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なんばR-1しぐれ

先日、R-1ぐらんぷりに出場した。
 
観戦ではない。出場である。そもそも昨年、R-1ぐらんぷり2010の開催が発表された時点で、実は「出場してみよう」と心には決めていたのだ。だが、当時既に出場参加申し込み期限が過ぎていたために、仕方なく断念したのである。そして今年、R-1ぐらんぷり2011の開催が発表され、待っていましたと言わんばかりに出場した、と、そういうわけだ。勿論、何の策も無く出場を決めたわけではない。きちんとネタを考え、こっそり練習を続け、舞台衣装まで決めていた。準備は万端、意気揚々と会場へ向かう。呑気なもので。

R-1ぐらんぷりの予選は東京と大阪で行われる。ご存知の様に僕は香川の田舎町に住んでいるので、当然の様に大阪予選に参加することになった。大阪といえば、以前まではウルフルズの『大阪ストラット』をイメージしたものだったが、このところはドリカムの『大阪LOVER』が先に脳裏に浮かんでくる。大阪に対するイメージが自分の中で幾らか変わった、ということなのだろうか。香川から大阪まで、高速バスでおよそ四時間。僕は午前九時のバスに乗って、およそ正午ごろに難波へと到着した。そこはOCAT(大阪シティエアターミナル)という施設で、なにやら広島の紙屋町にあるバスセンターを彷彿とさせる場所であった。外へ出ると、かなりの人が歩いている。車も多く、頻繁にクラクション音が飛び込んでくる。思っていた通り、騒がしい所だ。

R-1予選の時刻まで時間があったので、しばらく界隈を散策する。しばらく歩いたところで、中古CD屋を見つける。年寄りが一人でやっている店らしく、中古CD屋というよりも人気のない古本屋という様相だ。入ってみると、以前から購入を考えていた「柳家小三治トークショー」全三巻がある。見たところ、汚れてもいないし、ケースも壊れていない。購入を決意するが、この先に何があるか分からないので、保留ということにする。そこから少し移動したところで、また別の中古屋を見つける。入ると、なにやら本格的な店で、レコードやら何やらがズラリと並んでいる。店員も一昔前のヒッピー風で、まるでタイムマシーン3号にでも乗ってきたかのような心地になる。ふらりと眺めていると、以前Twitterでオススメしてもらった桃月庵白酒の落語CDを発見。これも以前から購入を考えていたのだが、買おうかどうしようか悩みあぐねていた代物である。先ほどの小三治師匠とは違い、こちらは一枚だけなので、この場で購入することにした。店員に渡すと、ケースにヒビが入っているので、新しい空ケースを入れておくと言われる。見ると、確かにヒビが。しかし、蝶番の部分ではないし、それほど大きなヒビでもない。わざわざ一言入れてくれたことに、妙な感動を覚える。それから更に界隈を散策してみると、タワーレコードを発見。ここ最近、タワレコでは落語が特集されており、その影響で僕もすっかりタワレコ愛好者となっている。そしてうっかり、三遊亭円丈のCDを買う。もはや落語CDの行商人といった面持ちだ。

そんなこんなでいい頃合いになってきたので、会場へと向かうことに。R-1ぐらんぷり一回戦の会場は、なんばパークスという所だ。やたらとデカいこの建築物の七階にある、パークスホールという多目的ホールが会場となっていた。なんばパークスは六階と七階が飲食店のフロアで、その辺りにはやたらと人の姿が見られたのだが、会場周辺にはまばらな人だかりだけ。盛り上がっていないのかと思ったが、単に既に客が中に入っているだけのことだった。しばらく会場前を右往左往していると、行列が出来ていることに気付く。スタッフの人に聞くと、エントリーしている人の列だという。自分も並ぶ。前に、片手で持てる程度の大きさのホワイトボードを袋に抱えた青年がいる。準備万端だなーと、呑気に見る。後で、この人は月山翔太という吉本所属の芸人さんだと知った。そりゃ準備万端だよ、と思う。

