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『NHK新落語名人選 五代目 春風亭柳昇』

NHK新落語名人選 五代目 春風亭柳昇NHK新落語名人選 五代目 春風亭柳昇
(2006/01/18)
春風亭柳昇(五代目)

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「大きいことを言うようですが、いまや春風亭柳昇といえば、我が国では私ひとりでございます……」という口上で知られる、春風亭柳昇の落語集。鬼籍に入られた今となっては、むしろ春風亭昇太の師匠として説明した方が分かりやすいかもしれない。だが、かつて柳昇は、日本中を席巻する人気落語家だった……らしい。なにせ、僕も当時の人間ではないので、そのあたりのことはよく分からない。だが、彼の落語を聴くと、そういわれるだけの説得力を感じることが出来る。飄々とした口調で語られる呑気で下らないギャグの数々は、聴いている側のハードルを真っ逆さまに突き落とす。評価だなんだという思考を完全に停止させる、圧倒的な軽さがある。これは間違いなく、大衆に向けて作られた落語だ。

本作に収録されているのは、『カラオケ病院』『雑俳』『南極探検』の三本。『カラオケ病院』と『南極探検』が新作で、その間に古典落語『雑俳』が挟み込まれる構成になっている。

まず、『カラオケ病院』。病院でこんなことがあった、あんなことを経験した、こんな目にあった……という病院での体験談として語られるマクラは、その全てダジャレオチだ。実に下らない。下らないのに、ついつい笑ってしまう。飄々とさりげなく語られるために、こちらが想定している“笑いのタイミング”を完全に外れるからだ。そして始まる本編も、これまた下らない。流行らない病院へと患者を誘い込む方法について会議をした結果、待合室に流行りのカラオケ機を置いて、高得点を記録した患者の治療費は安くすることに決まる……なんて、実にナンセンスで面白い発想である。……今の時代、ちょっと実現化しそうなところがまた、ね。後にこれが実施され、患者たちは待合室でカラオケを楽しむことになるのだが、彼らが選んだ楽曲がそれぞれの病気にちなんだ歌詞に替えられている点にご注目。

「五番、水虫。歌は『昴』」
目を閉じて寝ておれば 水虫がかゆくなり
我慢できぬかゆさに 薬を塗れば
ああ しみて しみて 痛いよ
何故 水虫 我を泣かすか
我の足は 水虫でかゆいから 我の足 誰かかいてくれ


替え唄としてのクオリティが低いところが、なんだかとっても下らない。どうでもいいけれど、こういう替え歌ネタは著作権が発生しないのだろうか。……落語だからいいのかしら。楽曲さえ今のものにしてしまえば、現代でも十分に通用する一席だと思う。レッツチャレンジ。

『雑俳』は、先にも書いた様に古典落語。しかし、やはり柳昇の飄々とした口調で語られるため、あまり古典らしさを感じさせられないようになってしまっている。良いんだか、悪いんだか。内容は、仕事もせずにぶらぶらと生活している御隠居の楽しみ“俳諧”を、近所の八五郎が教わるというもの。古典落語ではお馴染みの御隠居モノだが、ある具体的な知識を御隠居に教わるというパターンではないので、なんとなく違うタイプのネタというイメージを与えられる。八五郎が御隠居にお題を貰って、それを元に俳句を作っていくという流れがあるのだが、これがまた下らない。

御隠居「次は?」
八五郎「“春雨”」
御隠居「春雨なんてのは情緒があって、いいお題だねえ」
八五郎「船底を ガリガリかじる 春のサメ」
御隠居「……なんだ、それ?」
八五郎「いや、サメが海で泳いでたら腹が減っちゃったんですよね。何か食うものねえかと思ったら船が通りがかったもんで、船をかじったんですよ。あんまり船が固いもんで、サメの歯が三本折れちゃってね。サメが後になって歯が痛いって、サメザメ泣いた」
御隠居「なにを言ってんだ!」


……春まったく関係無い!

