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『ENGEIグランドスラム』(第3回・2015年9月27日)

【2】ますだおかだ『高齢化社会(略語、ゲーセン、葬式用語を変えていく)』
キャイ~ン『環境問題・宇宙旅行』
【2】ロバート『書道家 竜海雲』
【2】ナイツ『好きなアイドル』
【2】COWCOW『アイアンメイシン』
【2】流れ星『ちゅうえいの出自・ヤンキー同士の友達のなりかた』
麒麟『出産の立ち合い・お米顔・はじめてのおつかい』
【2】バカリズム『知恵と戦略』
【2】テツandトモ『なんでだろう(岡村隆史とコラボ)』
【2】フットボールアワー『温泉旅行(カレーチャーハン)』
【2】チュートリアル『南の島のメイ』
アンジャッシュ『彼氏と高齢の彼氏が鉢合わせ』
【2】トレンディエンジェル『ダイエットしたい(ボクササイズ・サイザップ)』
インパルス『かくしごと』
スピードワゴン『井戸田潤が話す良い話を修正する(稲川淳二)』
レイザーラモン『格闘技とプロレスの違い・プロレスのデート』
【2】どぶろっく『君への思いを歌に(二人で)』
【皆勤】東京03『そういう人』
ハライチ『必殺技』
ロザン『外国人を道案内・外国人と回転寿司』
【2】千鳥『大悟の友達(1万円泥棒・屁・庭の松の木)』
【2】日本エレキテル連合『黄金夫婦』
【皆勤】爆笑問題『時事漫才(堀北真希の結婚・鮫・安保法案可決)』
今くるよ 中川家『今いくよ・くるよ・くるよ』


『ENGEIグランドスラム』の第3回放送を観終わった。以前よりも既存のネタ番組としての趣が強くなっていて、些かスペシャル感が薄れてしまった気もするが、とはいえ安心して楽しめた。勿論、演者たちの実力によるところが大きいのだが、青を基調とした落ち着きのある舞台美術に演者と程々の距離感を保ったナインティナインのMC、そして親しみやすいコメントを残してくれる松岡茉優のアシストも忘れてはならない。回転寿司を思わせる仕掛けによってファーストフード的に芸人を消費させられる『爆笑レッドカーペット』を制作していたフジテレビが制作したとは思えない(この前に放送された『ツギクルもん』は『レカペ』のシステムをそのまま採用していたが)、とても良い雰囲気の番組であったように思う。

ここからは演者について。まず、漫才。既に番組への出演経験があった漫才師たちは、それぞれ非常に良い仕事をしていた。増田のシンプルかつ濃厚な毒に岡田の何事にも屈しないアイアンハートなツッコミがワクチンとして見事に作用したますだおかだ、小細工無しの言い間違いスタイルで時代と共に変遷するアイドルたちの姿を描写したナイツ、若手のフレッシュ感を漂わせながらバカバカしさと下らなさに身を投じた流れ星・トレンディエンジェル、大悟の世界観だけではなくノブの超個性的なツッコミが冴え渡った千鳥、そして「安保法案」という今後を左右する重大な事案に対して時代の寵児たちを織り交ぜながら切り込んだ爆笑問題……とりわけフットボールアワーの漫才には感服した。後藤のツッコミスキルの向上に岩尾のボケがちゃんと対応している。後半での「カレーチャーハン」というワードセンスだけで押し切る様は、文字通り圧巻だった。

対する初出演組では、スピードワゴン、レイザーラモン、ハライチが印象的。スピードワゴンは、『アメトーーク』での特集をきっかけに小沢の存在感が明らかに強くなってきた。以前は、相方の井戸田潤をイジることで自分自身に注目が集まらないようにしていたのに、今では実に堂々と相方をイジっている。ちゃんと漫才の芯になっている。そのため、井戸田もより動きやすくなっていたように感じられた。稲川淳二のくだり、たまらなかったなあ。レイザーラモンは自らの武器を見つけたように感じた。ただただ楽しい漫才師から、楽しくて面白い漫才師への階段を駆け上がっていく、その途上なのだろう。これからが楽しみだ。ハライチはこれまでと同じ。同じだけど面白い。恐らく、実際は澤部の表現力も岩井のワードセンスも向上しているのだろうが、そう感じさせない。これまでと変わらないと感じさせる。それこそがハライチの恐ろしいところなのである。関係者各位、注意せよ。

一方のコント勢は、あまり目立った印象を受けない。アンジャッシュ、インパルス、ロバートと、職人気質のしっかりとしたネタを見せてくれる芸人が揃っていたからだろうか。とてつもなく古いコント『南の島のメイ』を披露したチュートリアルは、その意味では衝撃的だったといえるのかもしれない。それだけ思い入れの強いコントなのか、それとも単に徳井が女装をしたいだけなのか……。

その中でも、東京03と日本エレキテル連合は凄かった。東京03が演じたコントは、初対面で転んでしまった女性を「そういう人」としか見れなくなってしまう悲劇を描いた『そういう人』。過去、テレビでは比較的分かりやすいコントを演じてきた彼ら。『ENGEIグランドスラム』でも、家族に起こった問題に関する話し合いの場が気付けばキャバクラへの強い思い入れを語る場へと変貌を遂げる『家族会議』、オフィスで上司と部下が密会している現場に立ち入ってしまった男が立ち回りを間違える『終業後』と、日常的な風景が明らかに異質な状態へと変わってしまう様子を分かりやすく描いていた。だが、『そういう人』は違う。東京03の『そういう人』は、初対面で転んでしまった女性の姿が目に焼き付いてしまって、笑いをこらえることが出来なくなってしまった不条理を描いている。でも、その状況自体は、現実離れしたものではない。つまり、そこで生じている不条理に共感を覚えてもらわなければ、このコントはそもそも成立しない。それ故に、大衆に支持されなくてはならない運命を背負っているテレビでは、なかなかかけることが難しい……と、思われた。しかし、この番組は、そんなビミョーな前提を必要とするコントを、ノーカットで放送してみせたのである。ことによると、今回の放送は東京03にとって、一つのエポックメイキングといえるのではないだろうか。……いや、流石に言い過ぎか。日本エレキテル連合は内職的な作業をしている夫婦の姿を描写したコント『黄金夫婦』を披露。他のコントに比べると彼女たちの武器であるメイクが薄く、シチュエーションも日常的だ。だが、それ故に、夫婦の置かれている状況というか、何処にも抜けられない日常のサイクルに突入してしまっている様が浮き彫りになっていて、とてもおぞましい。仕事に対して細かくて口うるさい妻と、仕事に対して大雑把で妻の口を封じるための口先だけのことしか言えない夫のどうしようもない日常。この光景は何処かに存在している。実におぞましい。でも、そのどうしようもない感じが、とてつもなく面白い。

