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『柳家三三独演会 三三三九四七 ~柳家三三ありがとう!四十七都道府県~』(高松)

『柳家三三独演会 三三三九四七 ~柳家三三ありがとう!四十七都道府県~』を観に行く。

柳家三三は落語協会に所属する落語家である。1974年7月に神奈川県小田原市で生まれた。88年12月、中学生の時に鈴本演芸場で十代目柳家小三治の『山崎屋』に衝撃を受け、落語家を志す。93年3月、18歳で小三治に入門。前座名は“小多け”。96年5月、21歳で二つ目昇進。この時、名前を現在の“三三”に改めた。それからおよそ10年後の06年3月、31歳で真打昇進。現在、古典落語のホープとして、他方面より注目を集めている。

私が三三師匠の落語を聴きに行くのは、これが三回目である。

一回目は高松のサンポートホール高松という会場で鑑賞した。そこまで広くない会場だったにも関わらず、随分と空席が目立っていたことが、妙に印象に残っている。演目は『真田小僧』『転宅』『井戸の茶碗』。当時、既に三三師匠は若手の注目株として話題になっていた(だからこそ、CDでもDVDでも触れたことがなかった私が、思い切って聴きに行こうと決意を固められたのである)のだが、これがまったくハマらなかった。鑑賞時、寝不足だったことも影響しているのかもしれない(むしろ私は、私が寝不足じゃない時を知りたい)が……とにかく、私の三三師匠に対する印象は、あまり芳しいものではなかった。

二回目は岡山のさん太ホールという会場で鑑賞した。個人的には、東京03がよく単独ライブを開催している会場という印象の強い場所である。劇場というよりもシアターという表現が似合いそうな、こじゃれた雰囲気が素敵な会場だ。この時は、さほど空席は無かったように思う。岡山は落語家が頻繁に訪れている県なので、香川よりも落語に馴染みがあるのかもしれない。演目は『権助提灯』『締め込み』『五貫裁き』。落語仲間に「行った方がいい!」と強引に薦められ、半ば仕方なしに観に行ったのだが、これが驚くほどに面白かった。とにかく人間がイキイキとしていて、やたらめったら楽しかったのである。前回は、47都道府県を47日間かけて巡るという弾丸ライブツアーだったため、その疲労から三三師匠も本来の実力を発揮できていなかったのかもしれない。この独演会を観て、私は三三師匠に対する考えを改めた。なるほど、確かに古典のホープである、と。

そして今回、会場となったのは高松市にある高松オリーブホールという場所であった。過去、高松で開催された落語会には何度か足を運んでいる私だが、高松オリーブホールなどという場所は聞いたことがなかった。どういう場所なんだろう。オリーブっていうくらいだから、速水もこみちが経営しているのかしらん。

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そんなことを考えながら、実際に会場に行ってみると、これがいわゆるところのライブハウス。入口でチケットを渡すと、ワンドリンク代を要求された。寄席では飲食が当たり前だが、落語会でワンドリンクとは、実に変わっている。入口の脇にあるカウンターでジンジャーエールを頼み、それを持って会場に入る。すると、そこには緞帳がないため、剥き出しになった状態のステージが。その両端にはアンプが山の様にドッと積み重ねられていて、真ん中にちょこんと高座が置かれている。なんとも不似合いでおかしい。こういうところでも落語会が開かれるものなのか。初めての経験に、開演前から思わず胸が躍ってしまった。余談だが、高松オリーブホールは建物の3階にあり、会場入りするためには階段かエレベーターを利用するしかないのだが、階段の途中に「ダイブ禁止!」という張り紙がされていたのが、なんだかとても面白かった。落語中にダイブする観客……見てみたい気がしないでもない。自由席なので、空いている席に適当に座った。客席は8割~9割ほど埋まっていたように思う。

14時開演。

過去二回の独演会と同様、前座はなし。いきなり主役の三三師匠が現れる。高座に上がって、最初に触れたのは今回の会場のこと。なんと、数々の高座を経験してきただろう師匠でも、ライブハウスで落語会をするのは初めての経験だったらしい。「私の前にやったのが、ゲスの極み(乙女。)……」の一言で、会場がどっと盛り上がる。マクラはそのまま、これまでに落語をやってきた場所の話、落語を聴かせてきた観客の話などを経て、『看板のピン』へ。かつて博打の世界に身を置いていたご隠居が若い連中の博打遊びに参加するのだが、壺に入れて振ったサイコロが外に転がり出していることに気付かず……という話だ。人生の重みを感じさせるご隠居、そのご隠居の真似をしたお調子者の演じ分けのメリハリが非常に良かった。それっぽく喋っているのに、ちゃんとお調子者が真似をしている口調になるんだよなあ。

落ちの後、また少しマクラを挟んで、次の落語へ。今度は『お菊の皿』だ。皿屋敷の階段で知られる美しいお菊の幽霊を興味本位で見に行った若い連中の噂が広まり、幽霊見たさに人が集まるようになって……という話である。お菊の所以についてご隠居が説明するくだりで少しウトウトっときてしまったが、肝心の若い連中がお菊の幽霊を観に行くくだりからはしっかり起きていた。落語会では必ずといっていいほど寝てしまう私にしては珍しい(おい)最初の若い連中の一人が古参ファンの様に語り始めるくだりに、なんだかニヤニヤ。ただ終盤、お菊が皿を数え始めるくだりは、もうちょっと真に迫った感じが欲しかったような気もした。あそこをシリアスに演じるからこそ、その後の展開が活きてくるというか……。

