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『ナイスなやつら ~未来はイイトコロ~』全ネタレビュー

キングコング西野亮廣・NON STYLE石田明 「ナイスなやつら ~未来はイイトコロ~」 [DVD]キングコング西野亮廣・NON STYLE石田明 「ナイスなやつら ~未来はイイトコロ~」 [DVD]
(2012/06/20)
西野亮廣、石田明 他

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事前に書いておくが、私はキングコング並びにNON STYLEのアンチではない。この二組が過去にリリースしたDVDの多くは好意的にレビューしてきた(つもりだ)し、アンチになるほど彼らに対して深い興味を抱いてもいない。また、他の人たちが叩いているから一緒になって叩いてやろうというチキン野郎でもないし、過去に一方的に好意を抱いて一方的に嫌悪感を抱いた疑似ストーカー野郎でもない。私はあくまでも、純然たるお笑い愛好家に過ぎない。……と、いうことを踏まえた上で、以下のレビューに目を通していただけると有難い。というのも、今回のレビューはここ最近で最も辛辣であるからだ。ただ、それは個人的な思いがあってのことではなく、あくまでも私のコント観を反映したものであるということだけ、理解していただきたく存じ上げる。

(ネタバレは控えめにしているが、多少含んでいるのでご注意)

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榎本俊二『思ってたよりフツーですね』最終巻の暗雲

思ってたよりフツーですね (3) (単行本コミックス)思ってたよりフツーですね (3) (単行本コミックス)
(2012/07/25)
榎本 俊二

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榎本俊二『思ってたよりフツーですね』、最終巻を読む。

『思ってたよりフツーですね』は、ギャグ漫画家として知ってる人には知られている榎本俊二が、如何にして現在の地位を手に入れたのかを虚実混ぜこせにしてお届けするエッセイ漫画である。徹底的にドライな視点で描かれる現実パートと深夜明けのドーパミン全開脳味噌で描いているとしか思えないギャグパートのバランスが絶妙で、キワモノ揃いの榎本俊二作品においてもかなりの傑作であると思っていたのだが、今回で最終巻である。いと寂し。担当編集も編集長も部署を異動になってしまったらしいが、どうにかして復活させてもらいたいモノである。

そんな大好きな『思ってたよりフツーですね』最終巻は、相変わらずのバカバカしさ。雑誌デビューが決まった榎本青年のドラマを描いていたかと思ったら、次の回では現在の榎本がいきなり山奥の温泉地でご近所さんと親睦を深め始める。かと思えば、吉田戦車とイクメントークをしたり、スペースシャトルが飛ばなくなったことでピンチを迎えたり、エッセイ漫画なのに挿入歌を強引に入れようとして編集各位を(著作権的な意味で)ヒヤヒヤさせたり、まったく意味が分からない混沌っぷり。最終巻であるが故の寂しさは拭い切れなかったが、相変わらずのバカバカしさに安心感を覚えた次第である。

……ところが、そんな最終巻のバカバカしさに、残念なことに水を差すエピソードも掲載されていたのだから、落ち着かない。せっかくの最終巻、待ち望んでいない大事な大事な最終巻、その大切なページをイヤーなエピソードで埋められてしまっているのである。ああ、ヤダヤダ。……などと書くと、作者である榎本俊二に対するクレームのように聞こえるかもしれないが、そうではない。というのも、これを描かざるを得なかった榎本の気持ちも理解できるからだ。もとい、これはネタにせざるを得ない! ネタにしないとやりきれない!

その、大事な大事な最終巻に水を差しているエピソードは、第41話から第43話にかけて掲載されている、あるトラブルに関する話である。そのトラブルとは、ちょっと前に問題となった「原稿紛失問題」だ! ここで詳しくまとめると本の売り上げに影響を与えかねないので書かないが、まあ、とにかく酷い。原稿を失くしたことに対する罪悪感はおろか、まったく反省していない! 漫画を専門に取り扱っていない雑誌だったとはいえ、読んでいるこちらも口がアングリ……。本件について、榎本氏は次の様にまとめている。

榎本「今回のことは大いなる教訓として後世に語り継ごうと決意した次第であります」


それ、多分唐沢なをきに任せた方がいいヤツ!

「オンバト+」七月二十一日放送感想文(愛知)

流れ星【485kb/1,992票】※会場審査1位・視聴者投票2位
初出場初オンエア。タイムマシーン3号に続く出戻り組。タイムマシーン3号だけならまだ許せたが、この辺りの実力者が戻ってくるのは些か疑問。まがりなりにも「THE MANZAI 2011」ではタイマと違って認定漫才師に選ばれているのだから、そっち方面で頑張ってくれよ……と。とはいえ、個人的には大好きなコンビなので、ついつい楽しく観てしまった。ネタは『娘の結婚の挨拶』。ちゅうえいが娘の結婚の挨拶を受ける父親を演じる漫才コント。「なんでお前ボケ先に言うの?」は、番組に馴染んでいる彼らだからこそ通用するボケだろう。「育てた娘が嫁に行く~♪」「はあ~火あぶりに~してしまえ!」のくだりは、彼らの真骨頂。いやはや、たまらんね。

風藤松原【441kb/2,152票】※視聴者投票1位
十戦九勝、今期初オンエア。前回、400kbを超えるもオフエアとなった二人が、すぐさまリベンジを達成。さりげない実力者ぶりは変わらずといったところか。今回のネタは『言葉を付け足す』。風藤が発する言葉に、すぐさま松原がちょっと変わった言葉を付け足していく……って、なんだこの不自然な設定。とどのつまり、風藤が提示するお題に松原が答えるという大喜利スタイルの漫才だ。一つ一つのボケが独立しているので、観ているうちに飽きてくるのではないかと思ったが、それらのボケがあまりにもナンセンスなために、ついつい観てしまう。ボケの発想に自信があるからこそ出来る漫才だといえるだろう。ただ、そこに漫才ならではのカタルシスは無い。面白いんだけどネ。

