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『ウラハラ』(ハライチ)

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(2010/12/29)
ハライチ

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漫才の基本形といえば、ボケとツッコミ。ボケ役はボケに、ツッコミ役はツッコミに徹するのが当然である。この形を崩した漫才も存在する。ボケに対してボケを重ねるスタイルの漫才や、ボケを否定せずにやんわりと受け止める漫才などが、それだ。とはいえ、それらの漫才は、あくまでもアウトローである。ボケとツッコミによって成立する漫才が王道として在るからこそ、そのスタイルに反逆する漫才が認められるのだ。

その観点から言うと、ハライチの漫才は非常に斬新だった。彼らの漫才は、岩井(ボケ役)のボケに対して、澤部(ツッコミ役)がそのボケに乗っかるというスタイル。一見すると、それはボケに対してボケを重ねているだけに見える。しかし、それは違う。澤部の乗っかりは、最終的に岩井へと放たれるツッコミに向かうノリツッコミの行程に過ぎない。つまり、澤部は岩井のボケにボケを重ねているのではなく、最後の最後に一度だけ放たれるツッコミのために、ただただ乗っかっているだけなのだ。彼ら自身は、その漫才スタイルを“ノリボケ漫才”と呼んでいる。それは、これまで見たことのない、まったく新しいスタイルの漫才だった。

「M-1グランプリ2009」決勝戦。この年、M-1では“リベンジ戦”が話題の中心となっていた。東京ダイナマイト、南海キャンディーズ、ハリセンボンといった、過去に決勝へと駒を進めるも結果を残せなかったコンビらが、数多く決勝戦に進出したからだ。彼らが、前年の決勝進出者であるナイツ、モンスターエンジン、笑い飯らにどう立ち向かうか、その動向が大いに注目された。そこに、ハライチの姿もあった。既に「爆笑レッドカーペット」などの番組でその実力を見せつけていた彼らだが、“果たしてノリボケ漫才はM-1で評価されるのか”という意味で、結果がどうなるのか見当のつかないコンビとして不安に思われてもいた。しかし、蓋を開けてみると、9組中5位という順位に落ち着いた。決して高い順位ではないが、彼らの前に笑い飯が伝説のネタ『鳥人』を披露していたことを考慮すると、上々の成績だ。ハライチの漫才は、M-1でもきちんと評価されたのである。

それからおよそ一年後。「M-1グランプリ2010」決勝の舞台に、ハライチの姿はあった。2009年大会とは違い、2010年は新しい顔ぶれが揃った大会だった。カナリア、銀シャリ、ジャルジャル、スリムクラブ、ピースと、いずれ劣らぬ曲者揃い。既にノリボケ漫才のスタイルが公然のネタとなっているハライチには、そんな新人たちの様な新しさが少なからず求められていた。そこで彼らが取った手段が、“天丼”だった。ノリボケ漫才の大半は、岩井のボケと澤部の乗っかりによって構成されている。そして、岩井のボケは基本的に、一度きりしか使われない。この一度きりのボケを、二人は澤部の乗っかりに再利用したのである。先ほど使われたフレーズが、忘れた頃にもう一度登場する。お手本のような“天丼”だ。ただ、この手法は、彼らの普段の漫才でも何度か使われてもいた。一応、決勝ではその手法をより強調した構成にはなっていたが、それでは他の個性的な曲者たちには勝てない。結局、彼らは9組中7位と、前年よりも順位を落としてしまう。彼らなりに考えた作戦だったのだろうが、あまり芳しいとはいえない結果を残すこととなった。

「ウラハラ」は、M-1グランプリ2010決勝戦が終了した三日後の2010年12月29日にリリースされた、ハライチの漫才ネタ作品集だ。同じ年の2月、彼らは既に漫才集「ハライチ」をリリースしているので、今作は第二弾に当たる。タイトルの印象から、なんとなく「ハライチ」は表で「ウラハラ」は裏と捉えてしまいそうだが、披露されているネタに大きな違いは無い。お馴染みのノリボケ漫才を堪能できる『部活のエース』『旅行』『喫茶店』、岩井がファンレターを読み上げて澤部が内容にツッコミを入れるオーソドックスな読み物漫才『ファンレター』、ノリボケ漫才の一つの進化系漫才『刑事』など、「ハライチ」で披露されていた漫才とはまた違う趣はあるものの、一線を画すと言うほどの違いもない。