ここで仲入り。トイレに立つ人、多数。

後半戦。マクラは『アナと雪の女王』の話。ちょっと触れる程度かと思いきや、「アナが私は苦手です!」と宣言したかと思うと、そのまま粗筋をズラーッと説明し始め、「いい子なんです! いい子なんですけど……私は苦手です!」と再度宣言するという熱の入りっぷりにニヤニヤが止まらず。『アナと雪の女王』をまだ観たことがないが、きっと私も苦手なタイプなのだろう。ちなみに、会場の落語ファンのうち、『アナと雪の女王』を観たという人は一割にも満たなかった。恥ずかしくて手を上げなかったのか、世間から背を向けているひねくれ者ばかりなのか、なんとなく苦手なオーラを察知して避けているのか。謎だ。そこから「粗忽な人」の話を経て、『粗忽の釘』へ。

『粗忽の釘』は、長屋に引っ越してきた粗忽者の大工が箒をかけるための釘をうっかり壁に打ち抜いてしまったので、隣に謝罪に行くのだが……という話である。まず、大工の夫婦が引っ越すくだりが、原典とまったく違っていることにビックリした。そもそも、そのくだりはカットされている(釘を打つくだりから噺が始まっている)のだが、そこで説明される経緯がまったく違うのである。本来、大工はタンスを背負ったまま、引っ越し先が分からずにあっちこっちを転々としていたのだが、三三バージョンは……ネタバレになるから書かない。が、確かに、どうせカットしてしまうのであれば、オリジナルの要素を盛り込んでしまってもいいのかもしれない。だが、この後の展開で、更にオリジナル要素がドンドコドンドン放り込まれるからたまらない。絶妙な間とテンションでもって繰り広げられる、粗忽大工の波乱爆笑。大変に結構でした。

16時閉演。

DSC_0483(1).jpg


建物の外に出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。厳密にいうと、商店街のアーケードの外はすっかり暗くなっていた。アーケードの中だと、雨が降っていても何不自由なく過ごせるから有難い。その足で私はタワーレコードに向かい、12月にリリースされる東京03のDVD(タワレコ限定仕様)を予約したのであった。思えば今年も残り1ヶ月だというのに、年末の実感が未だに湧いてこないのは何故だろう……。
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『バカリズムライブ「COLOR」』+『バカリズムライブ「なにかとなにか」』

バカリズムは天才である。

“天才”と称される芸人は少なくない。例えば、ビートたけし、松本人志、太田光……など、ある特定の時代において多大なる影響力を持っていた芸人に対して、大衆は“天才”という表現を頻繁に用いている。確かに、彼らの芸は多くの人を魅了したが、その意味では“天才”というよりも“カリスマ”という表現の方が適切であるように感じる。

そもそも天才とは、どういった人のことを示しているのか。落語界の異端児・立川談志は、かつて【天才とは質と量がないとイケナイ】と定義し、その上でレオナルド・ダ・ビンチと手塚治虫を天才として挙げていた。質と量の両立。その基準でいえば、確かに先の三人は天才といえるのかもしれない。芸人としての仕事だけに留まらず、文筆、音楽、映像制作など、彼らは実に様々な分野に挑戦し、そこに足跡を残している(一部に対しては反論があるかもしれないが……まだ途上なのだと考えれば、いくらか合点もいくだろう。いかないヤツは屁ぇこいて寝ろ)。

その意味では、やはりバカリズムは天才である。

フリップ漫談が出来る。コントが出来る。大喜利が出来る。映画学校出身で演技も出来る(コンビ時代に朝ドラ出演経験アリ)。アイドル番組の司会が出来る。ラジオのパーソナリティも務めている。OLになりきって書いた日記を書籍化している。『バカリズム THE MOVIE』で(ほぼ)映画監督を務めている。レギュラー番組『オモクリ監督』で定期的にオリジナル映像作品を発表している。火曜夜10時から放送されている連続ドラマ『素敵な選TAXI』の脚本を手掛けている。

とにかく色んなことに手を出しているし、どれもクオリティが高い。なにより、どの仕事でもきちんとバカリズムらしさを残している。決して器用貧乏ではない。これらの多種多様に渡る活動に加えて、定期的に単独ライブも開催しているというのだから、もはや無敵と言ってもいいのではないだろうか。そろそろ天才であるが故に非業の死を遂げてもおかしくないレベルだと思うので、国が重要無形文化財に指定してもいいんじゃないか。うーん。

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2014年12月のリリース予定

■チェック予定
03「ダイナマイト関西2014
03「ダイナマイト関西2014【よしもと限定特典付き】
17「狂宴封鎖的世界「シャングリ・ラ」」(鳥居みゆき)
17「磁石単独ライブ『磁石漫才フェスティバル 特別追加公演』(オリジナルブロマイドなし)
17「【Amazon.co.jp限定】磁石単独ライブ『磁石漫才フェスティバル 特別追加公演』 (オリジナルブロマイド 2枚入り)
24「アンタッチャブル柴田の「ワロタwwww」~超絶おもしろいのに全く知られてない芸人たち~
24「日本エレキテル連合単独公演「エレキテルプラネット」
24「第16回東京03単独公演「あるがままの君でいないで」