ヒデヨシ【409kb/949票】※視聴者投票3位
五戦三勝、今期初オンエア。「爆笑オンエアバトル」オフエアの常連が、ここにきてオンエアの回数を増やしてきている。成長なのか、時代なのか、それとも単なる運なのか。今回のネタは『チャンネル争い』。父と息子がチャンネル権を本気で争う様を描いたコントだ。このところ、彼らは親子のシチュエーションによるコントをよく演じている。いわゆる“つかんだ”状態なのだろう。リモコンの数で息子を翻弄する父親の様が、狂気じみていて実に面白い。数で攻めるスタイルは、かつて同じ事務所に属していた末高斗夢(現在は落語家として活動)を彷彿とさせる。ところどころに粗が見えるのは残念(特にオチは惜しい)だが、上手く煮詰めればキングオブコントも……。

クレオパトラ【441kb/935票】
三戦全勝、今期二勝目。前回オーバー500を記録して勢いづいている彼らが、その速度を維持して今回もオンエア。今回のネタは『無人島からの脱出』。映画でよく目にする、無人島への漂流から脱出までの流れをコントでやってみる。言葉遊びまみれのボケは安定感があるが、言葉のフリをきっかけにボケているためか、あまりセンスが感じられない。ただ、「服なんか目印になるか!」「オレの服、無印だからな~」の流れに現代性を感じた。シュッとしているし、ネタもきちんとしているので、いつかハジけるんじゃないかという気もするのだが……。

笑撃戦隊【445kb/529票】
三戦一勝、今期初オンエア。数多の若手漫才師を抑えて「M-1グランプリ2010」準決勝戦に進出したコンビ、遂に「オンバト+」で初オンエア。ナベプロとしては、我が家・ハライチに続く漫才コンビとして期待しているのだろうが、果たしてどうなるか。今回のネタは『キャバ嬢になりたい』。漫才を始めようとした途端、柴田が「お笑いを辞めてキャバ嬢になりたい」と告白することで、言い争いが始まる。素の状態でコントを始めるあたりに、黎明期の漫才を彷彿とさせる。ただ、あからさまに言葉でボケようとしているところに、まだまだ成立していない感を覚える。より自然にサラッとボケられるような漫才を作ることが出来れば、より面白くなりそう。何はともかく、これからのコンビだろう。今後の展開に期待したい。

■今回のオフエア組
405kb:GAG少年楽団
397kb:バイきんぐ
289kb:ムートン
141kb:ルネ
129kb:ビッグタスク

まさかのGAG少年楽団とバイきんぐが揃ってオフエア! GAG少年楽団はこれが初のオフエアとなった。バイきんぐはチャンピオン大会での活躍が印象に残っていることもあって、今回のオフエアはなかなかに衝撃的。地方収録ならではの意外な結果となってしまった。また、バイきんぐと同様に、第二回チャンピオン大会出場者のムートンもオフエア。ここはウケるスタイルがはっきりしているので、一度落ちると厳しいか。

■次回
井下好井
うしろシティ
【初】エガラモガラ
オキシジェン
キャプテン渡辺
スパローズ
ねじ
【初】ぺんぎんナッツ
メンソールライト
ラバーガール

次回は秋田収録。やたらと豪華な顔ぶれだが、何かのお祭りのイベント的なアレだったんだろうか(ンなわけない)。井下好井、うしろシティ、キャプテン渡辺、メンソールライト、ラバーガールと今期の活躍が期待できる実力者たちの名前が揃っているが、個人的にはオキシジェンの漫才が楽しみ。なんとなーく、ハネるような気がしているので……。次回は八月二十六日(二十五日深夜)に放送予定。

2012年8月のリリース予定

08『兵動大樹のおしゃべり大好き。6
08『KING KONG LIVE 2011
15『オリエンタルラジオ LIVE2011 絶賛 再ブレイク中 ~オファーおまちしています~
22『たりないふたり-山里亮太と若林正恭【初回限定版】
22『中川家の特大寄席
22『COWCOW CONTE LIVE 5
22『世界鳥居紀(奇)行 IN サイパン
22『よゐこライヴ ~もしもの from A~
22『古坂大魔王 単独ライブ ベストセレクション「結果、メンドクサイ男でした」
29『平成ノブシコブシ単独ライブ 御コント~徳井健太が滅!~
31『ゲームセンターCX in U.S.A.

例年に比べて、お笑い芸人関連のDVDリリース予定が圧倒的に減少している2012年。「石を投げればお笑いDVDに当たる」とまで言わしめた時代はとっくのとんまに終わってしまい、今や地方の農村地区における労働力としての若者たちの如く、その数は歴然として減少し続けている。さらば、未曾有のお笑いブームよ。さらば、青春の光よ……。と、そんな状況であっても、盆暮れのいわゆるボーナス期に突入すると、幾らか事情は変わってくる。全国のお笑いバカたちの懐がほんの少しでも潤う季節には、お笑いブーム全盛期を彷彿とさせるリリース量を見せてくれる。

