋がっていき、やがて『タンピン』というライブそのものの形を描き出すのだ。

先にも書いたように、アンジャッシュほど芸人らしくない芸人はいない。見た目にインパクトは無いし、キャラクターも弱いし、声も特徴的じゃない。おまけに、芸人としての個性も皆無に等しい。しかし、だからこそアンジャッシュのコントは、尋常じゃないほどに研磨され異常な輝きを放つ。個性の弱さを悩んでいる芸人たちの希望の星、アンジャッシュ。今回のライブは、その忘れかけていた異常な輝きを再認識させるものだった。やっぱりアンジャッシュは、凄い。


・本編(67分)
『楽屋』『オープニング』『待ち合わせ』『ブリッジ1』『おぼえてない…』『クラブで愚痴』『軍隊』『ブリッジ2』『教室にて』『ブリッジ3』『HOTEL』

・特典映像(6分)
『ドキュメント・オブ・タイタニック』

『バカリズムライブ 科学の進歩』

バカリズム ライブ 「科学の進歩」 [DVD]バカリズム ライブ 「科学の進歩」 [DVD]
(2008/11/26)
バカリズム

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「科学の進歩」は、バカリズムのオーソドックスな一人コントから始まる。舞台は現代。博士と助手がタイムマシンを完成させ、歓喜の声を上げている。早速、タイムマシンに乗り込む二人。マシンの中は乗り心地が良く、シートは革張りだ。二人はタイムマシンでジュラ紀に向かうが、マシンを何かにぶつけるわ、スピード違反で切符を切られるわで、もうウンザリ……。

ところどころで見られる、ちょっと捻くれた感じのボケは、確かにバカリズムのそれ。でも、これまでバカリズムが作ってきたコントに見られた発想の鋭さは、そこにはない。鋭利な笑いは丸くなると同時に、バカバカしい方向へと肥大を始め、シュールからシンプルなナンセンスへと変わっていった。これは退歩なのか、それとも進歩なのか。少なくとも以前より、その笑いに余裕が出てきたようだ。

例えば、『DFの高飛びFWの餌食』というタイトルのコントがある。大会一週間前の日、サッカー部の顧問が部員の一人を呼び出し、実は彼がサッカー部ではなく将棋部だということを告白する、というコントだ。「シュートを打つときに“王手!”と叫ぶ癖がある」など、シュールなボケが挟み込まれることもあるが、その「サッカー部部員が実は将棋部部員」シチュエーションの持つシンプルなナンセンスさが、シュールなボケをマイルドにしている。以前のバカリズムは、ボケのインパクトの方が勝っていた。

ただ一方で、悪代官と越後屋の定型句をこれでもかと掘り下げた『WARUYONO!』の様に、従来のバカリズムが持つシュールな言葉遊び全開のコントも披露されている。新しい笑いを見出しつつも、その鋭さを完全には捨てていない。その意味で、この公演は非常にバランスの取れた内容になっていたと言えるだろう。

個人的には『にゅーす』というコントが、妙に印象に残っている。バカリズム演じるニュースキャスター(ダボダボのスーツを着て、鼻の下にチョビ髭をくっつけている)が、子どもっぽい語り口でニュースを伝えていく……という内容のコントだ。ニュースキャスターを子どもにしただけのシンプルな置き換えコントなのだが、バカリズムの子ども演技が妙にリアルなためか、それとも“ニュースキャスターを子どもにする”というシチュエーションに風刺の様なものを感じたからなのか、笑える・笑えないを超越した緊張感を覚えてしまった。

過去にソフト化された公演(「宇宙時代 特大号」「生命の神秘」)と比べて、その完成度が格段に上がっていたように思う、この「科学の進歩」。それなのに、バカリズムの笑いにはまだまだ伸びしろがあるように感じられるのが、恐ろしい。感じるだけなので、ひょっとしたらこれが限界なのかもしれないけど。

ちなみに、オープニングテーマ「科学の進歩のテーマ」とエンディングテーマ「どき2がつづくなら」は、バカリズムライブでお馴染みのオクムラアイコ作曲によるもの(ちなみに、作詞はバカリズム)。前作同様に良い仕事をしている。いつか、まとめてCD化されれば良いのに。


・本編(70分)
『プロローグ「科学の進歩」』『オープニングテーマ』『DFの高飛びFWの餌食』『総合医者』『あの坂をのぼれば』『贈るほどでもない言葉』『俺とお前とブラットピット』『WARUYONO!』『にゅーす』『誰がために』『エンディングテーマ』

