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『KINGKONG LIVE 2010』

KING KONG LIVE 2010 [DVD]KING KONG LIVE 2010 [DVD]
(2011/07/20)
キングコング

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最初に言い始めたのは誰なのか。彼らの何を見て、どう感じて、そういう結論に至ったのか。その発端は定かではないが、キングコングが面白くないコンビだということは、一つの常識としてネットを中心に広く伝えられている。NSC在学中にNHK上方漫才コンテスト最優秀賞を受賞、その後も数々のお笑い賞レースをことごとく制覇し続けてきた彼らは、いわばお墨付きの漫才師だ。また、その一方で、ロザン・ランディーズとともにユニット“WEST SIDE”を結成し、大阪の若い女性たちから高く支持されていた。……にも関わらず、現在の彼らは決して芳しい評価を受けているとは言い難い。

キングコングが面白くないとされている理由の一つに、人気と実力が比例していないという印象があるように思う。早々と「はねるのトびら」レギュラーの座を獲得し、更に数々のバラエティ番組にも着々と進出していった彼らは、いわゆる年功序列システム、或いは、辛酸を舐めて這い上がってきたという様なドラマ性から外れた、俗にいうところの異端児的な存在だった。そういった若手はどうしても生意気に見える、という日本人的な鬱屈とした凡庸思想が彼らの評価を不当に値下げしてしまったのではないか、と個人的には考えている。……まあ、西野がブログでビッグマウスぶりを発揮していたことも、少なからず関係しているのだろう。正直、タレントとしての彼らは、可もなく不可もなくといったところで、そこまで非難されるものでもなければ、それほど評価されるものでもないと思うが。

それでは、漫才師としての実力はどうか。先にも書いた様に、キングコングはかなり早い段階から漫才師として高く評価されていた。だが、「M-1グランプリ2001」を観た人なら分かると思うが、少なくともM-1においては、当初彼らは漫才師としてそれほど評価されていなかった。どうして、ここにズレが生じたのか。恐らく、キングコングの漫才は、技術的には既に完成されていたのだろう。ただ、その徹底して動きにこだわった視覚的な笑いが、些か軽薄だったのだろう。無論、それが彼らの芸の本質ではあったのだろうが、濃密な笑いを求めるM-1グランプリという空間では、それはあまりにも軽過ぎた。事実、当時の放送をリアルタイムで観ていた僕も、彼らの漫才にはあまりシンパシーを感じられなかった(おぎやはぎの漫才には激しく感じていたが)。

あれから十年。キングコングの漫才は、随分と進化を遂げた。ただただ軽くてソツの無さだけが印象的だった彼らの漫才は、その分かりやすさを維持しつつも、幾らかの奥行きが見られるようになった。彼らにとって初めての単独DVD『KINGKONG LIVE 2010』には、近年のキングコングの漫才が収録されている。幕間映像を要することなく、ひたすらに漫才だけで駆け抜ける約90分間のライブは、彼らが漫才にストイックであることを真摯に表している。

本作に収録されている漫才は、そのほぼ全てが新ネタだ。コンビのどちらがオシャレなのかをしりとりで競い合う『しりとりDEてんやわんや』、テレビのヒーローを二人で再現してみる『ヒーロー見参』、怖い話を始めた筈がとある有名バラエティ番組がいきなり飛び込んでくる『怖い話は難しい』など、徹底して分かりやすく、かつバカバカしい内容の漫才ばかりが披露されている。個人的に大笑いしたのは、海水浴場に行くときに浮輪が邪魔になるので顔にハメていこうという漫才を、実際に顔に浮輪をハメて演じた『ウキウキ海水浴』。小道具を駆使した反則気味な漫才だったが、あまりの下らなさに苦笑いが止まらなかった。

逆に、イマイチに感じられたのは、『僕らの機種変更』という漫才。その内容は、梶原が携帯電話の機種変更をやろうと思っているのだが、やりかたが分からないので、西野に教えてもらう……というもの。バカのふりをした梶原が「どうすんねん?」「どうしたらええねん?」とどんどん西野を追い込んでいく様が面白いネタだったのだが、どうしてもブラックマヨネーズの漫才を思い出してならなかった。以前、似たようなネタを披露している二人を「笑神降臨」で見た記憶があるが(あれは住民票の貰い方だったか)、こういうスタイルが彼らにとって一つのパターンとして存在しているということなんだろうか。それにしては、梶原の追い込みは吉田ほどに理論的ではないし、西野のテンパり具合も小杉ほどに冷静ではない。全体的に感情が走り過ぎていて、こちらに伝わってこないのである。ライブで観れば、もうちょっと印象も変わるのかもしれないが……。

恐らく、キングコングに対して少なからず好感を抱いている人間ならば、何も考えることなく大笑い出来ることだろう本作。だが、一歩引いてみると、これが妙に閉鎖的な印象を受ける。東スポで記事にされたという“西野、路上土下座事件”をネタにするというライブ感溢れるイジりが行われていることも関係しているのだろうが、それよりももっと根深い何かがそこにあるような気がしてならない。

そして思い出したのが、ラーメンズである。いわゆるお笑いファンをターゲットとしていないラーメンズの単独公演を訪れるのは、多かれ少なかれ、彼らのことを理解している“ラーオタ”と呼ばれているファンだ。しかし、ラーメンズのコントは決して彼らのみが理解できるものではない。彼らのことをまったく知らない人間でも楽しめる、分かりやすさと下らなさで構築された笑いが、そこにはある。これと同じ空気を、キングコングライブにも感じられた。無論、彼らは大衆を相手にするタイプの漫才師なので、もっと多くの人たちを対象として捉えているのだろうが……コンビ同士でイチャイチャするくだりが少なくなかったのも、その原因かもしれない(ラーメンズもたまにそういうことをやる)。

コンビ結成10年目を迎え、中堅漫才師としての趣が強くなってきたキングコング。その漫才は相変わらず技術的に優れているが、まだまだ年齢に見合っていないような印象もある。彼らが何処へ向かおうとしているのか、僕にはさっぱり見当がつかない。ただ、漠然とではあるが、彼らは中年になった時にこそ、その本当の面白さを発揮するのではないかと思っている。ライブのアンコールで披露されている『たのしい運動会』は、今の彼らがやっても対して面白くない。でも、彼らが中年になって、体型が崩れて、今よりも高そうなスーツを着るようになった時に、このネタをやればメチャクチャ面白いんじゃないかという気がしている。この予測が的中するかどうかは分からないが、少なくともその日まで、僕は待ってみたいと思う。まあ、期待してみようよ。