受付を済ませ、エントリー料の2,000円を徴収される。小道具が必要かと聞かれた(R-1ではセンターマイク、机、椅子などを貸し出している)ので、センターマイクを用意してくれと頼む。僕のネタは落語めいた内容だったので、そういう小道具があった方が安心できると思ったからである。エントリーを済ませると、舞台裏へと通される。狭い。実に狭い。六畳一間程度の部屋で、十人以上の男女がひしめき合っている。服装も様々で、如何にも芸人らしい面妖な姿をしている人もいれば、漫才師の様にスーツを着こなしている人もいる。全裸に近い格好をした人もいた(R-1公式ブログによると、この人はミルクボーイの駒場という人らしい)。自分も早々に着替える。着替えるといっても、上を替えるだけなのだが。無謀にも喋り芸で挑戦するので、大した衣装は必要ない。着替えもすぐに終わる。退屈なので、他の人を見る。ストリークの吉本がいる。氷川きよしの格好をした人がいる(ズンドコヤス)。ジャイ子の格好をした人がいる(誰だか分からない。アマチュア?)。ピン芸といっても、実に様々だ。そうこうしているうちに、時間が近づく。逃げ出したい気持ちになる。そういえば、客がまったく笑っていない。いないのではないかというほどに静かだ。つまり、笑いが起きないのは当然なのである。ウケなくて当然、笑われなくて当然。それでも、心音が高鳴る。

舞台に上がる。照明がまぶしい。センターマイクが無いぞ。スタッフどうした。伝わって無かったのか、出るのが早すぎたのか。でも、スタッフは出ろって合図を出していたよな。どういうことだ。まあいいや。落ちつけ。トチるな。とにかくやりきれ。……あれ?俺、今なんか変なこと言ったな。うわ、間違えたぞ。ここ間違えたら、もう後に続かないじゃない。どうしよう。どうしようじゃない、やらなきゃどうにもならないんだぞ。とにかく繋げろ、上手く繋げろ。アドリブで乗り切れ、どうにか乗り切れ。ダメだ。無理だ。でも、やらなくては。うわあ、客恐い。客恐い。客恐い。全然笑ってない。全然笑ってない。思った通りだけれど、これは恐いぞ……。

気付けば、適当なところで切り上げて、舞台を降りていた。想像以上の緊張感。客の視線が一点に集中する恐怖。これまで体験したことのなかった空気。そして、頭に浮かぶ文字。“恐い”。一瞬、小泉エリのド派手な衣装が見えたが、そんなことを気にしている場合じゃなかった。今の自分に出来るのは、とにかく人のジャマにならないように退散することだけだった。ああ、情けない。どうにもこうにも、情けない。好意を寄せる女性に告白してフラれた時以上の苦汁を舐めたような、そんな気がした。

その後、香川から移住してきた友人と三年ぶりに再会し、ともに大阪の街を練り歩き、グリコの看板を見たり、お好み焼きを食べたり、えべっさんの屋台で適当なものを食べたりもしたのだが、どうにも気持ちは落ち着かない。先ほどの悲惨な状況をついつい思い出して、自虐的に口にしてしまう。その度に、友人に同情されてしまう。ああ、悲哀の坩堝。結局、三時間ほど話したり歩いたりして、別れた。大阪の街は、昼間よりも夜の方がそれらしいということだけは、なんとなく理解した。

この日は、なんばのカプセルホテル「アムザ」に宿泊した。カプセルホテルに泊まるのは今回が初めてだったのだが、おかげでシステムを理解するのにちょっと時間がかかってしまった。荷物を入れるロッカーが窮屈で難儀したが、どうにかカバンを押し込んだ。倒れ込む様に、自分のカプセルへと入り込む。中には、灯りとテレビとラジオがあった。壁には空調用の小さな穴が開いていて、そこからひっきりなしに風が送られていた。時刻は午後九時を回った頃。壁に貼ってあるサービス表を見ると、大浴場の使用時間は午後十時までとある。急いで入る。入った後は、何もすることがない。とりあえず、テレビをつける。「シルシルミシル」の特番が放送されていたが、旅行先で見るのもどうかと思う。気付けば、ホテル内で放送されているアダルトビデオを見ていた。女性教師が生徒と思しき男性に、イヤらしい所を触られている。が、まるで興奮しない。疲れ切っているためだろう。午後十時半、眠るには早すぎる気がしたが、灯りを消した。

午前三時、目が覚める。理由は分からない。寝付けなかったわけではないのだが。どうやら、高速バスに乗っている間、ずっと眠っていたことが大きいようだ。喉が渇いたので、自販機で飲み物を買う。こんな時間でも起きている人が何人かいることに驚く。彼らのチェックアウト時刻は、僕と変わらないと思うのだが(午前十時チェックアウト)。何本か飲み干して、再び横になる。ラジオをつけると、西田敏行が時代劇ドラマを熱演していた。なかなか、悪くなかった。

