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エレ片コントライブ『コントの人5』(850字)

エレ片コントライブ ~コントの人5~ [DVD]エレ片コントライブ ~コントの人5~ [DVD]
(2012/03/07)
エレ片

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「青春」とは何か。手元の辞書を引いてみると、【若い時代】とある。更に、カッコして【十代の後半から二十代までの時期を差すことが多い】とされている。なるほど。つまり、どんな人間にとっても、若い時代こそが青春ということだ。ところが、我々が青春という言葉をイメージするとき、それは不思議とドラマチックになりがちだ。例えば、スポーツに汗を流している姿だとか、若き恋人と一緒に下校する夕暮れ時だとか、そういった風景をイメージしてはいないか。無論、そんな青春を過ごした人間も、世の中には数多く存在していることだろう。しかし、ジメジメと陰湿な時間を貪るだけの青春を過ごしてきた人間も、決して少なくはない筈だ。

エレキコミックと片桐仁によるユニット“エレ片”のライブ「コントの人5」において披露されているコント『モテボアドッグス』は、そんなジメジメとした青春時代を過ごしている男たちの卑屈な姿を描いている。彼らは、モテ連(モテないやつクソ連盟)なる組織を結成し、「モテるときは一緒」「先にモテたやつには死を」「女は性の道具」を鉄の掟としている。その活動内容は、クラスの女子たちの交際関係を調査する、最近やっているエロい妄想を発表する、ユニクロに服を買いに行く訓練をする、などなど。そんなモテ連の一人が、実はモテているのではないかという疑惑が浮上。それはやがて確信に変わり、組織は少しずつ崩壊へと向かっていく。

このコントに限らず、エレ片は常に青春の愚かさと下らなさを演じ続けてきた。それは時に、現実を見ずに過剰な自信だけで生きている出山という男として、ブサイクな女子高生音楽ユニット・シトラスラベンダーとして、華やかな青春に生きるカップルを描いた漫画として、ステージ上に現れる。だが、彼らはそれを卑下することんがく、愛すべき存在として描いている。何故ならば、彼ら自身もまた、そんな情けない青春の中に生きていたからだ。五回目のライブとあって、多少のマンネリ感も生じてきたが、それでも彼らの陰湿な青春は変わらず居心地がいい。


・本編(80分)
「KAATA」「オープニング」「モテボアドッグス」「また帰ってきた出山」「ぽよ(ハート)」「恩返し」「ニャゾの転校生」「エピローグ」

・特典映像(13分)
「エレ片スポーツ大賞」

「笑点」オープニングアニメの元ネタを調べてみた。

ふと、デッキのHDDを調べていると、ずっと以前に録画した「笑点」が未だに残っていることに気が付いた。なんで録画したのかと思いながら再生してみると、お馴染みのホンワカとしたオープニング映像が。何度も見てきたわけではないけれど(笑点を毎週楽しみに鑑賞するタイプの人間ではないのだ)、なんとなく見飽きているオープニング。お馴染みの笑点メンバーを模したアニメーションが、どんどん流れていく。なんとも退屈な時間だ。

しかし、よくよく見てみると、それらのアニメーションは、どうやら落語のネタをモチーフとしていることに気が付いた。なるほど、そうくるならば話は違う。ひとつひとつの元ネタをじっくりと確認して、調べてやろうじゃないか……というわけで、調べてみた。以下、登場順である。

桂歌丸『目黒のさんま』
林家木久扇『扇の的』
三遊亭好楽『金明竹』
三遊亭小遊三『てれすこ』
三遊亭圓楽『芝浜』
春風亭昇太『たらちね』
林家たい平『饅頭こわい』
山田隆夫『鍬潟』


分かりやすいのは、歌丸師匠の『目黒のさんま』。画面の右には“目黒”と書かれた案内、左には七輪で焼かれているさんま。そして真ん中には、侍の姿をした歌丸。むしろ、ヒントが多すぎる。次に分かったのが、たい平師匠の『饅頭こわい』。饅頭を食べているたい平師匠。これだけでピンとくる人も多いだろう。扇の的を射抜いている木久扇師匠、これはそのまま『扇の的』。お調べを受けた直後にイカを手にしている小遊三師匠、これは『てれすこ』。イカが関わるお調べネタなので、これも分かりやすい。

ここからが少し分かりにくい。部屋の中で水を撒き散らす子どもと、微笑んでいる女将さんの好楽師匠。これは『金明竹』。部屋の中で水を撒き散らしているのは、先に表で掃除をする際は水を撒きなさいと教わっているから。ドンチャン騒ぎから一転して絶望的な表情を浮かべる圓楽師匠、これは『芝浜』。浜で財布を拾った男が、それは夢だったのだと教えられる場面だ。この絶望の寸前に、一瞬だけブチ切れ状態のカミさんの顔が映る。芸が細かいネ。

昇太師匠のはかなり悩んだ。新婚さんと二人でラブラブ状態の食事。花嫁を迎えるネタは少なくないので、どれかしらんと悩んだが、下でタクアンと茶碗が踊っているのを見て『たらちね』と気付いた。『たらちね』には、花嫁を待っている八五郎(昇太師匠が扮する役)が、沢庵や茶碗の音が鳴り響く夫婦の幸せな生活風景を陽気に歌って表現するくだりがあるのだ。一番悩んだのは、山田隆夫の映像。大いびきをかきながら眠っている力士。力士が登場するネタも、これまた数多い。あれかしらこれかしらと考え込んだが、力士が座布団で眠っていることに気付いて、『鍬潟』だと分かった。……オチなんだけどね、これ。

スタッフロールに流れるアニメーションもまた、落語の演目に関する一場面を切り取ったものだ。一瞬なので見逃しがちだが、確かに古典落語のそれなのである。以下、少し怪しいネタもあるが、恐らくはこれだろうというネタを選んでみた。ひょっとしたら、間違えて解釈しているかもしれないので、ご注意を。

首が飛ぶおひなさま→『道具屋』
「へいりん」「ひらばやし」の文字→『平林』
魚の開きが箱の中から飛び出している→『干物箱』
釣り道具がしゃれこうべに好かれる→『野ざらし』
踊る見台とそれを指差して泣く子ども→『寝床』
延々と沈まない太陽とそれを見る船→『南極探検』


