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「あたご劇場」で映画を観た話。

高知県へと映画を観に行く。

「どうしてわざわざ高知まで映画を観に行くのか」「香川には映画館が無いのか」という疑問の声もあると思う。勿論、香川にも映画館はあるのだが……細かく説明すると面倒臭いので省略する。とにかく諸般の事情があって、某月某日、私は高知の映画館へと映画を観に出掛けた次第である。

さて、高知の映画館といっても、何処の映画館であるか即座に察する読者は少ないであろう。どうせ、大手の有名映画館、例えばワーナーや東宝シネマだと予想する人が多いのではないかと思う。では、発表しよう。その日、私が訪れた映画館の名は、“あたご劇場”である。……皆が何を思ったのか、私には手に取る様に分かる。「何処だよ?」と思ったのであろう。私も、初めてくだんの映画館について聞いたときに、そう思った。「何処だよ?」と。

“あたご劇場”は、高知市愛宕町にある映画館である。映画館といっても、その規模は大変に小さい。近年、映画館といえば、先に名を挙げた大手の映画館の様に、複数のスクリーンで複数の映画が上映されているのが当たり前となっているが、ここにはスクリーンが一つしかない。よって、上映される映画も、また一つだけである。それどころか、一定期間、ずっと同じ映画を流している。それで客が入るのか。採算は取れているのか。詳しいところは分からないが、とにかくそこで上映される映画を観なくてはならないのである。どうしても観なくてはならないというわけではないが、観に行くのである。それが、正解なのである。

高知までは自宅近郊から高速道路を一時間ばかり。過去に二度訪れているので(一度は観光、もう一度は桂文珍独演会)、道にもすっかり慣れている。高知インターを降りて、目の前に家電店のコジマが見える交差点を右に曲がり、それから真っ直ぐ進むと高知イオンが見えてくる。時計を確認すると、上映の予定時刻まで一時間半ばかり。まだ余裕があるので、フラッと立ち寄る。中のタワーレコードで三遊亭圓丈師匠のCDを購入。あと一枚で、圓丈師匠のCDは全て購入したことになる。さほど、ファンというわけでもないのだが。

高知イオンの前を通る道、これが国道44号線だ。ここを西に進むと、国道16号線と交差する場所に出る。これを右に曲がり、進むと大河ドラマにも出てきたという久万川が見えてくる。この上に架かる橋を通ると、そこが愛宕町だ。この辺りには詳しくないので、適当な有料駐車場に車を停める。40分100円で上限600円という価格設定がなかなかに良心的だ。ここから南にゆっくり歩いていくと、同設定の有料駐車場が幾つも目に入った。どうやら、この辺りの有料駐車場は、そういう設定で統一されているらしい。それらを横目に真っ直ぐ歩いていくと、左手にくだんの病院が見えてくる。病院のある交差点の、更に次の交差点を左に進むと、右手に「あたご劇場」の看板が。思っていたよりも、ずっと小さい。田舎の駄菓子屋を思わせる佇まいだが、正面から見ると、それは間違いなく映画館であった。近日、『宇宙人ポール』を上映するという。……なんだか意外なチョイスだ。

場所を確認したところで、改めて時刻を確認する。上映一時間前。まだまだ時間があるので、更に南下する。橋を渡り、高校の横を抜けると、賑やかな商店街へと出る。しばらく散策したい気分になったが、生憎時間がない。と、ここで、昼食を取っていなかったことに気が付いた。何か飲食店はないかとネットで調べてみると、近くに“製麺所 蔵木”というつけ麺屋があるというので、そこへ行ってみる。表の戸を開けると、正午をとっくに過ぎていたにも関わらず、店内は客で賑わっていた。つけ麺(大盛り)を注文し、食す。美味い。大食家の私としては、もう少しばかり量が欲しいところではあったが、まあ満足といった味であった。食後、時刻を見ると、上映15分前。慌てて、劇場へと引き戻す。

