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『漫画の時間』(いしかわじゅん)

漫画の時間 (新潮OH!文庫)漫画の時間 (新潮OH!文庫)
(2000/10)
いしかわ じゅん

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最近、やたらと目に留まる本がある。個人的に気になる本、というのもあるのだろうけれど、その本の場合、むしろサイズに原因があるのではないかと思う。なにせ、デカい。いわゆるムック本並のサイズなのに、440ページ以上ある。最近買った渡辺浩弐の『2999年のゲーム・キッズ 完全版DX』よりも分厚い。

内容は、どうも漫画の評論集らしい。それで、著者は漫画家らしい。つまり、漫画家が漫画評論を書いているのだ。……うーん、どうなんだろう。プレッシャーにならないのだろうか。同業者を批評するのって、かなりの勇気が必要だと思うのだが。よっぽどの審美眼を持っているか、よっぽどの実績を持っているかをしていないと、出来ないことではないだろうか(『笑いの現場』を書いたラサール石井は前者かな)。

そんなわけで、きっと面白いのだろう、という目測をつけて、僕はその本を購入した。タイトルは『漫画ノート』。著者は、いしかわじゅん。ラインナップを見てみると、『おさんぽ大王』『ぼくんち』『ぼのぼの』等の作品を評論しているらしい。個人的に好きな作品たちだ。
 
よし、これは読まねば……と思って、早くも二ヶ月近くが経過してしまった。うーん。まったく読み進まない。なんなら、購入してから、ページを開いてすらいない気がするぞ。いや、原因は分かっている。デカいのだ。デカさに圧倒されて、読む気が起きないのだ。そういえば、それより前に買った『爆笑問題集』も、殆ど読んでいない。デカい本は読む気が起きない人間性なのかもしれない。でも、買ってる。ダメじゃん。
 
そこで僕は、目測を確信に変えることにした。実はこの『漫画ノート』には、前作が存在するのである。そっちは既に文庫化されており、それなりに簡単に手に入れることも出来た。うん。つまり、前作の文庫版を読んでみて面白ければ、『漫画ノート』を読む気力も出てくるだろう、と思ったわけである。うん。
 
で。買ってみたぜ『漫画の時間』。単行本が発売されたのは1995年。つまり、十年以上も前に発表された評論集ということだ。取り上げられている作品も、ちょっと古さを感じる。ハロルド作石『ゴリラーマン』、けらえいこ『セキララ結婚生活』、宮崎駿『シュナの旅』……当時の時点で古い作品として紹介されているものもあり、実に埃臭さを感じさせるラインナップだ。知らない作品も、知らない作家も多い。
 
それなのに、この評論集はかなり面白かった。想像していたよりも、ずっと面白かった。いや、正直なところ「それほど面白くないだろう」と、ちょっとだけ思っていたのだ。でも、そんなアホな考えをかなぐり捨てたくなるくらい、面白かった。こいつぁ想定外だったなあ。
 
いしかわじゅんは漫画を評論する上で、主にその表現力を見る。ストーリーも見るが、それよりも目で見る絵を重視する。そして、評論する対象となる作品の良いところを悪いところを取り上げ、そこについて言及し、その作品の面白みをクローズアップする。「読み方指南」とでも言うのだろうか。ただ、それだけではない。いしかわじゅんの文章は、物凄く自信満々なのである。
 
例えば、いしかわは本文で<大抵の漫画を自分は描くことが出来る>という旨の文章を書いている。僕はいしかわの漫画を読んだことはないのだが、こういうことを堂々と書けるほどの漫画を描ける人間は、おそらくいないのではないかと思う。でも、いしかわはキッパリと言ってのける。この、素晴らしいほどの満ちた自信! それ故、いしかわは批評する対象となる漫画に対し、かなり上から目線だ。通常、上から目線というのはイラッとくるものだが、いしかわの場合、それが権威の様なものさえ匂わせるほどの上から目線であるため、読者に本当に凄い人の批評を読まされているかの様な錯覚を覚えさせ、結果、面白く感じてしまうのである。ああ、なんて回りくどい文章。とどのつまり、いしかわの批評は「蜃気楼」なのだ。……って、なんか批判している感じになっているけれど。面白い理由の話だからね。うん。
 
実際、僕はいしかわの文章を読んで、手にしてみたい漫画本を何冊か見つけた。面白そうだと感じた。じっくりと座り込んで、一頁ずつ、しっかりと読んでみたいと思った。読者にそう思わせた時点で、いしかわの勝利なのである。勝負なんかしてないけどな。
 
世の中、面白ければそれで良いのだ。そう思いながら、僕は『漫画ノート』を手に、トイレへと駆け込むのであった。……デカいから読みづらいけれど、とりあえずページが切れることはない……。

個人的に気になったのは、安井雄一『ちょんまげがいっぱい』、望月峯太郎『バタアシ金魚』、古沢優『たいまんぶるぅす』、南伸坊『チャイナ・ファンタジー』、森下わさび(すのうちさとる)『さすらいの調理師』、大城ゆか『山原ばんばん』、高岡凡太郎『ムスメ日記』、ほりのぶゆき『もののふの記』、原律子『改訂版大日本帝国萬画』、みなもと太郎『ホモホモセブン』、永野のりこ『GOD SAVE THE すげこまくん!』、杉浦日向子『百物語』。

知ってる漫画家の作品で気になったのは、『鋼の人』(吉田戦車)、『燃えよペン』(島本和彦)、『I sm マッコイ』(小林まこと)、松苗あけみ『純情クレイジーフルーツ』の四作。吉田戦車は、何気にエロい女性を描くのが上手いなあ、と挿絵に使われていた一コマを見て再認識。
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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