とはいえ、やはり以前のように、世間的にはまったく名前の知られていないお笑い芸人のネタDVDをバカみたいに流出するということはない。今回のリリース予定を見ても、そのことがよく分かる。兵動大樹、オリエンタルラジオ、COWCOW、鳥居みゆき、よゐこ等々……いずれも、過去に複数の単独DVDをリリースして来た、いわばお笑いDVD界の猛者たちである。唯一、今回が初めての単独DVDのリリースとなる古坂大魔王も、芸人としての実績をこれでもかと蓄積してきた上での満を持してのリリースである。そこに「冒険」の二文字はまったく感じられない。いや、それ故に、消費者である我々は、その実力がある程度認知されている芸人たちのDVDを、安心して鑑賞することが出来るのだが……。

この他のリリースについてはこちらをご参考

明石家さんま学序説

先日、タモリに関する記事を書いた。演芸史と絡めたちょっとマニアックな話題だったので、興味を持つ人もそんなにはいないだろうと想定していたのだが、蓋を開けてみると、思っていたよりもずっと沢山の反応を頂いたので驚いた。『27時間テレビ』の興奮冷めやらぬタイミングでの更新だったとはいえ、まさか普段の五倍近いアクセス数を記録することになろうとは……普段、私がお笑いDVDのレコメンドを書くために、どれだけ苦悩していると思ってるんだ……おっと、心の声が……。

さて。当該記事にも書いたが、タモリはいわゆる演芸と殆ど関わりを持つことなく現在のポジションまで登り詰めた、いわば純粋培養のパフォーマーである。漫才師でもなければコント師でもない、落語家でもなければ放送作家でもアナウンサーでもない。唯一無二の絶対的な存在、それがタモリだ。そんなタモリとはまったく逆の世界に生きていたにも関わらず、そのしがらみから逸脱し、やはりゴーイングマイウェイな生き様を見せている芸人がいる。“お笑い怪獣”の異名を持つ男、明石家さんまだ。


いわゆるお笑いの世界でも、師弟制度・昇進制度などの決まりが厳しく執り行われている落語の世界に籍を置いているにも関わらず、さんまはひたすら自由に笑いを取り続けている。その姿からは“落語家”というバックボーンなど、微塵も感じられない。彼を縛り付けているのは、もはや“笑い”だけだといっても過言ではないだろう。

そんな明石家さんまにも、師匠が存在する。その名も、笑福亭松之助。


五代目笑福亭松鶴の弟子にあたり、六代目笑福亭松鶴(仁鶴、鶴光、鶴瓶の師匠)とは兄弟弟子の関係にある。既に80歳を超えている高齢だが、今現在も落語家として高座に上がっているとのこと。そんな師匠であるならば、弟子のさんまの活躍ぶりを批判的に見ていてもおかしくない……と思うのが人の心というもの。しかし、どうやらそうではないらしい。

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異質の男・タモリを可愛がった喜劇人

タモリが司会を務めた今年の『27時間テレビ』では、今ではなかなか見ることの出来ない、彼の貴重な映像が幾つか放送されていた。その映像を見て、しみじみと思った。「タモリって、変な芸人だよなあ……」

今や『笑っていいとも!』のメインパーソナリティとして、テレビバラエティ史に堂々とその名を刻み込むことが確定されているタモリだが、その立ち位置はなんとも不思議だ。大手芸能事務所に属さず、漫才やコントといった演芸を見せず、やることといえば珍妙な形態模写……改めて考えてみると、こんなヘンテコな存在はそうそう見られるものじゃない。なのに、そのヘンテコな存在が、お昼の生放送の番組を取り仕切っている。これは、もはや不気味の領域だ。考えてもみれば、オールバックにサングラスというビジュアルも不気味だ。あんなのが自分の部屋に入ってきたら、怖くて怖くて……って、それ『世にも奇妙な物語』だよ!


そんなタモリの出自も、これまた変わっている。博多のホテルに泊まりに来ていた渡辺貞夫のマネージャーがタモリの友人で一緒に飲んでいたのだが、その帰りに別の部屋で山下洋輔トリオがテレビの音声をオフにしてアテレコしていたところを見かけ、こっそり加わるとちゃっかり意気投合、気に入られて東京へと誘われ、そこで知り合った赤塚不二夫の家に転がり込み……って、もうナニガナンダカワカラナイ。即興芸の才があったとはいえ、ここまで縁に恵まれた人間がかつて芸能史に存在しただろうか。ろくに修行もせず、芸の練習もせず、他人の家で堂々たる居候として過ごす……ああ、私もタモリみたいな人生を歩みたい!と、思わずにいられない。かくして、タモリは日本の演芸史にさほど関わりを持つことなく、純然たる即興芸の持ち主として、現在に至ったというわけだ。スッゴイデスネ。

しかし、そんなタモリが、ちょっとだけ関わりを持った喜劇人がいるという。その人の名は、トニー谷


トニー谷は戦後に登場した、キザな眼鏡にちょび髭がトレードマークの漫談家だ。日本テレビで放送されていた『アベック歌合戦』では司会を務め、あなたのお名前なんてぇの」という言い回しが流行語になった。当時の彼について、立川談志は「駄洒落と風刺がイリュージョンの如く交差して、それがフレッシュな芸になっていた」と語っている。そんなトニーとタモリが、交差した瞬間があったのである。以下、『赤塚不二夫対談集 これでいいのだ。』より抜粋。

タモリ「日本の喜劇人で考えてみると、トニー谷なんて凄かったよね」
赤塚「トニー谷……」
タモリ「まったく孤立していた人で、あの人のことは誰も認めなかったんだよね」
赤塚「あれ、俺の漫画のイヤミのモデルだもんねぇ。あれは、いただきザンス」
タモリ「あの人の晩年のほとんど仕事をしてなかった時期に、オレ、可愛がってもらってたの。それで、あの人と何回か会って言われたことは、「ボードビリアンってのは音楽だよ。音楽わかんないと、ボードビリアンはできない」って言ってたよね。あの人の中では、コメディアンとボードビリアンを大きく区別してましたよ。自分はボードビリアンだっていうのが、強烈にあったみたいですね。だから、ボードビリアンというよりコメディアンっていうのが強い日本の喜劇人の中では、孤立してしまったんでしょうね」