■テレビ関連
03「東野・岡村の旅猿5 プライベートでごめんなさい…木下プロデュース、軽井沢・BBQの旅 プレミアム完全版
03「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! (祝)放送25年突破記念 DVD 初回限定永久保存版 (20)(罰)絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時 [初回限定版 DVD BOX 本編ディスク4枚組+特典ディスク1枚 / デジパック仕様]
03「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! (祝)放送25年突破記念 Blu-ray 初回限定永久保存版 (20)(罰)絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時 [初回限定版 Blu-ray BOX 本編ディスク2枚組+特典ディスク1枚 / デジパック仕様]
03「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! (祝)DVD 20巻発売記念特別価格版 通常版 (20)(罰)絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時 エピソード1 午前8時~
03「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! (祝)DVD 20巻発売記念特別価格版 通常版 (20)(罰)絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時 エピソード2 午前11時~
03「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! (祝)DVD 20巻発売記念特別価格版 通常版 (20)(罰)絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時 エピソード3 午後1時~
03「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! (祝)DVD 20巻発売記念特別価格版 通常版 (20)(罰)絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時 エピソード4 午後7時~
17「七人のコント侍 第1期 BEST SELECTION
17「七人のコント侍 第2期 BEST SELECTION
17「七人のコント侍 第3期 BEST SELECTION
17「七人のコント侍 第4期 BEST SELECTION
17「七人のコント侍 第5期 BEST SELECTION
17「有吉の夏休み2014 密着100時間 in ハワイ もっと見たかった人の為に放送できなかったやつも入れましたDVD
17「ナマイキ! あらびき団 新作公演!? ~実は地下で2年やってました~ vol.1 ライト東野セレクション 厳選30組
17「ナマイキ! あらびき団 新作公演!? ~実は地下で2年やってました~ vol.2 レフト藤井セレクション 厳選30組
17「人志松本のすべらない話 プレミアムライブ
19「ゲームセンターCX DVD-BOX11
24「竹山ロックンロール 9
24「キングオブコント2014
24「たりふた SUMMER JAM '14~山里関節祭り~
24「内村さまぁ~ず vol.53
24「内村さまぁ~ず vol.54
24「内村さまぁ~ず vol.55
24「とんねるずのみなさんのおかげでした 全落・水落オープンBOX
24「とんねるずのみなさんのおかげでした 全落オープン 1巻
24「とんねるずのみなさんのおかげでした 全落オープン 2巻
24「とんねるずのみなさんのおかげでした 水落オープン 1巻
24「とんねるずのみなさんのおかげでした 水落オープン 2巻
26「そんなバカなマン DVD 第1弾

■その他の作品
05「ワザオギ落語会 VOL.10
15「三遊亭竜楽の七カ国語RAKUGO

充実の12月。鳥居みゆきと日本エレキテル連合が同じ時期にリリースされるというだけでも、なんだか気持ちが高まりますね。一方、磁石と東京03という実力者の作品もあって、この年末は正統派と搦め手を一緒に楽しめるということに。ああ、楽しい年末年始を送れそう。ただでさえネタ番組が大量に作り出されるっていうのに。……時間が無いな! あと、アンタッチャブル柴田がMCを務める若手芸人ライブのDVDも、なかなか良さそうな雰囲気。巨匠、サンシャイン池崎、永野などなどが出演するとのこと。個人的に気になっていたドドんが観られる……!

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『バカリズム案7』

バカリズムライブ番外編「バカリズム案7」 [DVD]バカリズムライブ番外編「バカリズム案7」 [DVD]
(2013/07/24)
升野 英知

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21世紀を代表する天才芸人バカリズムが、その他の追随を許さない発想力によって生み出した思い付きを発表するライブ第七弾。いくら天才芸人とはいえ、同じ形式のライブを何度も何度も何度も何度も続けることは難しいようで、本作では過去の『バカリズム案』でも披露されたフォーマットが幾つか流用されている(何度目だ「知らない県の解説してみる」パターンのヤーツ!)。とはいえ、その内容は相変わらずブッ飛んでいて、面白いと言わざるを得ないパワーを放っている。なんで野球の道具の代わりに台所用品を使わなくちゃならないのか。“非常口”を別の漢字を使って表現しなくてはならないのか。何故に阪神の選手がアフリカに生息しているのか。本能寺の変がドッキリ特番だった場合のスケジュールを創作するのか。何処までも無意味、無生産、無駄無駄無駄ァ! だけどそれこそエンタメの神髄の様な気がしないでもなかったりして。


その中でも、最後に披露された案は、ある意味で至極。その内容は、誰もが知っている『浦島太郎』の不条理な内容について、バカリズムが徹底的に怒りをぶつけるというもの。そこでのバカリズムは、もう「人志松本のゆるせない話」でも見せていた怒髪天衝き衝きモード全開に、『浦島太郎』のストーリーを完全否定。そして、遂には勝手に新しい『浦島太郎』の話まで作ってしまうのだが……それだけでは終わらせないから、実にたまらない。スタッフロールまでしっかりと味わわなくては!

本作には、2013年2月17日にシアターサンモールで行われたライブの模様を収録。ちなみに、『バカリズム案』第一弾は2009年に開催され、その後は一年に一回(時には二回)のペースで行われている。なお、バカリズムは新作コントを披露する単独ライブも一年に一回(時には二回)のペースで行っていて、2010年にはそれぞれのライブが二回ずつ(つまり新ネタライブを年四回)開催している。天才とバカは紙一重などという言葉があるが……発想のパッキンがバカになっているんじゃないか、ホント。

■本編【92分】
「注意に関する案」「代用に関する案」「歴史に関する案」「野球に関する案」「想像に関する案」「昔話に関する案」

■特典映像【19分】
「没案」「雑案」

非常識へのダイヴ・清竜人25

WillYouMarryMe? 【完全限定生産盤】(CD+DVD)WillYouMarryMe? 【完全限定生産盤】(CD+DVD)
(2014/11/12)
清 竜人25