・本編(88分)
「しりとりDEてんやわんや」「ヒーロー見参」「怖い話は難しい」「居酒屋へようこそ!」「ウキウキ海水浴」「かけ算リメンバー」「僕らの機種変更」「たのしい運動会」

・特典映像(101分)
「ツアーメイキング映像」「北海道公演、打ち上げ」
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2011年12月のリリース予定

1207『Live! 清水ミチコのお楽しみ会 ”バッタもん”
1214『bananaman live emerald music
1214『しずる POWER×POWER DVD
1221『安田ユーシ・犬飼若博 LIVE 双六『録』
1221『KENTARO KOBAYASHI LIVE POTSUNEN 2011 『THE SPOT』
1221『こんぺいとう』(ニッチェ)
1221『バカリズムライブ番外編「バカリズム案4」
1221『イチマル』(ハライチ)
1222『ゲームセンターCX DVD-BOX8
1223『キングオブコント2011

2011年が終わる。各々方、この一年間を有意義に生きたか。否、有意義に生きたという満足感を得ているか。うち一ヶ月くらいは、有意義に過ごしただろうか。こんなことを言っている自分はどうかというと、やはり僕とて同様である。性と欲望に溺れるという人間の業を堪能しながら、漠然とした日常を淡々と過ごすという凡人風情を満喫した一年を経て、また新たなる一年がやってくる。どうせまた来年がやってくると高を括って、この残り一ヶ月も無為に過ごしてしまうのか。談志の死を見よ。死ぬことは無いと思っていた巨人ですら、最期は呆気無く死ぬのである。さあ、残り一月を、各々どう過ごす。僕は笑う。笑わなくてはなるまい。笑い飛ばして、悲しさと怒りに満ちた2011年という、このクソったれの連鎖に歯止めをかけるのだ。ニッチェだ!ハライチだ!しずるだ!バナナマンだ!小林賢太郎だ!さあ、現代の笑いを、笑え。

談志の「型」について一考

2011年11月21日、夜。私はTwitterの画面を見つめながら、静かに憤っていた。

事の発端は、私がフォローさせていただいている方がリツイート(※他者のつぶやきを自分をフォローしてくれている方々に見せる行為)したつぶやきだった。それが何処の誰によるつぶやきなのかはここでは書かないが、簡単に説明すると、その方はとある会社の就職面接官を担当した経験をお持ちとのことだった。そして当時、質問に対して型通りの受け答えしか出来ない就職生たちは次々に落としていった、スラスラと型通りの言葉しか口にしなかった就職生たちは学生らしくなくて気持ちが悪かった、とつぶやかれていていたのである。

この感覚が、どうも私には理解できなかった。就職生たちに対するイジメではないか、とまでは思わなかったものの、型通りの答えしかできなかった彼らを「気持ちが悪かった」と突き放してしまえる冷酷さには違和感を覚えた。型通りの答えとは、即ち、世間において正解とされている答えということではないか。これから社会に出ていこうという若者たちが、その社会の入り口ともいえる就職面接において、社会にとって聞こえがいい言葉を並べるのは当然のことではないか。むしろ、社会の先輩である面接官がすべきことは、そんな彼らを冷たく突き放すことではなく、彼らが真に社会に出てきた時に何をしたいと思っているかを引き出す質問ではないのか。……と、そのように、若さゆえの生意気な私の思考回路が頭の中で火花を散らしていた。

そして、ふっとある言葉を思い出した。僕はその言葉をTL上に流出した。そうすることで、漠然と溜飲を下げようと思ったのである。それが、この言葉だった。(※実際には、Twitterの文字数の限界を考慮して、一部を省略した内容の言葉を流したのだが、ここでは全文を抜粋する)

立川談志「型ができてない者が芝居をすると型なしになる。メチャクチャだ。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。どうだ、わかるか? 難しすぎるか。結論を云えば型をつくるには稽古しかないんだ」



この言葉は、2008年に立川談春が上梓したエッセイ『赤めだか』に記載されているものだ。彼がまだ前座(※落語家のスタート地点。いわゆる「落語家未満」の状態)だった頃、師匠である立川談志に稽古してもらった『狸』を当人に聴いてもらった時に、こう言われたのだという。談志の言葉を流出した私は、まるで自分が「型がしっかりしていない就職生に、型破りを求めるな」とくだんの方に言ったような気持ちになって、その日は床についた。

同日、14時24分。言葉の主である立川談志が、死んだ。

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第12回東京03単独公演『燥ぐ、驕る、暴く。』

第12回東京03単独ライブ「燥ぐ、驕る、暴く。」 [DVD]第12回東京03単独ライブ「燥ぐ、驕る、暴く。」 [DVD]
(2011/11/16)
東京03

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第十二回東京03単独公演『燥ぐ、驕る、暴く。』がDVD化された。

パッケージを見ると、スーツ姿の三人が写し出されている。公演のパンフレットか、或いはポスターで目にした写真と同じものだ。自然に、今年7月に行われた岡山公演のことを思い出す。駅から歩いて十数分のところにある“さん太ホール”で行われた、あの日の公演のことを。

(以下、ネタばれを含みます)

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大学という独自の世界『四畳半神話大系』

四畳半神話大系 第1巻 [DVD]四畳半神話大系 第1巻 [DVD]
(2010/08/20)
浅沼晋太郎、坂本真綾 他

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先日、久しぶりにアニメ映画『天空の城ラピュタ』を観たという話をしたが、その勢いのままに、今度は『未来少年コナン』のDVDを借りることにした。近所のTSUTAYAに入店し、とりあえず一巻と二巻のDVDを手にとって、そのまま店内をぶらぶらり。特に借りたいものがあるわけでもないのに、邦画や洋画や海外ドラマのコーナーあたりをぶらぶらり。とっとと借りなさいよという声も聞こえるが、なんだか同じシリーズの作品のみを借りるというのは、その作品のマニアだと思われそうで、あまり芳しくないと思うのである(自意識過剰)。どうしよう、どうしよう。早く決めないと、夕飯の時刻がどんどん遅くなってしまう。うーんうーん。

あれこれ悩んだ結果、借りてきたのが『四畳半神話大系』だ。原作の森見登美彦がなにやら面白い人物だと聞いていたので、一度は目にしてみたいと思っていたのだが、ここらで一つ手を出してみようと思い至った次第である。とはいえ、面白くなかったらばどうしたもんだろう、という疑念もあったため、レンタル後もしばらくは鑑賞に至らなかった。かくして訪れた返却日前日、もう観なくてはならないと覚悟を決めて再生ボタンを押す。……と、これが滅法面白い。

物語の舞台は京都市のとある大学。主人公の“私”は、そのコミュニケーション能力の低さが故か、青春の二文字からまったくもってかけ離れた大学生活を過ごしていた。私と行動を共にしてくれるのは、宿敵であり盟友の“小津”ただ一人。鬱屈と苦悶で満ちた日常。しかし、ふとしたきっかけで、私は“明石さん”という女性に巡り合う。明石さんは私の後輩であり、理知的でクールな乙女だ。そのキツい発言から周囲を寄せ付けない彼女だが、私には少なからず好意の様な感情を抱いているらしい。これはチャンス。果たして私は、明石さんとただならぬ関係になれるのか?

