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「キングオブコント2011」批評

日本一のコントを決定する年に一度の祭典「キングオブコント」が今年も無事に開催され、そして静かにその幕を下ろした。「M-1グランプリ」「R-1ぐらんぷり」に続く第三のお笑い賞レースとして2008年に開始した「キングオブコント」も今年で四度目の開催となったが、良くも悪くも攻めの姿勢を崩すことのない、お笑い好きにとっては実に有意義な大会だったといえるだろう。

ただ、今回の大会は、観ていて実に疲れた。個人的に応援していた芸人が早々に戦線を離脱し、残念な気持ちになっていたとはいえ、その後は非常にナチュラルな気持ちで大会を観戦できるものだと思っていたのだが、どのコントも個性が強すぎて、気付けば肩に力が入り、大会終了後にはサロンパスを肩から腰にかけて貼りつけ、その上で翌々日には筋肉痛になってしまった次第である……というのは流石に大袈裟だが。それ程に、観戦中の身体に力が入っていたのは確かだ。頭も熱気で少しばかりヤラれたようで、翌日には380度の高熱を……うん、これは完全に嘘だが、以下同文である。

お笑いを見慣れている人間ですらこうなのだから、こういう大会だけをチェックしているような人たちはきっと度肝を抜いたことだろう……と思っていたのだが、それほど反応は悪くないらしい。むしろ、コントの中で使われた言葉が話題となり、誰もが口にしている……というのは言い過ぎだが、多くの人の心を鷲掴みにしているようだ。どうやら、自分を含めたお笑いフリークたちよりも、そういった市井の人たちの方が、純粋にネタを楽しんでいたようである。本来、僕もそういう気持ちであるべきだったのだろうが……もはや戻れない修羅の道、ずんずん進むより他はない。

とにもかくにも、人々の心に数多くの爪痕を残した「キングオブコント2011」について、遅ればせながら語ろうと思う。正直、まだまだ興奮冷めやらぬといった状態なので、明確な言葉では語りきれない部分もあるかもしれないが、一刻も早く語りたいという気持ちが急いているので、見切り発車ながら書き始めさせていただく。どうか、ご了承いただきたい。

以下、順位ごとに。
 


■第八位:トップリード(1,515点)
 ・壱『タクシー』(750点/八位)
 ・弐『先行く男』(765点/八位)
狙っているわけではないのだろうが、「キングオブコント」では毎年“最下位枠”とでもいうような立場を押し付けられる組が出てくる。他の七組に比べて圧倒的に低い点数をつけられ、大会半ばにも関わらず、誰がどう見ても最下位になってしまうことが決定している。2009年大会におけるジャルジャル、2010年大会におけるエレキコミックが、これに当たる。そして今大会では、トップリードがそのポジションとなった。トップリードは実力派のコンビである。そのことは「オンバト+」で彼らが披露しているコントを見れば、一目瞭然だ。独自の設定、確かな演技、巧みな構成。どの点から見ても、トップリードは優秀である。……しかし、それ故に彼らは今回、結果を残すことが出来なったのではないか、という見方も出来るかもしれない。

トップリードのコントは、ハートフルだと言われている。今回、彼らが披露した二本のコントも、そういった類いのネタだ。ドラマチックな展開で、思わず客を唸らせる。だが、彼らのコントがハートフルだと言われているのは、それだけが理由ではない。それしか印象に残らないのだ。何処でどういうボケが仕込まれていて、それでどう思って笑ったのか、まったく記憶に残らない。その意味では、彼らのコントはコメディに近いのかもしれない。笑いを目的として作っているのではなく、笑えるドラマを目的として作っているような、そういう印象だ。無論、それが彼らの味であることには違いないのだが、キングオブコントではそういうコントは求められていなかったのだろう。

とはいえ、ネタ番組としての実績がある「オンバト+」での優勝は伊達ではない。そもそも、彼らがコント師としての実力を見せ始めたのは、ここ数年のこと。まだまだのびしろのあるコンビである。いつの日か再び「キングオブコント」決勝のステージに立ち、リベンジしてくれることだろう。