『道具屋』は与太郎が古道具を売る話で、首が取れるおひなさまが出てくる。『平林』はそのまま。『干物箱』はさんざん悩んだ結果、干物が箱から飛び出してくるので、このネタだろうと解釈。『野ざらし』は釣りをした男が野ざらしを供養してやったところ、家に恩返しにやってきたという話が発端となっている一席。『寝床』はオチの場面。そのまんまだな。『南極探検』は昇太の師匠にあたる柳昇の新作で、南極では太陽が一日中沈まないからずっと昼で夕食が食べられない……というくだりから。

これらを意識しながらオープニングを見ると、また楽しいのではないかと思う。ちなみに、HDDに録画されていた「笑点」はハマカーンが出演している回で、ネタは『ラーメン』だった。

(動画は削除された模様)

これは旧バージョン。三遊亭圓楽を襲名する前の楽太郎師匠が登場している。ちなみに、この時の楽太郎師匠の元ネタとなっているのは、『酢豆腐』。腐った豆腐を珍味だと差しだされて、疑うことなく食べてしまう知ったかぶりの若旦那として登場している。ちなみに、上方では『ちりとてちん』として知られるネタだ。朝ドラのタイトルにもなったアレね。

「オンバト+」三月三日放送感想文

バイきんぐ【521kb/1,310票】※会場審査1位・視聴者投票3位
六戦四勝、今期二勝目。二回連続でオーバー500を記録し、チャンピオン大会へとまっしぐら。コンビ歴17年の実力を如何なく発揮中。今回のネタはコント。卒業生が久しぶりに学校を訪れたが、その学校というのが自動車学校で……。東京03のコントを彷彿とさせる導入から、認識のズレから生じる笑いが連発。思い出を噛み締めながら話す卒業生と、それを冷静に対処する教官のギャップもいい。ただ、やっぱり設定の独自性が素晴らしい。うしろシティの旅行コント以来の衝撃!

ラバーガール【481kb/1,387票】※視聴者投票2位
八戦全勝、今期三勝目。「オンバトサポーター」さんの情報によると、これで彼らのチャンピオン大会への出場は確定。コンスタントに高キロバトルを叩き続けてきた彼らは、チャンピオン大会でも高記録を残すことができるのか。ネタはやっぱりコントで『ゲイバー』。大水扮するゲイバーのママがたまらなく気色悪い。随分と前の単独ライブで披露していたコントらしいのだが、後半の展開は丸っきり変わっていた。そんな古いネタを掘り返すとはなあ。面白かったけれど、オチでもう一盛り上がり欲しかったか。

風藤松原【457kb/1,409票】※視聴者投票1位
七戦全勝、今期三勝目。昨年末は松原が肝不全のために休養していたが、今年に入ってから番組へと復帰。常に安定したキロバトルを叩き出している。今回のネタは、思い出の歌を間違えて歌ってしまう替え歌漫才。松原の突き抜けたボケと、それをフォローする風藤のツッコミがいいバランス。……なんか、いよいよおぎやはぎに似てきたな。シュールじゃないおぎやはぎ。それもまた道か。

少年感覚【489kb/707票】
初出場初オンエア。並みいる常連組を抑えて、初オンエア。なかなか見込みのあるヤツラじゃないか……って、やけに上から目線だな。ネタはコントで、『桜井翔と同姓同名の会』。病院の待合室で偶然にも嵐の桜井くんと同姓同名の桜井翔が鉢合わせ、そこで「桜井翔と同姓同名の会」に勧誘される。これだけで乗り切るのかと思いきや、後半は「嵐の桜井くん→フリーターの桜井→無職の桜井」というグレードダウンの構図を描き始める捻り技を見せた。でも、基本的には、嵐の桜井翔がいるからこそ成立するネタで、オリジナリティという意味では弱い。次回、彼らがどういうコントを見せてくれるのか、今から楽しみだ。

ザ・ゴールデンゴールデン【429kb/633票】
八戦全勝、今期三勝目。連続して高キロバトルを叩き出し続けてきた彼らだが、ここにきて勢いがストップ。まさかの400前半という微妙な結果になってしまった。ネタはコントで、『ケンカ』。小学生のケンカに駆り出されたブサイクお兄ちゃんだったが、その相手は明らかにカタギじゃないので弱気になる……という内容。言葉選びのセンスは相変わらず素晴らしいし、彼らの最大の武器ともいえる北沢のブサイクぶりを活かした展開も相変わらずではあったが、やはりネガティブなオチが良くなかったのだろうか。或いは、北沢のジャンピング土下座が、オチとしては少し地味だったのかもしれない。ジャンプして土下座しているのに、物凄く静かだったもんなあ。舞台も客席も。画の派手さに対して、物凄く静かだった。

・今回のオフエア
409kb:ヒカリゴケ
373kb:ツィンテル
285kb:和牛
257kb:ティーチ
129kb:千葉チューセッツ

今期三勝目を狙っていたツィンテルと和牛は、揃ってチャンピオン大会レースから脱落。まあ、これまでのキロバトルが低かったので、どのみち出場は厳しかったのだが。今回はコントで挑んだというヒカリゴケ、せっかく安定して来たのに、どうしてここでそんな冒険を……。

・次回
【初】アイロンヘッド
ウエストランド(2)
うしろシティ(3)
【初】ぐりんぴーす
【初】クレオパトラ
THE GEESE(2)
【初】閃光花火
タイムマシーン3号(2)
ヒデヨシ(2)
や団(2)

初出場組以外の全員がチャンピオン大会出場を目指しているという、激戦が予想される回。中でも、タイムマシーン3号、や団、ヒデヨシの三組は、かなりチャンピオン大会に近いところにいるといえるだろう。また、あまりキロバトル数は芳しくないTHE GEESEも、視聴者投票からチャンピオン大会に出場できるかもしれないところにいるので、ここでとにかくオンエアを勝ち取りたい。今期の通常回は残り二回、果たしてどうなるか。

『落語の聴き方楽しみ方』(松本尚久)