ボードビリアンというのは、いわゆるショービジネス(踊り、歌、手品、漫才)を演じる者のことである。GHQの通訳に採用され、アメリカのショーやパーティのMCをしていた経験のあるトニー谷のプライドが、自らをボードビリアンというスタンスへと導いたのだろう。そんなトニーが、タモリを可愛がっていたという事実は興味深い。演芸界とは繋がりが薄く、一方で音楽に関する造詣が深かったタモリに、トニーはなにかしらかのシンパシーを感じていたのではないだろうか。

そして思う。タモリって、もしかしたらボードビリアンなんじゃないのかしらん……と。

『ロックンロールイズノットデッド』なら、君は生きるか。

ロックンロール イズ ノットデッド(DVD付き初回限定盤)ロックンロール イズ ノットデッド(DVD付き初回限定盤)
(2012/07/11)
サンボマスター

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サンボマスターのニューアルバム『ロックンロールイズノットデッド』を購入する。「サンボマスター好きなんですか?」と問われれば「まあ、それなりに」と答える程度の私では御座いますが、気が付けば過去のオリジナルアルバムは全てチェックしており、にも関わらず、心のどこかで「ファンといえるほどの熱意はない」などと冷めた態度を取っている次第で。あにはからんや、かんかんのうのきゅうのれす、といった具合。

そんな唐変木な私にも響くロックンロールミュージック、オリジナルアルバムであるならば頭の先から尾っぽの先まで一気に聴きこむのが礼儀でしょうと泉谷しげるがいうと、ナニッと怒ったが思い直したように私、三条へ行かなくちゃ、堺町のイノダっていう珈琲屋へね、なんてタカダワタル的なコメントを残して立ち去った……って、いよいよ何を書いているのか分からなくなってきた。深夜のテンションは実におぞましい。兎にも角にも、オリジナルアルバムは頭から最後まできちんと通して聴くのが礼儀と考える、それが私という人間なのであるが、にも関わらず、一曲目のアルバム表題曲『ロックンロールイズノットデッド』を何度も何度も何度も何度もリピートして再生しているという事態に陥っている。なにせ名曲、というほどではないが、なにせ名詞、というほどでもないが、なにやら妙に心に沁みた、沁み込んだ、チョコレートがぎっしりと詰まったトッポってスゲェよな、状態なのである。

さあ不肖私、この曲が生まれた理由なんてまったく知らない、特に知りたくもないという無精者で愚か者なのだが、まあ人それぞれに感じ方って別っしょ、なんてバイトの後輩みたいな感覚で何度も何度も何度も何度もリピートしている次第だが、私はこの『ロックンロールイズノットデッド』を、あの、あまりにも悲しい、悲劇的で、陰惨な事件と、重ね合わせ、それと同時に、かの中学生時代、あまりにも辛く、憂鬱で、何処かへ逃げ出したかった時代の自らを思い出し、そうだ、その頃の私は、こういう言葉が欲しかったのだと何度も頷いてしまうのである。

どれだけの悲しみがあったのか 今僕に話してくれないか
心の中にかくれた本当の君に逢いたい
震えるほどの夜をこえて昨日のさびしさにさよならを
本当の君が今世界で 一番の光を放つんだよ

何度だって立ち上がるんだよ 君よもう悲しまないでくれ
強く願って明日を変えたい ロックンロールイズノットデッド
誰にも言えない孤独だとか 君の不安を終わらせに来た
君が生きるなら僕も生きるよ ロックンロールイズくたばるものか
ロックンロールイズノットノットデッド


ロックンロールが本当に、あの頃の目の前に悲しみしか見えていなかった自分のことを助けてくれるかどうかなんて分からないし、そんなことをいわれたからって「そんな無責任なこというなよ」なんて中学生特有の反抗的な態度を取る可能性だって否定できないし、それでもこの曲を、あの頃の情けなくも生きていた自分が聴いていたら、ちょっとは気持ちが楽になって、サンボマスターのライブくらい行っていたかもしれない、そして狭苦しい世界の外の世界に住んでいる仲間たちのことを知って、新たなる道を開いていたかもしれない、なんていうことは今の大人な自分だから口にできる無責任論理だってことは承知しているが、ロックンロールが死なないから死ななかった子どもはけっこう世の中にいるんじゃないか、なんて根拠のない言葉を口にしてしまいたくなる今日この頃なのである。

空っぽに聞こえるかもしれない浅墓な言葉に聞こえるかもしれない、でもそんな言葉で救われる人がいるかもしれない。そういう意味では、いつだって言葉は誰かを救っているのかもしれない。知らないけど、そんな気がする。かくしてロックンロールイズノットデッド、かくしてロックンロールは鳴り止まないっ、のである。

「オンバト+」七月十四日放送感想文(愛知)

■マシンガンズ【445kb/1,012票】
四戦三勝、今期二勝目。ダブルボヤキ漫才という確固たるスタイルを持つコンビ、無事に連勝。今後も順調に勝ち上がって、今度こそチャンピオン大会出場を果たしたいところ。今回のネタも漫才で『居酒屋のバイト』。バイト中に対応したムカつく客のことを、次々に昇華していく。目の付けどころは良いのだが、ユニゾンツッコミをかました後の細かいツッコミが少しくどい。スカッとキメた後は、その後味が消えないうちに次のネタに行ってほしいと個人的には思う。

