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「春風亭小朝 独演会」(10月29日)

「春風亭小朝 独演会」鑑賞のために、高速道路を経由して松山を訪れる。

僕が松山市を訪れるのは、今年八月に行われた「小枝のらくご」を観に行ったとき以来である。ただ、今回の会場となっているのは、「小枝のらくご」が行われたビビットホールではなく、ひめぎんホールというところだ。ビビットホールは松山市駅(松山駅ではない)から程ない街中にあったが、ひめぎんホールはどちらかというと道後温泉に近い場所にある。

松山には「小枝のらくご」以前にも何度か訪れているが、道後方面にはあまり足を運んだことが無かったので、到着までに随分と迷ってしまった。また、休日ということもあってか、やたらと車が混雑していたのにも、ほとほと参った。ただ迷うだけならば良いのだが、その上で渋滞に巻き込まれるというのは、段違いに精神的苦痛を伴うからだ。出来ることなら、車より電車で訪れた方が何かと便利なのだろうが、香川から松山へと向かう場合、ぐるりと今治まで回り道をしなくてはならない。百鬼園のように電車への乗車を目的とするならともかく、目的地のある身でそれを実行するのはなかなか容易ではない。

今回の会場であるひめぎんホールは、比較するのもなんだが、ビビットホールとは比べ物にならない程に大きな会場だった。表からだと、一目では全貌が確認できない程に大きい。後で調べてみたところ、ビビットホールの客席数が250~300席(パイプイスを使うために変動可能なのである)なのに対し、ひめぎんホールの客席数は628席とおよそ倍の人数が入るという。……ちなみに、これはサブホールの一階席のみに限った人数だ。二階席を含めると1,000人の収容が可能だそうだ。……そしてメインホールには、3,000人を収容できるらしい。3,000人もの客が、一体何を観るというのだろう。

ひめぎんホールには専用の駐車場がある。地下にもあるし、地上にもある。僕は地下駐車場を利用したが、どちらも料金は変わらないようだ。最初の1時間は200円で、後は30分ごとに100円の加算。……これは完全に僕の私見なのだが、どうしてその会場を利用する客に駐車場の代金を払わせようとするのか、些か理解に苦しむ。そりゃあ、大した金額ではないので、払わないということはない。ただ、なんだか釈然としない。せめて、施設利用者には割引を設定するなどの、なにかしらかの配慮が欲しい。身勝手な意見なのかもしれないが。

午後1時半開場。物販は無し。買い物好きとしては、ちょっと寂しい。席は前から4番目。チケットを手に入れたときには意識していなかったが、高座からかなり近い位置だった。最後列には幾らか空席があったようだが、ほぼ全ての席が埋まっている。近年の落語界に多大なる影響を及ぼした天才との呼び声は伊達ではないらしい。

午後2時、開演。
 
緞帳が上がると同時に、垂れ幕に目をやる。瀧川鯉斗とある。察するに、瀧川鯉昇(春風亭柳昇門下。昇太師匠の兄弟子)師匠のお弟子さんなのだろう。帰宅後、「落語ファン倶楽部」で調べてみると、やはり鯉昇師匠の弟子だった。小遊三師匠と嵐のコンサートに出かけた話から落語芸術協会の話を経由したマクラから、歌丸師匠に教わったという古典落語『つる』を。『つる』は歌丸師匠の十八番ネタなので教わる相手としては最適なのだろうが、ネタはあまり上手くなかった。マクラのとっちらかりっぷりを見た時点で不安だったのだが、やたらとネタ中に噛み過ぎていたのがなんともかんとも。これで現在、二つ目なのだという。……うーん。

入れ替わりで、今回の主役である春風亭小朝師匠が登場。お馴染みの金髪ツンツンヘアーは、生で見ると妙な迫力があるから不思議だ。ネタは新作『越路吹雪物語』。美空ひばりとともに“昭和の歌姫”と呼ばれた越路吹雪の生き様を、細かいボケとともに繰り広げていく。男女の在り方を基調とした漫談風のネタで、なにやら細かいボケを話すために越路吹雪の生き様を利用しているかのようにも見える程に軽快だった。しかし終盤、越路の『愛の賛歌』を流す演出にはうっかり目頭が熱くなってしまった。満足感は大きい……が、落語を観に来た客にいきなりこういうネタを持ってくるのはどうなんだろう、と思わなくもない。話術の高さは感じたが