落語の聴き方 楽しみ方 (ちくまプリマー新書)落語の聴き方 楽しみ方 (ちくまプリマー新書)
(2010/12/08)
松本 尚久

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放送作家・松本尚久による、落語の特殊性について多角的視点から考察した本。タイトルが純然たる落語の手引きっぽい雰囲気を醸し出しているので、間違えて買っている人が多いのではないかと思う。確かに、面白い本ではあるのだが、落語初心者向けではない。漠然と「落語って、こういう感じ?」というイメージがつかめているくらいじゃないと、なかなか楽しみにくいのではないかと推察する。なんという釣りタイトル。とはいえ、「では君ならどんなタイトルにするのか?」と問われたとしても、なかなかいい回答が思い浮かばないのだが。

最初にも書いたが、本書は“落語の特殊性”について記した本である。例えば、「落語の主役は引き立て役」「落語にはどうして無名の登場人物が多い」「落語家は小説家に似ている?」「どうして落語家はマクラをふるのか」などの諸々について、他分野の創作物(歌舞伎、人形浄瑠璃、漫画など)と比較して話を展開している。個人的には、なるほどなぁと納得できる部分もあれば、なんだかなぁと首を傾げる部分もあったかな。著者自身、本書の意見を“補助線”としてもらいたいとあとがきで語ってるので、そういう読み方で間違えていないのだろう。

納得できるというか、興味深いなあと思いながら読んだのは、江戸と上方の違いに関するくだり。著者によると、江戸落語には頻繁に登場する“与太郎(愚か者)”に相当するキャラクターが、上方落語には殆ど登場しないという。これには、江戸と上方の「家」に対する考えの違いが大きいのではないかと、著者は分析している。

上方の社会では「家」や「世間」の問題が大きく存在するのでしょう。べつの言い方をすれば、上方の社会制度はとても「ちゃんとしている」のです。そして、堅牢な家制度によって引き起こされた悲劇を浮き立たせるために助太郎や盆太という「あほ」が必要とされ(「敵討襤褸錦」「近江源氏先陣館」)、家制度の歪みを明らかにするために「あほ」の告発が用意された(藤山寛美の芝居)のです。推論になりますが、上方のフィクションにおいて「あほ」な振る舞いをするキャラクターはおそらく悲劇の引き立て役なのです。(本文135頁より)


落語に限らず、あらゆる“物語”について考えさせられる一冊。ちょっと文章は慣れていない雰囲気があるけれど(同著者の他の作品を読んだときには違和感を覚えなかったので、単にですます調に慣れていないだけだろうか)、読み応えは保障できます。でも、その前に、落語を一服聴きなんし。

ロッチ単独ライブ『ストロッチベリー』

ロッチ単独ライブ「ストロッチベリー」 [DVD]ロッチ単独ライブ「ストロッチベリー」 [DVD]
(2012/02/22)
ロッチ

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ワタナベエンターテインメントに所属するお笑いコンビ、ロッチが2011年11月に行った単独ライブ『ストロッチベリー』の模様を収録。ライブが開催された当時、お笑い評論家として名高いラリー遠田氏が“集大成”“最高傑作”などと評価していたので、これはさぞ面白いことになっているのだろうなと期待に胸を膨らませながら鑑賞したのだが……なんとも評価し辛い内容だった。いや、確かに面白かった。笑えるという意味では、ひょっとしたら史上最高といえるかもしれないクオリティではあった。ただ、これを最高傑作と絶賛することに対して、僕は違和感を覚えずにはいられない。それは少し、ロッチというコンビを見くびってはいないか。どうも氏は、この時点で最高傑作と称賛するということの重大性を、イマイチ理解していないように思う。……って、これは別にラリー氏を批判するための文章ではない。『ストロッチベリー』の話をしよう。

以前にも何度か触れてきたが、ロッチというコンビの個性は“哀愁”にある。例えば、釣り人として先輩風を吹かそうとした男が説明することと実際に起こることが全て裏目に出てしまうことで生じる、ほのかな哀しみ。催眠術の師匠が弟子に「そう簡単に催眠術なんてかけられない」といった傍から弟子が仕掛けた催眠術にかかりそうになってしまうことで生じる、ほのかな哀しみ。第三者にしてみれば間抜けも間抜け、だけどもよく考えてみるとそんな間抜けな部分が自分の中にも確かに存在している。だからこそ感じられる、ほのかな哀しみ。これこそがロッチの個性である。しかし、今回のライブでは、そんなロッチの愛すべき哀しみが控えめになっていたように思う。

『Xphone5』というコントがある。Xphone5を手に入れるために発売の何日も前から店の前で待ち続けていた男(中岡)が、うっかり眠りこけてしまって購入しそびれてしまうという状況で始まるコントだ。始まった早々、既に哀愁が漂っている。人の業がマイルドに沁み込んだ、いい哀愁だ。そのうち、少しずつ真実が明らかになっていく。当日の朝までは起きていたこと、男の後ろに並んでいた人から貰ったビールを飲んで寝てしまったこと、そして自分が持っているXphone4が割れていること……。そこには確かに哀愁がある。あるのだが……その哀愁を引き出すために、中岡を悲惨な状況へと追い込んでいく様が露骨過ぎるように思う。特に、Xphone4が割れていることが発覚して以降の展開は、なかなかに悲惨だ。勿論、これはこれで笑える。笑えるが、そのためにロッチがこれまで作り上げてきた笑いの世界が、おざなりにされているように思えて仕方がない。今回のライブでは、この他にも『サプライズパーティー』『プラマイゼロ』などで、彼らの哀愁を取り入れた笑いを演じていたが、どちらも演出が過剰に見えた。これを果たして、進化したといってしまっていいのだろうか?