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「アイドルに恋愛はご法度」ということはアイドルオタクではない私でも知っている一般常識である。まして、プロデューサーやダンサーの様に、彼女たちと仕事で接している人たちが手を出した日には、炎上どころか大炎上、吉原炎上・ベルサイユ炎上の八百屋お七状態になることは必至だということは、容易に想像ができる。燃えろいい女って言ってる場合じゃない。そんな時代に水を差す、どころか消防車で常識のアナルに水柱をブッ刺したような大暴挙を成し遂げたアイドルグループがいる。それが清竜人率いる“清竜人25”だ。

清竜人は、そもそもソロで音楽活動を展開していたミュージシャンである。2009年に二十歳でメジャーデビューを果たし、その後も年に一度のペースでオリジナルアルバムをリリースし続けている。その傍ら、堀江由衣やでんぱ組.incへの楽曲を提供したりもしている。ちなみに、堀江に提供した『インモラリスト』はシングルとしてリリース、オリコンチャートで最高8位という好成績を残している。2014年にはベストアルバムを発売。こういう言い方をするのはアレだが、とてつもなくちゃんとしたミュージシャンだ。そんな清竜人が、2014年にアイドルグループをプロデュースした。それが“清竜人25”である。

……と聞くと、恐らく「単なるプロデューサーがアイドルグループの名前に載っていいの!?」と驚かれる方もいられるのではないだろうか。が、驚くのはまだ早い。なんと、この清竜人25、清竜人当人もメンバーの一人である。ていうか、センターである。アイドルグループのスタッフが前面に出ると「目立ち過ぎだ!」と批判を受けることもある昨今、プロデューサーがセンターである。……っと、まだ終わらない。この清竜人以外のメンバーは全員、なんと清竜人の妻なのである。自身がプロデュースしているアイドルグループの一人に手を出した某秋元康は小せえ小せえ、この清竜人にはグループ全員がマイハニーだ! ……って、なんじゃーそりゃー!? ていうか、この場合、メンバーに熱愛が発覚したら「浮気」ってことになるのか? どうでもいいけど気になるぞ。


で、これほどまでにツッコミどころが多いアイドルグループなのに、楽曲はかなりカッコイイから困る。なんという隙の無さ。また、メンバーの歌唱力が素晴らしい。往年のモーニング娘。を彷彿とさせる各ボーカルのクセの強さが、ユニットならではのグルーヴ(関係無いけど電気グルーヴは結成25周年。電気グルーヴ大嫌い!)感を生み出していて、凄くカッコイイ。一見すると大輪教授の恰好をしたチョップリン西野にしか見えない清竜人のボーカルが、また素晴らしいんだ。こんなコミカルな恰好なのに、どうしてこんな澄んだ声が出せるんだ!(※ビジュアルと歌唱力の関連性に科学的根拠はありません)

というわけで、私の常識のアナルもすっかり開発されてしまい、今ではこのアイドルグループのアルバムリリースを待つばかりである。この快感が冷めやらぬうちに、新たなる刺激を……。

『COWCOW CONTE LIVE 6』

COWCOW CONTE LIVE 6 [DVD]COWCOW CONTE LIVE 6 [DVD]
(2013/07/24)
COWCOW

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ライブを愛することから“劇場番長”との異名を持つお笑いコンビ、COWCOWが2013年5月に開催した単独ライブを収録。ライブは東京と大阪で行われ、本編には大阪公演の模様が収められている。なお、2014年の単独ライブを収めたDVD『COWCOW CONTE LIVE 7 ~芸歴20周年記念盤~』が、既に発売中である。まだ確認していないが、彼らの芸人活動20周年を記念した内容になっていて、特典映像には過去のライブDVDに収録されている数々のネタの中から二人が選んだお気に入りのネタが再録されているらしい。どんなネタが選ばれているのか、今から楽しみだ。

COWCOWといえば、漫才・コントの枠組みに留まらない遊び心に満ちたネタが印象的だが、本作でもその魅力は存分に発揮されている。迷信の理由を歌にして熱唱する『アイアンメイシン』でしっかりオープニングを盛り上げたかと思えば、子どもの頃にフザケてやっていた遊びをダンスバトル形式で披露する『ショーモナイダンスバトル』で観客の視線をガッチリ釘付けに。アクティブなネタが続いたところで、テンションがグッと下がってしまうメルアドを紹介する『メールアドレスでガッカリ』でじっくりと楽しませる。その後も、普段はツッコミな善しが本領を発揮する『スロット北の国から』、モニターに映し出されるイラストに多田が怒りをぶつける『クイズ怒ってください』など、いちいち面白いオリジナルネタが続く。しかし、最後はしっかりと『漫才』で場を引き締める。突出したセンスを見せつけず、しかしベタでありがちな笑いには逃げず、しっかりと笑わせてもらったという満足感の残るステージ。流石はベテランだと言わざるを得ないネ。

ただ、その一方で、ちょっとネタの方向性を子どもに寄せ過ぎな印象も受けた。以前から、老若男女に理解されるような、分かりやすくてバカバカしいネタを生み出していた彼らではあるのだが……。例えば、どっかで見たことのあるキャラクターたちがショートコントを繰り広げる版権ギリギリアウトな『少年とネコ型ロボット』、学校のトイレに住んでいる幽霊が他所の学校から来た別の幽霊に乗っ取られそうになる『トイレの花子さん』、担任教師がクラスの漢字たちに苦言を呈する『漢字学級』には、子どもの視点を強く感じられた。2012年に『あたりまえ体操』が大ヒットして、子どもの観客が増えたことを考慮しての対応だったのではないかと思うのだが、どうだろう。もちろん、だからといってネタのクオリティが低下している印象はなく、先に挙げたネタと同様にとても面白かったのだが。