リズム勢もいい仕事をしていた。『なんでだろう』の最中に謎のマジックを披露したテツandトモ(岡村隆史とのコラボも素晴らしかった!)、これまでとはまったく違った手法でいつも通りに下品なことをやってのけたどぶろっく、ライブで何度も何度もかけている定番ネタをきちんとパッケージして楽しませてくれたCOWCOW。リズム芸はアクセントとして有用だ。唯一のピン芸人だったバカリズムも良かった……けれど、もうちょっとピンの枠を広げてほしいなあとも。テツandトモが有りなのだから、例えばダンディ坂野とか、長井秀和とか、陣内智則とか、はなわとか……。ゼロ年代にブームを巻き起こした芸人たちのことも、どうぞ呼んでいただきたい。先日、歌ネタ王になった中山功太もいいぞ。個人的には佐久間一行を一番にオススメしたいところなのだが……。

……と、ここまでああだこうだと述べてきたが、今回の主役はやはり今くるよと中川家のコラボ漫才だろう。実に素晴らしかった。何がどう素晴らしかったというのではない、ただただ素晴らしかった。あまりに素晴らしくて、少し目頭が熱くなってしまった。今いくよが亡くなって四ヶ月の間に、ここまでしっかりとモノマネを仕上げてきた中川家と、その気持ちに全力で応える今くるよの姿が、もう……。いやいや、こんなことで感傷的になるようでは、まだまだお笑い数寄者としての覚悟が足りない。とはいえ、いいものを観させてもらった。

次回の放送は未定。だが、既に第2回『ENGEIトライアウト』が収録されているので、きっと第4回も放送されるのだろう。ちなみに、第2回『ENGEIトライアウト』の出演者は、アルコ&ピース、銀シャリ、三四郎、しずる、プラスマイナス、U字工事の六組。『THE MANZAI 2012』『キングオブコント2013』ファイナリストのアルコ&ピースはストレートで出演しても良かったような気もするが……。何か基準のようなものがあるのかもしれない。厳しいな。
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『ENGEIグランドスラム』(第2回・2015年7月12日)

タカアンドトシ『ひとり○○・○○ドン・タカがツッコミ』
チュートリアル『怖い話』
ますだおかだ『色んな名前を横文字に・USJっぽいATM』
テツandトモ『パフォーマンス+なんでだろう』
COWCOW『ギャップのある男・誕生日を祝う・やまびこ』
流れ星『昔話に出てくるキャラクターの格闘ゲーム』
【2回目】NON STYLE『不良を注意する熱血教師のコントが始まらない』
シソンヌ『不動産屋』
トレンディエンジェル『歌が上手くなりたい』
ハマカーン『乗馬と競馬・ホットヨガ・足裏マッサージ』
バイきんぐ『前の部屋主』
【2回目】笑い飯『パンツぶかぶか』
千鳥『刑事ドラマの殉職シーンの顔の演技』
柳原可奈子『バブルな女』
おぎやはぎ『夢か現実か分からない話』
【2回目】博多華丸・大吉『リズムネタがやってみたい・子どもを寝かしつける』
渡辺直美『和製ビヨンセ』
海原やすよ ともこ『大阪人は声がデカい』
【2回目】東京03『終業後』
【2回目】矢野・兵動『漫才』
桂三度『色んな話を最短バージョンで』
中川家『タクシーの運転手』
【2回目】爆笑問題『猿の名前・五輪問題・車載カメラ』


間もなく第3弾が放送されるので、なんとなく見逃していた前回の放送をチェック。チュートリアルがM-1でやっていたスタイルではない漫才をやっていたり、ますだおかだが上手いことを言い続ける最中に岡田をスベらせる鉄板のくだりを久しぶりに目の当たりにしたり、テツandトモが営業でやっているくだりの(恐らく)全てをこなしていたり、博多華丸・大吉がオンバトで頻繁にかけていた博多の親子コントをやっていたり、なかなかにたまらなかった。笑い飯が『パンツぶかぶか』やっていたのも良かったなあ。一般的に知られたダブルボケダブルツッコミのスタイルから、ちょっと離れた感じで。しゃべくり漫才としてキャラクターがまとまってきたハマカーン、逆に従来のスタイルからどんどん自由になっているおぎやはぎも非常に良かった。

第3弾は2015年9月26日放送。インパルス、キャイ~ン、麒麟、スピードワゴン、ハライチ、レイザーラモン、ロザンらが登場するとのこと。ちなみにレイザーラモンは事前番組『ENGEIトライアウト』からの勝ち上がり組。ウエストランド、エレファントジョン、学天即、磁石、ニューヨークらを抑え、番組出演権利をもぎ取った。楽しみだなあ。

『キングオブコント2015』決勝審査員について。

『キングオブコント2015』決勝戦の審査方式が発表された。

■松本人志、さまぁ~ず、バナナマンが「キングオブコント2015」審査員に(お笑いナタリー)

正直、キングオブコントという大会の最大の魅力は「準決勝戦で敗退したコント師たちが審査する」という点にあったと思うので、この変更自体は素直に喜べないところがある。もはや決勝戦ではお馴染みとなっていたダウンタウンと審査員たちによるやりとりが(恐らくは)見られなくなってしまったのも残念だ。一体、誰が厳しい結果に落ち込むファイナリストに、「お疲れちゃ~ん!」と声をかけてくれるのか。