そういう意味では、今回はロッチらしさを追求していないコントの方が面白かったといえるかもしれない。中でも、三年ぶりに刑務所から出てきた兄貴を、舎弟がよりにもよって自転車で迎えに行ってしまった『おつとめご苦労さまです』は、シチュエーションのあまりのバカバカしさに笑いが止まらなかった。足がつかずにバランスを取るため、兄貴の肩をギュッと握り続けるダメっぷり……たまらんね。あと、コカドがボケ(?)に転じる『タイトルマッチ』も、後に何も残さないという意味では実に面白かった。思いつきのみで展開する小細工なしのコントは、本当に何も残らない。いい意味で。

笑いを追求するために、更なる展開を見出そうという姿勢は決して悪くないんだけれど、もうちょっと自分たちならではの良さを意識してもらいたかったなあ、というのが正直な感想。いや、意識した上で、こういうコントに辿り着いたのかもしれないけれど……なんかちょっと、作家の匂いがしたんだよねえ……。それ自体はダメじゃないけれど、それで本質がボヤけてしまうのは宜しくない。ひとつ、慎重にお願いしますよ。ホント。


・本編(74分)
「いちご亭ジャム丸」「Xphone5」「おつとめご苦労さまです」「八雲源五郎」「タイトルマッチ」「目撃者ムラサワ」「サプライズパーティー」「ご本人さんが…」「プラマイゼロ」

・特典映像(17分)
「ロッチ知名度調査」「中岡presents コカドくんにカニのむき方教えたるで!!」「コカドのこだわり1」「コカドのこだわり2」「ストロッチベリーグッズ紹介」「「ムラサワ」本人登場」

・音声特典
「ロッチによる全編副音声コメンタリー」

「林家たい平 柳家喬太郎 二人会」(3月6日・岡山)

(以下、敬称略)

丁度、時計の針が午後四時三十分辺りを回った時分、即ち世間が思い描くところの夕暮れ時、その薄暗くも暖色を残している太陽の日差しを受けた列車の中で、私は確かにゆらゆらと実存していた次第である。一般的な社会人がその責任として課せられている労務に勤しんでいる最中、何故に私は電車の中でその存在を主張していたのかと問われれば、私は仕方なしに岡山における落語会の鑑賞があるが故の不孝であると白状するであろう。女子らがこぞって段に人形を飾る雛祭りの余韻冷めやらぬ三月六日、私は柳家喬太郎と林家たい平の落語を鑑賞するがために、世間から後ろ指を差されながらも、故郷を後にする列車へと飛び乗ったと、こういう事情があったのである。讃岐の国として名高い香川県の入り口である宇多津を発車し、真っ直ぐに岡山へと向かうことなく、一度坂出を経由、他の列車へと乗り換えて岡山へと向かった。本来であれば、実直この上ない私の人間性を崩壊しかねない愚行ではあるが、この方がより合理的であるとの判断の元に、そうした次第である。

一時間ばかりの退屈な時間を過ごしながらも無事に岡山へと辿り着いた私は、すぐさま近郊のレコード店へと足を伸ばした。新作落語の爆弾魔(ボンバーマン)と名高い三遊亭白鳥と、古典落語の名人最右翼と巷を賑わしている桃月庵白酒のCDを購入するためである。ちなみに、両名は名前に“白”の字が入っていることから、ダブルホワイトと呼称されているという。なにやら歯磨きのような呼び名である。店に立ち寄ると、確実に仕入れられているだろうと思っていた白酒のCDは見当たらず、逆に、ひょっとしたら無いかもしれないと思っていた白鳥のCDは置いてあった。逆だろ。普通は逆だろ。白鳥が悪いわけではないが、普通は逆だろ。そりゃ白酒の方が後輩にあたるけれども、でも普通は逆だろ。……などと、醜い感情がふつふつと腹部から湧き上がっていたような気がしたが、見て見ぬふりをして白鳥のCDを購入した。白酒のCDはamazonでも買えるしな。……でも、白酒の『火焔太鼓』聴きたかったな。しばし御預け。

(ココまで面白い文章を書こうと努力したが、面倒臭くなったので普通の文章に戻す)

その後、夕食を取ろうとラーメン屋に立ち寄ってみたり、ここにはあるんじゃないかと紀伊国屋書店に押し掛けたりもしたため、会場である岡山市民会館に到着したのは開演五分前と、実に危うい時刻となってしまった。どんなに時間に余裕があったとしても、ついついその時間を使って寄り道を展開してしまう。悪い癖だ。ホール前では二人のCD・DVDを販売している、所謂物販コーナーが設けられていた。書籍があれば購入してみようかと思っていたが、どちらのCDも既に聴いたことがあるのでスルーする(たい平のDVDに手を出すほど、彼に対する興味はない)。自分の席を確認すると、私の1.4倍くらい大きな人が隣の席に座っている。私もかなりの巨体だと自負しているが、その私よりも大きな人間が、よりにもよって隣の席とは。覚悟を決めて座ると、予想通りのぎゅう詰め。アンコが出るんじゃないかと思った。

開口一番は林家木りん。名前を見ても分かるように、林家木久扇の弟子だ。以前、高松で行われた「小遊三・たい平二人会」に行った時にも、彼が前座を務めていた。たい平が連れて回っているのだろうか。もうすぐ二つ目になるかもしれない、とのこと。入門して三年四年くらいと聞いていたので、早い方か。ネタは『初天神』。我が子を初天神に連れてきた父親が、出店であれ買ってこれ買ってと駄々をこねられてんてこ舞い。自由度の高いネタだが、そこは前座なので、さほどアレンジを加えることなく純粋に。「飴」「団子」「凧」のくだりがあるが、木りんは団子の途中で終わらせていた。……逆に珍しい。

続いて、今回の主役の一人である柳家喬太郎の登場。私生活に関するマクラをまったく見せず、商売ネタではお馴染みの「今は無くても江戸時代にはあった商売……」の話から、古典落語の鉄板ネタ『井戸の茶碗』へ。仏像の中から出てきた金子を巡って、一人の屑屋が右往左往する。武士の意地と意地とがぶつかり合った人情噺で、寄席では確実にウケるネタだという。これを喬太郎は、その落語テクニシャンぶりを存分に発揮しながらも、要所要所で爆弾ボケを仕込むという悪戯心に溢れる一席に仕上げていた。中でも終盤、貧乏長屋の千代田卜斎が金子を受け取る条件として、○を屋敷の高木殿に差し上げようというくだりで発せられた屑屋・清兵衛の一言がたまらなく面白い……のだが、その前の段階で既に客が笑ってしまうという不思議な現象が。思うに、この展開がもはや現代では素直に通用しないため、率直に笑えるものとして勘違いしてしまった客が多かったのだろう。無論、それを責めるつもりはない。