■響【513kb/1,713票】※会場審査1位・視聴者投票2位
七戦六勝、今期二勝目。連勝を重ねてはいたものの、なかなかハネず、中途半端な結果ばかりを叩き出していた彼らが、およそ二年ぶりにオーバー500を記録。地方収録が故のハイスコアという見方も出来るだろうが、それでもオーバー500はオーバー500だ。この勢いを、次の収録にも残せるか。今回のネタは『結婚式の司会』。長友が小林の結婚式で司会を務めたら……という漫才コントである。結婚式ではお馴染みのシチュエーションを、彼らならではの絶妙なウザさで調理している。「ケーキ入刀とかやれよ!」「(睨みつけながら)食べました!」などは、彼らの真骨頂ともいえるだろう。高キロバトルも納得の安定感を見せていた。

■ニッチェ【469kb/1,446票】※視聴者投票3位
五戦三勝、今期二勝目。昨年度はオーバー500を記録したものの、連勝することが出来ず、女性コンビ初のチャンピオン大会出場を逃してしまった彼女たち。しかし今回、初の連勝を記録。この調子で、今度こそチャンピオン大会出場権を獲得してもらいたい。漫才もコントもこなす彼女たちだが、今回は漫才で『田舎に泊まルンバ』。番組のロケで田舎に泊まりに来た近藤を、江上が演じる田舎で暮らす女性が相手するという漫才コントだ。アクの強いオバチャンを演じると活きる江上のボケが、そのビジュアルに似合わずシニカルにヒットする。生まれたての子牛……確かにグロテスクだ。

■恋愛小説家【445kb/1,791票】※視聴者投票1位
二戦一勝、今期初オンエア。松竹芸能のナンセンスコント職人として注目を集めるも、これといってパッとした活躍を見せていなかった彼らが、久しぶりにオンエア権を獲得(※なんと「爆笑オンエアバトル」2008年5月以来のオンエア)。復活に期待がかかる。今回のネタはコントで『コンビニ』。コンビニで買い物をしているお年寄りが、年齢確認の出来る物を持っていなかったため、お酒やたばこが買えない……という、なんともシニカルなコントである。ただ、シニカルなだけでは終わらず、ところどころでトリッキーなボケを放り込んでいるあたりが、実に分かっている。バランス感覚に優れたネタであった。

■ウエストランド【477kb/674票】
五戦四勝、今期初オンエア。爆笑問題を筆頭とした芸能事務所“タイタン”の若手漫才師、ウエストランド。まだまだ漫才師としては未熟で、また突出した個性の感じられない彼らだが、不思議とオンエア率は高い。「オンバト+」の客とは、妙に相性が良いようである。今回のネタも漫才で『ラーメン屋』。ラーメン屋を開店するのが夢だという河本の店に、客として井口が訪れるという漫才コントだ。肝心の漫才はこれといって大したものではなかったが、時折発せられるヘタクソなツッコミが不思議と面白かった。中でも、“相撲の決まり手”のくだりなどは、実にたまらないものがあった。なんだったんだ、あの不思議な笑わせ方は……。

・今回のオフエア
441kb:ぽ~くちょっぷ
397kb:ソフトアタッチメント
233kb:チョコレートプラネット
213kb:じゅんいちダビッドソン
辞 退:ソーセージ

なんといっても注目はぽ~くちょっぷだろう。同点四位となんとボール一個差での敗退である。オープニングに流れた映像から察するに、普通に面白い漫才だったのではないだろうか。次回の出場に期待したい。初出場のじゅんいちダビッドソンは、元ミスマッチグルメ。なんともいえない味わいのボケは、まだまだ「オンバト+」には通用しないようだ。ソーセージは番組史上初の出演辞退。嬉しくない初モノである。

・次回
クレオパトラ
GAG少年楽団
笑撃戦隊
【初】流れ星
バイきんぐ
【初】ビッグタスク
ヒデヨシ
風藤松原
ムートン
【初】ルネ

チャンピオン大会で多大なる活躍を見せたバイきんぐが、今期もきちんと番組出場。同じく、チャンピオン大会に出場したムートンも、一緒に参戦だ。また、前回オフエアとなってしまった風藤松原が、リベンジに登場。ゆるくてぬるーいテンポの漫才が、今回も客の心を和ませるのか。一方の初出場組は……ん? 流れ星?

「ジャルっ10じゃねぇよ!」(松山)

「ジャルっ10じゃねぇよ!」松山公演を観に行ってきた。

「ジャルっ10じゃねぇよ!」は、若きコント職人・ジャルジャルの結成10年目という節目の年に、コンビ史上初となる全国ツアーを展開した単独ライブである。北海道の札幌公演を皮切りに、全10都市を回っている。松山は8番目の都市に当たり、残すは福岡・沖縄での公演のみとなっている。とどのつまり、結成10年目で全10都市を巡るわけだ。以前からジャルジャルの単独ライブに興味があった私にとって、この状況はまさに渡りに船。鑑賞に出向いた次第である。

今回のライブ会場となったのは、松山Vivit Hall。以前、桂小枝師匠が落語会を行った際に、会場となった場所だ。正直、ライブの会場としては些か狭く、また環境もあまり宜しくないので(※席の高さが均一なので、奥からだと舞台が見えにくい)、ジャルジャルレベルの芸人であればもっと良質の場所を選んでも良かったのではないかと思ったのだが、後になって、彼らのように最小限の演出でコントを演じるタイプの芸人には、この程度の会場の方が向いているのかもしれないと思い直した。ライブの開演時刻は午後六時と、かなり遅め。せっかくの休日だというのに、どうしてその時間の開演となってのか、これに関してはまったくの不明である。彼らの仕事の都合だろうか。