とはいえ、やはりこの五人が審査することに対して、否が応でもテンションが上がってしまうのも事実だ。テレビバラエティにおいて数多くの冠番組を抱えながらも定期的に単独ライブを開催し続けているさまぁ~ず、アンダーグラウンドから地上へと這い上がってきたコント界の異端児バナナマン、そして90年代を代表する“天才”松本人志。テレビ視聴者が審査員に求めているであろう「現役感」「審美眼」「説得力」を兼ね備えた、とんでもないメンバーである。特に松本人志が審査員としての参加を決めたのには驚いた。M-1グランプリですら島田紳助の付き添いで審査を担当していた印象があったというのに……。それだけ番組に対して思い入れがあるのか、それとも今年復活するというM-1に対する牽制なのか……。

無論、気になるところはある。例えば、審査員が全体的に関東寄りで、関西風味のコントを評価する視点があるのかどうかという点。バナナマンの代わりに千原兄弟、或いは、さまぁ~ずの代わりにバッファロー吾郎を入れれば、丁度良いバランスになっていたのではないか。ことによると、今大会にTKOが参加していなければ、審査の側に回っていたのかもしれない。更にいえば、さまぁ~ずもバナナマンも定期的に単独ライブを開催している“現役”ではあるが、その会場はどちらも関東に限られているのも気になる。ここは一つ、単独ライブで全国ツアーを展開している、サンドウィッチマンや東京03を召還するというのも手だったのではないだろうか。そうすれば、よりフラットな視点が望めた……かもしれない。まあ、どうでもいいことだが。

ああだこうだと言っているが、それでも番組が楽しみであることには変わりない。松本人志、三村マサカズ、大竹一樹、設楽統、日村勇紀の五人が、それぞれどのような基準の元に若手芸人たちのコントを評価していくのか、そこにも注目しながら楽しんでいきたい。

東京に行って帰ってきた話。

東京に行ってきた。

九月に大型連休があることを知って、東京に行きたいと思った。別段、何か理由があったわけではない。長い休みがなかなか取れない社会人という立場になると、こういう機会を見逃してはならないと本能的に反応してしまうのである。

今回の上京には飛行機を利用することにした。前回、飛行機で上京した折に、なかなかの快適さだったからだ。無論、リスクもある。高松から出航している格安航空の便は成田空港にしか到着しないため、そこから更に一時間かけなければ東京に着かない。逆もまた然り。東京から成田空港へ向かうためには一時間かけなければならないので、予定よりも大幅に余裕を取っておく必要性がある。つまり、その移動時間の分だけ、観光にかける時間も限られてくるわけだ。だが、それでも、体力の消耗著しい夜行バスや、格安航空よりも高い金銭が求められる新幹線に比べれば、様々な点から見て経済的である。

ホテルは上野のカプセルホテル「北欧」を予約した。過去に宿泊したカプセルホテルは、いずれもあまり納得のできるサービスを提供してもらえなかったので、新たな場所を開拓しようという魂胆であった。結果からいうと、それなりに良かったように思う。丁寧な従業員、それなりに広々とした大浴場(サウナに露天もある)、カプセル内のテレビでBS放送を見ることも出来る(私はホテルのテレビで『笑けずり』を見て、すっかりハマってしまった。Aマッソとザ・パーフェクトが素晴らしい)。アメニティグッズが充実しているのも良かった。アカスリタオルの存在の有難さたるや。……エレベーターの出入り口が喫煙所になっていること、ロッカールームが店の入り口からも大浴場からも離れているのですぐさま着替えられないことはマイナスだが、それらを差し引いてもまずまずの出来だったといえるだろう。

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『小林賢太郎テレビ3』(2012年10月17日)



2011年8月24日にBSプレミアムで放送された『小林賢太郎テレビ3 ~ポツネンと日本語~』に未放送映像を追加した特別編集版を収録。コントユニット「ラーメンズ」の頭脳であり、自作の舞台を手掛ける劇作家であり、“ポツネン氏”に扮して一人きりのステージを繰り広げるパフォーマーでもある小林賢太郎の表現者としての魅力が凝縮されている。演出を手掛けるのはNHKエンタープライズ・チーフディレクターの小澤寛。小澤氏はこれまでの『小林賢太郎テレビ』でも演出を担当している。


番組のサブタイトルにあるように、本作のテーマは「日本語」。二人の外国人が怪しげな日本語を声に出して勉強する姿を描いたコント『日本語学校』シリーズで注目を集めた小林にとっては、永遠の課題であるといえるだろう。時に日本語を意味から解き放ち、時に日本語を分解して新たな言葉を創作し、時に日本語のニュアンスだけを抽出してきた『日本語学校』のシステムは、今もなお、小林の日本語に対するアイデンティティとして根底に存在している。そんな彼が、改めて日本語と対峙したとき、どんな笑いが生まれるのか。

オープニングアクトは『学校でアナグラム』。“黒板消し”“そろばん”“文化祭”などのように、学校と関わりの深い道具や行事の名前の文字を並べ替えて、まったく別の意味の言葉に変えてしまうパフォーマンスだ。……と、この説明だけだと、なんだか難しくて面倒臭そうに感じられるかもしれないが、その結果として生み出された言葉がバカバカしくて、なかなか面白い。分かりやすくイラストで可視化されているのも嬉しいところ。続く『そういうことではない展』も、言葉を可視化したコントである。ただ、こちらは実際に使われている言い回しが、そのまま絵や物体などのアートとして具現化している。話の種、社長の器、貧乏くじ……だからなんだと思わなくもない。でも、だからこそ、良いのである。