オチに至るまでの流れも、おおよそ古典らしくない。調べてみると、どうやら元来の内容に随分と手を加えているらしい。一応、古典落語という名目になってはいるものの、殆ど柳昇のオリジナル(引いては改変)落語といってもいいのかもしれない。ちなみに、この形式の『雑俳』を昇太が演じている音源も発表されているので、そちらで確認してみるのも面白いだろう。

トリを飾るのは『南極探検』。今、偶然にもまったく同じタイトルのテレビドラマが話題になっているので、なんとなく壮大なドラマが展開される新作なのかと期待してしまったのだが、実際に聴いてみると、これが肩透かし。嘘ばっかりついて“ホラさん”と呼ばれている男が、御隠居に「南極探検に行ってきた」と大ボラを吹くというネタである。シチュエーションは現代的だが、やってることは『雑俳』よりもずっと古典っぽい。聞いたところによると、かの立川談志はこのネタを高く評価しているのだという。実際に聴いてみると、なるほど確かによく出来ている。ホラさんが嘘をついた後に入れる、フォローのタイミングとズレの程が絶妙だ。以下、見送りに来た大勢の人たちについて説明する場面。

ホラさん「これがいっせいに大きな声で「バンザーイ!バンザーイ!」って言ってますんで、その声の大きいのなんのってね。九州の鹿児島まで聞こえたそうですよ」
御隠居「いくら大勢だからって、鹿児島まで聞こえるわけないだろ」
ホラさん「ラジオの実況放送ですよ?」


こんなことばっかり続く。だんだんと嘘だなんだというのも関係無くなって、ただただナンセンスなことを言い続けるだけの様な状態になっていく。以下、個人的に好きなくだり。

ホラさん「南極の夏は困るんですよ」
御隠居「何が」
ホラさん「夜がないんですよ」
御隠居「そうなんだってねえ」
ホラさん「明けても暮れても昼間ばかり。暗くなんない。困んのがご飯なんですよね。今食べてんのが朝飯だか昼飯だか晩飯だか……全然、見当がつかないの。で、しょうがないから昼飯ばっかり。だから、朝飯と晩飯が抜きになるから、腹が減って腹が減って!」
御隠居「変な話だな!」


時代を超えてナンセンス、超絶下らない。春風亭昇太という天才落語家を育てた落語家も、また唯一無二の天才だったんだなーということがよく分かる一枚だ。

笑い飯『ご飯 漫才コンプリート』『パン 笑いの新境地』

「M-1グランプリ」が2010年で終わってしまったことを、貴方はどう思う? 僕は正直言って、こんなタイミングで終わってしまったということに、なんだか馬鹿馬鹿しささえ覚えてしまっているんだけれども。だってそうじゃないか、第一回大会が開催された2001年から丁度10年という、節目というには相応しい時期に終わってしまうだなんて、なんだか結婚記念日に離婚届を突き出されたような感じがするよ。一応、後続みたいな形で「THE MANZAI」という大会が開催されるけれど、まだまだ何も分かっていない現段階では何を口にするのも無責任だけれど、きっとM-1グランプリ程の緊張感、高揚感を得られることはないんじゃないかと、そういう風に僕は思ってしまうわけで。なんだかんだでM-1グランプリという大会の持っている特別さは、何にも代えがたいといわざるを得ないのだろう。

それにしても、M-1グランプリが終わるという年に笑い飯が優勝してしまったというのは、これまたなんだか間抜けに見えてしょうがない。そりゃまあ、彼らは2002年から大会の決勝に進出し続けていて、多くの人たちが「いつか彼らは優勝するだろう」と口にしていて、なんだかんだといいながらも僕だってそんな風に思ってはいたけれども、だからってM-1の最終回で優勝するなんて、なんだかタイミングの悪さを感じずにはいられないんだ。なんてことをいうと、じゃあ「お前はあの時の笑い飯の漫才に不満があるのか」、「面白いとは思わなかったのか」、などという意見を頂戴することになりそうだっけれど、それはそういう問題じゃなくて、僕がただいいたいのはタイミングの話なのだ。確かに、彼らはこれまでにも何度か優勝に手が届きそうになったことが何度もあって、その度に僕も「なんで優勝させてあげないんだよ!」とは思ったんだけれど、だからって最後の年、いわば最終回ともいえる年に優勝するだなんて、なんだか「優勝させてあげた」、或いは「優勝させることで最終回であることを世間に満足させる」というような意識があったんじゃないかという気持ちが、無きにしも非ずな次第であるわけで。