午前八時半起床。しかし寝が足りず、午前九時まで横になる。顔を洗い、服を着替え、とっとと出る。朝の難波は、夜の難波とはまた違った雰囲気がある。まだ開いていないパチンコ店の前には、たくさんの行列が。一方、商店街のラーメン屋が早くも開いていたので、朝食に頂く。金龍というお店。まあまあ美味しい。しばらく街中を散策していると、昨日の中古CD屋に辿り着いた。満を持して、柳家小三治のトークライブCDを購入。難波を離れ、梅田駅へ移動。散策していると、タワーレコードを発見。三遊亭白鳥と立川藤志楼のCDを見つけたので、購入。かっぱ横丁の古書街で演芸本を探索。特に買うものは見つからず。とっとと高速バスに乗り、香川へと舞い戻ることに。途中、鳴門海峡の渦を見た。僕の頭の中ではR-1の失態が渦を巻いていた。

渦を巻き巻き、渦を巻き。
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No title

お疲れ様でした。
なにはともあれ、これは来年に挑戦するほかないでしょう!

いつも楽しく読まさせてもらってます^^

No title

いやー、来年はどうでしょうねえ…。
ちょっとトラウマみたいなのが残ってそうな気がします(笑)
まあ、もし出なかったとしても、観に行くとは思いますが。

いつもお読み頂きまして、ありがとうございます!

No title

どんな名前でエントリーしたのですか?

おつかれさんでした!

実際にチャレンジしてみるって、それだけでもすごいことですよ。
菅家さんのチャレンジはお笑いへの愛を感じますね(^^)

No title

>名無しさん
教えません!恥ずかしいから!

>日月さん
お笑いの愛というか…完全に飛び込んだだけですからね。
ただ、芸人さんの本気の表情が見られたことは、貴重な経験でした。

No title

今後KOCに出場するご予定は…

No title

相方いませんもん!誘えるような人も身近におらんです。

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お疲れ様でした

R-1出場、お疲れ様でした!
場馴れがなによりの修行(?)と思いますので、あと2回は出てもらえると。。。

白酒師のCDは、大阪で入手されたんですね^^

No title

>匿名希望さん
どうですかねえ。個人の趣向に寄ると思いますが…。
制限時間の間に、どれだけ自分の世界を見せつけられるか。
そこが重要なのではないかと!

>わたやんさん
あと二回!つまり、あと二年!なんという長期計画!
そうです、白酒師のCDは大阪で買いました。
カラッとした毒に本寸法の世界、実に良かったです。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

来年は会場でお会いできればいいですね。
(出ましたが、日程違いでした。結果は語る必要はなし。)

KOC・・・出たいなぁ・・・(おっきい独り言)

No title

>匿名さん
色んな人がいますよね、予選って。
ドン滑った僕が言うのもアレですが、本当に「なにそれ!?」みたいな人もいたりして。
でも、あの緊張の中でネタをやりきった、それだけでも本当に凄い!

>佐々木さん
いやー、お疲れ様です。ありゃ大変ですな。
KOC…出たいというより、観たい方の意識が強い僕です。
出るとしたら…いやいやキビシー!

初コメント失礼します
R-1お疲れ様です。

どんなに入念に練習していても、いざ本番となると…ですかね。
私も今度相方を連れて地元の小さなライブに出演するつもりですが…怖いです。
でも、何事も経験ですよね。
とにかく、頑張って下さい!

No title

初めまして。

もうちょっと入念に練習すべきだったのかもです。
いざ、時間が迫ってくると、本当にこのネタでいいのか疑ってしまうんですよね。
作り直した方がいいのかな、と余計な考えがぐるぐる回っちゃいました。
その油断がいけなかったのかもです。

次もひょっとしたら頑張ります!

No title

今更過ぎるコメント失礼します。
Twitterのほうでわいわい言ってるかじです。ここでは初めましてです。楽しく拝見しています。

すごく当たり前の様に素人も参加出来る事を知っている筈のR-1が菅家さんの行動で今年は少し違って見えます。
人の前で笑いをアウトプットしたこの経験がお笑いへの観察の鋭さに結びつく事を期待しちゃいます。

そしてアウトプットは凄い事なんだと記事を読んで思いました。
軽々しく批評ごっこは本当に失礼にだなーと。

あと私も出ようかとも考えちゃいましたwま、これは来年までにじっくり考えます。

No title

あ、どうもどうも。

僕の観察眼は既に鋭い! …なんてことは思ってはいませんが、実際に出場してみてもそれほど変わりませんよ、正直な話。勿論、演者になることで、これまで観客としてでしか見られなかった部分を見ることは出来ましたが、基本的に批評やなんやって観客側の人に向けられたものですし。出たからどうこう、出なかったからどうこうではなく、どういう視点で見るかという意識が重要なのではないかなあ、と思っておりますです。

ただ、それとは別に、一度くらい出てみるのも悪くないと思いますよw あの緊張は凄いですから! 泣きますから!
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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