その中で唯一気になったのは、『シチュエーション』というネタ。

岩井「よくさ、学園モノの青春ドラマとかで、元野球部の不良が野球部を潰しに来るのにさ、キャプテンが説得して、その不良がまたね、結局野球を始めるっていうシーンがさ」
澤部「あー、ありますね。「目を覚ませバカ野郎!」っつって、ぶん殴ったりしてね」
岩井「ああいうの一度やってみたいとか、思ったことないわ」
澤部「んー、んん!?無い!?」


シチュエーション漫才に入るように見せかけて、入らない。ノリボケ漫才における澤部の乗っかりぶりを活かしつつ、岩井のボケとしての存在感を浮き立たせた秀作だ。この漫才を観ていると、別のコンビのあるネタを思い出さずにはいられない。そう。つい先日、このブログで取り上げた銀シャリの『万引きGメン』のことだ。ハライチの『シチュエーション』と銀シャリの『万引きGメン』は、その手法は違うが、ともに漫才コントを否定している。これは単なる偶然なのかもしれない。だが、これまでに培われてきた漫才の定石を否定したM-1グランプリ2010決勝の舞台に進出した二組の漫才師が、それぞれ違った方法で「漫才コント」という形式を壊した漫才を演じているという事実は、なかなか興味深い。M-1グランプリが終了した今、漫才は史上かつてない転換期を迎えているのかもしれない。

“ノリボケ漫才”という新たなスタイルの漫才を生み出したハライチ。彼らはもしかしたら、漫才の新たなる時代の担い手となり得る存在なのかもしれない。全ての漫才を過去にしてしまうかもしれない彼らの漫才から、今後も目が離せない。


・本編(37分)
「部活のエース」「ファンレター」「旅行」「ゆびきりげんまん」「喫茶店」「刑事」「シチュエーション」

・特典映像(35分)
「岩井勇気の一度やってみたかったヤーツ」

『ナイツ独演会』

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(2010/12/29)
ナイツ

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浅草を中心に活動する漫才師、ナイツ。彼らが注目されるようになったきっかけは「爆笑レッドカーペット」で披露した“ヤホー漫才”であることは間違いないが、漫才師として評価されるようになったのは「M-1グランプリ2008」決勝進出によるところが大きい。少なくとも、彼らが関東を代表する漫才師の一角として語られるようになったのは、M-1で評価されてからのことだ。また、これまであまりテレビでは語られることのなかった“演芸場”という舞台が注目されるようになったのも、この頃からのことだったように思う。

実際の“演芸場”を知らない人間にとって、そこは非常に閉鎖的で古臭い雰囲気の漂う場所だ。舞台に上がる芸人はどうしようもなく古典的で、バラエティ番組の華やかさなど感じられることはない。客席を見れば、時間を持て余している老人たちがポツポツと座っている。そういうイメージが強かった。しかし、“演芸場出身”であることをアピールポイントにしたナイツの漫才が評価されることによって、演芸場に対するイメージは変化した。少なくとも、そこに面白い何かが埋まっているように匂わせることには、成功したのではないだろうか。かつて、M-1で優勝したますだおかだの増田英彦が、その優勝会見の場で「テレビに出ている芸人だけが面白い芸人じゃありません!舞台には面白い芸人がいっぱいいます!」と叫んでいたが、ナイツはその漫才で「演芸場には面白い芸人がいっぱいいます!」と叫んでいたといえるのかもしれない。

「ナイツ独演会」は、ナイツが結成10周年を記念して、東京の国立演芸場で行った独演会の様子を収録した作品だ。今作において、ナイツは三本の漫才を披露している。ちなみに、そのネタは『自己紹介』『2010年の出来事』『女性にモテる話題』。言葉遊び、時事ネタ、野球ネタとナイツの魅力溢れたラインナップだ。特に三本目の漫才は18分と長尺のネタで、これが今作の一つの売りになっている。