要するに恋愛モノなわけだが、個人的にはそれよりもエピソードの中で綴られる「大学サークル」という独特の空気が再現されていることに面白さを感じた。例えば、テニスサークルの中で結ばれるカップルに対して敵意を剥き出しにしながら別れさせ屋然とした活動を行う私&小津の振る舞いや、映画サークルの中でバカで女好きな内面とは裏腹に徹底して部員からの人望を集め続ける理不尽な先輩の存在などは、その描写が極端であるとはいえ、やはり鬱屈とした大学生活を送っていた身としては、とてつもなくリアルに思えた。おかげで、「ああ、あるある。こういう状況」と苦笑いを浮かべながらも、時折心がざわついてしまった次第である。トラウマの様な何かが……!

後でスタッフを確認して、驚いた。アニメーション制作は天下無敵のマッドハウス、シリーズ構成は面白い芝居に定評のあるヨーロッパ企画を旗揚げした上田誠、キャラクター原案はアジアンカンフージェネレーションのパッケージでお馴染み中村佑介、音楽は数々の映画・ドラマ・テーマソングを手掛ける大島ミチル。そして、それらを一手に率いているのが、『マインド・ゲーム』『ケモノヅメ』『カイバ』などを手掛けてきた湯浅政明……そりゃ面白いわ!面白くならない方がおかしいわ!

※『マインド・ゲーム』『ケモノヅメ』『カイバ』は超を幾つ付けても足りない傑作。個人的に。

まだ一巻しか観ていない段階で決めつけるのは尚早かもしれないけれど、かなりの名作なんじゃないかと。『未来少年コナン』は一旦置いといて、ひとまずコレを観るぞ。

超人死す。

立川談志が亡くなったという。

言いたいことはTwitterにおおよそ書いた。大半はブログに残しておくほど、重要なことは一つとしてない。そもそも僕程度の人間が、生前から偉人の如く重厚な存在感を見せていた家元について、ああだこうだと書くこと自体がおこがましい。彼についてあれこれと書くのは、もっと落語についての造詣が深くなってからじゃないと。

とりあえず、今回の訃報を受けて、立川談志の落語に触れたいという人もいるだろうから、そういった方へのオススメ作品を取り上げておく。今の自分に出来ることといえば、これくらいのもんだろう。

落語CDムック立川談志 1 (Bamboo Mook)落語CDムック立川談志 1 (Bamboo Mook)
(2010/12/15)
不明

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落語CDムック立川談志 2 (Bamboo Mook)落語CDムック立川談志 2 (Bamboo Mook)
(2011/01/15)
不明

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落語CDムック立川談志 3 (Bamboo Mook)落語CDムック立川談志 3 (Bamboo Mook)
(2011/02/15)
不明

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去年12月から今年2月までにリリースされた落語CDムック本「立川談志」。落語家としての立川談志を知る上で、これほど入り口に相応しい作品は無いのではないかと思う。……って、他のCDを殆ど聴いたことがない僕がいうのもアレだが。一巻に『芝浜』『源平盛衰記』、二巻に『黄金餅』『野晒し』、三巻に『居残り佐平次』『あくび指南』を収録している。『源平盛衰記』はこのCDで初めて聴いたのだが、ギャグの多さに圧倒させられる。また、これに加えて、家元と川戸貞吉氏(演芸評論家)へのインタビューが掲載された本もくっついてくるんだから、お買い得だ。ちなみにインタビュアーは松本尚久氏。大変にイイ仕事をしておられます。

にっかん飛切落語会 よりぬき名人名演集(1) (バンブームック 落語CDムック)にっかん飛切落語会 よりぬき名人名演集(1) (バンブームック 落語CDムック)
(2011/10/15)
不明

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とりあえず一席だけ聴いてみたいという人には、これ。三遊亭小遊三・桂歌丸・立川談志の落語を収録していて、もし談志の落語が合わなくても、あと二人は予備があるという有難い一品。ネタも、小遊三『浮世床』、歌丸『紙入れ』、談志『五人廻し』とそれぞれの十八番を収録している。で、この『五人廻し』……個人的にとても好きだ。女郎にぞんざいに扱われている客がそれぞれ個性的で、なのに、そのどれにも談志のキャラクターが染み込んでいる。談志フィルターを通して演じられている、とでもいうのだろうか。中でも大好きなのが、御大尽が五円札を渡すところ。何も考えずに笑い飛ばせるぞ。

笑う超人 立川談志×太田光 [DVD]笑う超人 立川談志×太田光 [DVD]
(2007/10/24)
立川談志、太田光 他

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談志の落語を収めたDVDは沢山あるみたいだけれど、僕はこれでしか観たことがない。ので、映像はこれだけ推しておく。談志のDVDムック本も出ていると聞いているが、実際に目にしたことはない。amazonでも取り扱われていないので、本当はリリースされていないんじゃないかと思う。で、本作。爆笑問題の太田光が、立川談志への愛情と熱意を良くも悪くもストレートにぶつけた一品である。観客の笑いもない空間で、ただただ談志が落語を披露する……という状態では、とてもじゃないが笑えない。でも、まあ、つまらなかったら全て太田の仕業にしてしまえるという意味では、気楽に観られる作品ともいえる。ネタは『黄金餅』『らくだ』を収録。また、特典映像には、タイタンライブで披露したという『鼠穴』。この『鼠穴』が凄い。お笑いのライブをやっている会場とは思えない、物凄い緊張感に包まれている。これだけでも必見。

ただ、個人的には、これも気になる。
立川談志~「落語のピン」セレクション~DVD-BOX Vol.1立川談志~「落語のピン」セレクション~DVD-BOX Vol.1
(2008/12/03)
立川談志

