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橘家圓蔵『堀の内』に見る、冷やかな目

CD落語特選 八代目 橘家圓蔵CD落語特選 八代目 橘家圓蔵
(1986/05/01)
不明

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八代目橘家圓蔵。知る人ぞ知る、“落語四天王”最後の生き残りである。落語四天王というのは、戦後の落語界を牽引した四人の在東京の若手落語家のことで、圓蔵以外には、三代目古今亭志ん朝、七代目立川談志、五代目三遊亭圓楽が当てはめられている。こうして名前を並べてみると、実に錚々たる面子だ。

しかし、この三人に比べて、圓蔵の名前はあまりにも知られていない。彼がまだ月の家圓鏡を名乗っていた頃は、テレビタレントとして物凄い人気を博していたと聞いているが、それにしても、現在の知名度の低さはどうにかならんもんかと思わなくもない。というのも、彼が勢いづいていた頃の落語音源は、当時から数十年が経過した今になって聴いても、まったく遜色無く楽しめるからだ。このとてつもない面白さを「知る人ぞ知る……」にしてしまうのは、あまりにも勿体無い。勿体無いから記録しておこう……ということで、今回の記事に至った次第である。

圓蔵の凄さを分かりやすく抽出してみよう。『堀の内』という落語の1シーンより。うっかりものの亭主が慌てて家に帰ってきて、自らに起こった異常を女房に報告しようとする。

亭主「おっかあ!おっかあ、おっかあ!おっかあ、おっかあ!」
女房「カラスじゃあるまいし、おっかあおっかあってうるさいよ!どしたの?」
亭主「弱っちゃったよぉ、速く注射呼んで医者打ってくれよ!」
女房「あべこべだよ!バカだねぇ、この人は。笑ってもらおうと思って、わざと間違えて!」


この、「笑ってもらおうと思って、わざと間違えて!」というセリフが凄い。『堀の内』という落語は、うっかりもの(粗忽者)の亭主がその粗忽を治すために神信心、堀の内のお祖師さまへお参りに行く道中を描いた話だ。つまり、亭主が粗忽であることは、確固たる大前提として在ることになる。よって、先の「注射呼んで医者打ってくれよ!」という台詞も、その粗忽ぶりを演出している言葉に過ぎない。ところが、圓蔵師匠は“亭主の粗忽”という前提を、続く女房の台詞でいきなり破壊するのである。ここが凄い。

しかも、ただ破壊するのではない。ここで女房が口にする「笑ってもらおうと思って」という言葉は、粗忽な亭主に対するツッコミとしてだけではなく、演じ手である落語家の心情を突っ込んだ言葉としても機能しているのである。いわば、落語家である自らの意図を、登場人物の言葉を借りて言及しているのである。そこに見えるのは、単なるバカバカしさでは片付けられない、落語家である自らに対する冷めた視線である。客観的に捉えていなければ、こんな言葉はなかなか吐けない。それなのに、落語としては不思議と成立してしまっているところに、古典落語の底深さを感じたりなんかしてみたり……。

……もうちょっと書こうと思ったけど、なんだか満足してしまったので、今回はこの辺で。
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菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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