その後も日本語をテーマにした映像が続く。壺となった小林が日本語の釈然としない表現に平然と切り込んでいく『思う壺』、ロバート秋山の『トカクカ』を彷彿とさせる『トツカク』(もちろん発表されたのはこっちの方が先)、神社の一角でひっそりと繰り広げられる紙芝居の顛末とは?『ムゴン』、全ての言動が擬音だけで表現されている時代劇『擬音侍 小野的兵衛』……と、実に興味深いラインナップとなっている。個人的には『のりしろ』がお気に入りだ。三つの異なるシチュエーションが、それぞれの状態を表すオノマトペ(「トコトコ」「カチカチ」「カンカン」など)で不思議なつながりをみせていく。小林は似たようなコントを以前にラーメンズでもやっていた(『モーフィング』『同音異義の交錯』)が、テレビならではの凝った舞台美術とシンプルで端的な構成に魅了されてしまった。オチも美しい。

……と、ここまで本作の内容を評価してきたが……この『小林賢太郎テレビ』というシリーズ全体にいえることだが、一般的にはあまり知られていない小林の実力を視聴者に知ってもらうためなのか、番組内で彼のことをやたらと持ち上げようとするきらいがある。それが、むしろ一般の視聴者を遠ざけているような気がしないでもないのだが、実際のところはどうなのだろう。例えば、既にそれなりの知名度を得ているバカリズムがメインの『番組バカリズム』のように、何の紹介も説明もなく、唐突に番組が始まったとしたら、どういう風に受け止められるのだろうか。一度、試してもらいたい。そういう何も知らない視聴者をアッと驚かせる仕掛けこそ、小林賢太郎の真骨頂だと思うので……。


■本編【63分】
「イントロダクション」「学校でアナグラム」「そういうことではない展」「ドキュメンタリー」「思う壺」「のりしろ」「トツカク」「言葉ポーカー」「ムゴン」「ワインレストランにあるまじき風景」「思う壺」「擬音侍 小野的兵衛」「御存知!擬音侍 小野的兵衛」「お題コント制作ドキュメンタリー」「お題コント「双方向テレビ」」「学校でアナグラム」

『番組バカリズム2』(2015年7月22日)



2014年7月18日にBSプレミアムで放送されたバラエティ番組『番組バカリズム2』を収録。バカリズムがこれまでにライブで演じてきたパフォーマンスの再演に加え、豪華ゲストを迎えて撮り下ろされた新作映像も披露された、とても充実した内容となっている。演出は前作と同様、『バカリズムマン対怪人ボーズ』を手掛けた住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)などの前作にも参加していたクリエイターたちが今回もスタッフとして名を連ねている。


本作も見どころが多い。

トーク番組で起こったビミョーな事態を描いた『歌う人生劇場』では、角田晃広(東京03)演じる人生の渋みを噛み締めた熟年男性の前に、とある理由で登場するでんぱ組.incのギャップがとにかく面白い。バカリズムが作詞、前山田健一(ヒャダイン)が作曲を手掛けた無駄にクオリティの高いオリジナルソングは必聴だ。一方、警察署の取調室を舞台に、とある事件の目撃者と彼から証言を得ようとする刑事のやりとりをイラストで表現した『目撃者』では、豊本明長(東京03)が醸し出す独特の雰囲気が笑いに大きく貢献している。何を考えているのか分からない、得体のしれない者同士の不条理で無意味な会話が無感情で進行していく様が素晴らしい。

過去のライブからは、試合の後に開かれた陸上選手の謝罪会見の理由とは?『はやすぎた男』(from『バカリズムライブ「運命」』)、話し合いが終わった後の会議室に残った同僚の女性社員にとあるお願いを切り出す『見よ 勇者は帰りぬ』(from『バカリズムライブ「SPORTS」』)、定番として確固たる地位を築き上げている昔話『浦島太郎』の理不尽に対してバカリズムが苦言を呈する『昔話に関する案』(from「バカリズム案7」)の三本を再演。残念なことに、前作にはあった番組オリジナルの改変は見られない……が、バカリズム自身も「“裏”の代表作といっても過言ではない」と語る『見よ 勇者は帰りぬ』をNHKの番組に持ってきたという事実を噛み締め、素直にその恐るべき決断を讃えたいと思う。とにかくオチが……。

しかし、やっぱり見てもらいたいのは、俳優をゲストに迎えたショートドラマ。とりわけ、浅野忠信演じる記憶を失ってしまった男がこれまでの人生で関わってきた様々な人たちと面会することで自分が何者なのかを思い出そうとする『川崎貴俊』……も、非常に良かったのだが、私のオススメは夏帆が出演している『好き?』だ。舞台はとある駐車場。車中で恋人たちが次に何処へ行こうかと話しているのだが、彼氏(バカリズム)は携帯ゲームに夢中で彼女(夏帆)の話をまともに聞こうとしない。そんな彼氏の反応に腹を立てた彼女は、ゲームを取り上げて「私のことが好きじゃないんだ!」「じゃあ、好き? 私のこと好き?」と痴話喧嘩にありがちなことを求める。そこで、前向きではないながらも、彼女の質問に答えようとしたとき、彼氏の目はとある光景にくぎ付けになる……。

日常で遭遇するかもしれない可能性がある危機的状況の現実味を帯びた緊張感と、それを打破する衝撃的な展開が素晴らしい。この台本はオークラが担当。これはこれでいい仕事をしている。だが、この『好き?』という作品は、夏帆の演技が無ければ成り立たない。あのシーンの夏帆の演技を見てもらいたい。あの、口角を上げながら○○を××した挙句△△している夏帆を見てもらいたい。むしろ、夏帆の演技を見るためだけに、本作を鑑賞してもらいたいとすら思う。それほどに、いい表情をしているので……。

ちなみに、2015年3月に放送された『番組バカリズム3』のDVDは11月25日にリリース予定。私は放送内容を確認していないが、若林正恭(オードリー)や菜々緒をゲストに迎えたコントを繰り広げているという。楽しみだ。


■本編【59分】
「はやすぎた男」「歌う人生劇場」「ろうそくの火を消せそうな発音の人間関係ベスト3」「好き?」「見よ 勇者は帰りぬ」「目撃者」「川崎貴俊」「昔話に関する案」

■音声特典
バカリズムによる音声解説

『シソンヌライブ[quatre(キャトル)]』(2015年9月2日)