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「孝行をしたい時に親は無し」という言葉がある。親はいつか亡くなってしまうものなんだから、生きているうちに孝行しておきなさいよ、という忠告の言葉だ。かの演芸評論家、色川武大は亡くなる寸前に「いいなあ君たちは、談志の晩年が見られて」と口にしたというが、これと同じ言葉を、今度は談志の落語を観たことのない世代が口にするのやもしれない。「いいなあ君たちは、談志の晩年を見逃さなくて」。鑑賞をしたい時に談志無し……。

「オンバト+」十一月十九日放送感想文

井下好井【465kb/930票】※視聴者投票3位
二戦二勝、今期二勝目。初出場でオーバー500を記録し、鮮烈なデビューを飾った彼ら。それ故にハードルも上がったと思われるが、今回も465kbとそれなりに高い数値を叩き出した。チャンピオン大会まっしぐらといったところか。ネタは「電話のガイダンス」。久しぶりに電話をかけた相手の番号が変わっていたときの悲しいガイダンスを自己流にアレンジする。分かりやすいテーマだけど他ではあまり見たことのない、絶妙な隙間を取り上げている時点でちょっと感心。ネタの構成は無難だが、それよりも基礎を逸脱しない丁寧さが目についた。オーソドックス街道をひた走る。坂東英二のくだりで失速したが、当人たちが納得ならば無問題。そのまま行けばいい。

バイきんぐ【517kb/1,036票】※会場審査1位+視聴者投票2位
五戦三勝、今期初オンエア。そんなに負けが込んでいる印象は無かったのだが、なんだかんだで一年以上のスパンを空けて、久方ぶりのオンエアとなった。ちなみに自己最高、自己初のオーバー500。嬉しいね。今回のネタは、ファミリーレストランのオーダー。内容よりも構成で見せるスタイルのコントで、ハマれば面白いんだろうなあ……と。ただ、個人的にはあまりハマらず。こういう一つのことをぐだぐだと引っ張り続けるスタイルのネタは最近の流行りで、例えばジャルジャルあたりがやってたりして、その辺りの人たちと比べるとどうしても弱く感じられるからだろう。あと、ツッコミ方が途中からまったく同じトーンで、展開にメリハリがついてなかったのも残念。「まさか初っ端で粉が出てくるとはな!」には笑ったけど。あと、オチは好き。まんま『寿限無』だったけど、でも好きだ。……生で見ると、またちょっと違うのかな。

TAIGA【449kb/629票】
二戦一勝、今期初オンエア。TAIGAはオスカープロモーションに所属するピン芸人で、2007年には「爆笑オンエアバトル」に挑戦した経験もある。その頃から数えると、およそ四年半越しのオンエアということになるようだ。今回のネタは、80年代に放送されていたトレンディドラマでありそうなやりとりを再現するというもの。一昔前のノリやフレーズを多用し、その時代の雰囲気を作っているのは分かるが、コントの本質的な部分がやや雑で洗練されていない感も否めず。狙いどころは悪くないので、更なる進化に期待したいところだが、伸びしろはあるのだろうか。……あと、こういうノリって、たまに小林賢太郎(ラーメンズ)がコントに取り入れてるから、どうしてもちょっと既視感が……。

かもめんたる【473kb/894票】
七戦六勝、今期二勝目。勝者コメントで「やったぜオーバー400!」と冗談のように口にしていたが、確かに今年四月に入ってからの彼らは400をなかなか越えられなかったので、割と本気のコメントだったのかもしれない。今回のネタは、通訳をしている男が介護士をしている友人にお金を借りに行くのだが、それぞれ仕事での口調が会話の中で出てきてしまう……という、不思議な空気のコント。設定を思いついただけでも凄いが、それを演じ切る演技力が素晴らしい。「なんという哀れな後部座席なのだろう」というナンセンスなワードも飛び出して、実に満足感の残る内容だった。これを機に、彼らのコントがもうちょっと支持されるようになってくれると嬉しいのだが。

メンソールライト【425kb/1,163票】※視聴者投票1位
五戦三勝、今期初オンエア。昨年度は、居酒屋を舞台とした不思議なスタイルの漫談ネタで二勝するも、特に目立った結果を残すことのなかったメンソールライト。そんな彼が今回見せたのは、着物姿で高座に上がっていつもの居酒屋風景を表現するという、非常にインパクトのあるスタイルのネタだった。要するに落語スタイルなわけだが、その内容はいつもと大して変わらない。相変わらず、ちょっとした毒舌を吐いてみたり、絶妙に上手いことを言ってのけたりしている。だが、居酒屋というシチュエーションをより自然にすることで、ネタの世界に入りやすくなったようには思う。今後、このスタイルをどう開拓していくのか、また、このスタイルを見た本業の落語家たちはどう思うのか、気になるところである。

・今回のオフエア
417kb:リンシャンカイホウ
373kb:和牛
245kb:虹の黄昏
201kb:セバスチャン
193kb:ランチランチ

今期二勝目狙いだった和牛が微妙な数値で敗退。まだまだネタに不安定感が漂っているということか、それとも番組にハマりきれていないだけなのか。「爆笑オンエアバトル」時代にはチャンピオン大会へも出場した経験を持つランチランチは、これで三連敗。個人的には好きなんだけど、どうにもこうにも……。

・次回
ウエストランド
勝又
ケチン・ダ・コチン
ザクマシンガン山田
スーパーマラドーナ
スカイラブハリケーン
杉山えいじ
セブンbyセブン
ソーセージ
ピテカントロプス

ソーセージが今期三勝目狙い。ウエストランド、ケチン・ダ・コチンが今期二勝目狙い。出場者十組中五組が未勝利、残る五組のうち三組が二勝以下という、全体的にフレッシュさの漂う回。とりあえず勝又のリベンジに期待したいところ。また、ケチン・ダ・コチンはあのスタイルでまだまだ勝ち星が上げられるのかも気になる。そろそろ厳しくなってきたような気もするが。

『怪奇版画男』(唐沢なをき)

怪奇版画男 (小学館文庫)怪奇版画男 (小学館文庫)
(2011/11/15)
唐沢 なをき

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唐沢なをきによる版画漫画。全編、版画である。タイトルも、登場するキャラクターも、背景も、フキダシも台詞も、そのほぼ全てが版画で描かれている。……バカじゃないかと思う。それまでにも、唐沢の漫画には実験的な作品が少なくなかった。例えば、彼の代表作である『カスミ伝』などは、漫画実験の宝庫といっても過言ではない。思えば、この『カスミ伝』も当初は純然たるギャグパロ漫画だったのだが、そのうち話の途中で作者がファンレターを読み出したり、漫画のストーリーが上下で別々に展開したり、背景を全てスクリーントーンで埋め尽くしたり、すごろくになったりシールを貼ったり空から日本を見てみたりと、どんどんやりたい放題の様相を呈するようになっていった。恐らく、そういったことをつらつらとやっていくうちに、版画なんぞに手を出すハメになってしまったのだろう。なんという自爆芸。

