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ヒカリゴケの漫才『肝試し』を解体してみた。

私が「爆笑オンエアバトル」「オンバト+」を鑑賞し続けている理由の一つに、“芸人が変わる瞬間”を見られるから、というのがある。なんでもない、どこにでもあるようなネタを見せていた若手の芸人たちが、何かがきっかけで変わる瞬間。その瞬間を目にした時、私はたまらなく幸せな気持ちになれるのだ。それはまるで、父親が息子の成長を目の当たりにして感動している様な……というと、流石に少し大袈裟な気はするが。それに似たような感情が芽生えているように思う。無論、実際にライブで彼らのネタを目にしているお客さんに比べれば、私はずっと遅れているのだろうし、また思い入れにも違いがあるのだろうが。

最近、私が目にした“芸人が変わる瞬間”は、9月15日に放送された「オンバト+」で披露されたヒカリゴケの漫才である。

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ヒカリゴケは2005年に結成された松竹芸能所属のお笑いコンビ。『NARUTO -ナルト-』のロック・リーそっくりな片山裕介がボケを担当、かつてはアイドルを目指していたというイケメン国沢一誠がツッコミを担当している。……ところが、この日の「オンバト+」で放送されていたヒカリゴケの漫才では、この関係性に妙な歪みが生じていたのである。確かに、片山はボケをやっているし、国沢もツッコミをやっているのだが、ふとした瞬間に、この関係性が入れ替わっているのである。それも、笑い飯の様に、はっきりとボケとツッコミが入れ替わるのではなく、実にさりげなく自然に入れ替わっているのだ。それなのに、観客は置き去りにされることなく、笑っている。この絶妙なバランス感!

この凄さを分かりやすく説明するために、ヒカリゴケの漫才を解体してみた。当然のことながら営業妨害なので、本人および関係者から苦情が入れば削除する所存である。が、もしもこれを読んで、ちょっと面白いと思っていただけたならば……是非とも彼らの名前を覚えておいてほしい。もしかしたら来年あたり、ハネるんじゃないかと思うので。
 

国沢「はい、どうもヒカリゴケです、お願いしまーす!」
片山「お願いしまーす! ……はい? あ、そうなんですよ。洗い流さないトリートメント使ってます」
(片山、髪をサラサラ振り乱す)
国沢「……あんな、今度さ、みんなで肝試し行こうって、」
片山「(さえぎって)なんか言うて! オレ、今ちょっとボケたから、ツッコんでくれんと寂しいやんか?」
国沢「ハハッ」
片山「愛想笑いすなよ! なんやコイツ、(客席に)すんません……」


ここまでが導入である。片山の髪型を使った分かりやすいボケで、観客の心をくすぐる。しかし、ここで重要なのは、片山のボケに対する国沢の態度だ。普通のツッコミであればきちんと処理するであろうボケを、少し放置気味に扱っている。この時点で、国沢がちょっとツッコミとして不安要素を含んでいることが、じんわりと伝わってくる。

国沢「違う、あのね、今度みんなでな、山奥に男女グループで肝試しに行こうと思うてんねんけど、ちょっと片山さんも一緒に行かへん?」
片山「いや、いいよ。僕もうイイ年ですから、肝試しなんてもういいですよ」
国沢「行こうや~! だってね、人間って、肝試し行ったり、ジェットコースター乗ったら、ドキドキするでしょ?」
片山「そんなん当たり前やんねえ」
国沢「そのドキドキを、人間は恋のドキドキと勘違いするらしいねん」
片山「(キメ顔で)あ?」
国沢「ってことは、山奥に、男女グループで、肝試しに行ったとしたら、」
片山「(さえぎって)肝試し行く?」
国沢「行く?」
片山「うん!」
国沢「良かったー!」
片山「確かにシーズンやしな!」
国沢「そうそうそうそうそう」


ここから本編がスタート。先程、国沢がフライング気味に切り出した“肝試し”に行きたいという話題から、それに片山が参加する意志を固めるまでの流れが展開されている。ここまでは一応、普通の漫才からさほど逸脱していない。国沢はツッコミらしいツッコミをしていないが、片山はボケとしてのスタンスを維持している。女の子と恋に落ちる可能性が出てきた途端に手のひらを返すボケなど、シンプルで分かりやすい。