・特典映像(18分)
『科学ポエム』

長井秀和の破壊

爆笑オンエアバトル 長井秀和 [DVD]爆笑オンエアバトル 長井秀和 [DVD]
(2004/06/16)
長井秀和

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長井秀和が離婚した。正味の話、それほど驚くべき話ではない。海外で美人局にあったり、日本のモデルと不倫騒動を起こしたり、そのまま海外に留学しちゃったりと、色々な問題を起こしていた彼が、そもそも今まで離婚していなかったことがおかしいのである。ただ、それらの事件が無かったとしても僕は、長井が離婚したということを意外には感じなかっただろう。長井秀和は、そういう芸人だ。

思うに、長井秀和という芸人は世間から、ちょっと甘く評価されすぎているのではないか。確かに、かつてお笑いブームの中心的存在だったバラエティ番組「エンタの神様」にて、彼が披露していた漫談ネタの多くは、芸能人に対する甘っちょろい毒舌を主としたものだったから。

そもそも、長井秀和は漫談師ではなかった。かつての長井は、パントマイムを地盤としたスタイルのネタを披露していた。当時のネタは、『爆笑オンエアバトル 長井秀和』に収録されており、現在も視聴可能だ。ネタのタイトルは、「同じ動きで違うこと」。パントマイムを取り入れたショートコントで、かなり独自性の強いネタだ。

しかし、このスタイルではウケないと考えたのか、長井は2001年に現在の漫談スタイルでオンエアバトルに挑戦し、まさかのトップ合格を果たすことになる。以後、このスタイルでの挑戦は続く。当初は敗退することも多かったが、2002年半ばからキロバトルが安定するようになる。僕が長井のことを知ったのは丁度、この頃のことだった。あまり感情を出さない表情で、淡々と客の笑いを獲得する彼の芸風に、妙な衝撃を覚えた記憶がある。

その後、キロバトルはだんだんと向上し、2004年3月に行われた同番組のチャンピオン大会にも進出。そのセミファイナル戦で、当時の番組史上最高記録を打ち出した。大阪の予選にも関わらず、さらりと大阪の人々をイジったネタで爆笑をかっさらった結果だった。確か、この頃既に長井は「エンタの神様」に出演していた……と思う。ちょっと記憶が曖昧だけど。

長井秀和のネタは、基本的に誰かしらかを対象とした妄想・空想で構築されている。それが事実かどうかは分からないが、とにかく長井のイメージだけで語られる。結果的にそれは<毒舌>と称されるようになり、「エンタの神様」で“クールな毒舌スナイパー”というキャッチフレーズをつけられることになるのだが。例えば以下のネタは、毒気をそれほど発していないが、なかなかに面白い。

「明石家さんま師匠が地べたに引っくり返って、身体をわなわなわなわなと小刻みに震わせているのは、別に笑い転げているわけじゃないんだ! さんま師匠は人より喋り動くから、熱効率が著しく高く上がってしまう。蓄熱・耐熱した臨界点ギリギリの固体を、アースに浸すことによって熱を地面に逃がしているんだ。「ハッハッハッハッハッハ」というような声が聞こえてきたら、それはもう前兆だ! 危ない! 危険信号だ! ショートしちゃう! さんまさんが死んじゃう! 地べたにそっくり返って、熱を逃がして! ……生きるか死ぬかギリギリのところでお笑いをやってるんです!」


ただ、長井のネタが物事の本質をズバッと切り捨ててしまっていることも、少なくない。特に後年は、それを意識してネタを作っていた感がある。「旧正月には流石にピッキング強盗も減るんだ」「もう、モンゴル相撲で良いんじゃないか?」「黒柳徹子の相槌はゲストの話す量を上回っている」など、今見ても、その鋭さが衰えていないネタも少なくない。この尋常じゃないほどの鋭さこそ、僕が長井の離婚を意外に感じない原因だ。

そして気付いたのだが、今、彼と同じようなスタイルの芸風を開拓し、テレビ番組への露出が増え始めている芸人がいる。元猿岩石、有吉弘行だ。有吉が芸能人に勝手なあだ名をつけるスタイルは、長井秀和のネタをシンプル化したものと言えなくもないのではないだろうか。世間では有吉のあだ名芸について、様々な分析を施している人たちがいるが、僕はこの長井本流説を推したい。まあ、推したからなんだって話だけど。

最後に、NHK総合で放送されるってことが分かっていたのにも関わらず、長井がオンエアバトルで披露していた、とんでもないネタを紹介して、このコラムを終わることにする。確か当時、このネタはカットされずに放送されていたと思うのだが……よく放送したなあ、これ。かなり早めの時事ネタだし、コマーシャルネタだし。

「「私は踊る!」「私は配る」って、あと一人「私は取り立てる!」ってヤツがいたのに、カットしやがったんだ!」

幻聴?