そんな実験性の高い作品『怪奇版画男』。正直なところをいうと、僕は“版画で描かれている”という出オチオンリーの作品として読み始めたのだが、これがなかなか読みごたえがある。考えてもみれば、版画で描かれているというだけで、その内容は毎度お馴染みの唐沢作品と大して変わらない。無論、全体的に版画寄りな内容(どうでもいいけど“版画寄り”ってどんな日本語だ)にはなっているが。版画ならではの粗さと黒さが独特の雰囲気を醸し出していて、眺めているだけでも楽しい一冊になっている。あまりの面白さに続刊を期待したいところだが、作者のTwitterでのコメントによると「もう十年若ければなあ」とのこと。あとぼり(“あとがき”ではない)にも「スタッフの方々と5日も6日もろくに寝ないで彫ってました」「ほとんど正気のさたじゃなかった」「思い出すのも恐ろしい」とある。余程、気力と体力が有り余っていなければ、不可能な所業なのだろう。そこで唐沢先生に提案なのだが、この版画手法を若手のギャグ漫画家に一子相伝システムで譲っていくのはどうだろうか。例えば、久○田とか市○とか金○あたりに。で、彼らもこんなことをやらされたくやしさから、より後輩のギャグ漫画家に版画手法を押し付けていくという……(って、体育会系部活動の悪い慣習みたいになってるやん!)

『安全な妄想』(長嶋有)

安全な妄想安全な妄想
(2011/09/22)
長嶋有

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長嶋有『安全な妄想』を読み終える。

長嶋有は2001年に短編小説『サイドカーに犬』でデビューし、同作品で芥川賞候補となった小説家だ。なお、翌年の2002年に発表した『猛スピードで母は』で第126回芥川賞を受賞、堂々たる芥川賞作家となる。2003年に発表した『ジャージの二人』は後に映画化、堺雅人と鮎川誠の主演で話題となった。また、作家デビュー以前から“ブルボン小林”という名前でフリーライターとして活動しており、そちらでは主にゲームや漫画などに関するコラムを手掛けている。

『安全な妄想』は、長嶋がこれまでに手掛けてきた幾つものコラム・エッセイを掲載した、俗にいうところのエッセイ集である。エッセイ集といえば、大体において「特殊な立場にある人の日常を描いたもの」、或いは「誰もが目にする日常風景を独自の目線で切り取っていくもの」の二パターンに振り分けられると思うが、本書はその両方の側面を持っている。即ち、「長嶋有の作家としての日常を描いたエッセイ」と「ごく当たり前な日常を長嶋有の作家ならではの洞察力で切り取ったエッセイ」の、その両方が楽しめるようになっている。……わざわざ説明することでもないが。

公式サイトによると、本書に掲載されているエッセイの中でも「絶交」「蕃爽麗茶」「教養」の三本は、同業者・編集者たちに絶賛・爆笑されたテキストらしい。いや、確かに面白い。許し難い扱いを受けた相手と絶交することで生じる面倒臭さ「絶交」、この上なく有難いのだけれども不味いから貰いたくない編集者からのお歳暮との戦い「蕃爽麗茶」、どういうわけかセッティングされた大江健三郎との対談の際に生じた葛藤「教養」。どれもこれも、人間の欲望・野心と理性の葛藤を描いた名文ばかりだ(持ち上げ過ぎ)。だが、それが長嶋エッセイの本質かといわれると、そうではないように思う。

長嶋のエッセイでは基本、“ちょっと恥ずかしいこと”が取り上げられている。例えば、皆で蟹を食べに行こうという状況で「蟹はそこまで好きでもない」と言えない、運転免許証を持っていないけどあまりにクールな車を買いそうになる、ガムを噛み続けるだけのダイエット本を構想する……などなど。堂々と公言すると皆から笑われそう、でも、いつまでも語り草になるほどでもないことが、そこには綴られている。それ故に読者は、長嶋の言葉を突き放して笑うことなく、それらに少なからず共感を覚えるのだ。

だが、「僕の唇は赤い→僕の唇は赤いと色んな人にいわれる→もしかして僕の唇は得難い程の貴重な赤さなのではないか?→唇専門のモデルになれるのでは?→以下、長々と唇モデルをこなす自身を夢想」というエッセイ「唇」には、微塵も共感を覚えなかったが。……いや、微塵ということもないかもしれない。もし、自分の中にあるちょっとした個性を、他の人がポジティブな言い方で指摘してきたとしたら、或いはそういう妄想を描くことも……。

なお、本書終盤には、東京新聞・中日新聞に週一連載されてきたコラム「放射線→石つぶて」が掲載されている。2011年1月から6月までの半年分が掲載されているのだが、それ故に、くだんの震災について触れているコラムも少なくない。全体的に軽妙な空気が流れている本書だが、このくだりに関しては、些かの重みがあることは否定できない。しかし、その重たい空気が流れる中でも、長嶋は読者にユーモアを提供しようとする。

新聞は情報であれ論説であれ「言葉」が載る場所だ。それらの言葉の末尾はだいたいが懸念で終わる。読者の投稿の言葉も常に「憂えて」いる。今はさまざまに憂えるべき状態だからなおさらだ。特に政治への批判や、批判への批判は大事だろう。でも「言葉」はもっといろんなことにも割かれていい。(本書より引用)


お笑い芸人たちとは違うステージで、笑いを武器に戦う人もいるのだ。

新作の火

新作落語傑作読本(1) (落語ファン倶楽部新書3)新作落語傑作読本(1) (落語ファン倶楽部新書3)
(2011/11/28)
落語ファン倶楽部

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2010年3月に創刊されて以後、どうも音沙汰がなかった落語ファン向けの新書シリーズ「落語ファン倶楽部新書」から、およそ一年八ヶ月ぶりの新刊が出版される。前回の刊行では、古典落語の名手として人気を博した“古今亭志ん朝”、新作落語を専門としながらも古典落語もバツグンに面白い“春風亭昇太”の二人をそれぞれ取り上げていたが、今回は“新作落語”に的を集中。現代、新作派として人気を博している11人の落語家たちのネタをテキスト化し、掲載しているようだ。そうそう、こういうのを待ってたんだよおっ母さん! ……いや、編集部に私の母はいないが。