■第七位:ラブレターズ(1,588点)
 ・壱『卒業式』(790点/六位)
 ・弐『追試』(798点/七位)
シティボーイズを筆頭に、THE GEESEや夙川アトムなどのナンセンスコントを得意とする芸人たちを輩出している芸能事務所“Ash&Dコーポレーション”に所属する若手コンビ、ラブレターズ。「キングオブコント2011」決勝進出者の中では最も知名度の低い彼らだが、コント『卒業式』で披露した西岡中学校校歌は、多くの人の記憶に刷り込まれたことだろう。

実のところ、卒業式で歌われる校歌を中心としたコントは少なくない。緊張感の漂う状況を崩す、緊張と緩和という観点から笑いがおこりやすい設定だからだ。そういう意味では、彼らの『卒業式』はなかなか新しかった。卒業式の緊張感を校歌ではありえないメロディでゆっくりと崩し、着地点が見えたところでまた崩し、それを何度も繰り返し、決して止まることのない緩やかな笑いの波を起こし続ける。「ライム風の校歌→ヒップホップのパロディ→校歌であることの再認識」の流れは、実に無駄がなかった。ただ、終盤で『上を向いて歩こう』を歌うくだりは、あまり必要性が感じられなかった。詳しい人によると意味のある場面だったらしいのだが……ここでもう一盛り上がりする展開があれば、もうちょっと点数が入っていたのではないかと。まあ、それでも些か低い点数の様な気はするが、圧倒的な点数を記録したロバートの後だったことを考えると、健闘した方だと言うべきかもしれない。

続く二本目で披露した『追試』は、彼らが初めて「オンバト+」でオンエアされた記念すべきコント。覆面をつけた生徒・平田の不条理な行動に翻弄させられる教師の姿を、ただひたすらに描いているだけのネタである。恐らく多くの視聴者が『卒業式』の流れを汲んだネタに期待していただろうが、こればっかりはどうにもならない。「平田がいなーいッ!」からの「ああ、トイレか……」には、かなり笑わせてもらったのだが。百戦錬磨のコント師たちが並ぶ決勝の舞台では、些かインパクトに欠けた。それでも『卒業式』よりも点数が下がらなかったのは、このコントがきちんと面白いと評価されたから……なのだろうか。

■第六位:TKO(1,634点)
 ・壱『マジシャン』(757点/七位)
 ・弐『裏口入学』(877点/五位)
ますだおかだ、アメリカザリガニ、オジンオズボーン、安田大サーカス、ヒカリゴケなど、若手の漫才師を多く有している事務所というイメージが強い“松竹芸能”において、抜群の実力と時代に適した発想力を兼ね備えたコント師として奮闘しているコンビ、それがTKOである。「爆笑レッドカーペット」で披露したショートコントが高く評価されて以後は、安定感のある喋りを武器に数々のバラエティ番組で活躍し、気が付けば松竹若手の筆頭と呼ぶに相応しい存在となっていた。しかし、売れ残っていた時代があったからなのか、彼らは本分であるコントを決して忘れない。「キングオブコント2010」で彼らが三位という高記録を残した事実が、そのことを証明している。

ところが、彼らが一本目で披露した『マジシャン』のコントを観て、大いに驚いた。ショーが終わって楽屋に戻ってきたマジシャンがアシスタントにダメ出しするというシチュエーションのコントなのだが、これがあまりにも薄っぺらい。暗点を何度も繰り返すテンポの悪さも否定できないが、個人的には一つのマジックに一つのボケという燃費の悪さが気になった。「キングオブコント2010」では一番手だったということもあってか無難に旧作コント『葬式』を披露した彼らだが、よもや翌年、それよりも大会向けではないコントを持ってくるとは。最下位となったトップリードに次ぐ低得点にも、納得せざるを得ない。