ザッピングしてると「知識人ガンバレー!」という声援が聞こえた。

『うなぎのダンス』(いしいしんじ)

うなぎのダンス (河出文庫 い 20-1)うなぎのダンス (河出文庫 い 20-1)
(2008/10/03)
いしい しんじ

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いしいしんじという人の本は、なんだか不思議だ。彼の作品はどれも、なんともいえない優しさに包まれているのに、その優しさの中から、目を逸らしてしまいたくなるほどの狂気が滲み出てくる。優しさと狂気。この二つは、相反するようで非常に近い。例えば、宗教に没する人たちの多くは、他人に対する優しさを持っていながら、時に狂気的行為に殉ずることがある。そういうものだ。

そんないしいしんじの対談本は、やはりなんともいえない優しさと狂気に満ちていた。全体を通して見れば、それは単なる雑談にしか過ぎないのに、そのやりとりの一つ一つに目を向けると、じんわりと狂気が見えてくる。ただ、それはいしい氏に理由があるというよりも、対談相手に理由があるように思う。いしい氏は彼らの発言を全て受け入れるだけで、それはいわば鏡の如く、対談相手の存在を倍増させているわけだから。

中でも狂気的だったのが、在日韓国人で芥川賞作家の柳美里との対談だ。「自称ロリコン」「私文書偽造の告発」「妹は部屋で焚き火をしていた」「財布を落としたと偽って見知らぬ人に千五百円頂く」等々、とてもマトモとは思えない言動を繰り出す柳と、それらの言動を全て受け入れてしまういしい氏の、ツッコミの無い狂気の応酬。なんともいえない味わいである。

一方で、ただ単純に正気とは思えない対談も幾つか。例えば、この対談集でいしい氏は故・勝新太郎と対談を果たしている。当時、既にカツシンは亡くなっているので、対談は全て妄想として展開する。また、いしい氏は本書で印刷機と対談する。もちろん、印刷機が喋るわけがない。いしい氏が、印刷機から漏れる機械音を勝手に分析して、無意味に対談を展開しているのである。これを狂気と呼ばずして、何を狂気と言おうか。

そんな本書のシメに書かれている「文庫のためのあとがき」は、いしい氏が親不知を抜いた直後であったために、やたらとマ行とラ行とファ行の多いものになっている。……狂気というか、ただ単に捻くれているだけなんじゃないか、という気がしてきた。うーん。ふぃっふぁいふぁ、ほうふぁんへひょふらふぇれ。

余談。個人的に傑作だと思っている短編集『白の鳥と黒の鳥』が文庫化された模様。じんわりとしたブラックさがたまらなく面白いので、気が向いたら読んでみて、なんて言ってみたり。ぐっつぐつ。

『U-1グランプリ CASE02【厨房】』

U-1グランプリ CASE02『厨房』U-1グランプリ CASE02『厨房』
(2008/11/19)
マギー長谷川朝晴

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ワンシチュエーションコントって、良いよね。いや、笑いの好みは人それぞれだとは思うけどさ。でも、やっぱりワンシチュエーションコントって、ステキだと思う。だって、ワンシチュエーションコントの多くは、その限られた空間の中で、毎回違った展開を作り出そうという、作り手の覇気が感じられるから。海外ドラマの『フルハウス』もそうだったし、三谷幸喜の『HR』も、バナナマンとおぎやはぎの『epoch TV square』もそうだった。でも、このU-1グランプリには、そういった覇気を感じなかった。

U-1グランプリは、元ジョビジョバのリーダーで現在は役者・脚本家として活動しているマギーと、『THE 3名様』『33分探偵』の監督・脚本を担っている福田雄一による、コントユニットだ。毎回、ひとつの限定されたシチュエーションを舞台に、様々なコントを創作しているユニットで、評判もなかなかに良いらしい。

このユニットがやっていることは、いわゆるワンシチュエーションコントのそれと同様だ。ただ、テレビで定期的に放送されているワンシチュエーションコントとは違い、彼らのコントは舞台でのみ披露されている。その違いが、上記に書いた覇気の有無に関係しているのではないか、と思う。限界が見えない中盛そばを作り続けるのと、作る量が決められているわんこそばを作るのとではどちらが楽か……って、この例えが正しいのかどうかは分からないけれど。また、彼らの場合、テレビなどでの経験がモノを言っているのか、ワンシチュエーションでありながらも、かなり様々な展開のコントを作り出せるのだから、たまらない。一口にわんこそばとは言え、その味は時に辛く、時に甘く、時に酸っぱく、バリエーション豊かなわけである。この自由さな空間の楽しさたるや!