既に掲載されるネタも発表されている。ソフト化されているネタも幾つかあるが、大半は今回の掲載で初めて世に出るネタなのではないだろうか。近年の新作落語に多大なる影響を与えた三遊亭円丈は勿論、立川談笑による改作落語『薄型テレビ算』(「笑神降臨」でも披露していたっけ)や、立川志らくによるキネマ落語『妾馬 ダイ・ハード』なども掲載される模様。果ては人間国宝、桂米朝の新作『一文笛』まで……実に濃厚な内容になりそうだ。

落語ファン倶楽部 Vol.14落語ファン倶楽部 Vol.14
(2011/11/28)
笑芸人

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一方の本誌では、これまた新作落語特集。2011年をもって活動を休止する新作落語ユニット“SWA”のことを、まるまる一冊で取り上げている。その内容は、オフショット写真集、全公演史、ネタ解説、ネタ速記、各会の人たちからのメッセージ等々……最後に相応しいボリューム感のあるラインナップになりそうだ。SWAが活動休止する理由は「当初の目的をある程度達成できたから」とのことだが、個人的にはまだまだ活動し続けてもらいたかった。四人で別々のネタを演っているのに、それらが全て繋がっている……という全体構成に感心したのだが。あれがもう観られないと思うと、実に残念である。

ところで、SWAとしての活動は、一冊の本と二枚のDVDと三枚のCDに収められているが、今後は公演のソフト化がまったく望めないのだろうか。恐らく、過去の公演の中には、まだソフト化されていないものが少なくないと思うのだが。そういえば、柳家花緑師匠が2007年の公演を全カバーするって言ってたCDは、一体どうなったんだろう。その辺りのことを全部片付けてから、活動を休止してもらいたいもんなんだけれども、ねえ?(←といって、時期を引き延ばす作戦)

『天空の城ラピュタ』をパズーの気持ちで考える。

[ジブリがいっぱいCOLLECTION オリジナル色えんぴつ付] 天空の城ラピュタ [Blu-ray][ジブリがいっぱいCOLLECTION オリジナル色えんぴつ付] 天空の城ラピュタ [Blu-ray]
(2011/11/16)
不明

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久しぶりに、映画『天空の城ラピュタ』を観る。

もはや説明の必要もない程に有名な映画だが、もしかしたら、まだ観たことがない人もいるかもしれないので、ストーリーを簡単に説明しておこう。『天空の城ラピュタ』は、遥か上空に浮かぶ城“ラピュタ”に関わる人々が繰り広げる、冒険活劇アニメーション映画だ。主人公は、不思議な石“飛行石”を守り続けてきた一族の末裔である少女シータと、ラピュタを偶然にも発見してその存在を世間に発表した冒険飛行家を父に持つ少年パズー。この物語は、二人が様々な困難に見舞われながらも、ラピュタを目指し、辿り着くまでを描いている(厳密にいうと違うのだが、ややっこしいので省略)。

幼少の頃、僕は父が録画してくれた『ラピュタ』のテープを、毎日のように鑑賞していた。当時、我が家にはジブリのアニメ映画を録画したテープが何本もあったのだが、僕は『ラピュタ』ばっかり観ていた記憶がある。そんな僕の姿を見て、母は「なんで飽きないの?」と思っていたらしい。しかし、すっかり大人になってしまった今でも、まったく飽きる気配がない。テンポのいいストーリー、メリハリのある場面転換、魅力的なキャラクターたちに名セリフの数々、そして背景の圧倒的な美しさ。これまで、宮崎駿監督の作品を含めて、実に数多くのアニメーション映画を目にしてきたが、未だに僕にとって最高のアニメーション映画は『天空の城ラピュタ』のままだ。

とはいえ、流石に二十代も半ばという年齢になった今では、流石にかつての様に「一日一回鑑賞」というわけにはいかなくなった。まあ、当然である。時間が腐るほどにあった小学生の頃とは違い、仕事をこなして幾らかの銭を稼ぐようになった今、そんなことをしていたら身体の休まる時間がなくなってしまう。……そもそも、一日一回ペースで鑑賞という表現自体、些か大袈裟に書いているだけで、小学生の頃からそんなことはしていなかったのだが。子どもだって、忙しくないわけじゃない。テレビアニメも見るし、テレビゲームもするぞ(偏ってんなあ)。なにはともあれ、久しぶりの鑑賞となった。

『ラピュタ』鑑賞を開始してすぐに、以前は気にならなかったあることが気になり始めた。それは何かというと、主人公の一人であるパズーの境遇である。

既に『ラピュタ』を鑑賞したことのある方ならば御存知だろうが、本作における主人公二人の出会いは、とてつもなくドラマチックだ。飛行船から落下したシータが、鉱山で働くパズーの元へと飛行石の力でゆっくりと降りてくる。パズーにとっての日常の中に、シータという突然の来客が現れるのだ。逆にいえば、シータにとってパズーの日常は非日常的で、いわば観客と同じ目線の立場になる。一方、パズーにとってシータは非日常的な存在で、また恐らく彼にとって初めて接触した同世代の異性でもある(そもそも作中にパズーの仲間と呼べる子どもは登場していない)。自然と口は軽くなり、彼自身の状況も明け透けに語られていく。

ラピュタを発見したことを公表した父について話す場面で、パズーは「お父さんは嘘つき呼ばわりされて死んじゃった」と、あっけらかんと語る。鑑賞していた当時はさりげなく聞き流していた。「あー、そうなんだ。悲しいな」という程度に。しかし、それなりに大人になって、世の中の不条理も分かるようになった今、この台詞がやたら重たい。冒険飛行士だった父親の息子がどうして鉱山で働いているのか、という背景も込みで想像してしまうのだ。

その後、悪漢の手から逃れて、洞窟の中を彷徨うことになる二人。ランタンの火を頼りにちょっとした食事をしながら、今度はシータが身の上を語り始める。正直なところ、シータの身の上はあまり不幸に感じられない。彼女には彼女なりの苦労もあったのだろうが、どうも一族に関わる謎の方がテーマとしては大きいので、パズー程の重みを感じないのである。とはいえ、両親のいないシータは間違いなく不幸であり、厳しい生活を強いられていたことは想像に難くない。そんなシータの話を聞いたパズーが最初に口にした言葉が、「僕たち、二人とも親無しなんだね!」。初めて同士を見つけたような、キラキラした目でそんなことを言うから、たまらない。こちらの涙腺はゆるゆるだ。

