榎本俊二『思ってたよりフツーですね』、最終巻を読む。『思ってたよりフツーですね』は、ギャグ漫画家として知ってる人には知られている榎本俊二が、如何にして現在の地位を手に入れたのかを虚実混ぜこせにしてお届けするエッセイ漫画である。
徹底的にドライな視点で描かれる現実パートと深夜明けのドーパミン全開脳味噌で描いているとしか思えないギャグパートのバランスが絶妙で、キワモノ揃いの榎本俊二作品においてもかなりの傑作であると思っていたのだが、今回で最終巻である。いと寂し。担当編集も編集長も部署を異動になってしまったらしいが、どうにかして復活させてもらいたいモノである。
そんな大好きな『思ってたよりフツーですね』最終巻は、相変わらずのバカバカしさ。雑誌デビューが決まった榎本青年のドラマを描いていたかと思ったら、次の回では現在の榎本がいきなり山奥の温泉地でご近所さんと親睦を深め始める。かと思えば、吉田戦車とイクメントークをしたり、スペースシャトルが飛ばなくなったことでピンチを迎えたり、エッセイ漫画なのに挿入歌を強引に入れようとして編集各位を(著作権的な意味で)ヒヤヒヤさせたり、まったく意味が分からない混沌っぷり。最終巻であるが故の寂しさは拭い切れなかったが、相変わらずのバカバカしさに安心感を覚えた次第である。
……ところが、そんな最終巻のバカバカしさに、残念なことに
水を差すエピソードも掲載されていたのだから、落ち着かない。せっかくの最終巻、待ち望んでいない大事な大事な最終巻、その大切なページをイヤーなエピソードで埋められてしまっているのである。ああ、ヤダヤダ。……などと書くと、作者である榎本俊二に対するクレームのように聞こえるかもしれないが、そうではない。というのも、これを描かざるを得なかった榎本の気持ちも理解できるからだ。もとい、これはネタにせざるを得ない! ネタにしないとやりきれない!
その、大事な大事な最終巻に水を差しているエピソードは、第41話から第43話にかけて掲載されている、あるトラブルに関する話である。そのトラブルとは、ちょっと前に問題となった
「原稿紛失問題」だ! ここで詳しくまとめると本の売り上げに影響を与えかねないので書かないが、まあ、とにかく酷い。原稿を失くしたことに対する罪悪感はおろか、まったく反省していない! 漫画を専門に取り扱っていない雑誌だったとはいえ、読んでいるこちらも口がアングリ……。本件について、榎本氏は次の様にまとめている。
榎本「今回のことは大いなる教訓として後世に語り継ごうと決意した次第であります」
それ、多分
唐沢なをきに任せた方がいいヤツ!
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