……なんていう不満を今更漏らしたところでしょうがない。そもそも、不満というほどの不満でもなく、特にいいたかったことでもなく、ただ彼らについて書くに当たってひとまず触れておくべきだろうという、要するに単なる前文でしかないので、あまり気にしないでもらいたい。本題はここからだ。M-1グランプリ2010で笑い飯が優勝したからなのかは分からないが、翌2011年に彼らは二枚のDVDをリリースすることとなった。タイトルは『ご飯 漫才コンプリート』『パン 笑いの新境地』。それぞれ、まったく違った特色の見える作品だが、その根底には笑い飯ならではの特殊な世界観が垣間見られる。優勝して、これがリリースされて、良かったなあ……なんて手のひらを返してみたり。

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うしろシティ『街のコント屋さん』+さらば青春の光『なにわナンバー』

ますだおかだ、アメリカザリガニ、安田大サーカス、まえだまえだ……松竹芸能に所属している芸人といえば、どうしても漫才師のことが真っ先に浮かんでくる。まあ、安田大サーカスやまえだまえだを漫才師として捉えることに疑問を覚える人もいるかもしれない。でも、彼らにコント職人としてのイメージがあるかというと、そんなことはないだろう。彼らがセンターマイクを囲み、素の喋りからコントへと突入していく様は、間違いなく漫才師のそれである。

では、松竹芸能のコント師はどうかというと、これがどうもパッとしない。勿論、実力のある芸人がいないわけではない。シュールなコントの使い手として人気を博したよゐこや、その後継としてナンセンスコントに精を出しているチョップリンなど、独自の色合いを持ったコンビも少なくない。だが、彼らの芸風はどうもマニア受けしてしまっている傾向が見えて、先の漫才師たちに比べて陰日向の存在になってしまっている感がある(「キングオブコント」決勝の舞台に立っているTKOの様なコンビもいるが、その数を考慮すると、彼らはむしろ特例といってしまうべきだろう)。少なくともここ数年、松竹芸能では西高東低ならぬ漫才高コント低な状態が続いていた。

ところが、そんな状況に不安を感じ始めたのか、最近になって松竹芸能がコントにも力を入れるようになった。いや、力を入れるようになってきたというよりも、偶然にも力のあるコント師が出てきたというべきなのかもしれない。とにかく、これまで漫才師ばかりが注目され続けていた松竹芸能にコントの追い風が吹き始めたのである。

今回、そんな松竹に吹きすさぶ新しい二つの風が、DVDをリリースした。一枚はうしろシティ『街のコント屋さん』、もう一枚はさらば青春の光『なにわナンバー』。「キングオブコント2011」準決勝戦にも進出した彼らは、近い将来、松竹の中枢を担う存在になるのかもしれない。ならないのかもしれない。なったらいいなと思う。いや、きっとなるんじゃないかな(byさだまさし)。

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「オンバト+」十一月五日放送感想文※富山収録

天狗【425kb/1,018票】
七戦六勝、今期二勝目。前回は自身初のオーバー500を記録したが、今回はなんとも無難な結果に落ち着いた。ネタは「子ども電話相談室」。電話相談がなかなか始まらない、始まってからもちゃんと相談に乗ろうとしない、手本を見せるために役割を交代してみる……など、このシチュエーションならではの展開が目白押し。無難に笑えるという意味では強いのだろうが、ボンヤリしていると聞き逃してしまいそうな取っ掛かりの無さは否めない。“漫才のお手本”として見るなら秀逸。

ザ・ゴールデンゴールデン【521kb/2,163票】※会場審査1位・視聴者投票1位
七戦七勝、今期二勝目。「爆笑オンエアバトル」では高く評価される時とそうでない時の差が意外と大きかった彼らだが、「オンバト+」になってからは高記録を連発。それは偶然ではなく、きちんとコントの質も向上していた。そして手にした初のオーバー500、このまま二度目のチャンピオン大会出場なるか。今回のネタは『万引き』。万引きした生徒を迎えに来た教師が、店長とドタバタ劇を繰り広げる。ストーリーを冷静に考えてみるとアチコチに粗が見えるが、そんなことは関係無く面白い。過去のコントでも見られた傾向だが、今回はっきりとボケ役を二人にすることで、笑いを畳みかけることに成功していたように思う。ただ、こういうスタイルのコントは、元来の彼らのスタイルとは少し違っているので、これを今後も続けていくのかどうかが気になるところ。

