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『世間はやかん』(立川談志)

世間はやかん世間はやかん
(2010/05/20)
立川談志

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今は亡き立川談志の『やかん』で大半が構成された一冊。

『やかん』とは、物知りなことで知られる“長屋のご隠居”のところへ、職人気質で荒っぽい“長屋の八五郎”がやってきてアレコレと質問を投げかけるのだが、返って来るのは出鱈目なことばっかり……という、古典落語である。ほぼ全てのやり取りが「質問(フリ)→回答(ボケ)→疑問(ツッコミ)→念押し(ボケ)」で構成されているので、落語というよりも漫才的な印象を与える一席である。

談志の『やかん』は、従来の『やかん』とは一味も二味も違う。従来の『やかん』はとても素朴で、何処となくのほほんとしている。例えば、名前の由来を尋ねるくだりにおける、「鯒はこっちで泳いでくるからコチ」「向こうに泳いでいる時は?」「そういう時は向こうに回ればいいんだっ」などは、実にほのぼのとしていて良い。しかし、談志の『やかん』は、そこに談志のエッセンスがギュギュッと凝縮されている。もっと明確に言うと、立川談志という芸人の人生哲学、芸人理念、ジョークが詰め込まれている。それを更に煮詰めたのが、本書だ。

他の著作にもそれが表れているが、談志の言葉は時にとてつもないパワーを持つことがある。こちらが思ってもみなかった言葉で、ある種のカルチャーショックを与える。それが正しいか正しくないかの問題ではない。ただ、そういう視点があるのか、そういうモノの見方が出来るのかという意味で、とても衝撃的なのである。こんな考え方を教えてくれる人が、もっと若い頃に、身近にいてくれれば、色々と私のアイデンティティも変わったかもしれない。いや、今の時点でグラグラッとしているから、今からでも変われるかもしれないが……。

例えば、こういうようなやりとりがある。

八五郎「莫迦って何ですか」
ご隠居「状況判断が出来ない人間のこと。状況に対する判断が出来ていないから、当然の結果として処理を間違える」
八「低能ってのは」
ご「知識の少ない、考えのない奴」
八「努力って」
ご「莫迦に恵(あた)えた夢」
八「悋気(やきもち)やきってのは」
ご「自分の懐に入ってくると思ってたものが他にいっちゃって、負けたくせにそれを認めずグズグズいうこと」
八「怒りって」
ご「共同価値観の崩壊」
八「冒険家ってのは」
ご「危険に対する恐怖心の薄い奴」
八「未来って何なんでしょうね」
ご「修正できると思っている過去」
八「若者に未来はありますか」
ご「無い。時間があるだけ。ハンバーガーみてェな文明的な残飯喰ってて、長生きするはずがない。それが証拠に、若い奴で長生きしている奴ぁ一人もいないだろ」


畳み掛けるように吐き出される言葉の一つ一つが、実に重厚かつ強烈だ。

談志の落語というと、実に数々の名演が遺されている。『芝浜』『らくだ』『黄金餅』あたりを筆頭に、『鼠穴』『源平盛衰記』『疝気の虫』『金玉医者』……などなど。しかし、あまり落語に詳しくない一般の人が、立川談志という落語家の凄いトコロを知るには、この『やかん』が最も適切であると、私は思う。不愉快な“常識”で塗り固められた現代人よ、談志の『やかん』で“非常識”のカルチャーショックを受けろッ!

関連記事:人生論を読む前に談志の『やかん』を聴いてみよ
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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