柳家さん喬 名演集1 棒鱈/井戸の茶碗柳家さん喬 名演集1 棒鱈/井戸の茶碗
(2006/11/15)
柳家さん喬

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↑喬太郎の師匠、さん喬による『井戸の茶碗』を収録。

ここで十五分の仲入り。移動しようにも狭いので、ずっと席で待機する。

仲入り後、まずはやなぎ南玉による曲独楽。最初は楽しめたのだが、そのうちウトウトし始める。狭苦しくて緊迫した状況下において、こういった藝を楽しもうという余裕は生まれにくい様だ。意識が飛んだり戻ったり、疲労困憊としている時の労働の様な不安定な状態が維持されていたが、気が付くと終わっていた。なんだか申し訳ない。

トリは林家たい平。お馴染みの笑点に関するマクラから、ネタは『お見立て』。……『紙屑屋』じゃなくて良かった。本当に良かった(←過去二回のナマたい平がいずれも『紙屑屋』だった人)。性格の悪い花魁が自分に良くしてくれた田舎者の客を追い返すために「病気だから会えない」と若い衆に嘘をつかせたことで、状況がどんどん悪化していく。このネタ、個人的にはあまり好きではないのだが(どうも田舎者のお大尽が気の毒で仕方ない)、たい平の『お見立て』は途中で若い衆の目的を替えている(お大尽を騙す理由を「花魁に頼まれて」ではなく「自分の演技力を試すため」)からか、さほど引っ掛かることなく楽しめた。また、時事ネタも豊富で、中でも悪知恵を働かせる花魁に若い衆が「あなたなんか、占い師と同居すればいいんだ!」「洗脳されるってこういうことをいうんですね!」といったくだりは客席大爆笑。私はどちらかというとくだんの一件に心配を寄せている方だったのだが、あまりに唐突だったので、ついつい笑ってしまった。かくも人間は、愚かしい。

たい平よくできました5たい平よくできました5
(2008/04/23)
林家たい平、HIRO WATANABE 他

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↑2007年の『お見立て』を収録。

帰り道、すっかり辺りは真っ暗で、それも当然、時計を見ると午後九時を回りつつあった。これから私は、再び電車に乗り込んで、香川県へと舞い戻り、そこから車で自宅へと戻るのである。非日常の空間を楽しんだ直後は、日常へ戻ることがなにやら哀しくなってくる。ああ、いつまでも、非日常であればいいのに。しかし、それはつまり、日常である。非日常の刺激もまた、日常になってしまうのだ。ああ、いつまでも非日常でいられないものか……電車にゆらゆら、気持ちもゆらゆら。

毎日新聞落語会 桃月庵白酒「火焔太鼓」「鰻の幇間」毎日新聞落語会 桃月庵白酒「火焔太鼓」「鰻の幇間」
(2012/02/29)
桃月庵白酒

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↑売れているらしい。

とりあえず、白酒のCDを手に入れよう。

「R-1ぐらんぷり2012」決勝進出者発表!

AMEMIYA
いなだなおき(アインシュタイン)
COWCOW 多田
キャプテン渡辺
サイクロンZ
スギちゃん
千鳥 大悟
徳井義実(チュートリアル)
友近
ヒューマン中村
野性爆弾 川島
ヤナギブソン(ザ・プラン9)


「R-1ぐらんぷり2012」決勝進出者が発表されたわけだが、どうだろうかこのメンツ。全国放送のゴールデンタイムに相応しいメンバーが揃った……というには微妙な感じだが、まあ悪くない顔ぶれだとは思う。決勝進出者が発表される前に“確実”とまでいわれてほどにウケていたというガリガリガリクソンの名前がないのは気になるが、それでも比較的にいって挑戦的なメンバーが揃ったのではないかと思う。

……それにしても、ユニットの片割れが多いような気もするが。12人中6人。多い。多すぎるといってもいいんじゃないかと思う。いや、R-1グランプリはピン芸人の大会なんだから、もっとピン芸人に光を当てるべき……という野暮ったいツッコミを入れるつもりはないが……うーん。ガリガリガリクソンもそうだけど、エハラマサヒロやナオユキ、もう中学生に中山功太といった面々の顔を想像せずにはいられない。

とはいえ、気になる芸人が多いのも、また事実。野性爆弾の川島がピンでなにをやらかそうというのか気になるし、そういう意味では千鳥の大悟も気になる。二度目の決勝進出となる徳井義実が何をやらかしたのかも気になるし、二年ぶりの出場を果たした友近がどんな隠し玉を準備して来たのかも気になる。気になり警報発令中!(CV:井戸田潤)といったところ。小沢さーん!今年は三回戦で落ちたなんて、あたしゃ認めないよー!

聞いたところによると、今年の決勝戦は三つのブロックに分かれて予選を行い、そこで勝ち上がった三人で最終決戦を行うというシステム♪になっているらしい。ふーん。大会としては盛り上がりそうだけど、毎回ルールいじくり過ぎだろ!と思わなくもない。余談。その注目の組み合わせは、以下の通り。

・Aブロック
友近
野性爆弾 川島
AMEMIYA
COWCOW 多田

・Bブロック
サイクロンZ
いなだなおき
徳井義実
キャプテン渡辺

・Cブロック
千鳥 大悟
ヤナギブソン
ヒューマン中村
スギちゃん


まずはAブロック。トップバッターが友近というのも驚きだが、続く二番手が野性爆弾の川島というのは……かなり濃いい。こうなると三番手のAMEMIYAが呑まれてしまいそうなので、むしろCOWCOW多田は丁度いいポジションを取ったともいえるかもしれない。ただ、AMEMIYAは昨年大会準優勝者、そう易々とは敗れない……とは思うけれど、どうか?