「想像してみよう、いろんな気持ち」。テレビやラジオでたびたび流されるコマーシャルに、何を感じただろう。初めて目にしたとき、耳にしたときには、何かを感じたような気がする。だが、何度も何度も消費しているうちに、それはちょっとした雑音のように、或いは、日常にはびこる騒音のように、なんでもない背景として処理されるようになってしまった。しかし、改めて考えてみると、私たちはあまりにも多くの存在について、想像せずに生きてしまってはいないだろうか。

「強いって、どんな気持ち? なあ! 強いって、どんな気持ち?」


2015年5月から6月にかけて恵比寿・エコー劇場で、同年6月に石川教育会館で開催された『シソンヌライブ[quatre]』は、こんな問い掛けで幕を開ける。夕暮れ時の教室、机の上にノートと教科書を広げて自主勉強をしている堀内(じろう)の前にやってきた、クラスメートの長谷川の台詞だ。堀内は「長谷川くん、強いヤツに聞いてもらえるかな……」と突っぱねるが、長谷川は話を止めない。「アメリカ人って、どんな気持ち?」。話にうんざりした堀内は、とうとう我慢できなくなって、きっと長谷川を睨みつけて、唖然とする。そこに血まみれの長谷川が立っていたからだ。

センセーションなオープニングコント『聞かないでくれよ』が示すように、本作は全編を通して不穏な空気に包まれている。共同生活を始めるにあたって、彼氏が新しく買ってきたドライヤーを手にした彼女がコードを縛り上げて「しつけ」を始める『しつけ』。高校生の時はオシャレでイケていた弟が、大学で科学研究部に入部して喋り方が気持ち悪くなったことを兄が指摘する『大学デビュー』。路上で「汚い動物」について歌っている娘に動物病院を経営している父親が苦言を呈する『お父さんと美和子』。私を含めた観客は、彼ら彼女らの言動のズレを常識と照らし合わせて、無邪気に笑う。しかし、ふとした瞬間に気付かされる。果たして、これはどちらが正しいのか。もしかしたら、間違っているように見える方にも確固たる思想があって、彼らを冷めた目線で批判している方が、その本質を理解していないだけなのではないか……?

「そうか……五話目が楽しみだよ」


それらのすれ違いを経たからこそ、終盤を飾る『自由研究』『先生と野村くん』が美しい一筋の光となる。自由研究の課題発表の中にさりげなく(?)メッセージを組み込んだ野村くんと、そんな彼の気持ちを一身に受け止めた先生は、確かに気持ちを理解し合ったはずだ。思想や信念のぶつかり合いで見ず知らずの他人を言葉の暴力で殴り殴られがちな今の時代に、彼らがこういったコントを繰り広げる意味について考えてみようとも思ったが……それもまた、私の一方的な押しつけがましい感情でしかないのかもしれないと思い、止めた。

「想像して、共有しよう!」


あの日の夕焼けは、彼らにどう映ったのだろう。


■本編【82分】
「聞かないでくれよ」「しつけ」「俺の袋」「大学デビュー」「ことわれない女」「人間してる」「お父さんと美和子」「企画会議」「自由研究」「先生と野村くん」

■特典映像【26分】
「シソンヌライブ[quatre]メイキング」「シソンヌ金沢プチ観光」

ゆずの時代に生まれて育って

ゆずのライブアルバムを買った。



ゆずのライブアルバムがリリースされるのは14年ぶりのことだという。14年前、まだ高校生だった私は、今はもう潰れてしまった学校の近くのCDショップで、そのアルバムを買った。『夏色』『センチメンタル』『友達の唄』『嗚呼、青春の日々』『飛べない鳥』など、彼らの代表曲の数々が二人による弾き語りで歌われていて、シンプルなのにとてもカッコ良かった。その時はまだ、私にとってのゆずはリアルタイムな存在だった。

それから14年後の今、私にとってゆずの楽曲が持つ意味合いは少なからず変わってしまったように思う。ゆずの熱心なファンではない私にとって、彼らの音楽は当時を彩るBGMだった。『夏色』で夏を感じ、『センチメンタル』で夏の終わりを感じ、『嗚呼、青春の日々』で大人になるということの重みを感じていた。そして今、ゆずの音楽は、そんな当時の感動を呼び覚ます確固たる装置となった。『夏色』を聴いた、『センチメンタル』を聴いた、『嗚呼、青春の日々』を聴いた、漠然とした当時の時代の空気を感じさせてくれる疑似タイムマシーンとなった。

その機能は、シングル曲よりもアルバム曲にとって始動される確率が高いようだ。思えば、シングル曲は「時代を代表する曲」として現代でも取り上げられる機会が少なくないのに対し、アルバム曲は本当に自発的でなければ聴く機会を得られない。私は2曲目の『贈る詩』で早々に心臓を撃ち抜かれてしまった。それから4曲目『~風まかせ~』に両手両足を突き刺され、6曲目『月曜日の週末』で脳味噌をえぐられそうになった。9曲目『雨のち晴レルヤ』、10曲目『シシカバブー』、11曲目『虹』と、比較的近年の曲が続かなければ、私は懐かしさのあまりに絶命していたことだろう。ストリートミュージシャン全盛の時代に思春期を送っていた自分には、あまりにも、あまりにも殺傷力の高いアルバムである。

それにしても、自分も思春期の音楽を聴いて、当時を「青春」などという言葉で括って、あの頃を思い返すような人間になってしまったのだと思うと、なんだか、なあ。

『番組バカリズム』(2014年4月23日)



2013年7月14日にBSプレミアムで放送されたバラエティ番組『番組バカリズム』を収録。過去の単独ライブで披露されたコント・パフォーマンスにアレンジを加えて再演したり、番組のためのオリジナルソングを制作して合唱団に歌わせたり、従来のバラエティに独自のエッセンスを加えたVTRを撮影したりするなど、芸人・バカリズムの才能が存分に詰め込まれている。演出は『バカリズムマン対怪人ボーズ』を手掛けた住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)など、バカリズムと縁深いクリエイターたちが軒並み参加している。


本編は一時間に満たないが、見どころはいっぱいだ。

例えば、飯塚悟志(東京03)とのユニットコント『僕らのドライブ』。飯塚からの誘いでドライブに付き合わされたバカリズムが、その計画性の無さについて順を追って批判し始める。お互いのクセの強いところが上手く台本に反映されていて、とても面白かった。二人の日常を切り取ったかのようなリアリティ。最初はバカリズムが飯塚をガンガン責め立てていたのに、ちょっとしたきっかけで立場が逆転してしまう展開もスリリング!