だが、今作の最大の見どころは、ナイツが普段立っている演芸場の舞台の空気を出来るかぎり再現している点だろう。漫談の中津川弦と、漫才の宮田陽・昇。テレビでのみナイツの漫才を楽しんでいる人たちに、彼らの様に演芸場を中心に活動している芸人たちのネタを見てもらうきっかけを設けている事実が、ナイツの演芸場に対する並々ならぬ思いを感じさせてならない。

中でも、中津川弦の漫談は、如何にも演芸場のネタといった雰囲気を醸し出していて、実に味わい深かった。

中津川「皆様方、ようこそいらっしゃいました。塙さんと土屋さんによります、若さ弾けるグランドショー!『ナイツ独演会』でございますけれども、出て参りました私はと申しますと、本日光栄にもお招きいただきました、漫才協会に所属します、シャープでホットな漫談家、中津川弦でございます!(拍手)ありがとうございます、すぐ終わります」


丁寧かつ繊細な喋りの中でさりげなく放り込まれる言葉が、実にたまらない。この中津川氏、ナイツに余程気に入られているのか、2011年1月にリリースされるナイツ・Wコロン・ロケット団によるDVD『浅草三銃士』にも、ゲストとして出演している。いずれテレビにも引っ張り出そうという魂胆なのかもしれない。なお、ナイツの副音声解説によると、今作では普段の舞台で披露している時事ネタを封印してもらった、とのこと(その後でナイツが時事ネタを披露するため)。『浅草三銃士』では、普段の漫談を見ることが出来るのだろうか。

また、「笑点」の泥棒キャラこと三遊亭小遊三師匠の落語を堪能できるのも、今作の素敵なところ。先にも書いた様に、今はじわじわと継続している落語ブームの真っ只中。とはいえ、やはり自ら落語に触れようという気持ちが無い人に、落語の良さを届けるのは難しいというもの。そういった人たちの目に届くように……と、ここから先は、既に演芸場の芸人云々のくだりで書いたことと被るので、説明を省く。ちなみに、演じられている噺は『ん廻し』。「ん」がつく言葉を一つ言うごとに、田楽を一枚進呈する遊びを始める若者たちの姿を描いている。江戸っ子の言い回しが心地良い!

東京の演芸場に足を運ぶ予定のある方は、今作を観て予習するのもいいかもしれない。


・本編(89分)
「ナイツ漫才1」「中津川弦」「宮田陽・昇」「ナイツ漫才2」「三遊亭小遊三「ん廻し」」「トークコーナー」「ナイツ漫才3」

・特典映像
ナイツによるネタ解説「中津川弦」「宮田陽・昇」「ナイツ漫才3」

『ギンギラ銀にシャリげなく』

ギンギラ銀にシャリげなく [DVD]ギンギラ銀にシャリげなく [DVD]
(2010/12/28)
銀シャリ

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M-1グランプリの時期が近付くと、お笑いフリークの間では「どのコンビが決勝戦に進出するのか」という話で持ち切りになる。自分が贔屓にしているコンビを推薦する人、予選を見てきた印象を語る人、ただコンビ名だけを見て勘で予想を立てる人、実に様々だ。その中で、ほぼ必ず名前が挙がるにも関わらず、これまで決勝戦に進出することのなかったコンビがいる。関西を中心に活動している漫才師、銀シャリだ。昭和の漫才師を彷彿とさせる真っ青なスーツに身を包んだ彼らは、長年に渡りM-1での活躍を期待され続けてきた。その期待は2010年、遂に叶うことになる。