仲入り。通路でぼんやり休憩していると、横で親子と思われる女学生と中年女性が歌舞伎の話を繰り広げていた。見たところ地味で社交性の無さそうな女学生に、共感の様な感情を抱く。ところで、今回の独演会に来ている客の多くは、女性客だった。落語界のプリンス、まだまだ女性を惹きつける力は衰えていないようだ。

仲入り後、緞帳が開くと再び垂れ幕に瀧川鯉斗の四文字が。今年、様々な落語界を鑑賞しに出掛けたが、同じ前座が二度も登場する落語会は初めてである。但し、今度は落語ではなく、覚え立ての南京玉すだれを披露。何が悲しくて下手な南京玉すだれを見なくてはならないのか、と思うも、失敗したときの焦りがなにやら面白かったので良しとする。ちなみに鯉斗さん、元暴走族の総長らしい。確か、名古屋出身と口にしていたが……結構な規模を率いていたのだろうか? どうでもいいけど。

鯉斗さんが引き下がると、再び小朝師匠の登場。酒に関するマクラを振ってから、古典落語『親子酒』へ。酒好きな息子が酔って失敗らないようにと、同じく酒好きな父親が一緒に断酒しようと誓いを立てるのだが、最終的に酒の誘惑に負けてしまう……という噺だ。これを小朝師匠は、下手にイジることなくストレートに演じ切った。酒をせがむ親父がだんだんと酔っ払っていく様を丁寧に演じたかと思うと、一方で、大胆不敵に乱暴に酔っ払って帰ってきた息子を演じてみせる。同じ酔っ払いなのに、まったく違った酔っ払いに描き分けてみせた。ここでようやく落語を観たという気分になった。お馴染みのサゲに突入し、大満足のまま終演……と思わせておいて、まだ終わらない。どうやら二本立てのようである。少し照明を落として、始まったのは『お菊の皿』だった。

『お菊の皿』は、“番町皿屋敷”でお馴染みのお菊の幽霊の噂を聞いた若い衆たちが、実際にお菊の姿を見に行くとこれがあまりの美人で、その後も幾度となく通い続ける……という、怪談を基調とした滑稽噺だ。幾度となく皿屋敷へと通い続ける若い衆たちはどんどん増えていき、気付けばお菊は皆の人気者に……という流れがあるのだが、小朝師匠はそこを大胆に誇張する。そんなお菊人気に目を付けた興行主が、お菊をアイドルに仕立て上げていく……という展開にしたのである。それでもまだ落語としての体裁を保ってはいたが、流石にお菊が『恋のバカンス』に乗せてダンスを披露するシーンには驚かされた。こうなると、もはや落語である必要性が無いのではないかという疑問も……とはいえ、音曲を使った落語もあるのだから、こういうネタもアリといえばアリなのかもしれない。実際、面白かった。だが、面白ければなんでもアリというのも違うような……ちなみに、会場に流れた『恋のバカンス』は、何故かW(ダブルユー)のバージョンだった。そういえば小朝師匠と加護ちゃん、何か噂があった記憶が……。

終演後、僕は満足感に満たされながら会場を後にした。だが、帰りの車の中で、「あれは本当に落語だったのだろうか?」という疑念がふつふつと胸の奥から湧いてきてしまった。エンターテインメント化された落語は、確かに楽しい。楽しいのだが、そこを追求し過ぎると、落語としての本分が見失われてしまう。今回の「春風亭小朝 独演会」は、落語会歴一年にも満たない僕に落語の存在意義を考えさせる、そんな公演だった。

帰路を走る車の中、流れていたのは桂歌丸による『竹の水仙』。雑味の無い真正面の落語が、純粋な笑いとなって僕の中で昇華されていった。
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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