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五街道雲助『お直し』に衝撃を受ける。

五街道雲助4 朝日名人会ライヴシリーズ64 替り目/お直し五街道雲助4 朝日名人会ライヴシリーズ64 替り目/お直し
(2010/08/18)
五街道雲助

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五街道雲助『お直し』を聴く。

『お直し』とは、ある夫婦の姿を描いた古典落語の一席だ。トウが立って売れなくなってしまった女郎と、そんな彼女のことをなぐさめていた若い衆が、当然のように深い仲となる。いわば“商品”とそれを扱う“店員”がそういう関係になるのは、いうまでもなく御法度だ。そのことはいずれ店の主人に知られることとなる。しかし、その仲を尊重した主人は、二人を夫婦にし、店の働き手として通わせ始める。最初は二人とも懸命に働いたが、お金が貯まるにつれて、だんだんと夫の方が博打に手を出し始める。家からどんどん金を持って行く。お金が無くなると、今度は家財道具を持ち出し、換金して使ってしまう。やがて夫婦はどちらも暇を出され……つまり店をクビになる。と、ここまでがプロローグだ。ここから先が本題である。

店をクビになった夫婦は、やむなく蹴転という仕事に着手する。蹴転とは女郎屋の一種で、二畳ほどの部屋に客を入れていわゆる遊びをするという、最下層の商売だ。この商売には決まりがあり、客を入れるたび線香を使って時間を計り、既定の時間が過ぎるたびに客に「お直し」(時間延長)するかどうかを尋ねることになっている。亭主が呼び込みをし、女房が女郎をする。ここに夫婦の蹴転が誕生したわけだ。ろくでもない女ばかりが揃っている蹴転の中で、まがりなりにもちゃんとした廓で女郎をやっていただけのことはあって、店を開くとすぐに客を捕まえた。あるコトないコトを口にして、とにかく客のことを持ち上げる女房。そんな女房の姿を見て、嫉妬に駆られる亭主。思わず二人のジャマをしようと、線香の火も燃え尽きぬうちに「お直し!」「お直しだよ!」「お直ししてもらいな!」。ここが、この『お直し』の最大の見せ場だ。やがて客は帰り、夫婦は再び二人きりに……。

実をいうと、私はこの『お直し』というネタが、あまり好きではなかった。理由は二つある。一つは、あまりにも暗いところ。一度はまともな仕事に就けた夫婦が、自業自得とはいえ、女房を女郎にした商売を始めなくちゃならないというのは、些か陰鬱過ぎる。もう一つは、亭主のどうしようもなさ。自分で自分の身を落とした揚句、女房を女郎として店に出そうという了見が、もうどうしようもない。女房も女房で、どうしてこんな亭主についていってしまうのか。身体にフェミニストなフランス国民の血が流れている私としては(注:流れてません)、どうしてもそこんとこが引っ掛かってしょうがなかったのである。

ところが、雲助師匠の『お直し』を聴いて、私の『お直し』に対して抱いていた不快感は消し飛んでしまった。雲助師匠は『お直し』というネタを従来通りに演じてみせた後、夫婦が愛を確かめ合うくだりを印象的に演じ、そして最後のオチとなる一言を冷たく言い放つのである。

『お直し』は“どん底での夫婦愛”を描いた落語として知られている。事実、二人はどん底にある。しかし、先にも書いた様に、それは亭主が自ら落っこちてしまったどん底だ。客観的に見れば、この亭主がどうしようもないのははっきりしている。なのに、女房は亭主のことを愛しているものだから、仕方なく蹴転へと身を落とす。ダメ亭主と、そんなダメ亭主を愛して止まないダメ女房。そんな二人がどんなに愛を語ったところで、第三者にしてみれば、女郎と客のやり取りのように上っ面だけのように見える……などという意図をもって演じたのかどうかは知らないが、私はそういう風に受け取った。もしかしたら、単なる勘違いなのかもしれない。だが、この陰鬱な夫婦愛を描いた物語に、ほんのちょっとでも水を差せることがが分かっただけでも、ひとつの収穫だ。

ちなみに、五街道雲助師匠は、『お直し』で芸術祭賞を受賞した“五代目古今亭志ん生”の孫弟子である。脈々と受け継がれる『お直し』の系譜、一度体感してみるべし。同時収録されている『替り目』も良いぞ。
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菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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