2010年12月12日、「M-1グランプリ2010」決勝進出メンバーが発表された。笑い飯、ナイツ、ハライチなどの決勝進出経験者に、ピース、ジャルジャル、スリムクラブ、カナリアなどの初の決勝進出者の名前が並ぶ。その中に、銀シャリの名前もあった。お笑いフリークの間ではそれなりに知られた存在だった銀シャリだが、全国区においてはまだまだ知名度の低い若手漫才師の一組。M-1グランプリ決勝の舞台は、そんな彼らの名前を世に知らしめる大切な機会だった。ところが、ここで思わぬ番狂わせ。彼らの前にネタを披露したスリムクラブが想定外のビッグウェーブを巻き起こし、会場を爆笑の渦に巻き込んだのである。その結果、銀シャリの漫才は消化試合的に受け流されてしまい、最終的に総合五位という非常にフワッとした順位に落ち着いてしまった。

M-1決勝の場で銀シャリが披露したネタは『アルファベット』。鰻が「きらきら星」のメロディに乗せた「ドレミの歌」を歌い、その歌詞の間違いに橋本が一つ一つツッコミを入れていくという、非常にオーソドックスな組み立てのネタだ。しかし、そのオーソドックスさに対し、ネタの内容はなかなか捻くれている。鰻の発想、橋本のツッコミ、その両方が程良く映えるネタだったのだが……スリムクラブの大爆笑の後だったこともあって、観客にはごく当たり前にオーソドックスな漫才だと認識されてしまった様な気がする。

今作『ギンギラ銀にシャリげなく』は、そんな銀シャリの魅力を凝縮した作品だ。得意の漫才やコントは勿論のこと、鰻の天然エピソードの紹介VTRや鰻作による6コマ漫画などが収録されている。全体的に鰻に関する話題が中心となった偏りある内容ではあるが、彼の天然エピソードを聞いた後では、それも仕方が無いことだと頷ける。ちなみに、鰻の天然エピソードは相方の橋本によって紹介されているのだが、時たま“上手いこと”を言おうとする彼の姿はなかなかに鬱陶しい(いい意味で)。是非、彼のイキリぶりを確認してもらいたい。

話を戻す。今作において銀シャリは主に漫才を披露。M-1決勝でも披露した『アルファベット』を始めとして、鰻の元カノが人魚だったという話を膨らませていく『人魚』、歌詞の間違いをきちんと訂正していく『森のくまさん』、間違えて覚えていることわざを一つ一つ訂正していく『ことわざ』などのネタが収録されている。いずれも、テーマ自体は非常にオーソドックスなのだが、鰻の飛び抜けた発想と橋本の古典的な中に新しさを含んだツッコミによる、銀シャリならではの漫才ばかり。

その中でも印象的だった漫才が、『万引きGメン』というネタ。

鰻「俺は万引きGメンするから、お前万引きしてや」
橋本「……いや、万引きはしたらあかんやろ。犯罪やろ、知ってるか?」


万引きGメンをやりたいから、そういうコントを始めようとする鰻。ところが、橋本はその鰻の発案を本気で捉えて、まったく漫才を始めようとしない。近年、漫才はしゃべくりのみで成立するものではなく、漫才という体で始まりながらもコントとして展開することも珍しくなくなっている。そんな時代の流れに逆らう意味があるのかどうかは分からないが、この漫才は間違いなくそんな時代の状況を逆手に取ったネタだ。

鰻「他のコンビ見たことない!? 「俺、万引きGメンするんや」言うたら、「俺、万引きするわ」っていうやりとり、聞いたことない!?」
橋本「……いや、他は他、ウチはウチやろがい」
鰻「いや、オカンみたいなこと言うてるやん」
橋本「なんなん?何を言うてるのそれは?」
鰻「他、みんなやってるで!」
橋本「……他のコンビ、みんなツッコミ万引きしてるんですか?」


普段の銀シャリが演じている漫才とはまったく違ったスタイルのネタだが、もしもこのネタをM-1決勝の舞台で披露していたとしたらどうなっていただろうか。「M-1グランプリ2010」では、これまでの漫才を解体する様なスタイルのネタが多く演じられていた。ボケとツッコミの概念を壊したカナリア、スピード化する漫才を皮肉ったジャルジャル、“手数論”が提唱される最中にボケの数を削ったネタで勝負に出たスリムクラブ。この流れでもし、銀シャリがこのネタを披露していたとしたら……想像すると、ちょっと面白い。