しかし、二本目のコント『裏口入学』を観て、再び驚いた。「ゴッドファーザー」のテーマを思わせるBGMの中、如何にも大物然とした男と、その男に大金を渡して裏口入学の約束をしようとする男の緊張感漂うやり取り。そこで告げられる、裏口入学は無理だけれど金は欲しいという大物の驚くべき発言。実は、この時点でこのコントは終わっている。この後は、この大物然とした男がキャプテン渡辺がいうところの「クズだよっ!」なところが、どんどん掘り下げられていくだけだ。だが、この掘り下げ作業が実に面白い。最初に印象付けられた大物感からは想像もつかない言動が飛び出す。「こつこつ働けぃ!」「海物語の攻略本」「カチカチやないか!」で既に心を鷲掴みにされているにも関わらず、終盤のどうしようもないクズ独白で更に心を掴まれた。コント師としての実力を見事に見せつけてくれた……どうして、このレベルのコントをもう一本持ってきてくれないのだろう……?

■第五位:鬼ヶ島(1,679点)
 ・壱『転校生 ~あやつり人形~』(874点/三位)
 ・弐『転校生 ~ホスト~』(805点/六位)
アンジャッシュ、アンタッチャブル、おぎやはぎ、ドランクドラゴン、東京03、キングオブコメディなど、実力者と呼ばれる芸人たちを多く輩出している芸能事務所“人力舎”。そのネタの質は在関東芸人の中でもピカイチと言われており、「爆笑オンエアバトル」などのネタ番組において、彼らの存在はあまりにも巨大だった。そんな人力舎に籍を置いていながら、その混沌とした芸風から人力舎のダークサイドと呼ばれていたとかいなかったとかいうトリオが、鬼ヶ島である。元チャップメンの野田、元アメデオの大川原、元CUBEの和田の三人で結成されたこのトリオは、かつての経歴を微塵も顧みることなく、我が道を突き進み続けている。……本来なら、こういう大会に上がってくるタイプの芸風ではないと思うのだが。審査員の中にコアなファンが紛れこんでいたのだろうか。

ゴールデンタイムに放送される「キングオブコント2011」においても、鬼ヶ島の混沌とした世界観は健在だ。まず、一本目に披露された『あやつり人形』は、教師にあやつり人形の様に操られている転校生の野田くんが、クラスメートの和田くんに助けを求めるという衝撃の一作。実のところ、笑いの軸となっているのは唐突に始まるミュージカルの部分なのだが、野田があやつり人形と化している点がアクセントとして激しく主張して、このコントを複雑にしている。聞いたところによると、このコントは映画『シカゴ』のあるシーンを参考にして作られているらしい。構造に深みを感じるのは、それが原因なのだろうか。このコントを目にした人は、恐らく夜中に悪夢を見たことだろう。それほどのインパクトがあるネタだった。

ところが、二本目のコント『ホスト』で彼らが大きく点数を下げる結果に。真面目な女生徒である大川原が、自分のことをホストだという転校生の野田にだんだんと惹かれていく様子を、ところどころで独白を含めながら描いたラブストーリーの様なコントだったが、確かに一本目と比べると印象に弱い。コント自体の質は決して悪くはなく、完成度が微妙な恋愛コントかと思わせておきながら、最後はどっちらけ気味にパラパラで終わらせてしまう強引さなどは、実にたまらない。だが、裏打ちされた混沌さに満ちた『あやつり人形』と比べると、どうしても弱さを感じさせられる。この結果を見て、ふと昨年のロッチを思い出した。『催眠術師』で自らのスタイルを掘り下げた後で、旧作コント『万引き』を披露するという守りに入り惨敗した彼らの二の舞を、鬼ヶ島も演じてしまったのではないだろうか。しかし、来年以後の活躍に期待できる結果となったのでは。

■第四位:インパルス(1,696点)
 ・壱『模範囚と看守』(815点/五位)
 ・弐『町工場の面接』(881点/四位)
ゼロ年代を駆け抜けたお笑いブームについて語るに当たり、どうしても触れておかなくてはならない番組が三つ存在する。まず、お笑いブームで活躍する芸人たちを育成し続けてきた「爆笑オンエアバトル」。次に、お笑い芸人たちのネタをファーストフードの如く手頃に楽しむことが出来た「爆笑レッドカーペット」。そして、「エンタの神様」である。同番組は、必要以上の押しつけがましい演出とスタッフが明らかに口入れをしている薄口のネタを増産し続けてきたことで、いわゆるお笑いフリークと言われている人たちに大いなる反感を受けていた。しかし一方で、サンドウィッチマンや東京03の様に実力ある芸人を拾い上げるという、救済的な意味合いでも大きく貢献した番組であったことは否定できない。インパルスもまた、「エンタの神様」によって拾い上げられたコント師の一組である。彼らはアンジャッシュ、ドランクドラゴン、陣内智則らとともに同番組を支え続け、同時にコント師としての評価を高めていった。