……しかし、今回の『CASE02【厨房】』は、やや面白味に欠けた公演だったように思う。なんというか、『CASE01【取調室】』に比べて、妙にまとまっているのだ。その当時の反省を踏まえ、色々と改良を重ねた結果なのだろうが、それで遊びの部分が失われてしまった感がある。だから、前作よりも今作を評価する人も、きっといるだろう。

もちろん、面白くないわけではないのだ。某テーマパーク内レストランでのドタバタを描いた『ミッキー』とか、某有名美食家がはしゃぎまくる『ユウザン』とか、某有名刑事コンビを意識した刑事が殺人事件を捜査する『厨房殺人事件』とか。かなり面白いコントもあった。役者陣も、それぞれ良い仕事をしていたし(特に小松和重はガンバりすぎ)。……というか、パロディ多いな今回。

あ、そうそう。あと今回も副音声で、舞台裏のことが幾つか語られているんだけれど、ちょっとマギーが偉そうというか、ジョビジョバ時代のことを語りすぎというか、練習中のマギーは厳しかったという話は聞きたくないというか……本編をイマイチに感じたこともあってか、副音声で妙にイライラしてしまった。これは、ヌルい人生を愛して止まない自分に問題がある気も、しないでもない。


・出演
マギー、長谷川朝晴、原史奈、小松和重、上地春奈(キャラメルクラッチ)、春海四方、福田雄一

・本編(100分)
『ルール』『opening』『OBASUNの雰囲気』『ミッキー』『Shall we クッキング~それでもボクはやってない』『ユウザン』『humming』『ショートコント“厨房”』『最後のスプーン』『シェフになった猫』『新妻フミとダンディ長谷川の『お料理バンババン!』』『厨房殺人事件』『もったいないおばけ』『料理長! ~feat momoya』『キッチンミュージカル』『ending』

・特典
マギー・福田雄一・長谷川朝晴による副音声

2008年12月の購入予定

03笑魂『バナナチェリー』(ロッチ)
03笑魂『怒』(マシンガンズ)
03笑魂『とんだりはねたり ダブルダッチ ~漫才したりコントしたりラジバンダリ~』(ダブルダッチ)
03笑魂『ばか処』(禅)
03笑魂『ナイツのヤホーで調べました』
03『bananaman live 疾風の乱痴気』
10『単独ライブ 岐阜浪漫』(流れ星)
10『サンドウィッチマンライブ2008 新宿与太郎行進曲』
17『弩スピードワゴン Vol.3』
21『ゲームセンターCX DVD-BOX5』
24『単独ライブ 「帯に短しタスキに飛石」』(飛石連休)
24『単独ライブ 「Soul Mate」』(三拍子)
24『単独ライブ 「ギガンティック」』(さくらんぼブービー)
24『ぼれろ初単独ライブ』
24『髭男爵 単独舞踏会「ボンジュール ~お姉さんのロンドン留学の話がなくなってもいいのかい!?~」』
24『単独ライブ「小島よしおのカチョマンテ」』
24『ますだおかだ寄席~15周年記念単独ライブ~』
26『ライブミランカ ウッチャンナンチャントークライブ2007~立ち話』
26『江頭2:50のピーピーピーするぞ!2 逆修正バージョン~ノークレーム・ノーリターン~』


12月。それは、ボーナスとお年玉に対する期待で、人々の心が膨らむ季節。だからって、これはちょっと出しすぎではあるまいか。いや、というか、出しすぎだよなあ。こんなに出されちゃ、フトコロがまったく追いつく気がしない。

まず凄いのが、月初めの笑魂シリーズ。最初は三本ずつ発売されていたのに、今年に入ってから五本ずつ発売するという過密スケジュールっぷり。メンバーもまた、『爆笑レッドカーペット』で注目されている若手ばかりで、なかなかに魅力的。魅力的が故に、スルーできない、させてくれない。同じ日にバナナマンの単独ライブも出るし。

その翌週には、今年のM-1グランプリで有力候補とされている流れ星と、昨年のM-1グランプリを波乱に満ちた結果に誘ったサンドウィッチマン、それぞれの単独ライブDVDが発売。これもやはり、外せない。

更にクリスマスの季節に入ると、飛石連休・三拍子・髭男爵・さくらんぼブービー・小島よしお・ぼれろといったサンミュージックの若手芸人勢による単独ライブが一気に発売。なんとなく、当たり外れが大きそうなメンバーですが、それ故に、思わぬ破壊力に期待してしまいます。

