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いつもここから、えぐる。

いつもここから ~BEST SOLO LIVE~ [DVD]いつもここから ~BEST SOLO LIVE~ [DVD]
(2003/06/18)
いつもここから

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山田一成と菊地秀規によるお笑いコンビ、いつもここからが結成されたのは1996年7月のこと。バンドのメンバー募集で出会った二人によって結成された。お笑いコンビとしては、かなり異色の結成理由といえるだろう。異色といえば、このコンビ名もかなりヘンテコだ。「いつもここから」。初心忘るべからずということなんだろうが、それにしたって不思議な名前。まあ、世の中には「チーモンチョーチュウ」とか「オジンオズボーン」とか「阿曽山大噴火」とか、ヘンテコな名前のお笑い芸人が数多く存在しているので、注目しようとしなければ、さほど気になるものでもないのかもしれない。

いつもここからといえば、なんといっても『悲しいとき』だろう。黒いスーツを着た二人のうち、まず山田がこぶしを前に突き出して「悲しいとき~!」と叫び、スケッチブックを手にした菊地が「悲しいとき~!」と続けながら、悲しいときを描いたイラストを見せるという、なんとも不可思議な芸風だ。どっからどう見ても漫才ではないけれど、コントというのも少し違う。『悲しいとき』としか表現できないその手法は、多くの観客・視聴者に衝撃を与えていた。無論、衝撃を与えたのは、手法だけではない。内容も素晴らしかった。「悲しいとき~!」と叫びながら二人が繰り広げるのは、世の中にある悲しい風景の数々のプレゼンテーションだ。自らが悲しいと思える状況を観客に訴えかけ、それに共感を覚えてもらうことにより、笑いを生み出していく。いわゆる“あるあるネタ”と呼ばれるスタイルだ。しかし、彼らのあるあるネタは、それまでのあるあるネタとは一味違っていた。

「悲しいときー!ファミリーレストランでワインを飲んでいる人を見たときー!」というネタがある。……考えてもみれば、別に悲しいというほどの光景ではないのである。ワインはちゃんとファミレスのメニューに入っているのだし、そもそもメニューに入っているということは、それを注文するニーズを店側が意識しているからだ。そこには何の悲しさも存在しない。それなのに、このネタを見た観客たちはそれを悲しい光景として認識し、笑う。何故か。思うに、我々は「ファミレスのワイン」なるものを、漠然と卑下しているのではないだろうか。ワインは決して身近な飲み物ではない。一昔前に比べれば、幾らかは身近になったかもしれないが、それでもビールや缶チューハイ、日本酒や焼酎の方が一般的である。そこには、ワインが高尚な飲み物である、特別な飲み物であるという、固定概念が関係しているように思う……あくまで推論だが。さて、一方のファミレスはというと、これは実に庶民的な施設であるといえる。手軽で気軽な値段は客層を広げ、お子様からお年寄りまで少しの気兼ねもなく入ることの出来る飲食店、それがファミレスだ。つまり「ファミレスのワイン」は、庶民的な空間に配置された高級感のある飲み物という、非常に場違いな存在なのである。そんな場違いな存在を口に含んでいる人は、それもまた場違い。その場違いに気付いていない、「ファミリーレストランでワインを飲んでいる人」。それは確かに、悲しみを帯びている。……わざわざ長文で説明することじゃないか?

いつもここからが世間から注目されるようになったのは、この『悲しいとき』がCMで使われたことがきっかけだった。ただ、この当時、彼らが注目されていたのはネタの内容ではなく、菊地が描く悲しいイラスト。その独特の視点が注目されるようになるのは、それからもう数年経って、彼らが「エンタの神様」などの番組で『暴走族』を披露するようになってからのことである。

『暴走族』は、二人が暴走族の衣装に身を包み、様々な状況に対してゲキを飛ばすというスタイルのネタだ。『悲しいとき』と同様にあるあるネタとしての趣が強いが、もうイラストは必要ない。また、状況を受け止める側の視点を見せた『悲しいとき』とは違い、『暴走族』は状況に対して第三者の視点からツッコミを入れるという攻撃性の強いネタでもあった。このおかげで、変にアーティストとして捉えられてしまった彼らに対するイメージは、少なからず払拭された。この頃のネタで、とてつもなく印象に残っているものがある。DVDを引っ張り出すのは面倒なので、記憶だけで書いてみよう。

「タコさんウィンナー見て可愛いとかいってんじゃねーぞ、ばかやろこのやろめー!」
「こーにゃーろーめ!ブタ殺されてんだぞ、ばかやろこのやろめー!」
「タコさんウィンナー見て可愛いとかいってんじゃねーぞ、ばかやろこのやろめー!」
「ブヒー!ブヒー!って殺されたんだぞ、ばかやろこのやろめー!」


“あるあるネタの帝王”として、常に独自の視点から日常の風景を切り取ってきたいつもここから。ゼロ年代のお笑いブーム黎明期から早々に注目を集め、更に「エンタの神様」などの番組でも取り上げられるなどブームに少なからず乗ることは出来たものの、近年は「ピタゴラスイッチ」でしか見かけなくなってしまった。それも仕方がないのかもしれない。いつもここからが生み出すネタは常に素晴らしいクオリティを保ってはいたものの、テレビで売れるには必要不可欠ともいえるフリートークなどの才能は、あまり彼らには見受けられなかった。とはいえ、彼らの様な逸材が、今や過去の存在としてただ懐かしがられるだけの扱いを受けていることは、非常に残念である。

最後に、佐藤雅彦による山田一成評ともいえる一文を抜粋して、この文章を終わりにする。

山田さんの眼は、僕たちが「意識下」という、自分なのに自分でも気づかない層の中でも、さらに一番下にある底層に働きかける。その層のことは、表面上の自分は気づいていないのだが、実は本当の自分は気づいているのだ。

『やまだ眼』(佐藤雅彦・山田一成)より

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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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