次のBブロックでは、サイクロンZがトップ。COWCOW 多田が場の空気をブッ壊すようなネタはやらないだろうから、ここは順調にネタを見せることが出来そうだ。問題はいなだなおき→徳井義実ライン。いなだなおきといえば、驚くべき顔面の持ち主として知られている。その底知れない雰囲気が、物凄いネタを見せてくれるのではないかという期待にも繋がっているのだが……果たして。続く徳井は、タレントとしては無難に無難にこなしてきた分、反動で(良くも悪くも)大爆発してしまうのではないかという不安がある。二年連続決勝進出、キャプテン渡辺が平常通りにネタを演じることができるか、実に心配である。

最後のCブロックは、三人連続で大阪芸人が飛び出すという濃厚おたふくソース味な展開に。「THE MANZAI 2011」ファイナリスト、千鳥の大悟は一人でどんな世界を構築するのか。その世界を、ザ・プラン9きってのテクニシャン、ヤナギブソンがどう切り返すのか。ベテラン二人のネタを受けて、これまた二年連続決勝進出のヒューマン中村がどんなネタを見せつけるのか。そして予選のトリはスギちゃん……スギちゃん!? 思わず二度見してしまうCブロックは、何がどうなってもおかしくない不可思議な世界を楽しめそうだ。

果たして、今年の優勝者は誰なのか? ちゃんと盛り上がる人が優勝してくれるのか? 無名の芸人さんが優勝したとしても、テレビ局はちゃんと仕事をくれるのか? 中山功太みたいに密入国芸人と呼ばれたりはしないのか? 期待と不安の決勝戦は、3月20日19時より開幕です。ハイ。

『新潮落語倶楽部6 五街道雲助』

新潮落語倶楽部その6 五街道雲助新潮落語倶楽部その6 五街道雲助
(2011/10/19)
五街道雲助

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『たらちね』(03年10月6日)

【あらすじ】独り者の八五郎の元へ、大家が縁談を持ちかけてきた。その相手というのが、気だてはいいし、若いし、嫁入り道具も持ってくると、もう非の打ちどころがない女性。しかし八五郎は、そんな女性が自分のようなところに来る筈はない、何かキズがあるんじゃないかと勘繰り始める。実はその女性、あまりにも言葉が丁寧過ぎて、何を言っているのかさっぱり分からないのだという……。

前座噺として知られる一席。前座噺とは、落語家になったばかりの前座が口慣らしに覚えることの多い落語のことである。恐らく、言葉が丁寧過ぎる女性の言い回しが、前座の口調の練習に向いているのだろう。雲助師匠といえば、やたらと渋い低音ボイスを用いて、壮大に展開する芝居噺のイメージが強かったのだが、なかなかどうして、前座噺もイケる。終盤部分をカットしているために、女性の丁寧な口調による笑いが控えめになってしまったのは些か残念ではあるが、状況の変化に一喜一憂する八五郎の愛らしさがきちんと表現されていて、良い。

『禁酒番屋』(02年10月25日)

【あらすじ】とある藩で起こったいざこざ、その原因は酒であった。それを受け、お殿様は屋敷内に禁酒のお触れを出す。しかし、酒好きの侍たちは、それでもお酒をやめることができない。そこで、屋敷の入り口には通称“禁酒番屋”が設けられ、酒を持ち込もうとする者や、酔っ払っている者などを取り締まるようになった。そんなある時、酒屋に一人の侍がやってきて、城に酒を届けろと要求する。

落語には酒が登場するネタが数多く存在するが、これはその中でもベストとの呼び声が高い。確かに、演じ手の多いネタである。お屋敷の入り口にある禁酒番屋をくぐりぬける作戦を立てる、というストーリーのシンプルさが現代でも容易に通用するからだろうか。……終盤は下ネタとしての趣が強いんだけどね。そんな下ネタを雲助師匠がこれまた渋い声で演じているのだから、そりゃギャップで笑ってしまうのも当然というもの。中でも、険しくて厳しくも酒には目がない番屋の人々は、この上ないハマり役だ。重厚かつ滑稽で、実にいい。ちなみに、この口演では、殿様は家来のしくじりに腹を立てていることになっているが、従来は家来の二人が酒の上で口論になり死人が出てしまった事件の結果として演じられている。しくじり程度で収めておいた方が、スッキリと楽しめるかもしれない。

『家見舞』(03年5月9日)

【あらすじ】兄貴分の所帯祝いを贈る話に乗りそびれた二人。ひとまず道具屋にかけこむが、持ち合わせがないために何も買うことができない。すると、道具屋の旦那が、二人を裏手へと連れて行く。そこにあったのは妙な形をした瓶。その正体はなんと肥瓶。これを水瓶と称し、兄貴分のところへ運ぶことに……。

柳家喬太郎師匠・瀧川鯉昇師匠に続く、三人目の『家見舞』。新潮社の中に、このネタが好きで好きでたまらない人でもいるのだろうか。先二人に比べてたっぷりと時間を使っていることもあって、かなり充実した内容になっている。中でも、このネタの重要部分である、二人が道具屋とやり取りする場面はかなり面白い。先の『禁酒番屋』でもそうだったように、声の低さがかなりの武器となっている模様。勿論、銭のない二人の軽妙さがちゃんと活かされているからこそ、笑えるのだが。

しかし、三席中二席が下ネタって、一体誰が選んだんだろうなあ(笑)

『小林賢太郎テレビ1・2 DVD-BOX』

小林賢太郎テレビ 1・2 DVD-BOX小林賢太郎テレビ 1・2 DVD-BOX
(2011/03/16)
小林賢太郎、竹井亮介 他

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2009年1月と2010年8月にNHKで放送された「小林賢太郎テレビ」がDVD化されたので、観る。小林賢太郎がやたらと持ち上げられるナレーションに辟易としたが(自分にとっての小林賢太郎は、あくまでも“ラーメンズの小林賢太郎”なので)、内容はちゃんと面白い。小林の一人ライブ「ポツネン」で披露されたパフォーマンスをテレビ仕様に再構築したものもあれば、テレビオリジナルのコメディもある。小林賢太郎を知らない人は勿論のこと、小林賢太郎を知っている人でも楽しめるだろう親切設計だ。