そして、ますだおかだの15周年記念単独ライブに、ウッチャンナンチャンのトークライブに、江頭2:50のインターネット番組……ああ、死ぬ。なんていうか、もう死ぬ。皆さん、お笑いブームの波に飲まれて、菅家は死んでいったとお伝えください。誰に。

お笑いバカには波乱の一年、この年末が最も波乱であります。この波を乗り切れば2009年だ! 宵越しの銭は持たねぇ! ただ、ただ突き進むのみよぉ!(自己破産寸前プレイ)

ズツーが痛い

頭が痛い。あー、頭が痛い。どういう理由か分からないが、どうも仕事が終わった時分から、頭痛が止まらない。鈍器で殴られているような痛みではなく、寺の鐘の中に入って、ぐわんぐわんと外から鳴らされているような痛みが止まらない。二日酔いって、こういう感じだよな。確か。

ひょっとしたら、パソコンのやりすぎなのかもしれない。このところ、仕事から帰ってきたら、すぐにパソコンの電源を入れるような日常を過ごしているので、電波やらなんやらにやられて、頭痛が起きているのかもしれない。テレビもつけっぱなしだし。見たい番組が無くても、DVDとか再生してるし。ちなみに今、ネプチューンの『おひつじ座の巻』を見ながらキーボードを叩いています。懲りないネ。

テレビといえば、この数日は地味に気になる番組が放送されていた様に思います。『新人演芸大賞』とか、『やりすぎコージー』の元相方特集とか、『トップランナー』の西原理恵子とか、『笑っていいとも!』の安住アナ出演とか。どれもこれも、しっかりチェック! ……しましたが、ブログの単独記事にするほどの衝撃を受けることもなく。頭痛のせいか、感性も鈍っています。それとも、年のせい? 生活のせい? 全部ひっくるめて、自分のせいか。無残やな。

あー、いましろたかし読みてえなあ。文庫版の『傑作短編集』と『釣れんボーイ』は持ってるけど、それじゃ足りやしねえ。あの、ドラマ性が微塵も無い、単なるダメな感じの日常だけが過ぎていく感じが、今欲しいなあ。ぷっぷっぴー。ぷっぷっぴーだ、コン畜生。

あー、頭痛えなあ……。

エレキコミック第16回発表会『Garlic』

エレキコミック第16回発表会『Garlic』エレキコミック第16回発表会『Garlic』
(2008/11/19)
エレキコミック

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去年のエレキコミックは、とにかく凄かった。公演のタイトル通り、彼ら自身がコントと真摯に向き合っていることがひっしと伝わってきた『エレキコミック第14回発表会「This is コント」』も、サブカルチャー感を滲み出しつつも一般ウケするバカバカしさに満ち溢れていた『エレキコミック第15回発表会「Bette XX」』も、笑いのクオリティに長けた、素晴らしいライブだった。

……だからなのだろうか。無意識のうちに比較してしまっているからなのかもしれないが、今年の六月に行われたという『エレキコミック第16回発表会「Garlic」』は、なんとも物足りないライブに仕上がっていた。いや、物足りないというよりも、らしくないというべきか。

エレキコミックコントの魅力は、そのウェットさを感じさせない、尋常じゃないほどのドライっぷりにあった。やついがどんなにブラックなボケを吐き出そうと、今立がどんなに冷たいツッコミを投げ出しても、まったく揺るぐことのないコント観。それこそ、エレキコミックが若手だった頃から守り続けてきた、一つの鉄則だった。

しかし今回、エレキコミックはその鉄則を崩した。今回のライブでやついが演じているキャラクターは、なんともいえない悲哀を帯びていることが多かったのである。例えば、オープニングコント『誕生日パーティー』では、誕生日の当日に友達が誰も来てくれない孤独な青年を演じていたし、『small man』では、自身の人間の小ささを棚に上げ続ける男を演じていた(ちょっと東京03と被ってた気がする)。『都会の女』では、都会に染まってイイ女ぶっているブサイクな女を演じていた。それらコントから滲み出る、なんともいえない悲哀。ライブでお馴染みの『やっつんだっつん』ですら、妙な悲哀を匂わせていた(違いモノも臭わせていたが)。

そういえば以前、エレキコミックの二人が「シティボーイズに憧れていた」とコメントしている記事を見かけたことがあった。シティボーイズのコントから滲み出ているペーソス感を、エレキコミックも目指し始めたということなのかもしれない(実際問題、コント師としての腕は決して落ちていなかったわけだし)。まだまだだけど、その心意気や良し!(エラソー)