コンビ結成六年目、漫才師としてはまだまだ成長段階にある筈なのに、既にそこそこ完成されている感がある彼ら。抜群の安定感を保っているが故に、今後どのように発展していくのかが気になって仕方ない。ここに留まることなく、更なる進化に期待を寄せてはいるのだが……果たして。


・本編(55分)
「漫才「アルファベット」」「漫才「人魚」」「橋本厳選! 鰻和弘の50音天然エピソード「あ・か行」」「漫才「森のくまさん」」「コント「病院」」「橋本厳選! 鰻和弘の50音天然エピソード「さ・た行」」「漫才「ことわざ」」「漫才「万引きGメン」」「橋本厳選! 鰻和弘の50音天然エピソード「な・は行」」「コント「美容室」」「漫才「桃太郎」」「橋本厳選! 鰻和弘の50音天然エピソード「ま・や行」」「漫才「ご飯」」「橋本厳選! 鰻和弘の50音天然エピソード「ら・わ行」」

・特典映像(24分)
「200@年秘蔵映像「鰻の一日」」「鰻作・6コマ漫画劇場」「鰻の「スナックムービー」」

bananaman live『DIAMOND SNAP』

DIAMOND SNAP [DVD]DIAMOND SNAP [DVD]
(2010/12/15)
バナナマン

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バナナマンのコントは面白い。設楽が生み出す独特の世界観と日村のアクターとしての才能が爆発する彼らのコントは、その単独ライブが行われるたびに新しい笑いを放っている。それは時にバカバカしく、時に緊張感を漂わせ、時に切ない感動を与える。しかし、その根底にあるものは、バナナマンならではの人間性が交錯した笑い。彼らは決してそのスタンスを変えることなく、しかし常に留まらないコントを演じ続けてきた。それはきっと、これからも変わらずに続いていくのだろう。

前作「wonder moon」では、タイトル通りの幻想的な世界観に満ちたコントを演じていた彼らだが、今作「DIAMOND SNAP」は全体的に統一感が無く、バナナマンらしいコントが満遍無く演じられている印象を受けた。アホと呼ばれている丁稚の元に子孫がタイムマシンに乗ってやってくる『dumb cluck』、テレビ局の警備員二人が「もしも上戸彩と付き合えたとしたら、どうやって楽しませる?」という妄想に花を咲かせる『a guard』、話し合いをしている二人の関係が“善の椅子”“悪の椅子”で表現される『good and evil』など、とてもバリエーションに富んでいるが、実にバナナマンらしいコントばかりだ。

その中でも秀逸なのは、やはり『すぐ立つ』だろう。

設楽「おっ」
日村「ちょっオマエ~、ねぇ~、「おっ」じゃないわよ、「おっ」じゃさ、ねぇ~。今何時だと思ってんのよ、ちょっとさぁ~、お会計するぞ?」
設楽「ああ、ゴメン。わりぃわりぃ、ゴメン」
日村「ホント、もうアンタのそういうトコ、お会計してほしい~」


深夜バラエティ番組「ゴッドタン」の企画で誕生したキャラクター“ヒム子”が登場するこのコントは、番組を見ている人間は勿論のこと、番組を見ていない人間でも楽しめるネタに仕上がっている。企画の中で生まれた“お会計”という言葉も、まったく統一感の無い使われ方をしているにも関わらず、不思議と納得してしまう説得力がある。実際、この正月の特別番組で、彼らがこのコントが演じている場面を目撃したが、そのスタジオの観客たちはこの“お会計”という言葉に笑っていた。

一方、コントの間に収録されている幕間映像のクオリティも、非常に高い。ある歌の歌詞を違って覚えている二人のラジオ的なやりとりが心地いい「地域性」、ピアノを演奏することが出来るiPhoneの機能“フィンガーピアノ”を使って二人で盛り上がる「フィンガーピアノ」、毎度お馴染み日村が身体を張る「日村は爆発する前に導火線を切れるか?」など、バナナマンの二人が大好きな人にはたまらない映像ばかりだ。