片山「男女いっぱいで行くんやろ?」
国沢「うん!」
片山「それやったらオレは、お菓子を両手いっぱいスーパー行って持ってったるからな!」
国沢「あー、要らん!」
片山「え?」
国沢「お菓子ダサいねん」
片山「初耳やな。お菓子がダサい? そんなんあんのん」
国沢「荷物をね、両手でいっぱいの男って格好悪いやんか!」
片山「……そう?」
国沢「そういうところ行くときは、ケツポケットにるるぶだけでいいねん!」
片山「荷物少な過ぎひん、それ!? そうなん?」
国沢「うん、大丈夫大丈夫」
片山「旅のガイドブックやろ? 肝試しにいらんやんか、そんなん……」
国沢「いーるーよ!」
片山「いる?」
国沢「だって肝試しが盛り上がって、じゃあその辺で一泊しましょうってなったら、これ(るるぶ)絶対見るやん」
片山「(スマートフォンを使う動きで)いや、そんなんねえ、今やったらスマートフォンでホテルとか調べれるでしょ」
国沢「山奥、圏外やで? 」
片山「(触っていたスマートフォンを後ろに放り投げながら)ホンマや!」
国沢「やろ?」
片山「要らんやん!」
国沢「やろ?」
片山「要らんやん!」
国沢「オレはそういうの全部分かってるから、任して!」
片山「ホンマや、すげえな」


このくだりでは、国沢が片山に“肝試し”をレクチャーしている。ドキドキ効果を知っている国沢は、この時点で片山よりも一歩リードした状態なので、レクチャーする流れも実に自然だ。ここで重要なのは、観客はレクチャーしているツッコミの片山側ではなく、レクチャーを受けているボケの国沢側の視点にあるということ。この時点で、実は後の展開に向けて布石が置かれているのである。

国沢「だから片山さんは、当日オバケ役に専念してくれたらいいから!」
片山「ちょっと待って!? お、オバケ役って何!?」
国沢「山奥に行って、オバケ出ぇへんかったら楽しくないやんか? だから片山さんにお願いしようかと思って」
片山「オレやめとくわ!」
国沢「なんでー!?」
片山「オレ山奥まで連れて行かれてオバケ役やらされるの嫌やもん!」
国沢「行こうやー!」
片山「行かへんよ、そんなんやったら!」
国沢「片山さん以外、オバケに似てる人がおらへんねん!」
片山「オレ初めて言われた! そうなん!?」
国沢「うん」
片山「あんなカタチ無き者に似るとかあんのん!?」
国沢「片山さんって、座敷わらしみたいやん?」
片山「……髪型だけや!」
国沢「だから、草むらに隠れて、「座敷わらしだ、ワーッ!」って出てきてくれれば、みんな盛り上がるから!」
片山「……座敷わらしは、座敷におんねや。草むらから出てきたら、草むらわらしやないかそれ!」
国沢「あ、それいいやんか! じゃ、それでいこ!」
片山「いかへんわ! 山奥やろ!? オレ一人で隠れて熊でも出たらどうすんのん!?」
国沢「……ドキドキできるやん」
片山「そんなドキドキいらん! オレ、一人でドキドキして、誰と恋に落ちんねん」
国沢「熊おるやん!」
片山「熊と恋に落ちてどないすんねん! みんな肝試しが終わって山を下りようって言うとって、オレだけ熊と手ぇ繋いで出てきて、「オレは……ここに残るよ……」連れて帰ってくれんのかい!」
国沢「分かったよ! オバケ役も、じゃあ男女ペア!」
片山「どーしてもオレ、オバケ役なんか!?」
国沢「あ、でも、そっちの方がええなあ!」
片山「なんで?」
国沢「だってオバケ役も、A地点とB地点と二か所から出てきてくれた方が盛り上がるやん!」
片山「スタンバってる位置、遠くない!? それ、ペアの意味ある!?」
国沢「アハハハハハハ……」
片山「何笑ろてんねん! 何が楽しいねん、アホ」
国沢「ちゃうって、二人並んで「ハイ、どーもー!」って出てこられても、どう見てええか分からへんやん」
片山「せえへんわ! なんでオレ、普段漫才やってるからって、そんなときも「ハイ、どーもー! 今日もウラメシヤ!いうとかなあきませんねん」っていうねん、アホ!」


