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タレントと落語家。

タレントの山崎邦正が、NHK新人演芸大賞・落語部門に出場するらしい。山崎は落語家としても活動しており、これにも落語家名である“月亭方正”として出場するのではないかと思われる(※月亭八方門下。「ボインは~♪」の歌で知られる月亭可朝の孫弟子、人間国宝の桂米朝のひ孫弟子にあたる)。つい先日、そのことについてプロの落語家がTwitterでボヤいていた。要約すると、「新人演芸大賞の応募資格は落語家を職業とする人のみに与えられているが、横暴資格もあるのだろう」という内容である。ボヤくというよりは茶化したというべきかもしれない。

こういった話は、落語に限らない。例えば、M-1グランプリに普段はコントを演じているコンビが出場する、或いは、普段はピン芸人として活動している二人が即席コンビを結成する、などのことに対して批判が噴出することも多い。私自身も、日本一のピン芸を決定するR-1ぐらんぷりに、普段はコンビで活動している芸人の片割れが出場して、あまつさえ優勝してしまう事態に批判的な態度を取っている(これは出場している芸人に対する批判というよりも、大会陣営の判断に対する意味合いが強いのだが……)。なので、そういうことを言いたくなる感情は理解できる。そこにはきっと、嫉妬や苛立ち、または不条理などの複雑な感情が入り乱れているのだろう。

この一件について知ったとき、私が最初に思い出したのは『シャレのち曇り』のことだった。

シャレのち曇り (ランダムハウス講談社文庫 た)シャレのち曇り (ランダムハウス講談社文庫 た)
(2008/07/10)
立川 談四楼

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『シャレのち曇り』は、著者の立川談四楼が立川談志に入門し、師が落語協会を脱退して立川流を旗揚げするまでの経緯を、等身大の視点をもって虚実を交えて書いた小説だ。立川談志を書いた書籍といえば、近年は立川談春による『赤めだか』が印象的だが、本書も同様のスタンスを取ってはいるものの、むしろ若手落語家としての著者の複雑な感情の変化を全面に押し出した青春小説のような一冊になっている。私が思い出したのは、この『シャレのち曇り』のとあるシーンだった。

立川流には、「Aコース」「Bコース」「Cコース」の三つのコースが存在する。「Aコース」は、前座修行から始めた弟子たちのこと。「Bコース」は通称“芸能コース”といって、既に各界で結果を残している弟子たちのこと。立川錦之助(ビートたけし)、立川藤志楼(高田文夫)、立川談遊(山本晋也)らが属している。「Cコース」は一般人のコース。詳しくは分からないが、恐らくちょっとした遊びの様なものなんだろう。『シャレのち曇り』には、「Aコース」に属する談四楼の「Bコース」に対する生々しい苛立ちが、ストレートに描かれている。

【略】大きな劇場で催される立川流落語会には、談志に会う為と、Bコースがどんな芸をやるのかを見に、どれどれと顔を出すのである。
 着物の着方、帯の締め方に始まり、種々の高座の作法と落語に関するテクニックを較べ、すべてにおいてオレの方が上だと確認する。そして次に観客の反応を見て、なんなんだこのウケ方は、と驚愕するのである。
 ははあ成程、客はテレビや雑誌で見慣れた彼らに親近感を抱き、それで安心して笑うのだなと思う。その線で自分を納得させようと努める。同時に、いや違う、とも思う。直感である。いずれも当代のトップをゆく売れっ子達だ。ナニカを持たずして売れっ子になれる道理がない、何かある。センスか、テンポかスピードか。はたまた売れている自信か斬り口か……。
 ドカンとウケて、またドカンと聞こえてくる。他愛のない材料の中に現代感覚が生きている、ということが辛うじてわかる。話術が拙く、ネタがこなれてないともわかる。しかしウケている。さきほど小刻みであった身体の震えが大きくなっている。怒りと怖れであると気づく。


山崎を茶化したその落語家の中にも、これに似た感情が渦巻いていたのではないだろうか。そう思うと、同情せずにはいられない。と、同時に、それを公にこぼしたところで、だからどうなるのだという気持ちにもなる。彼はまだ、世間に知られた存在ではない。「○○の弟子」といえば分かってもらえるだろうが、師匠の名前を出さなければ、名無しのゴンベエといわれてもしょうがない状態である。そんな段階で、こんな下らないグチを公に向けてこぼした芸人として知られることは、彼自身に決して良い影響を及ぼさないだろう。

最後に、談四楼が談志に受けたという説教を抜粋して、本文を終わりにしたい。

「【略】おまえ、いつか酔っ払って俺にグチったことがあったな。小朝や凡太楼、それにここにいるぜん馬に抜かれて悔しいってったな。おまえはホントは悔しくねんだよ。ポーズなんだ、悔しいフリをしてるだけなんだよ。それでもおまえは悔しいって言うだろうが、少なくともこの五年、俺にはそう見えなかった。態度、行動でちゃんと示せ。悔しかったら自分の力で売れて見せろ。テレビならテレビとターゲットを絞れ。事務所を当てにしねえで自分の力で売れてみろ。番組なんぞ選ぶんじゃねえぞ、とにかく獲ってこい番組を。人間が作った機構、組織なんだ、人間が壊せねえはずがねえ。社会システムに斬り込んでみろ、そして見事にぶっ壊してこい。こうと思ったらためらうな、囃されたら踊れだ。芸のこともそうだが、今回、芸のこと言ってんじゃねえぞ、姿勢の問題だ。わかるな。ちったあシャカリキにやってみろ」

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No title

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

すごくいい記事ですね。
ただ今回その落語家さんは二世タレントでもあるので、方正さんのことをちょっと別の意味で引っかかる部分もあったんじゃないかと。

あと別記事の話になりますが、今回のTHE MANZAIの決勝は12組ですよ。

No title

うーん、その辺りは確かにちょっとややこしいですよね<二世タレント
まあ、その真意は当人にしか分からないので…っていうと、この記事の存在価値が!

THE MANZAIの件、修正させていただきました。あざす。
…以前、別の方にも指摘されていたんですけどね。迂闊迂闊で。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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