インパルスのコントの魅力は、イコール二人の魅力に繋がっていた。板倉のダウナーな雰囲気が漂うボケと、堤下の一瞬にしてボケを切り捨てるツッコミ。どちらが欠けても、インパルスのコントは決して成立しない。彼らが一本目に披露したコント『模範囚と看守』は、そんな彼らの魅力が存分に詰まったネタだった。「模範囚のフリをして脱獄を企てている罪人」の設定はダウナーな魅力を放つ板倉の本領だし、そんな罪人が突然の釈放に驚きながらも「自分で企てた脱獄計画で刑務所を出たい」という思いを暴走させている様に次々とツッコミを入れるのは堤下の十八番芸だ。終盤、罪人が気持ちを入れ替えるくだりが些か雑にも感じられたが、非常に完成度の高いインパルスのコントだったといえる。ただ、ここは順番が悪かった。今回、インパルスがネタを披露したのは、「2700『右ひじ左ひじ交互に見て』→モンスターエンジン『ミスターメタリック』→鬼ヶ島『転校生 ~あやつり人形~』」と、あまりにも異色のコントが続いた後。これでは、彼らの王道とも言うべきコント『模範囚と看守』が地味に見えてしまっても、仕方がない。加えて、出番がトリだったため、全体の印象から……と無難な点数をつけられてしまった可能性も否めない。それでも平均八点、立派なものである。

ただ、二本目の『町工場の面接』。これは非常に残念だった。とはいえ、コント自体のクオリティはとてつもなく高い。先にも書いた様に、インパルスのコントといえば板倉のダウナーなボケと堤下の鋭いツッコミが魅力だが、今回はそのどちらも封印。どの仕事もしっくり来なかったという凄い職歴を持つ就職希望者と、彼に新しい職場として選ばれてしまった町工場の工場長のやり取りは、どちらがボケでどちらがツッコミなのかが分からない、非常に緻密な笑いの構造を持ったコントとして完成されていた。一見すると「町工場に就職希望に来た凄い職歴の持ち主」がボケに見えるのだが、冷静になって考えてみると、むしろ「凄い職歴に圧倒されて自分の仕事を蔑んでしまう工場長」の方がボケに見えてくる。それぞれの考え方のすれ違いが生み出す笑い……というと、なにやらアンジャッシュの様だが。彼らが今大会に勝負を仕掛けてきたことがよく分かる一作だったと思う。……それ故に、ところどころに生じたミスが実に残念だった。特に中盤、堤下の舌が回らなくなってしまった場面は、2009年の天竺鼠を彷彿とさせるほどの失敗に思えた。あれが無ければ、900点は超えていた……かもしれない。

■第三位:モンスターエンジン(1,762点)
 ・壱『ミスターメタリック登場シーン集』(843点/四位)
 ・弐『新人添乗員の指導』(919点/三位)
紹介VTRにもあったように、業界内におけるモンスターエンジンの評価は非常に高い。M-1グランプリには二度の決勝進出を果たし、キングオブコントでも一度決勝に進出した経験がある。2007年に結成したコンビとしては、“にのうらご”としてのトリオ時代があったことを考慮しても、余りある活躍ぶりだと言えるだろう。ただ、個人的な印象だと、彼らのネタはどうもしっくりこないことが多い。いや、恐らくは多くの人たちが彼らの代表作として認識しているだろう『神々の遊び』や『ゴッドハンド洋一』などのショートコントは面白いと思えるのだが、どうも長尺のネタになると、あまり記憶に残らないイメージがあったのである。特にM-1で披露していた漫才などは、まったく記憶に残っていない。どうして決勝の舞台に彼らがいるのだろうか、と思ったほどだ。しかし今回、この認識を改めることにした。今大会における彼らの活躍ぶりは、それほどに目を見張るものだった。