片山が国沢にオバケ役を押し付けられそうになるパート。ここでボケとツッコミの立場が完全に入れ替わる。しかし、まだこの時点では、観客はボケとツッコミが入れ替わっていることを認識し辛い。何故なら、国沢が片山をイジっているように見えるからだ。ザブングルのコントを思い出してもらいたい。理不尽な行為に及ぶ松尾と、それを受けて激しく正論を述べる加藤。それでも、加藤がボケに見えてしょうがない。それと同じ現象が、ここでも起こっているわけだ。

片山「(女の子と)喋らせろや!」
国沢「喋りたいんやったら、オレたちが着くまでの間に携帯電話で電話してたらえんちゃう!?」
片山「オレは女の子の顔見て喋りたい……ケータイ圏外って聞いてますけどーっ!? ケータイ圏外って情報入ってますけどーっ!?」
国沢「じゃ、分かった! 二人は前乗りして、ゆっくり喋り!」
片山「なんでオレ、前日入りやねん! スタンバイ入念過ぎるやんけ! そんな長い時間、初対面で喋られへんわ!」
国沢「じゃ、持ってったお菓子食べとったらええやん!」
片山「オレ、お菓子は全部家置いてきた! お前知ってる!? お菓子ってダサいらしいで!」
国沢「……あ、なんか聞いたことあるぞ、それ」
片山「オレがお前から聞いた! なんやコイツ! オレにはるるぶしかない!」
国沢「じゃ、オレのゲーム貸しとくで」
片山「お前、るるぶ以外持ってきとるやないか!」


ここで片山と国沢の関係が逆転したことに、観客も気付かされる。話題のテーマが先の国沢レクチャーの間違いへと発展していったからだ。かくして、一歩先を行っていた筈の国沢に対する信頼は崩壊し、レクチャーを受ける側だった筈の片山はツッコミとして確固たる地位を築くのであった。……いや、どっちが上っていうことはないんだけどね。しかし伏線の使い方が上手い。「圏外→お菓子→るるぶ」と、印象に残っていない方から順番に氷解させているあたりが絶妙だ。

片山「お前、るるぶだけケツの穴に挿しとく、言うたんちゃうんか!」
国沢「ポケットや!」
片山「え?」
国沢「穴とは言わへんよ」
片山「ケツの穴のことポケットって濁した表現したんちゃうんかい」


ここで二人の関係性は強引に修復。片山はボケに、国沢はツッコミに、それぞれの役割へと戻っていく。

国沢「ハハハハハハハ……」
片山「なに笑ろてんねん!」
国沢「ちょっと待って! ほんまにトリートメント使ってんのん?」
片山「どーでもええわ!


……と思ったら、最後にもう一度だけ国沢がボケるというどんでん返し!

片山「もうええわ、オレもう怒ってたら、ドキドキしてきた。……あれ?」
国沢「いや、恋ちゃうよ! もうええわ!」
二人「どうも、ありがとうございました」


そして終わり。こうして見ると、なんだかエンターテインメント映画の構成みたいだ。

追記。

2013年8月、私が東京へと出向いた際に、この記事を読まれた方から貴重な御意見を戴いた。酒が入っていたこともあって、詳しい内容は覚えていない。だが、芸人さんのネタをこういうカタチで取り上げたことに対して、強い不快感を抱かれていた様であった。正直、私としても、芸人のネタを完全にテキスト化し、更に解体して解説するという切り口に多少の引け目を感じていたので、当時はひたすら遺憾の意を示すことで精いっぱいだった。ただ、このネタは一つ一つのボケによるセンスを重視したネタではなく、全体の構成を明らかにしてこそ解説し得る漫才だったために、こういう完全テキスト化という形を取らざるをえなかったのも、また事実である。「そもそもネタを解説するなよ」と言われてしまえばそれまでだが。

ただ、冒頭にも書いた様に、この記事はあくまでも彼らのことを多くの人に知ってもらいたいという気持ち、そして凡百の漫才師の一組としてしか感じていなかったヒカリゴケがハネた瞬間を記録したかったという理由無き使命感によって書いたものであり、あくまでも彼らに対する営業妨害、芸人としての成長を留めようなどという悪質な意図があったわけではないことだけは、ここに表明……もとい、言い訳しておきたい。

なお、ヒカリゴケの漫才はその後低迷。国沢が完全にボケ役に転じた普通の漫才をするようになってしまった。この時、彼らが見せたスリリングな構成も、その後の漫才では見られなかったように思う。偶然の産物だったのか、それとも話し合いの末に構成で魅せる漫才を禁止したのか、理由は分からない。ただ、ただただ、惜しいと思う。
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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