ところで、今回のライブは、指定席ではなく完全自由席であった。そういうライブに参加するのは初めてのことだったので、一体どのように客入れが行われるのか気になっていたのだが、いざ行ってみると、スタッフが「整理番号○○番までのお客様、お入りください!」と呼び込んでいた。どうやら、番号が小さい順に、どんどん詰めていくというシステムだったようだ。そのことに気付かなかった私は、整理番号63番であったにも関わらず、150番あたりで会場入りするハメになってしまった。スタッフが呼び込みをしているのに、外で悠長に雑談を交わしていた連中のせいである。ああ、若者たちの群れにうろたえずに、とっとと入っていれば……。開演前の会場では、初期ビートルズの楽曲が流れていた。ロンドン公演の開催を意識してのことだろうか。思えば、ジャルジャルとビートルズは似ているのかもしれない。何処がどう似ているとはいえないが、なんとなく。

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スタジオジブリ長編アニメーション・ブルーレイ化の歴史をまとめてみた

2012年7月18日。

この日、宮崎駿監督作品『となりのトトロ』と、高畑勲監督作品『火垂るの墓』のブルーレイ盤が発売された。

『となりのトトロ』&『火垂るの墓』2本立てブルーレイ特別セット (初回限定) [Blu-ray]『となりのトトロ』&『火垂るの墓』2本立てブルーレイ特別セット (初回限定) [Blu-ray]
(2012/07/18)
日高のり子、坂本千夏 他

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どちらも夏の風物詩として知られている日本アニメーション映画の傑作だが、その作品世界はまったく異なっている。そんな『となりのトトロ』と『火垂るの墓』のブルーレイ盤が、どうして同日発売されたのか。実は、この二作は1988年4月16日に同時公開された、いわば兄弟分なのである。今回、二作が同じ日にブルーレイ化されたのも、そういった背景があってのことだといわれている。

(「だったらなんでVHS版は違う日にリリースしたの?」とか、「それならいっそ4月16日にリリースすれば良かったんじゃない?」とかいう疑問を浮かべる人もいるだろうが、まあ、なんだ。細かいことを気にすると、老けこむぞ)

ところで、皆さんはスタジオジブリの長編アニメーション作品のうち、幾つの作品がブルーレイ化されているのか御存知だろうか? 『風の谷のナウシカ』以降……と書くと、「『風の谷のナウシカ』はスタジオジブリ制作じゃないぞ!」というツッコミを入れられそうだが、その辺りは気にしないこととして……スタジオジブリが世に送り出した長編アニメーション作品は、全部で19作品。そのうち、ブルーレイ化されている作品は11作品。なんと、未だにブルーレイ化されていない作品が、8作品も残っているのである。ジブリ作品では初めてのブルーレイ盤『崖の上のポニョ』がリリースされたのが2009年12月だったことを考えると、このペースは極めて遅い。恐らくは「慎重に慎重を重ねて……」ということなんだろうが、それにしたって遅すぎる。

……と、今回の主題はそこに非ず。

今回の主題は、スタジオジブリによる長編アニメーション作品のブルーレイ化の歴史をまとめることにある。一見すると、これといって需要の無さそうな主題ではあるが、日本を代表するアニメーションスタジオの作品が、どういう意図をもって次世代のソフトへと移行されているのかを考えてみるという意味では、なかなか興味深い案件なのではないかと思う。……そう思っているのは、私だけかもしれない。ま、まとめてみようと思い至ったのであるから、仕方がない。とっととまとめていこう。

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人生論を読む前に談志の『やかん』を聴いてみよ

家元自薦ベスト やかん/天災 立川談志公式追悼盤(2枚組CD/談志役場・キントトレコード)家元自薦ベスト やかん/天災 立川談志公式追悼盤(2枚組CD/談志役場・キントトレコード)
(2011)
立川談志

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※キントトレコード公式サイト

昨年11月にうっかり亡くなっちゃった立川談志の公式追悼盤である。亡くなって一ヶ月後にリリースというのが、どうも怪しい。発売元が毒でも仕込んだんじゃなかろうか……というのは、些か辛めのジョーク。ただ、少し前から“談志 最後の三部作”なんてのを準備していたところを見ると、家元の中では死へのカウントダウンが始まっていたのだろう。そういえば、もうそろそろ自分が死ぬんじゃないかって時に、仲間を集めて「今から死ぬぞッ」みたいなことをやって失敗した落語家がいたっけ。あれが理想だったのかもしれない。失敗したということも含めて。まあ、勝手な想像だけどね。

収録されている落語は『やかん』『天災』。生前の家元が「残しておきたい」と言ったという『やかん』と、「これも入れよう」と言ったという『天災』である。生前、当人がこれを残したいと口にしたから、“家元自薦ベスト”と銘打たれている次第だ。なので、家元の訃報を受けて、スタコラサーッと本作に手を出した人も少なくないだろう。その人たちが、本作を聴いてみて、どういう感想を抱いたのか聞いてみたい。きっと中には、あまり落語慣れしていない人もいたことだろう。だが、テレビのバラエティ番組のように、大衆に向けられた芸と比べて、家元の落語はかなり刺激が強い。それはマクラの内容だけでも十二分に衝撃的(「拉致太り」のくだりはとてつもない!)だが、なんといっても本編が凄い。はっきり言ってしまうと、『やかん』だ。『天災』はまだ私の理解の範疇に無い。だが、『やかん』の凄さは分かった。いや、ただ単に、私の波長にピタッと適合しただけの話なのかもしれないのだが。

