スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

人生論を読む前に談志の『やかん』を聴いてみよ

家元自薦ベスト やかん/天災 立川談志公式追悼盤(2枚組CD/談志役場・キントトレコード)家元自薦ベスト やかん/天災 立川談志公式追悼盤(2枚組CD/談志役場・キントトレコード)
(2011)
立川談志

商品詳細を見る
※キントトレコード公式サイト

昨年11月にうっかり亡くなっちゃった立川談志の公式追悼盤である。亡くなって一ヶ月後にリリースというのが、どうも怪しい。発売元が毒でも仕込んだんじゃなかろうか……というのは、些か辛めのジョーク。ただ、少し前から“談志 最後の三部作”なんてのを準備していたところを見ると、家元の中では死へのカウントダウンが始まっていたのだろう。そういえば、もうそろそろ自分が死ぬんじゃないかって時に、仲間を集めて「今から死ぬぞッ」みたいなことをやって失敗した落語家がいたっけ。あれが理想だったのかもしれない。失敗したということも含めて。まあ、勝手な想像だけどね。

収録されている落語は『やかん』『天災』。生前の家元が「残しておきたい」と言ったという『やかん』と、「これも入れよう」と言ったという『天災』である。生前、当人がこれを残したいと口にしたから、“家元自薦ベスト”と銘打たれている次第だ。なので、家元の訃報を受けて、スタコラサーッと本作に手を出した人も少なくないだろう。その人たちが、本作を聴いてみて、どういう感想を抱いたのか聞いてみたい。きっと中には、あまり落語慣れしていない人もいたことだろう。だが、テレビのバラエティ番組のように、大衆に向けられた芸と比べて、家元の落語はかなり刺激が強い。それはマクラの内容だけでも十二分に衝撃的(「拉致太り」のくだりはとてつもない!)だが、なんといっても本編が凄い。はっきり言ってしまうと、『やかん』だ。『天災』はまだ私の理解の範疇に無い。だが、『やかん』の凄さは分かった。いや、ただ単に、私の波長にピタッと適合しただけの話なのかもしれないのだが。

『やかん』とは、八五郎がアレコレと物を尋ね、御隠居がそれに答えていくという、ただそれだけの落語である。演目となっている『やかん』は、後半でやかんがやかんと呼ばれるようになった所以を説明するところからきているが、家元の『やかん』にはそのくだりがない。なかったと思う。なかったんじゃないかなア……と、なんとも心許ない書き方をしているのは、ここまで記憶のみで書いているためである。まあ、なんだ。詳しいところは、実際に確認してください。談志の『やかん』はオリジナリティが強くて、実は大幅に直してある。直してあるという表現が正しいのかどうかは、ちょっと分からない。まあ、とにかく、かなりの手を加えている。だから後で、いわゆるオーソドックスな『やかん』の口演を聴いて、ビックリした。こんなに違うのか、と。で、改めて、家元の『やかん』の凄さを思い知った。うっかり、家元の『やかん』だけで構成された本まで買っちゃった。うっかり買ったもんだから、まだ読んでない。いつ読み終わるかねえ。

さて。ここまで「家元の『やかん』は凄い!」と書いてきたが、じゃあ何が凄いのかということになる。『やかん』の何が凄いか。家元の『やかん』は、とにかく常識を引っ繰り返してくる。世間ではこういうもんだと決められていることを、ぐるっと半回転してしまう。こういうネタは、常識を信じ切っている様な人間には有効だ。逆にいえば、常識の範疇にない人には向いてない。一流の芸術家といわれている人が家元の落語を聴くと「当たり前ジャン」と答えた……なんて話は聞いたことがない。で、頭の硬いことで知られる私、見事に『やかん』にハマってしまった。こちらが思ってもいないような発想がバンバン飛び出してくる。それでいて、時にド直球な至言が飛んでくるから、あながちバカにできない。

「学問ってのはなんでするの?」
「貧乏人のヒマつぶしだよ!」
「そうですか?」
「そう!」
「努力ってのは?」
「努力? バカに与えた夢だ!」


初めてこのやり取りを聴いたときは、なかなかの衝撃を受けたネ。……その一方で、こういうのもあったりする。

「若者には前途がある!」
「ない!」
「……ない?」
「あるもんか、あんなもの! 時間があるだけの話でもって、前途なんて何もないよ。あんなものは、アメリカがとかスパゲティだとかハンバーグだとか、あんなものは、文明的残飯食ってんだ、長生きなんかするわけがねえじゃねえか!」
「証拠がありますか?」
「あるよ! 若者で長生きしてるヤツが何処にいる、このヤロー!」


こういうやり取りに刺激を受けたなら、聴いてみてもいいかもしれない。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

検索フォーム
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。