真木よう子をゲストに迎えたVTRコント『ポリンコピン』も良かった。真木から「実は私はポリンコピンなの」と告白されたバカリズム。しかし、ポリンコピンが何なのか分からないので詳細を訊ねるのだが、話を聞けば聞くほど答えにたどり着けない……というナンセンスな味わいがたまらない。コントを演じているとは思えないほどにシリアスな空気を纏った真木の演技も見事。最高の棒読みを見せる場面は是非とも見ていただきたい。

それから忘れてはならないのが『言葉に関する案』。バカリズムが自作の「いろは歌」を披露しているのだが、とてもクオリティが高いのに、どうしようもなくバカバカしい内容になっていて、感心したい気持ちと笑いたい気持ちがぶつかり合ってしまう。結果、笑っているんだけれど。ネタ自体は『バカリズム案6』で既に披露されたものだが、ちゃんとテレビ用に新作が用意されているので、見逃さないようにしてもらいたい。

だが、この作品の一番の見どころ(もとい「聞きどころ」)は、バカリズムによる音声解説だろう。普段の単独ライブDVDでは何も語らないバカリズムが、ネタの背景や撮影の裏話をそれなりにちゃんと語っている。個人的には『ポリンコピン』の解説が面白かった。真木よう子に出演を正式に依頼したタイミング、撮影の裏話、『ポリンコピン』というコントの出自に至るまで、非常に興味深い話が飛び出していた。まさか、あの人のあの行動が、アドリブだったとは……。

バカリズムという芸人を知るに最適な一枚。ただ、富山県の人にだけは、絶対に見せないでください。


■本編【59分】
「番組バカリズムのうた」「イケなくて…」「ボクと富山県」「休日バカリズム」「僕らのドライブ」「ワンルームだった場合 住みにくい形の都道府県ベスト3」「ポリンコピン」「心霊バカリズム」「言葉に関する案」

■音声特典
バカリズムによる音声解説

なんだったんだ『ミレニアムズ』。

今週の火曜日、Twitterで『ミレニアムズ』の終了を知った。

『ミレニアムズ』とは、2000年にデビューしたお笑い芸人たちによるバラエティ番組である。出演者は、オードリー、ナイツ、ウーマンラッシュアワー、流れ星、山里亮太(南海キャンディーズ)。それぞれ単独で番組を抱えている実力派の人気芸人たちが集結しているとあって、番組開始のニュースはかなりの注目を集めていたように記憶している。事実、その期待値の高さもあってか、開始当初は土曜23時10分からの全国放送枠でオンエアされていた。しかし、それからわずか半年で月曜24時55分のローカル枠へと降格。とはいえ、いずれ全国ネットに戻ってくるだろうと思っていたのだが、そのままリベンジの機会が与えられることなく終了となってしまった。

『ヨルタモリ』『そうだ旅(どっか)に行こう。』『笑神様は突然に…』『オモクリ監督』『有田チルドレン』など、それなりに注目を集めていた番組が相次いで終了している今。話題性・注目度という意味では圧倒的に低かっただろう『ミレニアムズ』が終了するのも、致し方の無いことなのかもしれない。とはいえ、もうちょっと見守る余地を与えても良かったのではないか、という気もしないでもない。

確かに、一時期は深夜枠とは思えないようなぬるい企画で間を埋めていたが(某番組をパロった大喜利コーナー「傷点」が『ロンハー』を思わせる恋愛ドキュメントコーナーになったときは引っくり返りそうになった)、ここ最近は春日率いるマッチョ軍団がロケに繰り出す「マチョぶら」、ゲストに中野聡子(日本エレキテル連合)や柳原可奈子を迎えてこじらせ持論を展開させた「ミレニアムズ講座」、若林と中川とちゅうえいがラップユニットを結成し様々な事物をディスっていく「DAIVA SQUAD」などなど、それぞれの企画がだんだんと面白くなり始めていた。……よくよく思い返してみると、オードリー関連の企画ばかりだ(別にファンというわけではない)。また、中川パラダイスがその秘められた暴力性を開花させ、他では見られない狂気を垣間見せるようになったのも、とても魅力的に感じられた(ゲストに来たテリー伊藤の顔を舐め始めた時は、歴史が動いたかと思った)。それが良い方向だったのか悪い方向だったのかは分からないが、少なくとも『ミレニアムズ』という枠組みの中でひっそりと何かが芽生えそうになっていたのである。

ただ、『ミレニアムズ』という番組そのものが惜しいかというと、そうでもない。正直、(先に挙げたものも含め)企画という意味では新しさを感じさせるものはなかったし、それぞれの出演者の個性を掘り返すにしても何周も遅れている感じで、あんまり面白くはなかった。いや、バラエティ的に未知数だったウーマンラッシュアワーと流れ星のことをもっと早くに掘り下げようとしていれば……何か違う結果が見えていたかもしれない。まあ、全ては結果論に過ぎないのだが。

ところで、番組は次回で最終回を迎えるらしいのだが、その前の回で最終回が予告されていなかったように見えたのだが、これはどういうことなのだろうか。今年の4月に番組が全国放送枠からローカル枠へと移動した際にも、そのことが番組内で予告されていなかったのだが、全ての告知はインターネット上でのみ。何のためのテレビなんだ。もしや意図的にやっているのだろうか。どういう意味があるのかは知らないが、そういう視聴者に対して不誠実な態度を取っているところが、もう色々とダメだったのかもしれない。芸人にも幾らかの責任はあるだろうが……。

