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落語の視点で読む『ドラえもん』 ~二階ぞめき~

『ドラえもん』に【温泉旅行】というエピソードがある。

ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス)ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス)
(1974/12/25)
藤子・F・不二雄

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夕暮れの海岸でのんびりしているドラえもんとのび太。のび太は波の音を聴きながら体育座りをしてぼんやりとしている。一方のドラえもんは、砂浜で仰向けに寝転んでマンガを読んでいる。そこには、ゆったりと穏やかな時間が流れている。……が、考えてみると、どうもおかしい。どうして海岸でマンガを読んでいるのか?

のび太「海岸はもういいよ。場所をかえて」
ドラえもん「よしきた。どこがいい?」
のび太「どこでもいいけど、めずらしいとこ」


実は、この夕暮れの海岸は、ドラえもんのひみつ道具“室内旅行機”によって作り出された景色だったのである。この機械があれば、部屋の中にいながら、色々な風景を楽しむことが出来る。続けて、ドラえもんが部屋の中に映し出したのは、アフリカのジャングル。木の上でヒョウが吠えていて、なんとも雰囲気が出ている。

と、そこに、のび太のパパが飛び込んでくる。何も知らずに部屋に入ってきたパパ、そこにヒョウがいたものだから、もうビックリ。声にならない声を上げながら、慌てて部屋を飛び出す。と、そこでのび太のママと遭遇。冷や汗を流しながら、ママにのび太の部屋の異変を伝える。しかし、部屋に入っても、そこにはごく当たり前ののび太の部屋しかなかった(ママが入って来る前に機械を止めたのである)。

ママ「ごまかさないで!」
パパ「わかってますよ! お正月くらい家族そろって温泉旅行でもというんだろ。まあききなさい。お正月なんて乗り物もホテルも満員で、つかれにいくようなものだから…」
ママ「たまには、つかれてみたいわ」


実は、パパがのび太の部屋に飛び込んできたのは、ママの話から逃げ出すためだったのである。何処かに旅行に行きたいというママと、行きたいのはやまやまだけど……となだめようとするパパ。形勢は不利なご様子。困っているパパを見かねた二人は、室内旅行機を使って、自宅を旅館にしてしまうことを思いつく。早速、あっちこっちの部屋に室内旅行機を配置して、二人を呼び出す。すっかり様子が変わった我が家を見て、驚く二人。

パパ「へえ、これが映画! まるで本ものじゃないか」
ドラえもん「あぶないっ」
 (何かに衝突するパパ)
パパ「こんなとこに、みえないかべがある」
ドラえもん「広くみえるけど、ほんとはせまいもとの家だよ


そしてドラえもんとのび太は、客間から大浴場へとパパとママを案内し、家族仲良く温泉旅館の風景を堪能する。
 
自宅を温泉旅館にしてしまうなんて、未来の秘密道具があるからこそ出来ることだろう……と思われるかもしれないが、実はこの【温泉旅行】と似たようなシチュエーションの古典落語が存在する。その名も『二階ぞめき』。“ぞめき”とは、遊郭や夜店などを冷やかして歩くこと。つまり、『二階ぞめき』とは、二階を冷やかすという意味だ。……無論、冷凍するという意味ではない。念のため。

五代目 古今亭志ん生(18)らくだ/二階ぞめき五代目 古今亭志ん生(18)らくだ/二階ぞめき
(2001/03/21)
古今亭志ん生(五代目)

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いわゆる女郎屋が沢山ある風俗街として知られている吉原の町を、毎晩のように訪れている大店の若旦那。ある日、そのことについて、店の番頭から注意を受ける。大旦那が怒って、このままなら勘当しなくちゃならない。だから、行くなとは言わないけれども、毎晩は行かないでもらいたい。或いは、贔屓にしている花魁を見受けして、一緒になってしまえばいいと。ところが、若旦那の了見はちょっと違ったようで。

若旦那「俺、女はどうでもいいんだよ」
番頭「そうですか」
若旦那「俺は吉原ってものが好きなんだよ。女じゃいけねえんだ。吉原をウチに持ってくれりゃあな」
番頭「そんな無理なこと言っちゃ……しょうがないねえ。じゃあ、なんですか? あなた、なんですね? 吉原で冷やかしてるのが好きなんですね?
若旦那「そうだよ」
番頭「ああ、そうですか」


ここで番頭が妙案を思いつく。お店の二階が空いているから、そこに吉原をこしらえてもらうのはだろうか、と。出入りの大工の棟梁は腕がいいから、頼めばきっと上手くやってくれるに違いない。そして、吉原まで行かずに、二階を冷やかせばいいじゃないか、と。モノは試しだと若旦那が話に乗ってきたので、じゃあ……と、あっという間にこしらえてしまう。番頭に勧められながら若旦那、実際に二階に上がってみると、なるほどそこには吉原そっくりの風景が……。

『二階ぞめき』が作られたのは、今よりも百年以上も昔の事。1861年に発表された大阪の落語家・桂松光のネタ帳に「息子二階のすまい ここでおうたゆうな」と書かれているものが、最古のデータであるとされている。その後、三代目柳家小さんが東京へと移植、1747年に「二階の遊興」として確認されている。

『ドラえもん』では、たびたび限られた場所を使ってなにかしらかの施設を作ってしまう、というようなエピソードが発表されている。自分の部屋に田んぼや釣り堀を作ったり、庭に子どもの町を作ったり、雲の上に王国を作ったり……『二階ぞめき』は、それら夢のある理想の世界を描いたエピソード、全ての原典といえるのかもしれない。よりにもよって吉原というのが、なんとも子ども向けではないが。

ちなみに、『二階ぞめき』の若旦那は、二階に作られた吉原の世界で妄想を繰り広げて行くうちに、そこが本当に吉原の町であるかのように勘違いしてしまうのだが、この展開は藤子不二雄Aのブラックユーモア短編でよく目にするパターンの様に思う。聞いたところによると、A先生も落語をよく聴いていたというが……『二階ぞめき』から影響を受けたのかどうかは、定かではない。
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非公開コメント

新幹線男。

勿論ドラえもんは進歩的哲学ですよ。

No title

あまりに深いコメントに置いてけぼり食ってます。。。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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