東京03といえば、コント職人。そういうイメージが強いのではないかと思う。事実、彼らはテレビタレントとしては、さほど活躍を見せていない。しかし、彼らの新作コントを堪能できる単独公演では毎度全国ツアーを展開し、聞いたところによると“黒字”を出しているらしい。そういう背景を考慮すると、彼らはやっぱりコント職人である。ただ、彼らのネタには、いわゆるコント職人にありがちな「分かるヤツにだけ分かればいい」という、閉鎖的な傾向が見られない。人間関係の歪みから生じるズレを広げていく東京03のコントは、前知識を必要とせず、純然たるすっぴん状態で存分に楽しめる、まさしくエンターテインメントとしての様相を呈しているのである。
ただ、東京03の本質は、コントのみに非ず。そのことは、彼らの単独公演を一度でも観れば分かることだ。例えば、コントとコントの間に流されている、いわゆる“幕間映像”の下らなさ! 町中に隠れている豊本の姿を探させたり、角田がピエロの格好をしてカップルを見守ったり、ヒーローの格好をしてグッズ販売の宣伝をしたり……とにかく、バカバカしい。綿密に考え込まれたシチュエーション、適度に過剰な味付けが施されたキャラクター、これらが絡み合うことによって誕生する極上のコント……とは、また違った面白さがここにある。そして、気付かされる。「あれ? 東京03って、実はバカなんじゃない?」と。そう、
彼らの本質は、計算されたコントの根っこにひっそりを埋まっている、限りないバカバカしさなのである。
そのバカバカしさは、単独公演の度に創作される主題歌・エンディングテーマでも確認することが出来る。「マジ歌」でもお馴染みの角田晃広が熱唱するそれらの曲は、どっかで聴いたことがあるような気がしないでもない、でも何なのか思い出せない、パロディソング……もとい、パクリソングだ。その聞き覚えのあるメロディに載せて歌われる歌詞が、もうとにかくバカバカしい。ある単独では、MJの名曲に幽霊退治映画のテーマソングを掛け合わせて、沢山の選択肢から一つを選び出せずにグズグズしている男の曲が歌われていた。豪華なんだか、なんなんだか。
それなのに、第13回単独公演『図星中の図星』で披露されたエンディングテーマを聴いて、
私はうっかり泣いてしまった。笑い過ぎて泣いてしまったというのなら容易に理解もしていただけるだろうが、これがいわゆるガチ泣きである。なんの冗談だと思われるかもしれないが、考えてもみれば納得のいく話なのだ。東京03の単独公演で披露されているテーマソングの歌詞は、その多くが男の矮小な一面を歌ったものである。女にモテたい、チヤホヤされたい、周りの皆にホメられたい……それはいわば、
人間の欲望そのものだ。それを微塵も隠そうとせずに、ただただ真っ直ぐにぶつけてくる。だから、彼らの単独公演のテーマソングは、骨太に笑える。ところが、『図星中の図星』のエンディングテーマにおける、その
包み隠さない真っ直ぐな欲望まみれの気持ちが、うっかり私の心に突き刺さってしまったのである。
現在、東京03は第14回単独公演『後手中の後手』で、全国を回る準備をしている。そして、第13回単独公演『図星中の図星』の模様を収録したDVDが、間も無くリリースされる予定である。その宣伝の意味で、私の心に突き刺さったエンディングテーマの歌詞の前半部分だけを、ここに掲載する所存である。もし、この一部の歌詞に、何か引っ掛かるモノを感じたのであれば、是非とも、その全容をDVDで確認して頂きたく思う。曲名は、
「言葉の奥に潜むもの」。
人が人を愛おしいと思う気持ち それさえあれば何もいらない
と歌う僕を「格好つけている」と言わないで
人が人を平等に愛し合えれば 争いごとなんて起きはしない
と歌う僕を「ハア?何それ」って言わないで
それを言ったら 身動き一つ取れないし
全て怖くて どんな言葉も歌えない
全て言葉の奥に潜むものは 自分を彩る 武器なの鎧なの
図星の図星を言われたら それを纏うことができない
例え それに気づいたとしても 黙って見逃しておくれよ
図星の図星をつかなけりゃ 世界が一つになれるさ
言われた僕も あなたの図星を指摘して
とんだ泥仕合 悲しい末路のエンディング
全て言葉の奥に潜むものは 見栄という名の 汚れた衣なの
図星の図星を言う事は 裸で生きろとおっしゃるの?
軽い気持ちでバラさないでくれよ 責任取る気がないのなら
図星の図星に立ち入るな よく考えたら分かるでしょう?
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