それ以上に気になったのは、『コント「あたりまえ体操」の裏側』である。

『コント「あたりまえ体操」の裏側』は、文字通り『あたりまえ体操』が生まれるまでの過程を描いたコントだ。とはいえ、そこにファンタジーの要素は一切ない。具体的に書いてしまうとネタバレになってしまうので控えるが、徹底的にリアルに描かれている。もはやドキュメンタリーの領域に至っているといっても過言ではない。問題は、芸人のオフショットの姿をどうしてコントで演じたのか、という点である。もうちょっとはっきり言おうか。『あたりまえ体操』をきっかけに観に来ている観客もいるだろう舞台で、どうして『あたりまえ体操』が演じられるまでの苦労をリアルに描いたコントを演じたのか。私にはその心理を察することは出来ないが、あの笑いにストイックな多田がこのコントを演じたという事実に、正直なところ少し動揺してしまった。当時、よっぽど心身が疲弊していたのだろうか……。

特典映像には、ライブの幕間映像とお客様動画コメント集を収録。……お客様動画コメント集って、どうやって楽しむのが正解なんだろう。ライブ会場に来ていたお客さんがCOWCOWにコメントしている姿をDVDで鑑賞する私……構造が複雑すぎる! 幕間映像では『ボサノバお経』がお気に入り。ボサノバの美しいメロディでいい雰囲気になっているのに、その歌詞が……ああ、この紛れもないバカバカしさ。落ち着くわあ(二つの意味で)。


■本編【100分】
「アイアンメイシン」「ショーモナイダンスバトル」「少年とネコ型ロボット」「メールアドレスでガッカリ」「トイレの花子さん」「スロット北の国から」「漢字学級」「クイズ怒ってください」「コント「あたりまえ体操」の真実」「漫才」

■特典映像【16分】
「もじどうぶつ」「オムライス」「ボサノバお経」「LIVE会場限定お客様動画コメント集」

『うしろシティ単独ライブ「うれしい人間」(完全生産限定盤)』

うしろシティ単独ライブ「うれしい人間」(完全生産限定盤) [DVD]うしろシティ単独ライブ「うれしい人間」(完全生産限定盤) [DVD]
(2013/11/27)
金子 学、阿諏訪 泰義 他

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松竹芸能所属のコント師、うしろシティが2013年8月から9月にかけて行われた単独ライブの模様を収録。当時、ライブは東京・大阪・名古屋の三都市で開催されており、本作には8月1日・東京(座・高円寺2)での公演が収められている。なお、うしろシティが2014年に行った単独ライブを収めたDVD『うしろシティ単独ライブ「それにしてもへんな花」』が既にリリースされている。確認はしていないが、なんでも二人による副音声も収録されているらしい。

彼らが大敗を期した『キングオブコント2013』決勝戦直前の単独ライブだが、コントのクオリティは決して低くない(まあ、そもそも『キングオブコント2013』でも、ドン滑りしていたわけではないのだが)。部員数が足りなくて廃部寸前の野球部に入部しそうな雰囲気を醸し出している不良少年の振る舞いを皆でついつい見つめてしまう『野球部の危機』、下校途中に絡んできた不良少年の顔に貼りついた“2”の意味とは?『喧嘩のやりかた』、新しく入ったバイトは会話の途中でいきなりギターを弾き語る『バイトの新人』など、どのネタも安定して面白い。大当たりはせずとも堅実に笑いを取る絶妙な塩梅。それでいて満足感がしっかりと残るのだから、なんとも丁度良い。

その中でも印象に残っているコントが『病院』。

深夜。車にはねられ、病院で緊急手術を受けているケンジの元に、いつもの仲間たちが集まった。もちろん、彼らは手術室には入れないので、待合室で無事を祈るばかりである。そこに慌ててやってきた金子。家で寝ようとしているところに、阿諏訪からの連絡を受けて、慌てて終電に飛び乗って病院までやって来たのだという。ケンジの事故に対して苛立ちを隠せない金子に、阿諏訪は話しかけようとする……が、その手に持っているモノを見て、絶句する。なんと、金子の手には、買ったばかりのスターバックスのコーヒーがあったのだ。そして思わず尋ねる。「金子……ちゃんと急いだ?」

友達の緊急時にスタバに寄って来た金子を問い詰める阿諏訪と、その理由についてきちんと説明する金子のギャップを描いているコントだが、話はそこで終わらない。実は金子がそういう性格になってしまったのには、阿諏訪たちのグループに原因があったことが発覚するのである。それがどのような理由だったのか、そしてケンジは助かるのか、それは実際に確認してもらいたい。もう、本当にたまらないオチなので、どうか観てほしい。それだけでも一見の価値あり。


■『うれしい人間』本編【約83分】
「少年」「野球部の危機」「張り込み」「バンドやろうぜ」「喧嘩のやりかた」「バイトの新人」「病院」「娘さんを下さい」「監禁」

■『うれしい人間』特典映像【約25分】
幕間映像:「寿司」「岡崎大陸」「心霊」「祭り」
撮り下ろし映像:『うれしい人間』名古屋・大阪公演バックステージ

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所ジョージの絶えることなき“反常識”精神

JAM CRACKER 1JAM CRACKER 1
(2014)
所ジョージ

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JAM CRACKER 2JAM CRACKER 2
(2014)
所ジョージ