『やかん』とは、八五郎がアレコレと物を尋ね、御隠居がそれに答えていくという、ただそれだけの落語である。演目となっている『やかん』は、後半でやかんがやかんと呼ばれるようになった所以を説明するところからきているが、家元の『やかん』にはそのくだりがない。なかったと思う。なかったんじゃないかなア……と、なんとも心許ない書き方をしているのは、ここまで記憶のみで書いているためである。まあ、なんだ。詳しいところは、実際に確認してください。談志の『やかん』はオリジナリティが強くて、実は大幅に直してある。直してあるという表現が正しいのかどうかは、ちょっと分からない。まあ、とにかく、かなりの手を加えている。だから後で、いわゆるオーソドックスな『やかん』の口演を聴いて、ビックリした。こんなに違うのか、と。で、改めて、家元の『やかん』の凄さを思い知った。うっかり、家元の『やかん』だけで構成された本まで買っちゃった。うっかり買ったもんだから、まだ読んでない。いつ読み終わるかねえ。

さて。ここまで「家元の『やかん』は凄い!」と書いてきたが、じゃあ何が凄いのかということになる。『やかん』の何が凄いか。家元の『やかん』は、とにかく常識を引っ繰り返してくる。世間ではこういうもんだと決められていることを、ぐるっと半回転してしまう。こういうネタは、常識を信じ切っている様な人間には有効だ。逆にいえば、常識の範疇にない人には向いてない。一流の芸術家といわれている人が家元の落語を聴くと「当たり前ジャン」と答えた……なんて話は聞いたことがない。で、頭の硬いことで知られる私、見事に『やかん』にハマってしまった。こちらが思ってもいないような発想がバンバン飛び出してくる。それでいて、時にド直球な至言が飛んでくるから、あながちバカにできない。

「学問ってのはなんでするの?」
「貧乏人のヒマつぶしだよ!」
「そうですか?」
「そう!」
「努力ってのは?」
「努力? バカに与えた夢だ!」


初めてこのやり取りを聴いたときは、なかなかの衝撃を受けたネ。……その一方で、こういうのもあったりする。

「若者には前途がある!」
「ない!」
「……ない?」
「あるもんか、あんなもの! 時間があるだけの話でもって、前途なんて何もないよ。あんなものは、アメリカがとかスパゲティだとかハンバーグだとか、あんなものは、文明的残飯食ってんだ、長生きなんかするわけがねえじゃねえか!」
「証拠がありますか?」
「あるよ! 若者で長生きしてるヤツが何処にいる、このヤロー!」


こういうやり取りに刺激を受けたなら、聴いてみてもいいかもしれない。

金田一映画風に『バカリズム案5』を紹介してみる。

バカリズム案5 [DVD]バカリズム案5 [DVD]
(2012/06/27)
バカリズム


※以下の文章はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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芸人さんのベストDVDとベストコントを聞かれたので、答えてみた。

実は以前から「ザ・インタビューズ」というものをやっているんですが、先日、そこでこんな質問を受けました。

東京03、ラーメンズ、バナナマン、バカリズム、この中で「ベストDVD」と「ベストコント」をそれぞれ一つずつ挙げるとしたら、どの作品を選びますか?


なかなか面白い質問だと思います。お笑いマニアであれば、一組ずつ丁寧に考えて回答を導き出し、ついでに聞かれてもない事細かな解説を掲載することでしょう。ところが、この質問を目にした時の私の健康状態は、あまり芳しいものではありませんでした。それ故に、当時の私はこの質問に対して、非常にザックリとした回答のみを掲載してしまいました。無論、それでも問題は無いでしょう。聞かれていることには、ちゃんと答えているわけですから。

しかし、恐らくこの質問を考えた方は、その理由についても聞きたかったのではないでしょうか? 「あの素晴らしいブログを運営されている素晴らしい人は、どんな素晴らしい理由で素晴らしい回答を送ってくれるのだろう?」と、心を躍らせていたのではないでしょうか。もしかしたら、そんなことはなかったのかもしれませんが、その可能性について考えて、私は悩んでしまいました。「ああ、私はもっとちゃんとした回答を送るべきではなかったのか」「面白い回答に期待されていたのではないだろうか」「質問者はもしかしたら立川流家元の亡霊なのではないだろうか」と、来る日も来る日も夜しか眠れない状態が続きました。嘘ですけど。

と、いうわけで。この質問に対する回答について、ブログの方で補填しようと思った次第です。まあ、質問者の方以外の人たちは興味が無いかもしれませんが、お暇でしたらお付き合い下さいませ。

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橘家圓蔵『堀の内』に見る、冷やかな目

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(1986/05/01)
不明

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八代目橘家圓蔵。知る人ぞ知る、“落語四天王”最後の生き残りである。落語四天王というのは、戦後の落語界を牽引した四人の在東京の若手落語家のことで、圓蔵以外には、三代目古今亭志ん朝、七代目立川談志、五代目三遊亭圓楽が当てはめられている。こうして名前を並べてみると、実に錚々たる面子だ。

しかし、この三人に比べて、圓蔵の名前はあまりにも知られていない。彼がまだ月の家圓鏡を名乗っていた頃は、テレビタレントとして物凄い人気を博していたと聞いているが、それにしても、現在の知名度の低さはどうにかならんもんかと思わなくもない。というのも、彼が勢いづいていた頃の落語音源は、当時から数十年が経過した今になって聴いても、まったく遜色無く楽しめるからだ。このとてつもない面白さを「知る人ぞ知る……」にしてしまうのは、あまりにも勿体無い。勿体無いから記録しておこう……ということで、今回の記事に至った次第である。

圓蔵の凄さを分かりやすく抽出してみよう。『堀の内』という落語の1シーンより。うっかりものの亭主が慌てて家に帰ってきて、自らに起こった異常を女房に報告しようとする。