いったい、なんだったんだ? 『ミレニアムズ』。

『第16回東京03単独公演「あるがままの君でいないで」』(2014年12月24日)



『キングオブコント2009』王者、東京03が2014年5月から8月にかけて全国ツアーを展開した単独公演より、9月に東京は赤坂・草月ホールで開催された追加公演の模様を収録。ちょうど、某アニメ映画のテーマソングが流行っていた時期に行われた単独ライブだったので、このタイトルはてっきり狙ったものだと思い込んでいたのだが、聞いたところによると、どうも偶然似てしまったのだそうだ。運がいいのか、悪いのか。


これまで人間関係の微妙なズレを笑いへと昇華してきた彼らだが、今回は全体的にコメディの度合いが強くなっている。仕事相手に土下座した先輩の飯塚に失望したという後輩の豊本に飯塚の同僚である角田が実体験を元に土下座の必要性を説いたことで余計に話をこじらせてしまう『先輩の土下座』、妻子ある上司と女性社員が職場でラブロマンスを繰り広げているところに部下の角田がうっかり帰ってきてしまい……『終業後』、日本写真界の巨匠が周囲の人間から気を遣われる日々にウンザリして喫煙室で出会った若者と気の置けないコミュニケーションを図ろうとする『巨匠の憂鬱』など、シンプルでバカバカしいコントが揃っている。角田・豊本のボケ勢がけっこうな量のアドリブを盛り込んでいるところが、また嬉しい。角田に急な仕事が入ったために旅行が中止になってしまったことを素直に受け入れた飯塚が理不尽に怒られてしまう『旅の打ち合わせ』における、旅行が中止になってしまったことに対して怒りが収まらない豊本を角田がじっくりと鑑賞するくだりには大笑いさせられた。アドリブだからこそ許される、本当に何の意味もないシーン!

ただ、三人で立ち上げた会社の内装のイメージをそれぞれが意見を出し合って固めていく『新オフィス』は、ちょっと心に刺さるものがあった。飯塚と豊本はイメージがある程度は固まっているので二人の話はトントン拍子にまとまっていくのに対して、角田はイメージが別方向に向いているため、どんな意見を出しても受け入れてもらえない……その状況が、もう……。三人で会話しているときに、控えめなヤツが陥ってしまいがちな状況の理不尽な空気を上手く表現していた。上手く表現していたからこそ……刺さったなあ……。そんな哀しいシチュエーションを笑いに変えてしまう角田の人間力に改めて感心させられたコントでもある。哀しさに全力で立ち向かえる角田こそ、我らの光ぞ!(ハゲという意味ではない)

これだけ大笑いさせてくれた本作だが、締めくくりとなる長尺コント『センスなき故に』はちょっと引っ掛かるものがあった。居酒屋でお互いのセンスについて話し合っている三人がセンスある行動を選択し続けた結果、思わぬ騒動に巻き込まれていく様子を描いたネタなのだが、とにかく暗転は多いし、舞台上でのやりとりじゃなくて画像で説明してしまうシーンが多いし、ライブというよりも出来の悪いFLASH動画を見させられているような感覚に。副音声解説によると「ちゃんとしたコントを追加公演でやることが既に決まっていたので、ちょっと違うのをやろうということになった」らしいのだが、それにしても……。実験的なコントを否定するわけではないが、実際のライブでそれなりにお金を払って鑑賞している身としては(※岡山公演を鑑賞済)、肩透かし……という程度では収まり切れない気持ちにはなった。また、前回の公演で披露された長尺コントが、素晴らしい出来だっただけに……そこは頼むよ、オークラ氏……挑戦するなら長尺じゃなくて短いコントの中でやってくれよ……。

特典映像には、その追加公演で披露されたというコント『マカオの夜は大混乱』を収録。実際のライブでは佐藤隆太・片桐仁(ラーメンズ)・内村光良が日替わりゲストとして招かれており、そのうち佐藤隆太バージョンと片桐仁バージョンの映像が本作に収められている。……聞いたところによると、ウッチャンバージョンの映像も残されてはいるのだとか……海外の動画サイトに流出されないものか……。マカオ旅行の最終日、カジノでお金を散財した三人は部屋に戻ろうとするのだが、三人の同行者が上から目線でグイグイと絡んできた挙句「金を貸してくれ」と言い始めて……。こちらも本編と同様にコメディ色の強いコントで、佐藤隆太バージョンも片桐仁バージョンも非常に面白かったのだが……ウッチャン……ウッチャンが演じる同行者はどうなっていたのか……。

これだけ充実した内容なだけに、長尺コントだけがどうしても浮き彫りに。オークラのナンセンスな色合いが全開のコントだったから、あれはあれで色々と出し切った結果なんだろうけど、うーん……。


■本編【107分】
「先輩の土下座」「新オフィス」「終業後」「ドキュメンタリー番組」「旅の打ち合わせ」「巨匠の憂鬱」「センスなき故に」

■特典映像【53分】
「特別公演 マカオの夜は大混乱 佐藤隆太Ver.」
「特別公演 マカオの夜は大混乱 片桐仁(ラーメンズ)Ver.」

■音声特典
三人による副音声解説

バナナマン×東京03『HANDMADE WORKS』(2013年8月7日)

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(2013/08/07)
バナナマン、東京03 他

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2013年に結成20周年を迎えたバナナマンと、同じく2013年に結成10周年を迎えた東京03が、その素晴らしき偶然を祝してユニットコントライブを開催する。……そんな話を耳にしたとき、私はそのスペシャルな響きに打ち震えた。片や、バラエティ番組で圧倒的な人気を博しつつも年に1度の単独ライブは決して欠かさない、東京コント界の至宝。片や、ライブで全国ツアーを展開することが通例となっている、トリオコントのホームランバッター。そんな二組がタッグを組んで、コントライブを開催する。これはもはや“事件”と言っても過言ではない。