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所ジョージが自主レーベルから700円のオリジナルアルバムをリリースしたという話を聞いたときは、何かの悪ふざけだろうと思った。既に知られていることだが、所ジョージは色々な遊びを発明するタレントである。この700円アルバムもまた、その遊びの一環に過ぎないのだろう……と、最初は思っていた。ところが、このアルバムのコンセプトが「配信なんてクソくらえ! みんなCD買いましょう」だと知って、考えを改めた。“CDリリースと同時にハイレゾ音源の配信もスタートする”というジョークで誤魔化されているが、この件に関して、所は本気である。

思い返してみれば、ミュージシャンとしての所ジョージは、いつだって本気だった。そもそも彼の本質はフォークシンガーである。吉田拓郎を敬愛し、井上陽水とギターを交換し、泉谷しげるとともに毒をまき散らし、“フォークソングの宣教師”坂崎幸之助(THE ALFEE)と朋友関係にある所の根っこには、常識への疑念と反抗心がある。そこにユーモア精神が絡まっているために、ややこしくなってしまっているのだが。

その精神は、新作のアルバムでも大いに発揮されている。自らを棚に上げている人たちの姿を切り取った『全員棚の上』、ゴールまでのプロセスをきちんと考えない人たちを皮肉った『コントロール』、政治に対してド直球に批判をかました反骨ソング『オスプレイは飛んでゆく』など、気持ちいいほどに苦言が吐き出されている。世間の「別にいいじゃん」に「ンなこたぁないヨ」とはっきり言える所こそ、自立した人間と言えるのかもしれない。その一方で、お馴染みの日常的な風景を描いた楽曲も多く、『百目柿だらけ(サトウキビ畑より)』『センチメートル・ミリ』『ドーナツで生きかえる』などは、所の普段の生活を眺めているような気持ちになる。

それらの中でも『私は神様を知っている』という楽曲は、所のお気に入りらしい。なにせ、2枚のアルバムの中に、何故か3バージョンも収録されている。一度レコーディングしちゃった音源を捨てるのが勿体無かっただけなのかもしれないが。先の楽曲に比べて、所の「面倒臭いことをちゃんとやる」精神の立場を強調しているように感じる。


個人的には『夏をあらためて』が悲惨で素晴らしい。情景描写がとてつもなく細かいのが、また笑える。これも夏だからといってドラマチックに描かないことで、既存のJ-POPに対して反抗しているともいえるのでは……って、流石にこじつけだな、これは。ただ、RHYMESTERの『フラッシュバック、夏。』に似た感覚を覚える。


ちなみにこのアルバム、700円という値段の安さから内容に不安を覚えていたのだが(編曲やら音質やらの点で)、かなりちゃんとしたアルバムである。バンドアレンジ重視で、バップ時代の井上鑑による重厚なアレンジに魅了された身としては少し寂しいが、本当にちゃんとしている。歌詞カードを別売りにしているとはいえ、700円でこのクオリティを出しちゃって大丈夫なのか、本当に(なお歌詞カードは600円である)。

『佐久間一行SHOW2013 GOLD10~ゴールデン~』

佐久間一行SHOW2013 GOLD10~ゴールデン~ [DVD]佐久間一行SHOW2013 GOLD10~ゴールデン~ [DVD]
(2013/12/25)
佐久間一行

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『佐久間一行SHOW2013 GOLD10~ゴールデン~』を観る。

佐久間一行はよしもと・クリエイティブ・エージェンシーに所属しているピン芸人だ。NSC東京校の2期生にあたり、同期にはガリットチュウ、くまだまさし、増谷キートンなどがいる。お笑い芸人の登龍門『爆笑オンエアバトル』には2000年より参戦。ピン芸人ばかりを集めた特別回で初出場初オンエアを決めた(ちなみに、この時のトップオンエアは鉄拳)。06年度には合計キロバトル数で年間ランキング1位に君臨。これはピン芸人としては唯一無二の記録である。しかし、肝心のチャンピオン大会では振るわず、セミファイナルでの敗退となった。その後、番組には09年まで出場し続ける。

日本一のひとり芸を決める『R-1ぐらんぷり』には、第一回大会が開催された02年より参戦。予選での評価が安定せず、数年に渡って2回戦敗退と準決勝敗退を繰り返していたが、『R-1ぐらんぷり2011』で初めて決勝戦へとコマを進める。そこで披露した『井戸』のコントが高い評価を受け、勢いそのままに優勝を果たした。同年、デビュー15周年を記念して、全国九都市を巡る単独ライブツアーを敢行。老若男女に愛されるピン芸人として、今現在も猛進中だ。

本作には、2013年に全国ツアーを展開した単独ライブより、ルミネtheよしもとでの公演の模様が収められている。『GOLD10(ゴールデン)』というライブタイトルは、ルミネでの単独ライブを開始して10年目・10回目の記念すべき公演であるところに由来しているとのこと。ちなみに、ルミネで単独ライブを10年連続で開催している芸人は、よしもとでは佐久間だけらしい。質良し、量良し、まさに向かうところ敵無しといったところか。

