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『M-1戦国史』(ラリー遠田)

M-1戦国史 (メディアファクトリー新書)M-1戦国史 (メディアファクトリー新書)
(2010/10/23)
ラリー遠田

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新進気鋭のお笑い評論家として注目されているラリー遠田氏による、M-1グランプリ過去10年の歴史をまとめた新書本。ラリー氏といえば、以前から“おわライター疾走”というブログサイトを運営していて、一部お笑いフリークたちの間でひそかにその存在が囁かれていた人物。その当時から自身をライターだと名乗っていたが、特に活動内容が伝えられていなかったため、「ライターを偽っているのではないか?」との疑惑も持ち上がっていたが、結局のところ、本当にライターだったようである。今となっては、四冊の単著を発行している、堂々たる人気ライターだ。

先にも書いた様に、本書はM-1グランプリ過去10年の歴史をまとめた解説書といえる。M-1グランプリが誕生に至るまでの背景から、過去10年間の決勝戦で起こった主な出来事、歴代M-1審査員の審査傾向などが綴られている。ただ、その内容は些か薄め。「M-1誕生」のくだりは殆ど『マイク一本、一千万』(唐澤和也)と重複しているし、決勝戦のまとめも最低限のことしか書かれていない。どうせまとめるのであれば、せめて決勝戦の点数結果くらい掲載しておいて然るべきなのに、それもない。個人的には、M-1グランプリ2009決勝戦のまとめが、殆ど笑い飯のネタ(『鳥人』と『チンポジ』)で占められていたことに不満を覚えた。優勝したパンクブーブーについては、まるで触れていないってどういうこと? 審査員の傾向についての分析も、なんだか納得できないものが多い。中田カウスが「少数派に一票を投じる」傾向にあることを、「こだわり」というボンヤリとした言葉で誤魔化しているのは、無理があるのではないか。

以上の点から、本書はあまりM-1グランプリをそれなりに知っているお笑いフリーク向けには作られていない、と言っていいだろう。彼らが知りたい情報もなければ、資料的価値もないのだから、仕方が無い。では、あまりM-1グランプリを知らない人に向けて作られているのかというと……その点においてもイマイチだったりする。というか、そもそもM-1グランプリを知らない人が、果たして本書を手に取ろうとするだろうか。もし、興味を持ち始めた人がいたとしたら、彼らが最初に手に取るのは、レンタルビデオに置いてあるM-1グランプリ公式DVDなのではないのか。……まあ、どういう層をターゲットにしているのかは、どうでもいい話なのだが。

それよりも興味深いのは、この後に書かれている「M-1にヤラセはあるか?」「M-1の光と影」という章である。特に前者、「M-1にヤラセはあるか?」というタイトルが、実にいい。大いに惹きつけられる。僕はM-1にヤラセがあるとは思わない、思いたくないタイプの人間なのだが、ラリー氏がこの疑惑にどのように答えるのか非常に興味を持った。ところが、これがまた薄い。詳しくは書かないが、言わんとしていることは分かるし、理屈としては正しいのだということも分かる文章ではある。ただ、その内容の殆どは、“可能性がある”というオチにしか結びつかない。とどのつまり、憶測で固められているのである。まあ、憶測が悪いとは言わない。どんなに真実を模索したところで、それが完全にそうであると証明することは難しい。だが、それならば、どうしてわざわざ一つの章にして取り上げたのか。いや、意図することは分かる。「M-1にヤラセはあるか?」という釣り餌で、読者を引っ掛けるためだろう。それを悪いとは言わない。ただ、それなら、どうして内容をお笑いフリーク向けにしなかったのか、という話になってくる。だって、「M-1にヤラセはあるか?」っていう釣り餌に引っ掛かるのは、M-1を年に一回の楽しみにしているお笑いフリークだってことは、そこらの小学生でも分かることじゃないか。なのに、どうしてそこを避けて、M-1を知らない層向けの内容にしたのか。なんとなく、解せない。

「M-1の光と影」についても、同様のことが言える。この章では、“M-1グランプリが10年目で終わるのではないか?”という疑惑が取り上げられている。勿論、そこに確証はない。章の最後には「私の読み」「私の勘」という言葉で始まる、ラリー氏の妄想が綴られている。僕の読みが正しいなら、いい締め方が思い浮かばなかったのだろう。