ただ、全体から漂ってくるカリスマアピールぶりに、拒否反応を示す人もいるのではないかと思う。小林がもはや物凄い表現者になっているということは、DVD越しではあるが、これまでラーメンズの活動を見てきた僕だって分かっている。とはいえ、その原点となっているのは、あくまでも笑い。「どうぞ、私の笑いを見て下さいませ」とまで低姿勢であるべきだとは思わないけれども、「さあ、俺の笑いを見て、笑いやがれ」といわれるのは、何かが違うような気がする(それも、ナレーション越しに)。立川談志や松本人志などの前例もあるけれど、彼らはそれをちゃんとテレビで見せつけてきたという経緯があるわけだし。舞台人として評価されているという事実を、そのままテレビの中に持ち込もうとする演出には、どうしても違和感を覚えてしまった。とどのつまり、この番組にはエレ片的な要素が足りない!(まあ、NHKにそんな無茶な期待をしちゃいけないんだろうけど)

とはいえ、既にラーメンズとしての小林を知っている人間にしてみれば、この番組は素直に楽しい。舞台とテレビの違いを確認するという意味でも楽しいし、なによりテレビならではの多額の予算を使っているだろう小道具を用いたコントが面白い。例えば、 “腑に落ちない展”なる展示会では、「乱暴に書かれた【丁寧】」「NO MORE PLACARD!と書かれたプラカード」「ズボンと書かれたTシャツ」など、観ている人間の脳味噌をくすぐるナンセンスな小道具が次々に繰り出してくる。かと思えば、“マヨネーズをマネようぜ”では、様々な物質をマヨネーズに似せようとする。ビジュアルの面白さだけで、何の意味もない。でも、その徹底的に意味がないところが、妙に面白い。

また、この番組では、小林にお題を提示し、限られた期間内でコントを作り上げてもらおうという挑戦的な企画も行われている。これまで舞台を中心に活動し続けてきた小林にとって、こういったテレビバラエティ的な企画は初めての試みだったのではないだろうか。それでも、その期間内のうちに、ちゃんと難解なお題に沿ったコントを作り上げてしまうのだから、実に恐ろしい。ちなみに、第一弾のお題は「テレビ」、第二弾のお題は「3D」だった。編集も何もない状態で、小林がどんな世界を作り出すのか……実際に観て、確かめてもらいたい。

……と、あれやこれやの映像や企画で満載の本作。二枚組の割に収録時間が短いので、購入当初はなんだか損をしたような気持ちになったのだが、この映像の密度を考えると、むしろ納得の値段といえるのかもしれない。なお、「小林賢太郎テレビ」はその後、2011年8月に第三弾を放送。しかし、現時点ではDVD化される予定はない。待ち遠しいな。

タイムマシーン3号第3回単独ライブ『ひまわり畑でつかまえて』

タイムマシーン3号 第3回単独ライブ ひまわり畑でつかまえて [DVD]タイムマシーン3号 第3回単独ライブ ひまわり畑でつかまえて [DVD]
(2012/02/22)
タイムマシーン3号

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アップフロントエージェンシーに所属するお笑いコンビ、タイムマシーン3号が2011年9月に開催した第3回単独ライブ「ひまわり畑でつかまえて」の模様を収録したDVDが、先日リリースされた。

彼らの単独ライブがDVD化されるのは、2011年2月にリリースされた『タイムマシーン3号第2回単独ライブ「メトロ鉄道の旅」』以来、およそ一年ぶり。彼らのように、それなりに実力はあるものの、一般に知られているほど売れているわけでもなければ、大手の芸能事務所に所属しているわけでもない、そんなお笑いコンビの単独ライブがこうして記録に残されることは非常に喜ばしい。惜しむらくは、彼らの初単独ライブがソフト化されていないこと。ズラッと三枚、キレイに並べたいというコレクターの業が、ふつふつと。

ライブ本編を見ると、これが相変わらずといったところ。引越しの手伝いに来た後輩に、いらないものをまとめたダンボール箱を渡したら、直後にリサイクルショップから電話がかかってきて、その中に200万円相当の代物があることが発覚する『引越し』。おたふく風邪にかかったから三日だけ休ませてほしいという部下が、四日目に某有名遊園地のグッズを身に付けて会社にやってくる『空白の3日間』。芝居のオーディションを受けるために自宅で稽古をしている山本の家に関がやってきたので、その相手をしてもらったところ……『演技者』。いずれも、シチュエーション自体はオーソドックスだが、その中に盛り込まれる細かいボケがグイッと観る者の意識を引きつけている。しかし、その細かいボケが故に、コントの本筋が持つ面白さが弱まっているのも、また事実。瞬間的な面白さはあるものの、それらの笑いは殆ど記憶に残らない。なんだか、「後には何も残さない、何も残らない」というシティボーイズの方針を、悪い意味で踏襲しているかのよう。

そういう意味では、本作の最初に披露されたコント『だまし山』と、最後に披露されたコント『ひまわり畑でつかまえて』は、なかなか興味深い内容だったように思う。この二本のコントは、山本扮する田舎の子どもと関扮する化けタヌキの交流を描いたもので、『だまし山』では彼らの別れが、『ひまわり畑でつかまえて』では彼らの再会が展開されている。そのストーリー自体は、手塚治虫の『雨ふり小僧』を彷彿とさせる、やたらとベタな感動物語。しかし、ベタだからこそ、彼らの全方位に向かって発射される無数のボケに耐えうる、骨太さがあった。今年も単独ライブが行われるのかどうかは分からないが、こういう路線の物語性の強いライブにしたら面白いのではないかと思う。

ただ、それらのコントよりも、今回は幕間映像の方が印象に残っている。……悪い意味で。以前から、自らの身体を張ることで笑いを見出そうとしている傾向のあった彼らだが、今回はその気持ちが暴発したようで、「花火をバッドで打ち返す」「罰ゲームにケータイを火あぶり」「一般人へのインタビュー中、ドッキリの御本人登場風に後ろから山本が現れる」など、もはや笑いを通り越して痛々しいVTRばかり見せつけられてしまった。売れてない芸人がケータイを火あぶりはダメだ……弁償のことを真面目に考えてしまう……。ただ、一般人へのドッキリを始める前の山本のコメントは、ちょっと面白かった。

山本「僕はね、普段ね、ドッキリが嫌いなんですよ!」


完全にロンドンハーツを引き摺ってる(笑)