茨城訛りでユルやかな印象を与える佐久間だが、そのネタのクオリティはかなり高い。賞金首を追っている旅人に扮した佐久間がならず者の盗賊団と熾烈な(?)戦いを繰り広げる『テキサスの旅』では、笑い飯の“ダブルボケダブルツッコミ”ならぬ“一人ボケ一人ツッコミ”による激しい応酬を展開。その全てを一人で演じているのに観客に白ける余地を与えない演出とスピード感が見どころだ。佐久間が怪盗となって「必要な時に限ってないモノ」を次から次へと盗み出す『怪盗ヒット』は、「必要な時に限ってないモノ」あるあるをきっかけに繰り広げられるマシンガン解説が魅力の一本。折り畳み傘、ポケットティッシュ、説明書などの「必要な時に限ってないモノ」に、思わぬ角度から切り込んでいる。海を見張っている佐久間が退屈しのぎに村の人たちの暮らしを望遠鏡で覗き見する『みはり』は、村の景色をイラストで表現した自由度の高いコント。何気ない日常が静かに壊れていく様子を、見張りという第三者的な立場から覗き見るというホラー色の強い……ということはないのだが。村で起きていることに何も出来ずに慌てふためく佐久間という構図が、ちょっと不穏な印象を残した。

それらのネタの中でも、特に印象に残っているのは『大人の階段』というコント。

『大人の階段』の舞台は元気な少年たちが集まるひみつきち。いつもの様に「だるまさんがころんだ」で遊んだり、バッタを捕まえたり、下らないギャグを言ったりして大盛り上がり……する筈だったのだが、彼らの一人一人が唐突に大人の階段を上り始めてしまい、最終的には全員がひみつきちを去ってしまう。そうして誰もいなくなってしまったところに、遅れてやってきた少年たちの隊長(佐久間)。仲間たちが残した手紙を読んで状況を察した隊長は、彼らに追いつこうと慌て始める。

「取り残された! 俺も早く大人にならなければ!」


そこで隊長は、これまで楽しくやっていた普段の遊びに疑問を感じることで、子どもから大人へ変わろうとする。最初に思いついたのは「だるまさんがころんだ」。こんな遊びなんて面白くない、これでオレも今日から大人だ! ……と高らかに宣言するも、その意志はあっさりと崩れてしまう。

「ダメだーっ! 正直楽しすぎるよーっ! 「だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ」「(高速で)だるまさんがころんだ!」」あの抑揚! 楽しすぎるよーっ!」


子どもの遊びが楽しくて仕方がない。でも、先を行く仲間たちに追いついて、急いで大人になりたい。そんな隊長の葛藤は、かつて自分が思春期に、或いは、19歳の時に20歳になろうとしている時に感じた、子どもから大人になってしまうことへの期待と不安のそれにも似ている気がして、なんだかとても心が揺さぶられた。それを置いても、アラフォーといわれる年齢になっても(1977年生まれの37歳!)ザリガニ大好きというさっくんが、こういう子どもから大人へと変わっていく少年たちの姿を描いたコントを演じているということが、ただただ切ない。

これらの素晴らしいネタの数々を楽しめる本作だが、一点だけ不満がある。それは本編の収録時間が短いということ。よしもとのDVDといえば、むやみやたらに収録時間を引き延ばす傾向があることで知られているが(2時間3時間は当たり前に超えてくる)、この作品の本編は54分。これは短い。あまりにも短い。ライブのオープニングで繰り広げられる小芝居や幕間映像などを収めた特典映像が44分あるけれど、ただただコントが観たい私としては、これでは満足できないのである。というわけで、これから購入を考えている人は(もう1年近く前の作品だけど、いるのかな?)、歌ネタを収録したDVDが付いている限定盤の方をお薦めしたい。ていうか、私はそっちを買わなかったことを、ちょっと後悔している。誰が買ってくれないもんだろうか。いないか。うーん。


■本編【54分】
「オープニング」「テキサスの旅」「怪盗ヒット」「エライ人」「大人の階段」「目覚め」「みはり」「空をみよう」「ヒグラシ」「コレクション~エンディング~」

■特典映像【44分】
「オープニング小芝居」「はまる君」「コレクション完全版」「きょーいち」「GOLD10コメント」

『ひきだしにテラリウム』(九井諒子)

ひきだしにテラリウムひきだしにテラリウム
(2013/03/16)
九井諒子

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イースト・プレスが運営するWebメディア「マトグロッソ」で連載されていたショートショートを一冊にまとめた超短編作品集。マトグロッソといえば、てれびのスキマ『タモリ学』高野文子『ドミトリーともきんす』など、洗練された傑作を世に送り出しているイメージが強い。かつての私は、こういうところで作品を発表できる人間になりたいと思っていたものだが、今の私はすっかり面倒臭がりのひねくれチキン野郎である。何処で道を誤ったんだか。

さて本書。傑作とはいえない。いや、いわせない。いわゆる傑作といわれている作品は、多かれ少なかれ読者にショックを与える。読後、感情を平静に戻すことが出来ず、しばし呆然としてしまう。それが傑作というものだ。しかし、本書はそういった類の衝撃をもたらさない。ごく自然に、そのショートショートの魅惑的な世界へと引き込み、心身に染み込んでいく。だからこそ、後になって気付かされる。その凄味に。

ごく一般的に、長編よりも短編に作者のセンスが多分に反映されていることが多い。今後の展開を踏まえて整合性を保たなくてはならない連載作品とは違い、一球勝負の短編には後先を考える必要が無いからだ。むしろ、その一球で後悔しないようにするために、そこに渾身の力が込められている……というべきなのかもしれない。だが、本書には、作者のセンスといえるものが見受けられない。無論、皆無というわけではないが、そういった側面をなるべく出さないようにしている。なにせ、作風はおろか、画風まで変化している。実をいうと、私は九井諒子の他の作品を読んだことがないので、どれが本当の彼女の画風なんだかさっぱり分からない。それほどに、どの画風も出来上がっている。だから、その凄味に気付かない。おっとろしか話ばい。