うしろシティ【453kb/1,199票】※視聴者投票3位
三戦三勝、今期二勝目。今年度の注目株といっても過言ではない彼らが連勝街道を突っ走っているのは、実に清く正しい結果である。今後とも精進してもらいたい。今回は『サッカー部の敗退』。サッカーの県大会で敗退したチームに声をかける先生の言葉が意外過ぎて、場の空気がとんでもないことになってしまう。いわゆる“緊張と緩和”を取り入れたコントだが、その崩しかたが絶妙でついつい笑ってしまった。中でもサイコーだったのが、電話越しに始まる「10回クイズ」。こんなに意味の無いことは、そうそうない! 終盤、それらの言動の理由が明らかになってしまうのも、個人的にはかなり良かった。ただ、ちょっとオチが伝わりにくかったような気も。あそこがスパーンとハマれば、もうちょっと結果は違っていたかも。

クロスバー直撃【421kb/1,013票】
二戦一勝、今期初オンエア。大阪を中心に活動しているよしもと所属のコンビだ。番組には「爆笑オンエアバトル」時代の2008年から出場していたが、なかなかオンエアにはこぎつけなかった。今回のコレが初オンエアになる。ネタは『ヘアチェック』。髪が気になる男がヘアチェックに訪れたのはいいが、店の人がなんだか変な対応をしてくるシチュエーションコントだ。質疑応答、頭皮チェック、シャンプーと、きちんと『ヘアチェック』のシチュエーションに沿った展開がなされていた点が好印象。激しい動きや小道具が使われていたのにも、目に見えて分かりやすい笑いを作ろうという意欲が感じられて、実に良かった。ただ、オチがちょっと投げっぱなしだったことが、少し残念。

ニッケルバック【409kb/1,241票】※視聴者投票2位
二戦二勝、今期初オンエア。前回の放送もきちんとチェックしていた筈なのだが、どういうネタを披露していたのか、まったく思い出せない。……地味なネタだったのかな。今回のネタは『旅館』。一人旅の客に最近まったくいいことがないと聞かされた従業員が、彼が良からぬ行動に出るのではないかと心配でになって、名物である滝の場所を教えようとしない。ちょっと捻ったシチュエーションを上手く使いこなしたコントで、なかなか見応えがあった。オチが天狗のネタと少し被っていたが、それでも最後まで好印象の残るネタだった様に思う。ただ、やっぱり地味。コント師としてハネる要因が欲しいところ。

・今回のオフエア
373kb:チョイチャック
341kb:トミドコロ
333kb:AMEMIYA
257kb:あんぺあ
225kb:八福亭

「爆笑オンエアバトル」時代から結果を残せずにいたチョイチャック、今回は前番組から通じて自己最高を記録するも惜しくも六位敗退。前回、きわどくオンエアを獲得したトミドコロ、連勝ならず。R-1ぐらんぷりからの使者AMEMIYA、期待値が高かったのか微妙な数字で敗退。次の挑戦こそは……!

・次回
エレファントジョン
グランジ
KBBY
ゴールドラッシュ
コマンダンテ
さな
スギタヒロシ
寅人
ニッチェ
ぷち観音

グランジが今期二勝目狙い。十組中六組が初出場という、実に初々しいメンバーが揃っている回。前年度、チャンピオン大会に届かなかったエレファントジョンとしては、常連の貫録を見せたいところ。個人的な注目は、M-1グランプリで準決勝戦に進出した経験もあるコマンダンテ。ちょっとボケの人が独特の雰囲気を醸し出しているので、それが見られたらなーっと。

「桂文珍47都道府県全国独演会ツアー vol.3」in 高知(11月3日)

桂文珍の独演会を見るために、高知へと赴く。

高知といえば、なんといっても桂浜である。龍馬の銅像があることで知られている場所だが、純粋に浜としての風景が美しいので、僕は大好きだ。むしろ、銅像などは、どうでも宜しい。なんだったら、浜から少し離れた場所に立っているので、銅像は無関係といってしまってもいい。重要なのは桂浜の美しい風景である。瀬戸内海の様に、小さな島がそこかしこに点在している様なせせこましさのない、実に広大な風景である。だが、今回は時間の都合で、桂浜に立ち寄るのは断念した。まあ、いつでも来ようと思えば来られる場所である。またの機会ということにしよう。