まず、『ミスターメタリック登場シーン集』。これが凄かった。何が凄いって、設定が凄い。「YouTubeで戦隊ヒーローがピンチの時に現れる謎の男ミスターメタリックの登場シーンだけを集めた動画」なんて、今時の若者じゃなければ思いつかないだろう最新鋭の設定だ。まあ、動画サイトを意識したコント(ないし映像作品)は過去にも幾つか存在していただろうが、「登場シーンだけを集めた」点が実に現代的でイイ。以前、とある動画サイトで特撮番組の主人公が登場するシーンだけを集めた動画を見たことがあるが、まさにこのコントの様な編集であった。つまり、それだけリアリティあるコントだった、ということだ。また、このミスターメタリックが魅力的なのも実に良い。登場時の小粋なコメントには、笑うと同時にグッと心を掴まれた。ただ、このコントが惜しいのは、最後の登場シーン。少しずつヒーローに意見するシーンを増やして、そういう流れを作っていたとはいえ、あのオチは些か強引過ぎた。事実、最後の流れで、笑いが殆ど起きていない。あそこでもう一つ何かしっくりとくるオチがあれば、900点台もあったのではないだろうか。

そういう意味では、二本目のコント『新人添乗員の指導』は非常に完成されていた。「ゴルゴ13を思わせる顔つきをした先輩の添乗員が新人の添乗員を厳しく指導する」というシチュエーション自体はとてもオーソドックスだが、ボケの積み重ねがとてつもなく丁寧で、観客に油断する隙をまるで与えない。普通、こういうシチュエーションのコントは「新人への苦言→お手本→自慢」のローテーションで、観ている側を飽きさせてしまいがちなのだが、今作はまったく飽きが来ない。この緻密な構成力が、どうしてミスターメタリックのオチには活かされなかったのか……などとボヤいてもしょうがない。とにかく、今回の二本で彼らの実力がようやく分かった。それは間違いなく収穫である。来年の活躍にも、心から期待したい。

■第二位:2700(1,809点)
 ・壱『右ひじ左ひじ交互に見て』(884点/二位)
 ・弐『キリンスマッシュ』(925点/二位)
日本一のコントを決する「キングオブコント」が初めて開催されたのは、2008年のことである。漫才の日本一を決する「M-1グランプリ」、ピン芸の日本一を決する「R-1ぐらんぷり」に続く第三のお笑い賞レースとして、当時は大いに話題となった。その決勝の舞台に立ったのは、バッファロー吾郎やバナナマンの様な実力者から、THE GEESEや天竺鼠などの気鋭の新人まで、実に個性豊かなメンバーたち。その中に、殆ど誰も知らない、見たことのないお笑いコンビが、一組だけ紛れこんでいた。彼らの名は2700。当時、まだコンビを結成したばかりだった彼らは、並みいる実力派コント師たちを抑えて、決勝の舞台に名乗りを上げてしまったのである。結果は言うまでもなく惨敗。あれから四年、彼らは再び決勝の舞台に帰ってきた。2008年当時から演じ続けてきた、音ネタを引っ提げて。

まずは一本目の『右ひじ左ひじ交互に見て』。非常にシンプルな構造のコントである。初めに、右ひじ左ひじを交互に見せる理由を提示し、次に、理由などは単なる便宜であることを説明し、一見すると無駄な時間を置いてから、終盤の展開に繋げていく。まるで一本の道を真っ直ぐ進んでいるかのように、シンプルな構成である。それでも突拍子もない内容に見えてしまうのは、コントの根幹が「右ひじ左ひじ交互に見て!」という不可解な行動であるためだろう。また、このコントが披露される際に行われる、ツネのダンスの存在も大きい。身体が大きいツネのダンスはコミカルかつアクロバットで、見る人の目を惹きつける。とどのつまり、彼らのコントの肝は演出なのだ。シンプルな構成にセンスによる演出を施すことで、自己の色を主張する。それが2700のやり方だ。