しかし、いざ蓋を開けてみると、そこには普段と変わらない彼らの姿があった。真っ白に染められたステージ、より記号的に洗練された小道具、プロジェクションマッピングを駆使した映像パフォーマンスなどなど……二組が合体してコントを演じることの特別さを物語る演出は随所に施されていたが、バナナマンも東京03も、まるで通常の単独ライブを演じているかのように、ごく淡々と、それでいて確実に笑いを獲っていた。その様は、一見すると手抜きの様にも見えたが、実のところそうではない。

特別な何かが行われる時は、普段は決してやらないようなことに不用意に挑戦してしまいがちだ。その結果、例え失敗してしまったとしても、それはあくまでも特別なのだから……と、観客のナマ温かい視線でもって許されてしまうことも少なくない。だが、彼らはそれをやらなかった。彼らはバナナマンと東京03のコントが自然に融合するように切磋琢磨し、決して違和感が生じない笑いの世界を生み出すことに徹したのである。これぞまさに職人芸、いぶし銀の味わいだ。

“手作り”であることの必要性について考察したオープニングコント『工房』、友情を確かめ合っていた仲間たちが良からぬ人物の参入によって良からぬ状況へと陥っていく様子を交わし合った手紙の文面だけで表現した『手紙』、養鶏場のプリンを作ろうと考えた日村がその試作品を社員たちに試食してもらうも問題点ばかりが浮き彫りになってしまう『日村養鶏場』など、どのネタも非常に面白い。ただ、お互いがお互いを尊重し合った結果なのか、両者の魅力の一つである「シニカルな笑い」が控え目になっていることが、少しばかり残念でもある。東京03のコントでよく目にする日常風景の世界にバナナマンが加わったら、どんな笑いになっていたのか……観たかったなあ。

特別な年に結成された特別なユニットの特別じゃない普遍的な笑い。その根底には、彼らのコントに対する愛と情熱が静かに燃え上がっている。これから10年後の2023年、結成30周年を迎えたバナナマンと結成20周年を迎えた東京03は、このユニットを再結成してくれるのだろうか。彼らがコントを愛し続けていてくれたなら、きっと。

あ、ところでタカちゃんって何してるひ(以下自粛)


■本編【130分】
「工房」「手紙」「何でショー」「日村養鶏場」「手作りアニメ 手作り野郎 handmade workers」「タカちゃんとバンと3人」「ストリート」「逃げ癖のある男」「ゲーム」「工房」

そして彼らは静かに消えていく…のか?

シティボーイズ ファイナル Part.1「燃えるゴミ」

1979年の結成以降、社会の空気をそこはかとなく取り入れたナンセンスなコントを生み出し続けているトリオ、シティボーイズ。メンバー全員が60歳を過ぎている今も精力的に舞台での活動を続けており、その支持者も数多い。そんな彼らが、2015年の今年に開催したライブのタイトルに“ファイナル”を掲げたことは、ちょっとした事件だった。始まりがあれば終わりがある。当たり前のことではあるが、いざ、その時を意識し始めると……どうにも落ち着かない。

『シティボーイズファイナルpart.1「燃えるゴミ」』は2015年6月に東京グローブ座で開催された。作・演出には『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』『横道世之介』などの映画作品で脚本を手掛けてきた「五反田団」主宰・前田司郎を迎えている。DVDにはライブ本編に加え、特典映像として「斉木しげるの大失態」と三人のスペシャルインタビューを収録する予定だ。これが最後の作品になるのかどうかはまだ分からない。ただ、出来ることならば、舞台上に揃っている三人とまたいつか、お会いしたい。

うまるが来たりてダラダラと。『干物妹!うまるちゃん』

最近、動画配信サイト「ニコニコ動画」でテレビ番組が公式に配信されていることを知ったので、とりあえずテレビ東京系とフジテレビ系のチャンネルを登録して『ゴッドタン』や『こじらせナイト』あたりを見ている。いい時代になったものだ。地元では遅れ放送になっている『ゴッドタン』や、地元ではそもそも放送されていない『こじらせナイト』を、海外の動画サイトでコソコソとあげられている動画としてではなく、公式に配信されている動画として放送直後に見られるなんて、私が子どもだった頃には考えられないことである。よく、書籍を取り扱った販売サイトよりも書店で本を買った方がいい理由として、「偶然の出会いに巡り合うことがある」というものが挙げられているが、それに似たような出会いが、この動画サイトを通じて起こるかもしれない。是非とも、若いうちから下らない番組と出会い、人生に宜しくない影響を受けていただきたい所存である。ようこそ地獄へ!

で、この「ニコニコ動画」での配信を通じて、最近の私がすっかりハマってしまっているのが、『干物妹!うまるちゃん』というテレビアニメである。そのストーリーは「容姿端麗、品行方正、成績優秀、スポーツ万能という絵に描いたような完璧女子高生・土間埋(どま うまる)。しかし、その正体は、誰にも見つかることなく自宅でテレビゲームやネットサーフィンに勤しみながらジャンクフードやコーラを貪る“干物妹”だったのだ!」……というもの。『彼氏彼女の事情』の序盤を思わせる設定だが、その正体が外に漏れることによって生じるドラマなどは皆無に等しく(少なくとも現時点では)、基本的にはうまるのグータラぶりとそれに呆れながらも突き放せない兄・タイヘイの日々が描かれている。いわゆる日常モノといえるのかもしれない。正直、アニメとしてはさほど面白いモノではないのだが、オープニングテーマのノリの良さに惹かれて、なんだかんだで見続けている。


UMR! UMR! うまるを讃えよ!(※例の映画は未見)

ストーリーに突出しているところがないからこそ、キャラクターに引っ掛かるところがないからこそ、そこには既存の安心感のようなものがあり、そのために初期衝動の余韻だけでゆるりゆるりと見てしまっているのかもしれない。現在、『うまるちゃん』は全12話中第8話まで配信されている。今のところ、ゆるーいぬるーい日々の描写が延々と続いているのだが、ここから最終話に向けて、どんなめくるめく展開が待っているのか。……何も待っていないような気がしないでもないが、とりあえず楽しみである。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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