バナナマンらしさがきちんと抽出されているコント、バナナマンの二人が好きな人ならば間違いなく楽しめる幕間映像、どちらも揃っている今作は非常に素晴らしい作品である……のだが、一つだけ不満がある。それは、ライブの最後に必ず演じられているロングコントだ。毎回、仄かに感動できるコントをライブの最後に準備している彼らだが、今回のネタは少し物足りなかった。良いネタではある。村ではぐれ者扱いになっている通称パンメンと、そんな男と付き合っている幼馴染の警察官が織り成す切ないストーリー。設定も流れも実に素敵。それでも物足りなさを感じるのは、コントの中に散りばめられた言葉の数々が、今一つ活かしきれていない気がするためかもしれない。面白いんだけどね。

コントの最前線を突っ走り続けているバナナマン。ここから更に飛躍する日が来るのだろうか?


・本編(102分)
「wonderful moment」「dumb cluck」「地域性」「a guard」「フィンガーピアノ」「good and evil」「冷蔵庫のあまりもので作るおかず」「すぐ立つ」「日村は爆発する前に導火線を切れるか?」「are you satisfied now?」

『バカリズム案2』

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(2010/12/22)
バカリズム

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バカリズムが思ったことをそのまま絵と言葉にして表現するライブ「バカリズム案」。このライブでは、普段の単独ライブで演じられているような起承転結のあるコントとは違い、バカリズムの真に剥き出しになったセンスを体感することが出来る。素材そのものの美味しさを召し上がれ、と言ったところだろうか。

今作は第二弾。第一弾でもその光るセンスを見せつけられたが、今作ではそのセンスに更なる磨きが掛けられたように思う。『歴史に関する案』では、信長や秀吉といった歴史上の人物たちについて丁寧に解説する。一見すると、非常にまともな解説が行われるような印象を受けるが、その内容は「織田信長の食べたものはどこへいくのか」「秀吉はなぜはなくそがでるのか」というものだ。……この上なく、どうでもいい。『プライバシーに関する案』では、プライバシーを守るために様々な物にモザイクをかけていく。前回のライブでも行われた『順位に関する案』では、「疑問を抱いてるっぽい50音ベスト5」「ヒーローっぽい楽器の名前ベスト5」「「森進一です」に聞こえそうなその他の名前ベスト5」を提案する。……本当に、どうでもいい。だが、そのどうでもいい感覚が、非常に心地良い。

その中でも印象的だった案が、『時間に関する案』。その内容は、日常における無駄な行い、必要性を感じさせられない行い、いわゆる“細かいロス”が人生にどれだけ損失を生んでいるのかを考えてみる……というもの。例えば、「おかずを口に運ぶ際、一旦ごはんにワンダウンドさせる時間…約1秒」「(イタリアンレストランなどで)目の前でチーズを削っている時間…約10秒」などの時間が、どれほど無駄な時間であるかを解説している。察しの良い人ならばお気づきだろうが、つまりこの『時間に関する案』はバカリズムが日頃「無駄だ!」と思っていることを、そのままぶつけているクレームの様な案なのである。

そんなバカリズムの感情が爆発する案が、これだ。

「続いて、こちら。「混んでいるコンビニで、2つあるレジの1つを休止し、研修中のアルバイトに、社員がレジのレクチャーをすることによって生じる、客の余分な並び時間…約3分」。まぁー!バカバカしい時間ですよね。皆さんも(経験したことが)あるのではないでしょうか」


ここまではまだ落ち着いている。だが、ここからだんだんと盛り上がっていく。

「もう、本当に僕は、これがもう意味が分からないですね。わざわざ混んでいるときにやる必要ないんですよね。全部お客さんをさばいてから、余裕があるときにやればいいんですよ。わざわざ混んでいるときに、研修中のアルバイトに、レジ休止してまでやっているんですよ。なんなんでしょうかね。研修中のアルバイトが未熟だということは、我々関係無いですからね。向こうの問題ですから。そっちで解決すればいいだけの話なのに。わざわざ、その時にやってんの。バカみたいな顔して。「うぇ~」(バカな顔をしながら)っつって!」