今回、桂文珍の独演会……改め、「桂文珍47都道府県全国独演会ツアー vol.3」の会場となったのは、高知の中心地から少し外れた場所にある「高知市文化プラザ かるぽーと」の大ホールである。見た目は非常に高層だが、駐車料金も30分150円と少し高めである。春風亭小朝独演会の時にもボヤいたが、どうして施設での催し物を観に来た客が高額の駐車料金を支払わなくてはならないのか。払えない値段ではないので、特に苦情を申しつけるようこともないのだが、やっぱり不満が残る。が、いちいち深く考えても仕方がない。

開演30分前、会場の前は沢山の人で混み合っている。大半が老人で、続いて中年、ちょろちょろと若い人がいるといったところか。男女の比は大差ない。ある一定の層に高い人気を博している、ということなのだろう。しばらく時間を潰してから、再び会場の前を通ると、随分と人の数が減っている。沢山いたかに見えた人たちが、あっという間にホールへと吸い込まれていってしまったようだ。悠々と会場に入ると、すぐに物販コーナーが見えてくる。CDとDVDが売られている。せっかくなので、『地獄八景亡者戯』を収録したCDを購入する。米朝師匠の音源と聴き比べてみようと思う、意地悪な僕である。席に座ると、真正面の最前列だったので驚いた。……というのは、事前にチケットを確認していなかったからである。目が合ったりイジられたりしないだろうか……と、少しばかり不安になる。

午後1時、開演。

前座は桂楽珍。前座にしては風格があると思ったのだが、なんでも文珍師の一番弟子だという。一番弟子というと聞こえはいいが、文珍師の弟子は二人しかいない(※落語ファン倶楽部調べ)ので、それほどのものでもない……ということもない。息子がホストから相撲取りになったというマクラ(もしかしたら逆かもしれない)から、古典落語『半分垢』へ。関取になって帰ってきた夫の話を若い衆へと大袈裟に話してみせた妻が、それをたしなめられて、極端に反省してしまう噺である。流石に芸歴が長いとあって、口調はなかなか上手い。ただ、やたらと面白かったマクラと比べると、ちょっと弱かったような気もする。

楽珍さんが引っ込んだところで、主役の桂文珍師が登場。高年層にウケそうなマクラを振ってから、新作落語『憧れの養老院』へ。養老院に入るためのお金を手に入れようと、銀行強盗を試みる老夫婦の姿を描いたネタだ。その背景はなかなかに切ないが、二人のやり取りがいちいちコミカルでついつい笑ってしまう。個人的には、包丁を取り出すくだりで大笑いしてしまった。

ネタが終わると仲入り……かと思いきや、次の芸人さんが登場。幕には内海英華との御案内。着物姿の似合う、如何にも芸人といった雰囲気が漂う女性だ。彼女が三味線を片手に、小唄や漫談を語っていく。後で調べてみたところ、女道楽というジャンルの芸らしい(高座でもそう言っていたような気もするが、ちょっとボンヤリしていたので聞き逃してしまった模様)。こういう演芸は、流れに乗って楽しむに限る……と、凛とした芸をふわふわと堪能しているうちに終演となった。いい心地である。

さあ、今度こそ仲入り……と思わせておいて、再び文珍師のご登場。立て続けに四本も観るのはちと苦しい。高知まで車を転がしてきた疲れも相成って、ウトウトし始める。しかし、ここは最前列。眠ってしまうのは客としてのプライドが許さない。必死に眠気をこらえて、高座を見つめる。ネタは『風呂敷』。知り合いの若い衆を家に招き入れた奥さんの元へ、嫉妬深い夫が予定よりも早く帰ってきた。ひとまず若い衆を押し入れに詰めるも、夫がその前で酒を飲み出して逃がすことが出来ない。どうしたものか……というネタである。恐らくは、面白かったんじゃないかなあ……と思う。なにせ眠気が大変なことになっていて、そちらばかりが気になってしまったので……ああ、勿体無い。

ここでようやく仲入り。小用を済ませにトイレへ向かうと、途中でコインロッカーを発見。使用後にコインが戻ってくるシステムのヤツだ。先程、物販で購入したCDがどうもジャマだったので、嬉々として利用する。