・本編(約70分)
『誕生日パーティー』『オープニング』『やっつん探偵事務所』『A・DA・CHI』『陸上部』『small man』『コール&…』『都会の女』『やっつんだっつん』『エンディング』

・特典映像(約11分)
『エロ川淳二~真夜中にドアを叩く女』
『サウナ』

『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』

映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!
(2007/11/23)
矢島晶子.ならはしみき.藤原啓治.こおろぎさとみ

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思えば、ムトウユージによる映画『クレヨンしんちゃん』シリーズは、その全てが『クレヨンしんちゃん』という作品に対する既成概念を、根底から破壊するものだった。第一作目である『3分ポッキリ大進撃』は、これまでの映画作品の多くで取り上げられてきたテーマである野原一家の絆を疑った作品だったし、第二作目である『踊れ!アミーゴ!』は、既存のキャラクターたちをグロテスクな怪物にしてしまうことで、観客たちの恐怖心を煽った作品となった。果たして、第三作目となる今作は、初めてムトウ氏が映画『クレヨンしんちゃん』に真摯に向き合った作品だったと言えるだろう。

序盤はそれほど、悪くはなかった。いわゆる映画『クレヨンしんちゃん』が過去に見せてきたような、テンプレート的に分かりやすい正義と悪の戦い。正義の側の名前が“UNTI(ウンツィ)”という、悪ふざけのようなネーミングセンスも面白くて笑えたし、一方の悪の側である“ひなげし歌劇団”は完全に宝○歌劇団のパロディで、これまた下らなくて笑えた。水島努監督時代のギャグセンスを感じさせつつも、独特の雰囲気を出すことには成功していたのではないかと、この時点では思っていた。

ただ、中盤からの展開がいただけない。それまでのカオスでハイテンションな勢いを完全に投げ捨て、強引かつ過剰に家族愛を持ち上げ、如何にも泣けるストーリーに仕立て上げようとする流れは、どう考えても無理が過ぎるというもの。過去二作品に対する不評へのアンチテーゼなのかもしれないが、あそこまでバカバカしい作品として昇華していたものを、急に家族愛へと押し流そうとする展開は、あまりにも観客を無視しすぎているのではないだろうか。また、バカバカしさ溢れるサブキャラクターを務めていた“UNTI”も“ひなげし歌劇団”も、それほど掘り下げられることなく、最終的に丸投げされてしまったのには、些か呆れるものがあった。

僕が年を取ってしまったからなのかもしれないが、ここ数年に作られた、日本のアニメーション映画は、どうも作品として脆弱になりすぎているように思うことが多い。いや、アニメに限らず、あらゆる創作物が脆弱になってきている。ああ、日本のクリエイターたちは、一体何をやっとるのか……と、無駄に日本の将来を憂いだところで、この感想文を終えることにする。憂いでる暇があるなら、お前が作れよって話だが。

まったくの余談になるが、ムトウ監督は例えば水島監督が手がけた『栄光の焼肉ロード』の様な、八割以上がギャグのみで構成されているような作品を作れば、もっと良い評価を得ることが出来たのではないかと思う。少なくとも、今作におけるギャグパートは、なかなかセンスの良いものだったから。下ネタが多かったけど。またいつか、ほとぼりが冷めた頃に、ちゃんとリベンジしてもらいたいな。

『百式2008』(2丁拳銃)

百式 2008 [DVD]百式 2008
(2008/11/19)
2丁拳銃

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お笑いの世界には、これが正解というものがない。老若男女に受け入れられるような笑いもあれば、マニアックな層にだけウケる笑いだってある。どちらが正解ということはない。ネタを見せる芸人がいて、それを望む観客がいれば、それでもはや正解なのである。

とはいえ、以前にマニアックな笑いを生み続けていた芸人が、急に大衆向けの笑いを作り出したりすると、やはり観客は追いつかない。対応しきれない。だから、その芸人の腕が落ちたのかと勘違いしてしまう。最近、アイツの腕は落ちちまったなあ……と、間違った認識を持ってしまう。どれだけ、その状態を客観視できるかどうかで、その認識は大きく変わってくる。

ここ数年、僕は2丁拳銃の『百式』に対して、「マンネリ化している」という認識を持っていた。以前に比べて、ネタの個性は控えめになっているし、印象に残るネタの多くは過去のライブで使い回してきた定番ギャグばかり。正直、2丁拳銃は漫才師とて、長い停滞期に突入してしまったとさえ思っていた。