どのショートショートも面白いが、とりわけ印象に残っているのは『龍の逆鱗』『記号を食べる』『かわいくなりたい』『夢のある話』などの、現実ではありえないことを徹底的にリアルに描いた作品。かつて、私が愛して止まないコント師の一組であるラーメンズが、自身のコントの中でこんなことを言っていた。「日常の中の非日常ではなく、非日常の中の日常を描く。一見すると異常な世界観だけど、その世界の住人達にとってはいつもの出来事って感じがするのす。それが心地いいのすのすー」(『アトムより』より)。ラーメンズ自身の作風について自己言及しているとも受け取れる台詞回しだが、まさにこれと同じモノを先述のショートショートたちに感じたように思う。

傑作ではない。名作と呼ぶに相応しい。

『ひみつのひでお日記』(吾妻ひでお)

ひみつのひでお日記 (単行本コミックス)ひみつのひでお日記 (単行本コミックス)
(2014/09/30)
吾妻 ひでお

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吾妻ひでおの日記マンガといえば『失踪日記』などの代表されるレポート作品が知られているけれど、個人的には本作の様な絵日記形式で淡々と日常の出来事を描いている作品の方が好きだったりする。じゃあ、どうしてそういう作品の方が好きなのかというと、そこには個人の視点しかないからだ。レポート形式のマンガは読者という第三者に伝えることを目的としているため、どうしてもそこに客観的な視点が必要となるんだけれど、日記マンガにはその趣が薄い。ゼロではないけれど。まあ、そういうところが面白くて、ついつい買ってしまうのだ。が、帯に“これが最後の単行本…かも!?”という悲しいお知らせが。なんとも寂しい話じゃないか。感想……は、特になし。理由は先に書いた。他人の日々の綴りの感想を書くほどわたしゃ偉くない(過去作品の感想は書いてるけど!) ああっ、でも「呉智英がダンディ過ぎるぞ」「光代社長が美人過ぎるぞ!(実際美人だけど)」「何の脈絡もなくハライチが!」「ビーグル38懐かしいなオイ」「2014年の日記は画風が『カオスノート』に引っ張られてる!」などのことを思った。以上。

笑いの小金治。

桂小金治が亡くなった。88歳だった。

私が小金治師匠のことを知ったのは、当時は松本尚久と名乗っていた和田尚久氏の著書『芸と噺と―落語を考えるヒント』が一番初めだった。いきなりの余談で恐縮だが、本書よりも落語家の魅力を的確に記した本を私は他に知らない。無論、単なる無知の妄言でしかないのかもしれないが、まだ落語の世界の入口に立っていた私の手を引いてくれた恩のある一冊であることには違いない。いやいや、ことによると、落語という魔窟へと引きずり込んだ一冊といえるのかもしれないが……。

和田氏は師匠の落語について、次の様に記している。

 小金治さんの落語には、落語が社会の中で、ひとつの居場所を与えられていた時代の落ち着きと安息と秩序がある。余裕がある。そうして、噺の細部までが、社会の奥底としっかりと結びついている。ここでは数十年間のブランクがプラスに作用している。聡明な小金治は、映画界入りという形で、社会と落語とのやがてくる乖離を、あらかじめ回避していたとは言えないだろうか?
 私たちは桂小金治に<間に合っている>ことの幸運にもっと自覚的であるべきだろう。


この文章を読んで、私は小金治という落語家に興味を抱いた。そしてCDを聴いた。小金治の落語を収録したCDは、現時点で2種類しか手に入らない。83年に本多劇場で収録された『桂小金治(1)「三方一両損」「禁酒番屋」』と、04年に国立演芸場で収録された音源と06年に日本橋亭で収録された音源を二枚組にパッケージした『桂小金治名演集 1 粗忽の使者、蛇眼草、饅頭怖い、大工調べ』である。私はまだまだ若輩者であるが故に、その魅力を明確に理解しきれてはいないが、その整然とした語り口になんともいえない魅力を感じたものだ。なので、いうまでもなく、更なる作品のリリースを期待していたのだが、現時点に至るまでそういった話はついぞ耳にしない。落語マニアの痒いところに手を届かせてくれる素晴らしきCDレーベル・キントトレコードあたりが動いてくれないか、密かに期待していたのだが……。ちなみに、私が好きな演目は『蛇眼草』である。あまり夏の要素が無い演目なのに、なんだか夏の日常が見えてくるんだよなあ。

その後、師匠は2011年9月29日、国立演芸場で開催された『桂文我独演会』にゲストとして出演した際に、落語家としての引退を宣言する。これを機会にCD化の動きが見えてくるか……と思っていたが、見られず。今となっては、CD化を待たずにとっとと生の高座を観に行かんかいと思わなくもないが、全ては過ぎた話である。88年間、お疲れ様でした。ゆっくりとお休みください。

ところで、追悼盤の話は(←不謹慎)

「アニメ映画ベストテン」に参加します。

「男の魂に火をつけろ!」さんが年に一度のペースで開催している映画のベストテン企画。今回はアニメ映画でやっているということなので、幼い頃からアニメ映画が大好きな私としては居ても立っても居られず、参加することにした。……本当はこんなことしている場合じゃないんだけどな!(私的な理由で)

「アニメ映画ベストテン」(男の魂に火をつけろ!)

というわけで、自分なりのベストテンを考えてみた。

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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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