上映5分前に劇場へと到着。受付で前売り券をもぎってもらう。受付にいたのは、かなりの高齢とお見受けする老婆だ。もはや商売ではなく、趣味で映画館をやっているというような雰囲気を漂わせている。勿論、実際はどうだか知らないが。戸を開けると、数人の男女が立っている。いずれも中年といった様相だ。どうやらそこは待合所で、そこにる人たちは、私と同様に映画を観にやってきた観客らしい。シアターから音が漏れている。台詞がはっきりと聞こえてくるくらいの音漏れだ。勿論、一日に同じ映画を三度放映するところなので、これから観る映画の台詞である。はっきりいうと、ネタバレだ。それでホントにいいのかしらん。他の観客と同様に、待合所で時間を潰す。ふと足元を見ると、雑誌が入っているダンボールが。ご自由にお取り下さい、とある。よく見ると、それはキネマ旬報で、しかもかなり古いもののようだ。表紙にブルース・リーの写真があり、横に表記された年号は1970年台……これは価値があるのではないか? ご自由にお持ち帰りしてもいいのか? あれこれと考えていたら、先の映画が終了。シアターから複数の客が出てきたので、入れ替わる様に中へと入る。百人ばかり入れそうな客席があるので、後ろから四列目くらいの席を陣取る。一般の映画館よりは狭いのだろうが、入ってくる客は先程の待合所の複数名のみなので、空席ばかりだ。雰囲気はいいのに、なんとも惜しい。

後日上映される予定の映画の予告が複数流れ、目的の映画がゆっくりと始まった。

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『幕末太陽傳』は、江戸末期という動乱の時代を舞台とした、時代劇だ。主人公の佐平次は病の療養のために品川の遊郭へと仲間と繰り込み、そのまま居残り(いわば店の人質)してしまう。ところが、これがじっとしていない。こそこそと花魁たちや客の世話をするばかりか、店で起こった数々の揉め事を解決してしまい、気付けば店から欠かせない存在になってしまう。古い映画(1957年公開!)のデジタルリマスター版ということで、理解できない個所も多いのではないかと不安だったのだが、いざ観てみると、これがとにかく面白かった。『居残り佐平次』『品川心中』『三枚起請』などの古典落語をモチーフとしていたことも、理解しやすかった要因かもしれない。

役者も素晴らしい。フランキー堺という人物の演技は本作が初見だったのだが、実に華があって魅力的であった。単なる三枚目の様でいて、二枚目の雰囲気もある。素晴らしいの一言だ。若き日の石原裕次郎、これも目を惹いた。演技の点では頼りなかったが、華という意味では圧倒的。華といえば、若旦那を演じた梅野泰靖、若い衆を演じた岡田真澄も凄かった。『品川心中』の主役で間抜けな貸本屋の金造を演じているのは、小沢昭一。今の顔つきからは考えられない軽妙さだ。やり手のおくまを演じるのは菅井きん。この頃から既に老人のオーラを放っている。それぞれの魅力が如何なく発揮されていて、私は久しぶりに邦画の迫力というものを真正面から食らった気がした。ノックアウト、である。

鑑賞後、素晴らしい映画を観て、清々しい気持ちになっていた私は、この気持ちが損なわれないうちに帰宅しようと、すぐさま有料駐車場へと駆け込んだ。指示通りに機械を操作すると、500円と表示される。小銭を持ち合わせていなかったので、1,000円を投入する。カラーンとお釣り口から聞こえてくる。手を入れると、100円。……100円? 400円足りないではないか。改めてお釣り口を確認するが、何も入っていない。そりゃそうだ。カラーンと一枚だけ落ちた音しか聞こえなかった。慌てて色々なボタンを押してみるが、何も反応しない。車を確認すると、確かに盗難防止板は下りている。でも、400円がない。足りない。ぼったくりか。このまま放置しておくと、またあの板は上がってくるのではないか。それじゃあなおのことぼったくりだ。ええい、しょうがない……と、車を出してしまう。清々しい気持ちが一転、400円のぼったくり。哀しい。たかが400円で落ち込んでいる自分のみみっちさが、とにかく哀しい。しかし、あの映画館はしみじみと良かった。また機会があれば、行きたいものである。

以下、『居残り佐平次』の音源。
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菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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