しかし今回、その認識を改めることにした。このところの2丁拳銃が『百式』で試みているのは、ひとつひとつのネタの個性を突出させることではなく、むしろ、その個性を控えめにすることで、『百式』全体の空気をなだらかなものにしようとしているのはないか、と考えたわけである。それなら、2005年以後の『百式』における、緩やかな笑いへのシフトチェンジにも納得が行く。『百式』は個性的な漫才の集合体ではなく、『百式』という一つの完成体なのだ。

その完成体の中で披露されている漫才は、もはや漫才としての形体を残していない。本来ならば崩されるべきではないボケ役・ツッコミ役の立場は縦横無尽に入れ替わり、川谷は時に暴言を吐き、小堀はそれに戸惑いを隠せない。以前の様なスピード感は無いが、緩やかに、とても緩やかに、漫才の世界は狂い始める。

今年、オリエンタルラジオは『才』で約八十分間の疾走を世間に提示した。一方の2丁拳銃は、この『百式2008』で約百分間、決して急がず、決して焦らず、自らのテンポで漫才を披露している。コンビ結成十五周年の今年、彼らは早くもベテランの域を目指し、その歩みを進めている。


・本編(102分)
「オープニング漫才」「オリンピック漫才」「絵描きうた漫才」「昔話漫才」「健康漫才」「妖怪漫才」「ゾンビくん漫才」「怪獣コホラ漫才」「趣味漫才」「寿司屋漫才」「海賊漫才」「フンコロガシ漫才」

・特典映像(18分)
「今までの百式」(15分間で百式を振り返る)

『シモキタ・コメディ・ナイト・クラブ』(吹越満)

シモキタ・コメディ・ナイト・クラブ 今夜の出演:吹越満シモキタ・コメディ・ナイト・クラブ 今夜の出演:吹越満
(2008/11/19)
吹越満

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ニコニコ動画というサイトがありまして、僕はそこを頻繁に利用しているんですが。先日、ちょっとした思い付きで、「吹越満」というキーワードをそこの動画検索にかけてみたんですね。そしたら、過去に吹越氏がテレビで披露したネタの動画が二本ほど見つかりまして。早速、観てみたわけです。

そこで披露されていたネタというのが、これまた凄いネタで。一本が『ロボコップ演芸』で、もう一本が『日本一のせんずり男』というネタ。名前だけを見ると、もう後者の方が危なっかしく感じられるわけですが、実際問題、前者も後者もヤバい内容なんですね。今のテレビでは絶対に流せないくらい、過激な下ネタが披露されているので。

どういうネタなのかと言いますと。まず『ロボコップ演芸』ですが、これは文字通り吹越氏がロボコップに扮装して、ロボ的な動きと効果音で様々な行動を起こすというものなんですね。で、これの一発目に披露されているのが、<ロボコップAV男優>という、ちょっとコメントに困る内容のもので。簡単に説明すると、前戯から後始末までの流れをロボコップで演じるという……うーん。一方の『日本一のせんずり男』というのは、もうそのまんまで、毎日がつまらないと感じている中年男が、思いつきでオナニーしながら一日を過ごしてみることを決意するという……もう、モロな内容なんですね。でもまあ、そのネタ自体はまったく意外ではなかったんですけど。最近のライブでも、似たようなことはやっていますし。

ただ、やっぱり「こういう人だったのか!」という感じのリアクションがあるわけですよ、動画に対するコメントの中には。今の吹越氏って、芸人さんというよりは、俳優さんのイメージが強いですからね。小柳トムとか、竹中直人とか、松尾貴史みたいな感じですか。特に吹越氏は下ネタ度が高いネタが少なくないので、リアクションも過剰です。「下品」とか、「低レベル」とか、「これはひどい」とか。中には、吹越氏がワハハ本舗出身だからって、大きな字幕で「創○芸人氏ね」とか書いてあったり。もはや芸とは関係ない、単なる中傷コメントです。自重してもらいたいですね。

でも、それよりも気になったのは、この動画に対して「黒歴史」とコメントしている人がいた、ということなんですね。いやいや、確かに今の吹越氏は、ちょっと良い味を出している俳優のイメージが強いですけど、別にこの頃のことを隠したいとは思っていないでしょう。第一、定期的にライブだってやってるわけですから。それを無視して、なんか世間のイメージとは違うことを過去にやっていたからって理由で、短絡的に「黒歴史」と決め付けるのは、どうなんでしょうかね。

……で、今作。今回、吹越氏がリリースした新作DVDは、この当時のネタばかりを披露している、いわば傑作選的な内容になっています。上で名前を出した『ロボコップ演芸』も『日本一のせんずり男』は勿論のこと(黒歴史どころか、今もやってる!)、服だけじゃなく皮膚や内臓まで脱ぎ出しちゃう『超脱衣』や、左手が自我を持って行動する『おててちゃん』の様なネタを多数収録。これを観れば、もうハッキリと分かります。「ああ、吹越は昔も今も、バカなんだなあ」ということが。

