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「落語 昭和の名人 決定版 三代目・四代目春風亭柳好」

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(2009/06/09)
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2011年12月末、ビートたけしが『野ざらし』を披露して話題となった。『野ざらし』とは古典落語の一席で、隣家に住む御隠居の元に供養した野ざらしの美しい幽霊が出た話を聞いた八五郎が、御隠居がやったように、釣り竿を持って野ざらしを探しに行く……という話である。古典落語の中でも比較的メジャーなネタで、演じ手も少なくない。その『野ざらし』を、立川談志が亡くなった直後に、ビートたけしが演じるという図。それだけでもお腹いっぱいだが、このたけしの『野ざらし』自体、なかなかの出来であった。ただ、たけしの『野ざらし』は談志の影響を受けたものではない。番組の中で、たけしはこう語った。「談志さんがさあ、柳好の『野ざらし』を知ってるか?って言うんだよ」。

三代目春風亭柳好。通称“野ざらしの柳好”。その評判は素晴らしく、高座に上がると観客から「野ざらし!」との声がかけられたという。1888年生まれ、つまりは明治の生まれだ。本作に収録されている音源も、1954年収録と非常に古い。と、ここで平成の私が登場。以前にも何度か書いてきたが、私は昭和の名人よりも現在進行形の落語家を評価している人間である。どんなに名人と呼ばれている人でも、それはあくまでもその時代の名人であって、時代を超越するほどの名人かどうかは分からない。それを盲目的に有難がるのは、落語というエンターテインメントに対して失礼に当たるのではないかしらん……とまでは思わないが、それに似た感情は抱いていた。

ところが、この三代目柳好の『野ざらし』……はっきり言って惚れてしまった。とにかく明るい、とにかく楽しい。多少の古臭さは否めないが、それでも余りあるクオリティだ。声もいい。当時66歳ということだが、とてもそうは聴こえない。実に若々しい声をしている。以前、立川志らくが「落語は音楽」というようなことを口にしていたと思うが、柳好の『野ざらし』はまさしく音楽だ。過去、色々な『野ざらし』の音源を耳にしてきたが、このネタの本質をようやく教えてもらったような気分である。最大の聞きどころは、一般的にはやはり八五郎が向島で釣りをしながら妄想する場面だろうか。ただ、個人的には、隣家の御隠居と話をするくだりも捨てがたい。鐘の音のくだりへのこだわりが、なんだかとってもたまらない……。

二席目の『青菜』は、旦那の粋なはからいに感銘を受けた植木職人の熊さんが、それを真似ようとして失敗する一抹を描いた一席。思えば、『野ざらし』と構成は似ている。が、『野ざらし』に見えるような突き抜けた明るさが無いため、やや弱い印象を受ける。が、ところどころに、現在の口演ではあまり聞けないようなくすぐりがあって、大変に興味深い。柳好のオリジナルなんだろうか。

続く四代目春風亭柳好はというと、こちらは三代目とは違って非常にとぼけた口調をしている。三代目が天高く飛び上がるトンビだとしたら、四代目はヘラヘラとウロウロ歩き回るアホウドリといったところか。……まあ、アホウドリがそういう鳥なのかどうかは知らないが、とにかくマがヌケた声をしている。冷静に聞いてみると、なかなか低くて渋い声をしているのだが……“落語のヒーロー”こと与太郎をやらせると、これがとにかくウマい。巧みに能天気なバカを演出する。しかし、そのバカさの中に、ほのかに全てを飲みこんでいるかのような余裕が見える。実に絶妙だ。

ネタは『牛ほめ』『付き馬』。牛に馬とはなにやら面白いが、内容はまったく違う。『牛ほめ』は与太郎が叔父の家と牛を褒めに行くという、非常にシンプルなネタ。与太郎の発言がいちいち面白い。中でも「佐兵衛のババアは……」のくだりは最高。意味が分からなくても、ついつい察して笑ってしまう。即座に怒鳴り返す佐兵衛の反応も含め、たまらない。一方の『付き馬』は、吉原の遊郭にやってきた男が付き馬を惑わす様子を描いた、大ネタといわれる一席。“付き馬”とは遊郭の若い衆のことで、銭を持たない客に付いていく状態を意味する。与太郎のようなぬぼーっとした面白さは無いが、味わい深い口演だと思う。


・収録音源
三代目『野ざらし』(昭和29年7月25日・TBSラジオ「落語鑑賞」にて放送/14分41秒)
三代目『青菜』(昭和30年7月19日・TBSラジオ「お好み寄席」にて放送/13分57秒)
四代目『牛ほめ』(平成元年2月19日・TBSラジオ「ラジオ寄席」にて放送/19分02秒)
四代目『付き馬』(昭和59年11月3日・TBSラジオ「ビアホール名人会」にて放送/29分10秒)
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菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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