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落語の視点で読む『ドラえもん』 ~胴斬り~

『ドラえもん』に【人間切断機】というエピソードがある。

ドラえもん (10) (てんとう虫コミックス)ドラえもん (10) (てんとう虫コミックス)
(1976/04/25)
藤子・F・不二雄

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リビングでテレビを見ているドラえもんとのび太。そこへママがやってきて、のび太におつかいを頼む。テレビは見たい。でも、おつかいに行かなくちゃならない。二つに一つ。いっそのこと、テレビを見ながらおつかいに行けないものかしら……。そんなのび太の苦悩を受けて、ドラえもんがポケットから取り出したのはなんでもないベッド。それにのび太を寝かせる。続いて取り出したのは、巨大な回転ノコ。それをゆっくりとのび太の胴体に近付けていく。

のび太「何だ。このまほうのたねは、ぼく知ってるよ」
のび太「からだの上と下はべつの人がはいるんだよね」
ドラえもん「はいらない


哀れ、のび太の身体は上下に真っ二つ。

のび太「ほんとに切るやつがあるか」
ドラえもん「心配するな。かんたんにくっつくのりがあるから」


くっつくのりがあるからといって、何の躊躇もなく友人の身体を真っ二つにしてしまうドラえもんもドラえもんだが、とてつもない状況にも関わらず冷静なツッコミを入れるのび太ものび太である。ただ、当然のことながら、何の考えもなく真っ二つにしたわけではない。ドラえもん曰く、上半身と下半身に分かれてしまったのび太の身体のうち、下半身に電子頭脳をつけて、おつかいをさせるのだそう。……他にもっと方法があったんじゃないか!? しかし、そのことに関しては特にツッコミを入れることなく、ドラえもんの言うとおりに下半身のび太をおつかいに行かせる上半身のび太。どうやら未来の道具を使い過ぎて感覚がマヒしてしまっているようだ。

おつかいから帰ってきた下半身のび太に、次から次へと用事を言いつける上半身のび太。もはや『ドラえもん』ではお馴染みの、未来の道具を楽しむあまりに図に乗ってしまうパターンである。

上半身のび太「わるいけど戸だなから、おせんべいもってきてよ」
上半身のび太「同じ自分だから、遠りょなくつかえる」
上半身のび太「ついでにのみものももってくればいいのに。気がきかないな」
上半身のび太「えっ、きみも食べたいって
上半身のび太「(ドラえもんと一緒に笑いながら)口もないのに、どうやって食べるんだろう


なんという暴君ぶり!

そこへしずかちゃんがやってくる。家に遊びに来ないかというしずかちゃんの誘いを受けて、のび太(上下セット)はドラえもんと一緒に出掛けることに。その道中、ジャイアンとスネ夫に遭遇。サッカーをしようと強引に誘うので、下半身のび太だけを連れて行ってもらう。……この状況にさほど驚かないしずか・ジャイアン・スネ夫も、完全に感覚がマヒしているな。その後、下半身のび太を放ったらかしにして、しずかちゃんの家でトランプ遊びに興じる面々。しかし、ドラえもんはふと不安を覚える。

ドラえもん「だけど…、足だけほっといて大じょうぶかな」


ドラえもんの不安は見事に的中する。下半身のび太はジャイアンの股間を蹴り上げた挙句、二人からスタコラサーッと逃走してしまう。下半身大暴走の巻。上半身のび太を載せていないため、やたらめったらすばしっこい下半身のび太はなかなか捕まえられない。どうやって捕まえようか、ドラえもんは考える……。

この【人間切断機】と同様の状況を用いた古典落語がある。その名も『胴斬り』だ。

枝雀落語大全(15)枝雀落語大全(15)
(2000/08/23)
桂枝雀

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ある男が夜道を歩いていると、辻斬りに胴をスパーッと斬られてしまう。ところが、斬った人間の腕が優れていたのか、それとも斬った刀が逸品だったのか、上半身と下半身に分かれてしまったこと以外は特に別状はない。その日は偶然通りかかった兄貴分に拾ってもらって、どうにかこうにか家に帰った。さあ、こんな状態とはいえ、仕事をしないままではいられない。かくして、上半身は銭湯の番台へ、下半身はこんにゃく屋でこんにゃく玉を踏む仕事を始めることに……。

実際に『胴斬り』を聴いてみると、【人間切断機】は『胴斬り』のバージョン違いでしかないことが分かる。というのも、以前に取り上げた『長短』とは違い、どちらも基本的な流れが殆ど同じなのである。身体が上下に分断され、それぞれがバラバラに活動するも……ここでは書かないが、オチのトリックも同じ。違っているのは、上半身が仕事もせずに好き放題をして、下半身に面倒事を全て任せるという分岐点だけ。……などと書くと、「【人間切断機】は『胴斬り』のパクリである!」と主張しているように見られるかもしれないが、そうではない。古典落語の世界では、演者の志向や時代の流れを受けて話の内容を変えてしまうことが頻繁に起こっている。いわば【人間切断機】は、藤子・F・不二雄という落語家が漫画という形式で『胴斬り』を演じてみせた、落語の新解釈なのである。そして恐らく、この【人間切断機】は落語にそのまま応用することが可能だ。誰か挑戦すれば、きっと面白いと思うのだが……どうだろう。

ところで、下半身のび太はどうやって戸棚からせんべいを……?
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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