ここで、改めてタイトルを見てもらいたい。『M-1戦国史』。このタイトルから想像される内容とは、どの様なものだろうか。僕はこんな内容を想像した。まず、M-1グランプリが誕生するまでのドラマを、『マイク一本、一千万』の要約であることを記載した上で序章とする。後は単純だ。2001~2003年を「黎明期」、2004年~2006年を「全盛期」、2007年~2009年を「変動期」として章分けし、その流れをきちんと解説する。それから、過去M-1決勝進出芸人たちのデータをまとめる。誕生年、本名、結成年、M-1決勝進出後の動向に至るまで、データとしてまとめるのだ。そして、準決勝で敗れていった者たちにも、スポットライトを当てる。インタビューだ。彼らは語りたがらないかもしれないが、それでも敗者の声をきちんと伝えなくては、全てを綴ることにはならない。そして、審査員について触れ、終章でヤラセや終了疑惑を軽く否定する。これが、僕のイメージした『M-1戦国史』だ。正直、売れるかどうかは微妙なところなのが気になるところだが、M-1戦士よりも世間のつまらない噂話に耳を傾けたような内容よりは、マシなのではないかと思うよ。

……と、今、こうしてアレコレと書いて思うに、そもそもタイトルがいけなかったのではないだろうか。これが、もしも『M-1グランプリ入門』という、如何にも初心者向けのタイトルだったとしたら、ここまであーだこーだとツッコミを入れることもなかったような気がする。まあ、この内容で『M-1戦国史』はないよなあ。そんなカッコつけたタイトルに適した内容じゃないよ。

ところで、やっぱり次は『R-1戦国史』なんだろうか? 実はM-1よりも複雑なことになっていて、分析のし甲斐があると思うのだが……知名度低いからダメかな。
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それは読みたいですね。

敗れたもののインタビューや決勝進出後の動向などあったら、それは面白そう。
読みたくなりますね。

最近のお笑いライターさんの芸人評コラム(ブログ?)などをみると内容の薄っぺらさが加速してみえますね。

素晴らしいですね!
自分は某ライター氏が書いたというだけで手が出なかったのですが正解だったようです(笑)
最低の本だったことがわかってよかったです。
菅谷さんが書いた方が絶対面白くなると思いますよ!がんばって下さい!

僕も購入して読みました。ダメダメでしたね。「M-1について一番詳しい人」と耳にしたので期待してたのですが、全て知っている情報でした。というか、最後のヤラセやらの項目でしかラリー氏本人の見解・意見が見れず、単なる一視聴者の文章だった気がします。
東大文学部・・・

まぁたしかに「M-1」について語るのは難しい類いだとは思いますが。

ちなみに菅家さんは今年のM-1についての記事はまだ執筆されていませんね。まだ早いですが僕の決勝予想はPOISON、笑い飯、千鳥、ゆったり感、ウーマン、タイマ、チーモン、パンク
といった感じです。長文すいません。

コメント返事

>まささん
個人的にはすっちー(元ビッキーズ)の話を聞いてみたいですね。彼がコンビを解消した理由が、確かM-1だったと思うので。おわライター氏のコラム(ないしブログ)は、このところあまり読んでないのでなんとも。

>nonameさん
最低というほど酷い内容ではありませんでしたけどね。ただ、個人的には、あんまり見どころと呼べるところがなかっただけで。あと、僕はメンドー臭がりなので、たぶん書かないです。

>大石さん
あー、そうそう、そうなんですよ! 本来なら個人の意見を述べるべき部分をうっすら客観的に書いて、客観的に書くべきところを個人の意見でまとめてるんですよね、この本。もうちょっとどうにかならんかったのか。

M-1の決勝予想…そういえばやってませんね。このところ、自分の中の色んな部分が堕落し始めていて、いけません。冬だからかしら。ああ、でも、今回は24組から8組を選ぶということで、なんかテキトーにやっても1/4の確率で的中するんだと思ってしまって、それでやる気が出てないのかもしれません。あと、三拍子いないし。でもまあ、そのうちやるかもです。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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