ちなみに。今作には特典映像として、今回の公演で披露されたネタの、初演時の映像がコメンタリーとともに収録されているんですが、そこで吹越氏が上記の『日本一のせんずり男』をテレビで披露したという話を、ちょっとだけしているんです。なんたる偶然! なんでも当時、吹越氏も『日本一のせんずり男』をテレビで披露することを躊躇していたらしいのですが、スタッフの一人がどうしてもということで披露したのだそうです。なお、そのスタッフは後で、プロデューサーにこってり説教されたとか。

テレビ出演を夢見るポップスな芸人が増えている今の時代に、かつてナンセンスかつダウナーな笑いがあったことを伝えている今作。今のテレビに過激さが足りないと思う人・テレビに飽きてきている人に、是非お薦めしたい。これを観て、感じてもらいたいですね。「ああ、テレビで我慢しておけば良かった」と。……あ、冗談ですからね。


・本編(約76分)
『プロローグ』『白から始まる作品』『イントロダクション』『超脱衣』『超SEX』『白から始まる作品 2』『おててちゃん』『忘れられていたネタコーナー』『ロボコップ演芸』『現代音楽をあなたに 2』『日本一のせんずり男』『声色家族』『白から始まる作品 3』『エピローグ』

・特典映像(約38分)
「今回収録作品の初演時の蔵出し映像」※本人コメンタリー付

『テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい』(松田健次)

テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい 笑TV爆笑シーン採録2006~2008テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい 笑TV爆笑シーン採録2006~2008
(2008/09/13)
松田 健次

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皆さん、テレビは好きですか? 僕は、まあ好きといえば好き……ですけど、あんまり必死になって見るものではないかと思います。まあ、このブログでやっていることを見ていただければ御理解いただけると思いますが、僕は芸人さんたちがテレビバラエティでドタバタやっている様子を楽しむより、舞台でネタを演っているのを観るのが好きな性分なので。

そんな僕でも、たまにテレビバラエティの力に驚かされることがあるんです。芸人さんたちが披露している、計算されたネタで起こる笑いの、その何倍も爆発力を秘めている“奇跡”の様な笑いが、テレビの中では起こりうる。ただ、そういう奇跡には、そう簡単には巡り合うことが出来ない。その奇跡を目当てに、何時間も費やすほど、僕たちは退屈ではないし。とはいえ、それを見逃してしまうと、なんだか勿体無い気持ちになるし。なかなか難しいモンです。

この本には、そういった奇跡が文章として大量に保存されています。タイトルも素晴らしいですね。『テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい』。一見すると貪欲に感じられますが、一方で、テレビの笑いを心の底から信じようという覚悟も感じさせられます。

テレビバラエティというジャンルは、往々にして放送される瞬間だけで勝負しています。後にその放送内容がDVD化されることもありますが、それもやはり放送された当時にリアルタイムで評価されていないと、成り立ちません。それらで見せられた奇跡をすべて、記憶にとどめたい。とても僕にはできない(by衛藤ヒロユキ)

その情報量も圧巻ですが、そこで起こった奇跡の笑いについての解説も、これまた素晴らしい。特に「M-1グランプリ2007」でサンドウィッチマンが優勝したことに対してのコメントは、その是非はともかくとして、非常に良い文章だった。なんという仕事人!

なんでも著者の松田健次氏というのは、日刊スポーツに記事を掲載しているライターさんで、関東のお笑いを牛耳る演芸誌『笑芸人』の編集人としても活躍している人なのだそうです。つまり、高田文夫門下の方なんですね。先日、このブログでも紹介した浜美雪女史もそうですが、高田サンのお弟子さんは良い仕事をする方が多いようです。しっかり育成してるなあ。

『爆笑オンエアバトル』『エンタの神様』『ゴッドタン』『やりすぎコージー』『きらきらアフロ』『くりぃむナントカ』『アメトーーク』『あらびき団』『爆笑レッドカーペット』等々……様々なテレビの奇跡を詰め込んだ本書は、テレビ好きならチェックすべき一冊です。

それにしても、今年の白夜書房は良い仕事をしてはりますねえ。『笑いの女神たち コメディエンヌXファイル』(浜美雪)とか、『後藤ひろひと大王集 ver.1』とか、『ライムスター宇多丸のマブ論!』とか。単なる競馬・パチンコ雑誌の出版社だと思っていたけど、何気にやるな!(高圧的)
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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