続く『キリンスマッシュ』は、『右ひじ左ひじ交互に見て』よりも更にシンプルな構造のコントである。キリンがテニスのラケットで「キリンスマッシュ」と「キリンレシーブ」を披露し、次にどちらが出るのかをゾウが賭ける。構造自体はテントの『蜘蛛の決闘』やFUJIWARA原西の『鳩胸・猫背』に似ている。どちらが選ばれるのかは演っている当人次第で、賭け事にも何もならないという無意味さが実に面白い。ただ、2700のコントは、それらのネタと少し状況が違う。彼らは賭けの対象だけではなく、賭け事にも何もならない無意味なものに必死になっている者の姿も描いている。それはなにやら、実際の生活で賭け事に躍起になっている人々のことを皮肉っているようにも……って、そんなメッセージはきっと含まれてはいないのだろうが。しかし後半、大きな笑いが起きているのはゾウが賭けにのめりこんでいる場面なので、あながち間違った考察でもないような気もする。

最初から最後まで自らの築き上げた世界を決して崩すことなく貫通させた二本のコントは、彼らの持つセンスがビンビンに発せられたエネルギーのカタマリみたいなネタだった。だからこそ、その構造がどれほどシンプルであっても(むしろシンプルであるからこそ)、大いに賛否を招いてしまったのだろう。だが、多くの人の心を動かした時点で、彼らは既に勝利している。既にYouTubeには、「右ひじ左ひじ交互に見て」の動きに心を奪われてしまった人たちの動画が寄せられている。それはもはや「考えるな、感じろ」の世界だ。頭を空っぽにして、身を任せろ!

■優勝:ロバート(1,876点)
 ・壱『忍者ショーの取材』(942点/一位)
 ・弐『自動車工場の修理』(934点/一位)
「キングオブコント2008」での屈辱の最下位から見事に蘇った2700を抑えて優勝を果たしたトリオ、ロバート。彼らもまた「キングオブコント2008」では苦汁を飲まされていた。当時の決勝戦は、八組のコント師が二つのブロックに分かれて予選を行い、それぞれの最高得点を記録した組が最終決戦へと進出、一対一の戦いを繰り広げるというシステムだった。この予選の最高得点はバナナマンの482点。ロバートはそれに次ぐ473点を叩き出していたのだが、この決勝戦のシステムのために予選敗退、もう一つのブロックから勝ち上がってきたバッファロー吾郎に席を譲る形となった(ちなみにバッファロー吾郎は460点を記録。予選全体では三位にあたる)。あれから、四年。ロバートは決して挫けることなく、再び決勝の舞台へと帰ってきた。自らの特色を存分に盛り込んだ、二本のコントを携えて。

ロバートのコントに対する批判の一つに、「秋山のキャラクターだけ(で成立している)」というものがある。確かに、そう口にしたくなる気持ちは分かる。ロバートのコントにおける秋山の存在感は非常に大きく、彼のキャラクターしか頭に入らないという人が出てくるのも仕方がないことだ。だが、ロバートのコントにおいて、秋山のキャラクターは一つのアクセントでしかない。では、彼らのコントの肝は、一体何なのか。

今回、彼らが決勝の舞台で披露したコントは、いずれも秋山・馬場のやり取りに対して、異分子である山本がツッコミを入れるフォーマットで作られている。基本、山本はその世界に介入しない。他所からやってきた異分子としての本分を見失うことなく、ただただ第三者としての感想を漏らし続けるだけだ。結果、秋山と馬場は山本というツッコミを無視した状態で、普段のやり取りを続ける。つまり、二人がそこで見せているのは、確固たる日常風景そのものということだ。特別な事件が起きるわけでもない、第三者の目からは異質に見える小さな日常の風景こそ、彼らのコントの肝なのである。だからこそ、彼らのコントはリアリティがある。