仲入り後、いきなり文珍師が登場。有難いことに、この時点で何故か眠気はすっかり無くなっていた。……僕の身体はどういうバイオリズムなんだろう? ネタは『らくだ』。暴れん坊として周囲から嫌われていた“らくだ”が亡くなった。その第一発見者であり兄貴分の男は、らくだの葬儀をあげるために近くを歩いていたくず屋を捕まえて、長屋の連中から銭を巻き上げる算段を始める……というもの。元は上方落語で、後に東京へも伝わっていったネタだという。原本がそうなっているのか、文珍師匠が語るらくだの動向がなかなかに極悪で笑えない。祝儀を立て替えてもらって払わない、勝手に長屋に住み着く、漬物屋に置いてあった桶に手を突っ込んでたくあんを引っ張り出し「こんなところにたくあんが落ちてらァ」とのたまう……完全なるろくでなしである。誰もが、そんならくだに銭なんか使いたくないのに、無理矢理ひったくられてしまう。なんたる理不尽。しかし、この理不尽さがあるからこそ、終盤の驚くべき展開に胸がスーッとなる。近年の『らくだ』は、この驚くべき展開の場面でオチとされることが多いのだが、文珍師はきちんと最後まで演じ切っていた。実に満足である。

『新潮落語倶楽部2 三遊亭白鳥』

新潮落語倶楽部その2 三遊亭白鳥新潮落語倶楽部その2 三遊亭白鳥
(2011/10/19)
三遊亭白鳥

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新潮社が運営する落語配信サイト“SSweb”で配信していた落語音源をCD化したシリーズ。第二弾は三遊亭円丈の弟子、三遊亭白鳥。収録されているネタは『地下鉄親子』『し返し』の二本。近年の新作落語に多大なる影響を与えた円丈の弟子とあって、古典は完全に無視、二本ともに新作という構成を取っている。

観客と“しりとり”を繰り広げようと試みる『し返し』も、実験的な意味ではなかなか面白い。しかし、それよりなにより『地下鉄親子』が傑作。そのストーリーは、土方の母親を持つ少年を奮い立たせてやろうと、母親の同僚たちが協力する……という、昔ながらの使い古されたものだ。だが、使い古されているだけに、そこには普遍的な強さがある。

そんなベタなストーリーの中で展開しているのは、白鳥ならではのブッ飛んだギャグの数々と、そこはかとなく漂う哀愁のリアリティだ。例えば、貧乏でバカだと言われてイジメられている子どもたちのやり取りには、ギャグがそこらに散りばめられているにも関わらず、なんともいえない哀しさが滲んでいる。その理由は、マクラでも語られているように、実家が自転車屋を営んでいた白鳥自身がそういう体験をしていたからなのだろう。だから、そこには妙な生々しさがある。CDの紹介文に“俺の原点、下手な落語を聴いてやってくれ!”とあるが、むしろ白鳥のベスト作といっても過言ではないかもしれない。ご賞味あれ。


・収録日
『地下鉄親子』28分31秒(2001年9月30日)
『し返し』21分12秒(2003年9月18日)

『新潮落語倶楽部1 柳家喬太郎』

新潮落語倶楽部その1 柳家喬太郎新潮落語倶楽部その1 柳家喬太郎
(2011/10/19)
柳家喬太郎

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新潮社が運営する落語配信サイト“SSweb”で配信していた落語音源をCD化したシリーズ。第一弾は柳家さん喬の弟子、柳家喬太郎。収録されているネタは『子ほめ』『喜劇駅前結社』『家見舞』『寿司屋水滸伝』の四本。古典の滑稽噺が二本、新作が二本という構成を取っている。

古典については文句無しの出来。子どもを褒めて親に何か奢ってもらおうとして失敗する『子ほめ』、贈り物の水瓶を買いに行くも銭が足らずに代用品としてとてつもない物を持参する『家見舞』。どちらも20分未満のごく短いネタだが、その小さな枠の中で軽快に展開している。満足感の残る二本だ。惜しむらくは残りの新作二本。

ごく当たり前のそば屋に隠された過去が明らかとなる『喜劇駅前結社』、洋食屋をしていた腕の無い寿司屋の元にネタのスペシャリストが集う『寿司屋水滸伝』。どちらも喬太郎落語特有のナンセンスに満ちた作品だが、やや物足りない。突飛な展開を迎える『喜劇駅前結社』は世界観に浸るには時間が足りなかったように思うし、『寿司屋水滸伝』に関しては元来の後半部分を大幅にカットしている。どちらも、もう一展開あればもっと面白くなっていたのではないかという気がして、仕方が無い。古典に留まらず、新作を二本収録するという心意気は買うが、本作に関しては、一本で足りていたのではないかと思った次第である。まあ、それでもステキな一品であることには、変わりないんだけれども。


