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落語の視点で読む『ドラえもん』 ~長短~

『ドラえもん』に【のろのろ、じたばた】というエピソードがある。

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どら焼きを使って、ドラえもんに宿題を手伝ってもらおうとするのび太。しかし、あっさりと断られてしまい、逆に説教を食らってしまう。

ドラえもん「(君は)のんびりしすぎてるんだよ。はっきりいえば、のろまだ!ぐずだ!」


そこでドラえもんが取り出したのは、二本の薬ビン。片方は“クイック”で、もう片方は“スロー”。“クイック”を飲むと気持ちも動きも早くなり、“スロー”を飲むと気持ちも動きも遅くなる。これを飲めば、のび太ののんびりとした性格も少しはマトモになる筈……。そう考えたドラえもんは、のび太にクイックを飲ませようとするが、当人は「薬はきらいなんだよ」と言って飲もうとしない。仕方がないので、まずはドラえもんがクイックを飲んでみて、その効果を確認することに。

ドラえもん「のび!」
のび太「のびとはなんだ」
ドラえもん「のび太くんなんて、まどろっこしくて! やれ! 宿題! 早く!」


クイックの効果で、すっかりスピーディーになったドラえもん。のび太に宿題をやらせている間も、落ち着きなく部屋の中を行ったり来たり行ったり来たり。ふと、のび太が宿題に分からないところがあるからと、しずかちゃんの家に行こうとする。無論、ドラえもんも付いていくことになるのだが、そこでクイックが凄まじい効果を発揮する。

ドラえもん「すばやく、よびりんをおす。同時にとびこむ!」
ドラえもん「(部屋に上がって)こんにちはといいながら、くつをぬぐ」
ドラえもん「やきいもは、食べるまえにおならをする(ボム)」


どこまでもせっかち。対するのび太は、そんなドラえもんに物怖じすることなく、相変わらずののんびりぶり。ところが、ただでさえのんびり屋なのび太がうっかりスローを飲んでしまったことで、更に二人のギャップは広がってしまう。以下ののび太の台詞の凄まじさよ!

のび太「ファ~」
のび太「ウファー、ファーファーファー」
のび太「ほっとけば、」
のび太「いいや。」
のび太「薬なら、いつか、ききめが、」
のび太「消えるでしょ。ねえ」


かくして、二人は対話すらままならない状況へと陥ってしまう……。

この【のろのろ、じたばた】というエピソードが、古典落語『長短』をモチーフとしていることは想像に難くない。

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『長短』には二人の人物が登場する。一人は、すこぶる気の長い長さん。もう一人は、むやみに気の短い短七。気性のまったく違う二人は、それなのに不思議と仲が良い。ある日、長さんがゆったりと煙草を吸おうとしているのを見て、短七がじれったくなり、正しい煙草の吸いかたをポンポンポーンと実演し始める。すると、その様子を見ていた長さんが、やはりゆっくりと短七に何かを教えようとするのだが……。この『長短』での長さんと短七のやりとりを聴いた後に【のろのろ、じたばた】を読むと、両者が実に似ていることがよく分かる。

但し、【のろのろ、じたばた】のそれは、『長短』よりもずっと狂気的だ。ドラえもんはせっかちが極端になって青森まで駆け出して行き、一方ののび太はかたつむりと競争して敗北してしまう始末。落語では難しいであろう、ギャグ漫画という表現方法だからこそ成立するシチュエーションの深化が、そこには見られる。
 
追記。

上の記事を更新した直後、『ドラえもん』と同様に藤子・F・不二雄が手掛けているSF漫画『21エモン』にも、『長短』をモチーフとしたエピソードがあると指摘された。偶然にも、同作品の全集を持っていたので確認してみると、なるほど。そのエピソードのタイトルは【ノロノロ・チャカチャカ】。主人公・21エモンの両親が経営しているホテルつづれ屋に、それぞれ違う星から来た宇宙人が泊まりに来る話である。

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まず登場するのは、スロモー星からやってきた人物。スロモー星の一日は地球でいうと一年に相当するという。なので、スロモー星に住む人たちは、とにかくゆっくり。なにせ、ホテルに泊まりに来たにも関わらず、入り口の前でジーッとしている。恐らくお客だろうと引き入れて、尋ねてみる。

スロモー星の客「ここは~」
パパ「は、つづれ屋でございます」
スロモー星の客「ひと晩~」
パパ「お泊りになるので?」
スロモー星の客「泊まるとしたらあ」
パパ「はあ?」
スロモー星の客「いくらかかるかねえ」
パパ「宿泊費のことですか?」


とにかく遅い。

スロモー星から来た客の後にやってきたのは、チョコマカ星から来た人物。チョコマカ星の一日は地球の一時間に相当するという。なので、チョコマカ星に住む人たちは、とにかくせっかち。ホテルに入ってきたときも、サーッと入ってきて、ダーッと言いたいことを言って、ズバーッと部屋に行ってしまう。と、その部屋に、銅像があるから除けてほしいという。面々が見に行くと、それはスロモー星から来た客だった。まったく違う時間が流れる星からやって来た二人が、ここで遂に遭遇するのである!

チョコマカ星の客「いっしょに泊めてくださいよ、いいでしょ」
スロモー星の客「アー、」
チョコマカ星の客「どうなんですか」
スロモー星の客「わしは~」
チョコマカ星の客「ねえ、いいの? わるいの? どっち?」
スロモー星の客「べつにい」
チョコマカ星の客「アーじれったい!」
スロモー星の客「かまわ~」
 (泡を吹いて倒れるスロモー星の客)
スロモー星の客「ないい」
21エモン「とうとうひきつけをおこした」


後に二人が意気投合したかどうかは、定かではない。
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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