そんな二人の前に、パズーの知り合いだというポム爺さんと呼ばれる老人が現れる。ポム爺さんはシータが身に付けている飛行石を見て、ラピュタの存在を示唆する。それを聞いて驚くパズー……ということは、パズーはラピュタについて他の人に話そうとはしなかったのか……嘘つき呼ばわりされ、流れ着いた場所で身内のことを話そうとしなかったんだろうか……と、いよいよ泣きそうになるが、どうにか踏みとどまる。そんなポム爺さんの話を聞いたパズーは、興奮して「ラピュタは本当にあったんだね!」と叫び、更に「お父さんは嘘つきじゃなかったんだ!」。ここで涙腺が完全に崩壊する。先の、パズーが身の上を語るくだりで、彼は確かにラピュタを見つけてみせると宣言していた。しかし、ここでこう口にするということは、つまり心のどこかで父親のことを疑っていたということになる。だが、飛行石の存在が明らかになって、ラピュタが本当に存在する可能性が高まり、僅かながらも父親に対する疑いの気持ちが晴れたのだ。その笑顔の意味は、深い。

それから後は、幼い頃に興奮した冒険活劇の数々が繰り広げられるわけだが、既にパズーに強い思い入れを抱いていた僕には、もはやそんなものはどうでも良くなっていた。パズーがある場所で父親の姿を目にした、あの場面で僕の中での『ラピュタ』は完全にバルスっていたのである(なんだその表現)。

子どもの頃に慣れ親しんだ他のアニメーション映画を観ても、また新しい発見があるかもしれない。ちょっと楽しみだ。

「立川志らく独演会 in岡山」(11月15日)

2011年11月15日の夕刻、私は父が運転する車の中で憂鬱な気分になっていた。この日、我々二人はおよそ9ヶ月ぶりに行われる「立川志らく独演会」を観るために、仕事を早めに終えて岡山の中心地を目指していた。しかし、平時でさえ交通量の多い国道2号線は、帰宅ラッシュの影響もあってか酷い渋滞に見舞われており、我々の車はなかなか前へと進もうとしなかったのである。加えて、ここ最近は乗車する側ではなく運転する側になることが殆どだった私は、久しぶりの助手席に気分が悪くなり、完全に車酔いの様相を呈していた。座席の背もたれを限界まで倒し、どうにかして寝ようと思ったのだが、これがどういうわけかまったく眠れない。仕事中にウトウトと居眠りしてしまう無神経さが、ここにきて役立たず。なんとも情けない。

だが、それでも車は少しずつではあるものの前進を続けていたのか(気分が悪くて前進している感覚すら掴めなかったのだ)、しばらくして我々は渋滞から抜け出すことに成功した。とはいえ、車の行列からは逃れられず、なんだか前後から圧迫されているかのような状態はなおも続いていた。それでも気力を振り絞り、どうにか気合を入れようとすると、今後は父が小用に行きたいとぐずり始めた。しかし、近辺には飲食店やドラックストアの様な、トイレを容易に貸してくれそうな店はまったく見当たらない。しばらく進むと、コンビニが見えてきた。だが、反対車線にある。もし、このコンビニに入ることが出来たとしても、そこから再び元の車線に戻るのは難しいに違いない。渋々、断念する。その後も、幾つかのコンビニが目に入ったが、いずれも反対車線側にある。左車線にコンビニが無い。そのうち、我慢できなくなってきたのか、左足でリズムを刻み始める父。あわや大惨事なるか、と不安に苛まれたところで左車線にあるローソンを発見。“町のほっとステーション”に文字通り、ほっとする。

そんなこんなで会場に到着したのは、開演のおよそ十分前のことだった。会場前には人影が少なく、大半の客が館内に収まっているのは一目瞭然である。財布からサッとチケットを取り出し、ビリッともぎってもらい、スワッ(SWA)とホールに向か……おうとしたのだが、ロビーの物販コーナー前で立ち止まる。今年2月に行われた独演会にも物販コーナーがあり、終演後には購入者全員を対象としたサイン会が開催されていた。今回も、それをやるのか。受付の女性に聞いてみた。「あの……これを買ったら、後でサイン会……」「あ、はい!やりますよー」。そうこなくっちゃ、張り合いがない。しばらく考えて、この日のために購入を躊躇していた師の新著『落語進化論』と、前回の独演会では買おうかどうか悩んでいる隙に売り切れてしまった、師の十八番ネタが書かれた手ぬぐいを購入する。父も手ぬぐいを買っていた。サインしてもらう気らしい。……ミーハーだなっ(←決して人のことは言えない)。

ホール内では、既に数多くの観客たちが席についていた。だが、以前に同じ会場で行われた【柳家花緑独演会】【立川志の輔独演会】と比べてみると、やはり客数は少ない。前回、我々の席は左端の方だったが、今回は真ん中である。落ち着いて観られる、とてもいい席だ。開演に少し時間があったので、Twitterで会場に到着した旨を報告する。途端に館内放送。携帯電話の電源をお切りくださいという内容。当然のマナーである。聞いたところによると、翌日の広島公演では、師匠のネタ中に高座を撮影した輩がいたらしい。とんでもない話だ。

しばらくして開幕。この瞬間が、なんだかんだで一番楽しいような気もする。

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プレミアチケット(だったかどうかは定かではない)

磁石 単独ライブ 「プレミア」 [DVD]磁石 単独ライブ 「プレミア」 [DVD]
(2012/01/18)
磁石

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2011年7月に行われた磁石の単独ライブ「プレミア」がDVD化されるという。三木プロダクションからホリプロコムに移籍して以後、ほぼ年に一度のペースで単独ライブDVDをリリースしている彼ら。前回は長丁場をノンストップで乗り切るストロングスタイルの漫才ライブを行ったが、今回はごく普通の単独ライブをやったらしい。とはいえ、やっぱり漫才重視の内容になっていたようで、聞いたところによると佐々木が好感度を下げかねない発言をした漫才も披露されたとか。

THE MANZAI2011の認定漫才師となり、更に本戦サーキット三日目には上位三組の一組に選ばれた彼ら。実力派漫才師という称号はもういらない、目指すは時代を背負う特別な漫才師だ!