・収録日
『子ほめ』17分03秒(2005年2月10日)
『喜劇駅前結社』20分09秒(2001年7月30日)
『家見舞』14分04秒(2003年5月9日)
『寿司屋水滸伝』11分09秒(2005年8月16日)

秋の夜長に気になる本

読書の秋だからなのかは知らないが、このところ書店に行くたびに気になる本を見つけてしまう。11月はDVDのリリース枚数が半端じゃないので、出来る限り節制に努めていきたいところなのだが、どうも気になって仕方ない。勿論、僕もそれなりに仕事をこなしている大人なので、買おうと思えば買えないこともない。ただ、やはりこれも大人なので、月の給金から幾らかの貯蓄は蓄えたいという欲望もある。“買う”の欲望と“貯める”の欲望の狭間で悶え苦しむ僕の辛さたるや、想像に難くない(←何故に他人事の様なのか)

今回は、そんな気になる本の数々について、なんとなくブログに書き留めていこうという話である。正直なところ、「このブログをやっている人間は、こういう本に興味を持っているんですよ」というだけの内容なので、別にオススメしようという魂胆は無い。そもそも、僕自身もまだ読んでいないのだから、オススメしようがないのだが。

■『安全な妄想』
安全な妄想安全な妄想
(2011/09/22)
長嶋有

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長嶋有という人について、僕は詳しく知らない。確か、芥川賞だか直木賞だかを受賞していたと思うけれど、どっちだったかなあ……という程度にしか知らない。ただ、作家としてではなく、コラムニスト“ブルボン小林”としての彼は、それなりに知っているつもりだ。ブルボンのコラムがテーマの対象としているのは、テレビゲームや漫画の様なインドア度の高いモノばかり。でも、そういったインドア系のモノをテーマにしているにも関わらず、ブルボンのコラムはとにかく分かりやすくて面白い。それがどういうゲームか、それがどういう漫画か分からなくても、きちんと楽しく読めるのである。どうしてなのかというと、ブルボンはそれらの対象を、それらをテーマとしているにしてはちょっとヘンテコな視線で切り取っているからだ。本書はそんなブルボン……もとい長嶋有のエッセイ本。面白いと思います、多分。

■『しごとのはなし』
しごとのはなししごとのはなし
(2011/10/22)
太田 光

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筆者の太田光については、ここでわざわざ説明する必要もないだろう。関東の漫才界に燦然と輝く功績を残し、西の天才漫才師ダウンタウンと並び称される程になった爆笑問題のボケを担っている、彼である。太田のエッセイは何度か目にしたことがあるが、どうも文章が堅苦しくて楽しみにくかった。特に、社会的なテーマが取り上げられている時などは、彼の思想的スタンスがなんだか暑苦しくて、とてもじゃないがまともに読むことが出来なかった。しかし、本書は語り下ろしだという。あの堅苦しい文体が少しでも解消されていると、実に有難い。本書において、太田は様々なことについて語っているらしい。が、なんといっても気になるのは、タイトルにもある“しごとのはなし”だ。テレビでは自由奔放に話題を振っているイメージがある彼にとって、仕事とはどういうモノなのか。実に気になる。面白いと思います、多分。

■『考えの整頓』
考えの整頓考えの整頓
(2011/11/01)
佐藤雅彦

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佐藤雅彦という名前を知っている人は、案外少ないのかもしれない。だが、彼の名前に「~の」と付けると、分かる人も多いのでは。例えば、「バザールでゴザールの」だとか、「だんご三兄弟の」だとか、「ピタゴラスイッチの」などの言葉を繋げてみよう。恐らく、多くの人が「ああっ」と言葉を漏らしたのではないかと思う。世の中で漠然と流行している様々なモノたち。佐藤の作品は、そんな漠然とした流行となるものばかりだ。本書は、佐藤が世の中にはびこる様々な事物を考察し、分析した本だという。彼の本はとにかく面白い本が多い。これもきっと面白いと思います。多分。

