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『るきさん』

るきさん (ちくま文庫)るきさん (ちくま文庫)
(1996/12)
高野 文子

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世間の皆様方に比べて、私の様な人間が日々の生活を送るためにこなさなくてはならない労働など大したものではないだろうと思われるが、それでも身体に疲れは溜まるし、「出来ることならば今日の仕事には行きたくないなあ」などという甘ったれた言葉が頭の中をぐるぐると回転し続ける、という経験も二度三度どころではない。とどのつまりは働きたくないわけだが、それを実行した場合、今日の食事もままならないと戦後日本を再現したかのような日々を送らなくてはならないので、どうにもならない。働かざるもの食うべからず、と人はいう。誰が創ったか、この言葉。骨の髄まで沁み込む沁み込む。それでは、どうにかして労働時間を、或いは、労働に必要なエネルギー量を、減少することは出来ないものか。そんなことをぐだぐだと考えているうちに、私はふっとるきさんのことを思い出すのである。

高野文子の漫画『るきさん』の主人公、るきさんは加算機で“お家でやるお医者の保険の請求”を出す仕事をしている。通常ならば一ヶ月はかかるというこの仕事を、るきさんは一週間で済ませてしまう。つまり、一週間だけ働いて、残りの三週間は自由ということだ。自由。甘美な響き。るきさんが仕事で得られる収入がどのくらいなのかは描かれていないが、それでも、それなりに余裕のある日々が遅れる程度には稼いでいるらしい。なにせ、普段のるきさんがやっていることといえば、近くの図書館で本を借りたり、談話室で昼寝をしたり、郵便局で切手を購入したり……という程度。無駄の少ない、洗練された毎日。だからこそ得られる自由なひと時。そんな日々の中でも、るきさんは決して孤独じゃない。OLをしている友達のエッちゃんが、たびたび家に遊びに来るからだ。ほどほどに外部との繋がりを得ている。この絶妙さ。ああ、このくらいのスタンスで、生活が送れたらなあ。そこに痺れる、憧れる。

それでも、分かっている。それは、あくまでも憧れでしかなくて、本当にその生活を始めようとしても、業の深い自分には持続できないであろうことを。必要以上の欲望を知ってしまった私には、そんな生活は送れないということを。私は、本能的に知っているのである。だから、私は今日も仕事に出掛け、それなりの疲労を蓄積していき、自分の時間を熱望し、『るきさん』に憧れながらも、そこに踏み出せずに、また日常へと帰っていくしかないのである。哀しいことに、それが私の身の丈なのだ。……別に哀しくなんかない、やいっ。
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菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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