・その他のリリース
0111『チハラトーク#7
0207『2700 BEST ALBUM 「SINGLES」
0222『ロッチ単独ライブ「ストロッチベリー」
0222『単独ライブ 二日坊主』(トップリード)
0222『単独ライブ「文殊の知恵」』(インスタントジョンソン)
0314『桜 稲垣早希ネタイヴェント新劇場版:九 ~YOU CAN(NOT)MAKE A GOAL~

「オンバト+」十一月十二日放送感想文

スギタヒロシ【441kb/1,719票】※視聴者投票1位
初挑戦初オンエア。ピン芸人が初挑戦で初オンエアを飾るのは、6月にオンエアされた斉藤紳士以来。ピン芸人好きとしては、気になるところ。ネタは「寄生エイリアンと漫才」。腹から顔を出しているエイリアンのぬいぐるみと漫才をするという、ショパン猪狩の「レッドスネークカモン」を彷彿とさせる芸風で、なんだか懐かしい。でも、フォーマットが新しいので、古臭さは感じられない。これぞ、現代の寄席芸人。今後の展開が楽しみだ。

ニッチェ【521kb/1,645票】※会場審査1位・視聴者投票2位
二戦一勝、初オンエア。「爆笑オンエアバトル」時代にも高記録を叩き出していた彼女たちだが、オーバー500は自己初。また、事務所を移籍後、初のオンエアでもある。ネタは『子役オーディション』。NHK新人演芸大賞受賞作品。初めてのオーディションに緊張している女の子に、オーディション慣れした子役の女の子が自慢げに話しかけてくるコントだ。単なるウザキャラコントで終わるかと思ったが、途中で勝新太郎の『座頭市』をやってみせたのには笑った。なんでイマドキの子役がカツシンなんだ! その後もテンションを下げることなく、最後まで乗り切った。地力が強いと、爆発したときの持続力が違うんだなあとしみじみ。チャンピオン大会出場を狙うか。

エレファントジョン【477kb/1,087票】
六戦五勝、今期初オンエア。昨年度は惜しくもボール三個差でチャンピオン大会出場を逃した彼ら。今期チャンピオン大会への滑り出しとしてはまあまあの数字だが、果たして。今回のネタは『子どもが欲しい』。子どもが欲しいという加藤の話に森枝がチャチャを入れ続けるスタイルは、だんだんと完成形に近付いてきている。ただただ流れていくだけだった森枝のギャグも、観客にきちんと伝わりやすくなってきた。個人的には「OPQRエスカルゴ~♪」が、もう下らなくて下らなくて……。

コマンダンテ【409kb/1,600票】※視聴者投票3位
初挑戦初オンエア。漫才師が初挑戦で初オンエアを飾るのは、10月にオンエアされたspan!・コンパス以来……って、そんなに珍しいことでもないのか。M-1グランプリ準決勝戦にも進出経験のある彼ら、期待を寄せてはいたのだが、まさかオンエアされるとは……いや、失礼。ネタは『火星』。安田が石井に火星などの様々なモノの位置を説明させていく。冷静になって考えてみると、安田はただただ石井にモノの位置を聞くだけで、ボケらしいボケが殆ど見当たらないことに気付く。恐らく、このネタでボケになっているのは、むしろ安田のお願いにずっと付き合い続けている石井の方なのだろう。個人的にはPOISON GIRL BANDを思い出した。比較する人も少なくないだろう。まあ、まだ判断するには尚早なので、次のオンエアに期待。触感は良いぞ。

グランジ【389kb/1,421票】
二戦二勝、今期二勝目。ひとまずチャンピオン大会へと一歩前進といったところだが、前回よりもキロバトルが落ちているのが厳しい。視聴者投票の結果も芳しくなく、やや不利な立場にあると言わざるを得ない。次回のオンエアで巻き返しとなるか。ネタは『ガマンできない症』。気持ちいいところをガマンできず、ついつい先走ってしまう病気にかかった少年の治療風景を描いている。設定は面白いが、盛り上がり部分が序盤に来てしまって、その後はただただ尻すぼみになってしまうという残念な流れになっていた。途中、佐藤が何かモゾモゾしていたが、もしかしたら何かネタを準備していたのかもしれない。

・今回のオフエア
329kb:寅人
293kb:ゴールドラッシュ
281kb:さな
261kb:KBBY
185kb:ぷち観音

今回は「男性五組女性五組による戦い」と銘打たれていたが、結果として女性四組が落ちてしまった。やはり女性芸人というのは、ちょっと難しいところがあるのかもしれない。個人的には、さながどういう芸風なのかがちょっと気になった。他の三組に比べて、かなり大人しいビジュアルだったが、どんな芸風なんだろう。聞いたところによると、R-1ぐらんぷりセミファイナリストらしいが。オタク漫才のゴールドラッシュの敗退も残念。

・次回
井下好井
かもめんたる
セバスチャン
TAIGA
虹の黄昏
バイきんぐ
メンソールライト
ランチランチ
リンシャンカイホウ
和牛

井下好井、かもめんたる、和牛が今期二勝目狙い。特に、前回オーバー500を記録した井下好井は、ここで更に高記録を叩き出してチャンピオン大会により近付きたいところ。注目は久しぶりの登場、漫談芸のメンソールライト。今や漫談の枠はすっかりキャプテン渡辺に持って行かれているが、話芸という側面ではこちらの方が上。漫談家として名誉挽回なるか。

ブランド拝借


「ドラえもん」の実写化CMを見る。つまらない。以前に放送していた「サザエさん」の実写化CMはまだ笑わそうという意欲が見られたが、こちらは単に「ドラえもん」というブランドを利用しただけのエセドラマになりそうな雰囲気がむんむんと漂っていて、どうも宜しくない。今後の展開次第なんだろうが、不安である。そもそも、どうして「ドラえもん」なのか。ストーリー性が皆無の「サザエさん」に比べて、確立されたキャラクターたちで繰り広げられる一話一話の完成されたストーリーが人気の「ドラえもん」をパロディするには、相当の覚悟が必要な筈だ。そうでなくても、声優が交代になってから何年も経っているのに今でもグチグチ言われ続けている「ドラえもん」をイジるだなんて……余程の無神経じゃなければ出来ない所業であろう(注:皮肉混じり)。

ついでに書くと、最初のアニメパートが実に情けない。要するに、実写パートだけでは「ドラえもん」と分からないから、最初にマクラとしてアニメパートを置いたということなんだろうが、だったら最初からそんなCMを作るんじゃない。「サザエさん」パロディのCMに、サザエさんのアニメキャラクターが登場したか? そんなことも分かっていない時点で、このCMはダメである。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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