ここで話は“案”とは無関係な方向へ流れ始める。

「そんなバカな店員に限って、「弁当、温めますか」って言わないんです。「温めどうなさいますか」って聞くんです。分かります?「温めますか?」って聞けば「はい」か「いいえ」で答えられるんです。「温めどうなさいますか?」って言ったら、「お願いします」か「結構です」と、多めの時間喋らなくちゃいけないんです。非常に無駄なんです!無駄だらけなんです、コイツらは!24時間ずーっと、無駄なんですコイツらは!」


もはやバカリズムのクレームショーだ。ちなみに、バカリズムはこの行為を「バカレクチャー」と吐き捨てる。余程、そういう状況に腹を立てているのだろう。その後、この「バカレクチャー」が人生80年として8日間のタイムロスを生んでいると、バカリズムは解説する。

「どうですか、皆さん。立っているだけですよ、この8日間皆さん。8日間立たされているんですよ、あの「バカレクチャー」のために!8日間、あの「バカレクチャー」ですよ!しかもですよ、我々にとってはただ立たされているだけの無駄な8日間ですけども、こいつらにとってはこの時間しっかり時給が発生しているんですよ!僕、計算しましたこれ!時給800円だとした場合、15万3,600円もこれで儲けているんですよこいつらは!」


激昂するバカリズムも、またいつもと違った趣があって面白い。

通常、芸人の単独ライブは自身がやりたいことをやれる大切な場所だが、バカリズムにとってのそれは「バカリズム案」であるように思う。コントでは表現できないこと、トークでは語り切れないこと、そういったものが沈澱し始めた頃、またバカリズムは新たなる案を提出することだろう。……って、もう既に『バカリズム案3』のリリース情報が出ているらしいのだが。すぐ溜まるのね。


・本編(80分)
「自分に関する案」「歴史に関する案」「運勢に関する案」「プライバシーに関する案」「時間に関する案」「記憶に関する案」「順位に関する案」

・特典映像(17分)
「没案」「雑案」

『ゲームセンターCX DVD-BOX7』

ゲームセンターCX DVD-BOX7ゲームセンターCX DVD-BOX7
(2010/12/24)
有野晋哉(よゐこ)

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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

2010年が終わりまして、2011年が始まる。となると、どうしてもその間、年と年の境目が生じるわけですが、この時間を如何に過ごすかということが、子供の頃は一つの課題になっておりました。一番有名なのは、年が明ける瞬間に飛び上がって、「俺は年が明けた時に地球上にいなかったぞ」というヤツ。凄く下らないことですが、そういうことをやって、友だちに話して、皆で盛り上がる……ということを、小学生の頃は特にやっていました。僕の知り合いには、年明けの瞬間に二段ベッドの上から飛び降りて、それで足の骨を折って、正月はギブスを装着して過ごしたバカがいましたね。そこまでして他人と違った年越しを自慢したかったのか、なんてことを思ったりもしましたが。

その頃に比べると、もう今は落ち着いたもので。僕ももう25歳、この二月で26歳ですからね。いいかげん年越しジャンプ、勝手に名前をつけてしまいましたけれども、年越しジャンプして楽しむような年でもないですからね。……それにしても、今年は物凄く落ち着いた年の越し方をしてしまいました。もうね、何が落ち着いているって、この年越しの瞬間の僕は、こたつで横になって「よゐこの企画案」を見ていましたからね。よゐこの二人が「ゲームセンターCX」みたいなことをこたつに入りながら淡々とやっている姿を、こたつで横になりながら見ていたという。こんな落ち着いた年越しは生まれて初めてでしたよ、本当に。

普通、テレビが好きな人の年越しというと、例えば歌番組とかバラエティ番組とかの生中継で、年明けの十秒前あたりから出演者や観客たちが一斉にカウントダウンを初めて、そして最終的に全員で「明けましておめでとう!!!」と声を上げるという。そういう状況が当たり前、一般的なものだと思っていたんですが。今回の年越しは本当に、気が付けば越していたというような感覚で年を越してしまいましたね。で、このことについて、それほど勿体無い気分になっていないところが、寂しいんですよ。なんだか。