亭主「おっかあ!おっかあ、おっかあ!おっかあ、おっかあ!」
女房「カラスじゃあるまいし、おっかあおっかあってうるさいよ!どしたの?」
亭主「弱っちゃったよぉ、速く注射呼んで医者打ってくれよ!」
女房「あべこべだよ!バカだねぇ、この人は。笑ってもらおうと思って、わざと間違えて!」


この、「笑ってもらおうと思って、わざと間違えて!」というセリフが凄い。『堀の内』という落語は、うっかりもの(粗忽者)の亭主がその粗忽を治すために神信心、堀の内のお祖師さまへお参りに行く道中を描いた話だ。つまり、亭主が粗忽であることは、確固たる大前提として在ることになる。よって、先の「注射呼んで医者打ってくれよ!」という台詞も、その粗忽ぶりを演出している言葉に過ぎない。ところが、圓蔵師匠は“亭主の粗忽”という前提を、続く女房の台詞でいきなり破壊するのである。ここが凄い。

しかも、ただ破壊するのではない。ここで女房が口にする「笑ってもらおうと思って」という言葉は、粗忽な亭主に対するツッコミとしてだけではなく、演じ手である落語家の心情を突っ込んだ言葉としても機能しているのである。いわば、落語家である自らの意図を、登場人物の言葉を借りて言及しているのである。そこに見えるのは、単なるバカバカしさでは片付けられない、落語家である自らに対する冷めた視線である。客観的に捉えていなければ、こんな言葉はなかなか吐けない。それなのに、落語としては不思議と成立してしまっているところに、古典落語の底深さを感じたりなんかしてみたり……。

……もうちょっと書こうと思ったけど、なんだか満足してしまったので、今回はこの辺で。

第十三回 東京03単独公演『図星中の図星』

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(2012/06/20)
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本能のままに生きられる動物とは違い、理性を持つ人間はいつだって素直に生きることが出来ない。それがどんなに本音であったとしても、やはりそこには「人に見られる」ことを意識した内容となってしまうからだ。そういう意味では、ありとあらゆる人間には、詐欺師になる才能があるといえるのかもしれない。しかし一方で、世の中にはその本音を巧みに見つけ出す能力に長けている人間も存在する。彼らは時に、その隠された本音を暴き、白日の元に曝け出す。だが必ずしも、本音を明らかにすることが正しい行為であるとは限らない。そう、図星の図星を突くことが、必ずしも正しいとは限らないのである。それでも人は、図星を突き続ける。突かれることの憂鬱を経験していながら……。

飯塚・豊本・角田の三人で構成されているお笑いトリオ、東京03。彼らのコントは常に人間の本質を突いてくる。なんとなく見過ごされているコミュニケーションの歪み、なんとなく忘れてしまっている人間が持つ気質の曖昧さ。それらの本質を、彼らはコントの設定にして笑いへと昇華していく。特に近年はその傾向が強くなっており、と同時に、コント師としての評価も格段に向上。その人気は全国ツアーを開催するほどのものになっている。そんな彼らが2011年に開催した単独公演が『図星中の図星』だ。

『図星中の図星』においても、東京03はこれまでと同様のスタンスを崩さない。合コンへの誘いに乗りたいんだけれど、すぐさま乗るのは格好悪いので、どうにか体裁を繕おうとする二人の姿を描いた『一人足りない』。ちょっとした夕食会で行われる軽めの説教に、第三者たる同僚がフォローを入れようとするのだが、その下手さが故にどんどん説教が盛り上がっていく『フォロー』。息子のためにどうにか手に入れたラジコンが壊れるも、そこに思わぬ才能を隠し持っていた男が登場し……『救世主』。酒の席で意気投合した友人の友人ともう一度会ってみると、なんだかよそよそしくて、あの日のように楽しめない『友人の友人』。どれもこれも、他者とコミュニケーションを図る上で、起こり得るシチュエーションばかりだ。それでいて、シチュエーションだけに頼らないところが、実に素晴らしい。中でも、飯塚のツッコミ師としての腕は流石。ボケを一言でズバッと処理する様は、まさに職人芸だ。これがテレビバラエティでも活かせられれば……。

しかし一方で、これまで以上にちゃんとした結論に導けていないコントも多かったように思う。シチュエーションに重きを置き過ぎて、その状況の置きどころを見据えていない……とでもいうのだろうか。例えば『フォロー』は、フォローする人間のフォロー下手が故に、フォローされる人間が窮地に追い込まれるところに端を発するコントだが、冷静に考えてみると、フォローする人間もフォローされる人間も、またフォローされる人間を叱っている上司も、誰も悪くは無いためか、なんとも曖昧な終わり方をしている。まあ、それまでの経緯がとてつもなく面白いので、さほど気にするほどのことでもないのだが。彼らでも、最後まできちんと処理できないシチュエーションもあるのだと、改めて人間の複雑さを考えさせられる次第である。

なお、特典映像には、「おぎやはぎ」「浜野謙太」「Gentle Forest Jazz Band」をゲストに迎えた“悪ふざけ”、『脇役達の大冒険』が収録されている。本公演とはまったく違った色合いの、まさに“悪ふざけ”と呼ぶに相応しい豪華なコントショーが展開されているので、是非とも確認してもらいたい。……いよいよ、東京03がシティボーイズの後継者らしくなってきたな。


・本編(116分)
「一人足りない」「フォロー」「山の上の別荘」「救世主」「友人の友人」「誰?」「ラブホテルの攻防」

・特典映像(57分)
「図星中の図星」特別公演:「脇役達の大冒険」「千秋楽 舞台挨拶」

・音声特典
東京03による副音声解説
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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