……と、ここまで書いたところで、まだまだあった筈の読みたい本を完全に失念してしまった。まだあった筈なんだけど、今回はこれにて。

「オンバト+」十月二十九日放送感想文※富山収録

ムートン【449kb/1,371票】※視聴者投票2位
今期二勝目。アルバイトが禁止されている学校の教師が、生徒のバイト先で万引きを働いてしまうという奇妙なシチュエーションのコント。校則を破った生徒を説教する万引き教師という複雑な状況を編み出しただけでも凄いが、それを実に上手く笑いに繋げている点が素晴らしい。ただ、それ故に、もうちょっとしっくりくるオチにしてもらいたかった感も。

オテンキ【397kb/971票】※視聴者投票3位
今期初オンエア。前回はタクシーをテーマにしたコントだったが、今回は旅行代理店を舞台にのりが小ボケまくる。のりの小ボケは面白いけれど、どうしてもザキヤマに見えてしまうのが残念で仕方ない。加えて、ちょっと切なくなる展開は前回のオンエアを彷彿とさせて、二番煎じにしか見えず。ついでにいうと、コントにドラマ性を取り入れようという発想は悪くないが、のりが明るく小ボケまくっている背景をドラマ的にするのはどうかと思う。普通にやっててそれなりに笑えるものに、なんだか水を差された気分にならなくもない。

span!【489kb/1,394票】※会場審査1位・視聴者投票1位
初オンエア。「爆笑オンエアバトル」時代には伸び悩んでいた彼らだが、ここにきて自己最高記録を叩き出した。今回のネタは、子供の頃にやっていたいたずらを再現してみる漫才。以前から、彼らの漫才はキングコングっぽい印象があったが、今回の漫才もまんまキングコングっぽい。きちんと比較したわけではないが、なんかキングコングっぽい。分かりやすくてオーソドックス、下らなくてアクロバット。うーん、キングコングっぽい。ただ、この路線を行くタイプの漫才師は少ないので、こういうのもアリといえばアリかもしれない。今後、彼らが漫才にどんな個性を見出していくのか、ちょっと気になる。

カブトムシ【449kb/673票】
今期初オンエア。昨年度はまったく注目されていなかったにも関わらず、震災の影響で第1回チャンピオン大会に出場してしまった彼ら。コント師としての技術向上もあるのだろうが、なにより追い風に吹かれているようだ。今回はヒッチハイクをシチュエーションとしたコント。地元ネタを取り入れたり、ユニゾンツッコミを取り入れたりして、かなり作り込まれていたと思う。それなりに笑えもした。ただ「募金活動」のくだりは、完全に蛇足。先程のオテンキもそうだが、無闇にハートフルにしていこうというのは浅墓で良くないと思う。……トップリードの影響か?

コンパス【357kb/518票】
初オンエア。大きなネクタイをつけている西本は、かつて人力舎所属の“ドリンク”というコンビを組んでいた。個人的にちょっと懐かしい名前。今回のネタは、結婚式の練習をしようという西本の妄想が、相方の中島を放置して突き進んで展開していくスタイルの漫才。フォーマット自体は、まあまあ面白い。ただ、それを成立させる西本の妄想が、ふわっとしていて不安定。砂かけ婆はちょっとなあ……その後、まったく広がらないし。ただ、今後の展開次第では、化けそうな気も。次、あるか?

・今回のオフエア
345kb:マシンガンズ
325kb:ニレンジャー
313kb:ゆったり感
185kb:牧野ステテコ
129kb:乙

「爆笑オンエアバトル」視聴者投票1位バトルに進出したマシンガンズ、実はここ数ヶ月オンエアに恵まれていないニレンジャー、第1回チャンピオン大会出場したゆったり感などの名前が並ぶ。マシンガンズは個人的に観たかったな。また、下ネタ芸で知られる牧野ステテコも低キロバトルでオフエア。ここはむしろ、どうして出場したのかが謎。

・次回
AMEMIYA
あんぺあ
うしろシティ
クロスバー直撃
ザ・ゴールデンゴールデン
チョイチャック
天狗
トミドコロ
ニッケルバック
八福亭

うしろシティ、ザ・ゴールデンゴールデン、天狗、トミドコロが二勝目狙い。特に前回オーバー500を記録した天狗は、今度こそチャンピオン大会出場権を獲得したいところ。その他の注目としては、やはりAMEMIYA。R-1ぐらんぷりで惜しくも佐久間一行に敗れた彼は、一体「オンバト+」のステージでどんな曲を披露してくれるのか?
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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