自らのセンスによって構築された世界を、まったくの非現実として描くことなく、あくまでも何処かの世界に有り得る日常として再構築したロバートのコントは、まさしく唯一無二の代物だ。……などと堅苦しいことを考えずとも、肩の力を抜きに抜いて、腹の底から笑わせてくれたのは、間違いなく彼らのコントだった。下らないと思うのならば、幾らでも思えばいい。そう思っても許される懐の広さが、彼らのコントにはあったのだから。いやー……接しやすい……。

総評
なんだかんだでロバートが優勝、ということで。落ち着くべき所に落ち着いたと言って良いのではないでしょうか。先にも書いた様に「キングオブコント2008」で敗退した過去もあるし、自らのスタイルがきちんと出来上がっているトリオだし。他の芸人さんが優勝するよりは、納得できた人も多かったんじゃないかな。個人的にはインパルス、もうちょっと点数が高くても良かった気もするんだけどなあ。彼らも彼らで、完全に優勝を狙ったネタで来たから。それがあんまり結果に結び付かなかったのは、本当に残念。ただ、来年以後の活躍に期待してます。いつか彼らも、リベンジしなくてはならないコンビだと思うので。勿論、他のあらゆるコント師たちが、いつかはリベンジしてくれるのも待ってます。……って、ちょっと都合が良すぎるか?

なにはともあれ、面白かった!来年も同じくらい面白かったらいいなあ。
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3時間お疲れ様です

 こんばんは。いつもツイッターとブログ見ています。半分だけで、3時間ですか(驚)。残り3時間(?)も応援しています。
 トップリードは良く出来ているのに、点数は伸びなかったですね。ネタ順や所属事務所が関係があるのかと、勝手に思ってしまいました。オンバトとKOCは評価する人が違いますからね。難しい所です。
 ラブレターズは爪痕を残せたのではないでしょうか?1本目のネタは耳に残りました。特に好きなのは、学校一のリリックメーカーが歌っている時のボウズの方が泣いている所です。初見だと思っていたのですが、2本目はオンバトで見ていたんですね。
 TKOの一本目はドリームマッチで見た気がしました。元々TKOのネタだったのでしょうか?疑問が残りました。確かにボケ量が少ない気がしました。
 鬼ヶ島は、楽しめました。違うネタも見てみたいですし、野田さんがバイトしなくて済めば嬉しいです。DVDも出るようですので、楽しみにしています。

No title

こんばんは。あー、三時間っていうのは「キングオブコント」の総時間のことです。三時間の番組を振り返るとなると、一度ではなかなか難しいなあ…という意味で呟きました。…とはいえ、実質二時間ばかりかかってますね、感想書くのに。残りの半分はどれくらいかかるのかしら。

ラブレターズはかなりのインパクトを残せたんじゃないですかね、西岡中学校♪ TKOは確かにドリームマッチで似たようなのやってましたね。そのことが分かった時点で、リアルタイム時は非常にテンションが下がった記憶が。鬼ヶ島のDVD、僕も楽しみです!

No title

応援していたトップリードが。。。
700点台に終わって残念です。
低すぎる!とテレビに向かって怒ってましたが、
あれだけ個性の強い面々だとしょうがないのかな。

ラブレターズは初見ですが、面白かったですね。
一本目は歌が耳から離れない(笑
あまりお笑いに詳しくない友達に感想聞いたら
皆『西岡中学校~♪』って言ってましたw

No title

ロバートの前で終わる…
第一回の感想のときのデジャヴを感じるのは私だけなのでしょうか。

ちなみに今回は上位4組が全てよしもとという第二回第三回のリベンジみたいな形になりましたなぁ

No title

>tanaさん
トップリードは本当に残念でした。更なる進化に期待を寄せながらも…ねえ。
ラブレターズのネタは残りますねえ。
僕は「次はお前だ!ミスターボーズ!」を思い出すたびにニヤニヤしてますw

>のめすぽさん
ロバートは僕の中で鬼門です。
「キングオブコント2008」もそうですが、
「笑神降臨」の感想もロバートで止まったんですよね。
今回も非常に難産でした。出来上がりもやや不安。
そういえば上位四組、確かに全員吉本ですねえ。
混沌部分からの使者ばっかりですがw
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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