だって、子供の頃はですよ、この年越しという年に一度のイベントに対して、本当に緊張して望んでいたんですよ。この一年、良いことも悪いこともあった一年が終わる、その最後の日、最後の時間、最後の瞬間を迎えるということの大事さを、子供の頃の僕は自然に理解していたんですよ。ところがこの年になって、年越しの瞬間が持っている大事さを、僕は忘れてしまっていたんですよ。こんな寂しいこと、ありますかね。「明けましておめでとう」とか言っているけれど、明けたことをそれほどめでたいことだと思っていない自分、感じていない自分が寂しさ。……分かっていただけるかどうかは分かりませんが。次の年越しは、もうちょっと何かをしたいなあ、と思ってはいるんですけどね。

でも、テレビ番組でも、ここ最近はあまり年越しを重要視していないようなところがありますね。録画した長尺の番組をただ放送しているとか、今ちょっと話題になっているところでいうと、池上彰さんの番組が生放送で流れていたにも関わらず、年越しの瞬間で特に盛り上がることもなく淡々と進行していたとか。テレビも最近は、ちょっと年越しの重要性を忘れている傾向があるような、そういう気がしないでもないですね。「一年の計は元旦にあり」という言葉もございますが、もう少し、その一年の締めくくりを忘れないでもらいたいなあ、なんていうことを思ったりもするんですが。

そんな年越しを迎え、最初に観たDVDが『ゲームセンターCX DVD-BOX7』です。なにせ、とてつもなくナチュラルな状態で年を越してしまったものですから、とても正月番組のテンションについていけなかったもので。そういう意味では、この「ゲームセンターCX」という番組は、非常に適役です。なにせ、出演している芸能人は有野晋哉(よゐこ。番組内では有野課長と呼ばれている)だけですし、プレイしているゲームは一昔前の作品ばかりですし。もうね、正月の空気なんて関係無く、リラックスして観られますからね。こんなに状況に適した作品はないですよ。

ただ、今回はちょっと、あまりにも大人しい内容になっちゃったような気がしますね。取り上げられているソフト自体は、結構好きな作品が多いんですよ。「スーパーマリオ64」や「スーパードンキーコング」は僕も実際にプレイしていますし、「ロックマン3」みたいに過去にプレイしてきたシリーズが取り上げられているのも良いんです。良いんですけれど、アクションゲームに偏ってるんですよね。だから、色んなバリエーションのゲームプレイが見られない。ここが少し物足りないかな、と。

あと、これは長く続いている番組である以上、仕方が無いんですけれど、ちょっとマンネリの領域に突入している感があるんですよね。と言っても、有野課長のリアクションは相変わらず面白いんです。問題は、それを盛り上げる番組側の演出。これが完全に行き詰っている。特にテロップ。有野が失敗したときの盛り上げ方、成功したときの盛り上げ方、ここ最近は殆ど使い回しの様なテンションになってしまっている感が。まあ、逆に言えば、大きな当たりがないだけで、大きな外れもないとも言えるんですけれども。特に2010年は超大作『ゲームセンターCX24』(有野課長が「レミングス」を24時間かけて攻略する企画を編集して収録。DVD三枚+音楽CD一枚)がリリースされているので、余計にそういう気持ちになるんですよね。「まあ、この程度なら良いかなあ」と納得できる。でも、まあ……うーん。


・vol.13(268分)
「スーパーマリオ64 完全版」「ドアドア」「夢工場ドキドキパニック」「悪魔城伝説」「【特典映像】バイナリィランド」「たまに行くならこんなゲームセンター(全六本)」

・vol.14(267分)
「スーパードンキーコング 完全版」「ロックマン3 Dr.ワイリーの最期!? 完全版」「バトルゴルファー唯 DVD限定ディレクターズカット版」「たまに行くならこんなゲームセンター(全三本)」
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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