実力はあるのに売れない十一年間を過ごし、現在に至るタイムマシーン3号。もはや売れないを通り越して、売れないをこじらせてしまっている感すら漂っている彼ら(Twitterで聞いたところによると、実際のライブでは二人の住所・電話番号・メールアドレスをスタッフロールに流したそうな)。「THE MANZAI 2011」では認定漫才師にも選ばれず、非常に厳しい状況が続いているが……その笑いを生み出す実力だけは確か。土俵際を粘って粘って粘りきれば、いつかきっと報われる……といいなあ。


・本編(88分)
「だまし山 ~プロローグ~」「オープニング」「引っ越し」「ギリギリ君が行く!」「空白の3日間」「ケータイでトモダチをライブに呼ぼう!関太編」「漫才:都会と田舎」「ケータイでトモダチをライブに呼ぼう!山本浩司編」「ボールボーイ」「山本浩司のやりたい事」「演技者」「関太のやりたい事(ゲスト出演:森田まさのり)」「ひまわり畑でつかまえて」「エンディング」

・特典映像(20分)
「ギリギリ君が行く! ~未公開編~」「ケータイでトモダチをライブに呼ぼう! ~未公開編~」

図星の図星に立ち入るな!

第13回東京03単独公演「図星中の図星」 [DVD]第13回東京03単独公演「図星中の図星」 [DVD]
(2012/06/20)
東京03

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今現在も全国ツアーが展開されている東京03単独公演「図星中の図星」が、早くもDVD化決定とのこと。最近はお笑いライブがすぐにDVD化されるね。地方者には有難い話だけれど、生でライブを観てきた人はフクザツだろうな。かくいう僕はというと、岡山公演を既に観てきたわけだけれども、このDVD化を喜んでいる。何故かというと、とにかく面白かったから! もう、色んな人に観てもらいたいので、皆で買えばいいと思いますね、ホント。東京03へのイメージを完全に覆すオープニングテーマ、情けない歌詞なのに妙に沁みるエンディングテーマも要チェックだ!

・その他の主なリリース予定
0425『トータルテンボス 漫才ライブ「漫遊記」
0523『ラバーガール ソロライブ「ジェイコブ」

『落語 昭和の名人アンコール 三代目古今亭志ん朝』

隔週刊 落語 昭和の名人 アンコール 2012年 3/6号 [分冊百科]隔週刊 落語 昭和の名人 アンコール 2012年 3/6号 [分冊百科]
(2012/02/21)
不明

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『火焔太鼓』(82年10月9日)

【あらすじ】ある道具屋の旦那は、とにかく商売が下手。売るべきものを売らないし、売らなくていいものを売ってしまう。おかげで家には銭がなく、おかみさんの小言は激しさを増していく。ある時、この旦那が汚い太鼓を仕入れてくる。あまりにも汚いので、丁稚の定吉にハタキをかけさせていると、一緒になって太鼓の音が鳴り始める。すると、その音を聴いた侍が店にやってきて、その太鼓を屋敷に持ってきてほしいという……。

古今亭のお家芸と名高いネタ。聞いたところによると、志ん朝師匠と仲が良かった柳朝師匠が無理矢理教えてもらい、外部に漏らしたのだという。志ん朝師匠にしてみればたまったものじゃなかったろうが、おかげで色々な落語家たちによる口演が聴けるのも事実。泣いてもらうしかないネ。志ん朝師匠の『火焔太鼓』は、以前に朝日名人会シリーズとしてリリースされたものを聴いたことがあるが、後年の音源(99年収録)ということもあってか、あまり満足できなかった。恐らく、年を重ねたことで声に重みが生じ、軽妙さが弱まってしまったためだろう。しかし、これに収録されている音源は、それよりも十年以上も前の音源。元気ハツラツに軽快な口演を堪能できる。太鼓を担いだ道具屋が屋敷で見せるてんやわんやぶりが、もうとにかくたまらない。「十万両!」「十万両!?」。くすぐりまみれで、ああ面白い。

『子別れ(下)』(79年9月28日)

【あらすじ】酒ぐせの悪さが故に女房と我が子を家から追い出し、なじみの女郎と一緒になった大工の熊五郎。しかし、この女郎がろくでもない女で、気付けば他所に男を作って、そのままいなくなってしまった。それから三年後。自分の行いを反省した熊は断酒し、一生懸命になって働いて、どうにかして身を持ち直した。ある日、そんな熊さんのところへと出入り先の番頭がやってきて、御隠居の茶室に使う木材を選びに木場へと出かける。すると、その道中で三年ぶりに、愛する我が子の姿を見つけ……。

人情噺の傑作として知られているネタ。別名『子は鎹』。個人的には、立川談四楼師匠が原作を担当した漫画『山遊亭海彦』で演じられていたネタ、というイメージが強い。酒が理由で女房と子供を追い出した熊五郎の行動は、些か行き過ぎている感は否めない。それを払拭するためか、志ん朝師匠はそれらのいきさつを再現せずに、全て過去のこととして表現している。また、熊の反省ぶりを丁寧に描いて、、それらの行為が間違いであったときちんということをきちんと客に認識させている。なんと行き届いたフォロー。おかげでこちらも、素直にしんみりすることが出来る。しかし、最大の見せ場は、熊から貰ったお小遣いを盗んだものだと疑っている母親が、息子に詰め寄るシーン。いわゆる泣きの場面だが、志ん朝師匠はここのやり取りにちょっとしたくすぐりを用意し、単なる泣きの場面では終わらせない。ただ泣ける話として終わらせても問題がないものを、きちんと笑える落語として昇華してみせる、志ん朝師匠の手腕が如何なく発揮されている一席ではないかと。

追記。『子別れ(下)』の(下)とは、“上中下”の下を意味している。つまり、『子別れ』という演目は三部作になっていて、ここで演じられているのは第三部のみということ。ちなみに、(上)では熊さんが女郎買いに行くくだり、(中)では妻と子を追い出すくだりが描かれているとのこと。全編が聴ける音源は、近年のものでは柳家小三治柳家さん喬と柳家権太楼によるリレー落語などがある。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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