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今年聴いた落語十選2012

ようこそのお運びで、厚く御礼を申し上げます。

本日は大晦日ということで御座いまして、昨日まで大掃除をしていたという方も多いのではないでしょうか。中には、まだ大掃除の途中だという方もいらっしゃることと存じます。私はと申しますと、最初っから諦めているというような状況で御座いまして……とにかく部屋に物が溢れておりますので、ちょっとやそっとの片付けでは、とてもじゃないが新年に追いつかないという。おかげで家族からは白い目で見られている次第ですが、私の信念はそうは揺るぎません。断固として、大掃除をしてなるものか、大掃除をしたら負けだと思っていると、その態度を変えないようにしようと……まあ、そもそも変えようがないんですが。もし、私が部屋を片付けるとしたら、それは引越しをする時でしょうね。どうにもこうにも、情けない次第ですが……。

そんなこんなで年末ですが、実は落語には年末を描いたネタが数多く存在しております。例えば、昨年お亡くなりになられました、立川流家元の立川談志師匠が得意としていた『芝浜』は、終盤に魚屋の夫婦による年越し風景が描かれています。それから、富くじを当てた幇間(たいこもち)の悲喜こもごもを描いた『富久』には、富くじの当選会場の模様が描かれていますね。『宿屋の富』『御慶』もそうですか。個人的には『掛取万歳』が好きで好きで……。

さて、この年末を迎えるに当たりまして、今年の出来事を振り返ったりなどもしましたが、まあ……一言では語り尽くせないような、色んなことが御座いました。でも、そういった色々な出来事も、全て2012年という年に集約されてしまう。良いことも悪いことも、一年の出来事の一つとしてまとめられてしまう。そして、新しい年に対して、真っ直ぐに向かうことが出来る。新しい一年に向けて、今年の総決算を皆さんもお忘れなきよう……。というわけで、今年も「今年聴いた落語十選」をやりますので、最後までお付き合いください。

……何が「というわけで」なのかな?(マイセルフツッコミ)
 
■三代目春風亭柳好『野ざらし』
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(2008/12/17)
春風亭柳好(三代目)

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以前から、私は「昭和の名人なんて過去の遺物、今こそがサイコーだ!」と主張していたのだが、これを聴いてすっかり気持ちが引っ繰り返ってしまった。なんていうか、もう別格なのだ。野ざらしに恩返しをさせようと男が骨を釣りに行く『野ざらし』という噺自体はさほど珍しい演目ではなく、色々な落語家が演じている。実際、私もこれまでに何人かの『野ざらし』を聴いてきた。でも、柳好師匠の『野ざらし』は完全に別格。ほんのちょっと聴いただけで「なんだ、これは!?」と、カルチャーショックを受けた。声が良い。調子が良い。これが分からなければ、何を聴いてもダメ……とは言わないが、そのくらい圧倒的。惚れる。惚れざるを得ない。

■三代目古今亭志ん朝『火焔太鼓』
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(2012/02/21)
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古今亭志ん朝。恐らく、最後の“昭和の名人”だろう。とにかく人気がある人である。その人気の秘密は、分かりやすさと朗らかさ。昭和の名人の口演というと、どうしても音質の悪さ・口調の古臭さが現代人にそぐわない印象を与えるが、志ん朝は別格だ。ちょっと落語を知っていれば、すぐさま理解できる。しかも、どんな噺であろうとも、ある一定のレベルを確実に超えていくんだから、たまらない。思うに、志ん朝から落語に入る人の多くは、そこで満足してしまうのではないだろうか。志ん朝には、それだけの地力がある。その上、ネタとの相性が良ければ、更に更に面白くなっていくんだから……同業者はサジを投げたくなることだろう。で、『火焔太鼓』。目の利かない古道具屋の主人が手に入れた太鼓が、偶然店の前を通りがかった殿様の目にとまり……。柳好とはまた違ったご陽気ぶりに、きっとあなたもノックアウト。なんというテンポ! なんというパワー!

■六代目三遊亭圓生『開帳の雪隠』
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(2009/08/04)
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三遊亭圓生、人呼んで“ベリー・ベスト・オブ・昭和の名人”である。ネタの本数もバリエーションも豊富で、『圓生百席』なんてソフトまで残っている。とにかく評価が高い……が、それ故に、個人的に突出して何かが得意というものがない落語家として見えた。志ん生、小さん、文楽に比べると、どうも……なんて、偉そうだねどうも。しかし、圓生にも得意な噺があった。ちょっとした下らない噺が、とてつもなく面白いのである。また、演るネタが多かったので、そういう下らないネタの口演も数多く残っているようだ。流行らない駄菓子屋が雪隠、即ちトイレを貸す商売を始める『開帳の雪隠』、実に下らなかった。この他にも、四宿の屁に関する小噺を披露する『四宿の屁』なんてネタがあって、これも実にくっだらない。でも、その下らなさを、これでもかと面白くしてくれる。なるほど、名人だ。

■六代目五街道雲助『お直し』
五街道雲助4 朝日名人会ライヴシリーズ64 替り目/お直し五街道雲助4 朝日名人会ライヴシリーズ64 替り目/お直し
(2010/08/18)
五街道雲助

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昭和の名人と呼ばれた落語家が続いている。仕方がない。今年は“落語 昭和の名人 決定版”をコンプリートしたので、どうしても、それ経由で聴いた口演が並んでしまうのである。とはいえ、昭和の名人ばっかり並べ立てては現役の落語家に申し訳が立たないので、この辺りでひとつ現役を放り込んでみる。いや、放り込むとは何事だ……って、『大工調べ』の台詞。さて、五街道雲助。かの立川談志も認めた、“江戸の風”が吹いた落語家である。なんだろうね、江戸の風。いや、分かる。分かることは分かるのだが、それが吹かなくちゃ落語じゃないというのは、なんだか了見が狭い……まあ良いや。今年、雲助師匠の口演は少しばかり聴いたが、現時点では『お直し』がサイコーだと考える。はっきり言うと『お直し』、あまり好きな噺じゃなかった。手前のせいで首が回らなくなった亭主が、手前の元花魁だった女房を使ってナニの店をする……というストーリーが、あまりにも陰鬱で嫌いだった。そんな亭主と別れられない女房の了見も、理解できないこともない……とはいえ、好きじゃなった。ところが、雲助師匠の『お直し』は、そんな夫婦に一石を投じた口演だったのである。胸がスーッとしたと同時に、演じ方次第でこんなに印象が変わるのかと驚かされた、そんな一席。

■二代目桂枝雀『雨乞い源兵衛』
枝雀落語大全(14)枝雀落語大全(14)
(2000/08/23)
桂枝雀

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現役を放り込んだ途端に、また昭和の名人である。仕方ない。なにせ、今年は古い口演に積極的に取り組んだ年だったのだ。まあ、でも、枝雀に関しては別で、純粋に笑えるから聴いていた。何も考えずに、ぼーっとしながら聴いていても笑える迫力。些かキチ○イじみてもいたが、決して落語の本分から逸脱しない絶妙なバランス感覚。時代を超越しているとすら、言っても良いかもしれない。そんな枝雀の口演より『雨乞い源兵衛』。落語作家・小佐田定雄氏の作品である。日照りが続いている村の庄屋が、先祖が雨乞いをしていたという源兵衛に雨を降らせるよう強要するのだが、源兵衛はその方法を全く知らず、ほとほと困り果てる……。先祖の行いによって子孫が迷惑を被るという設定が、なんとも珍妙で惹きつけられた。また、落語の構成が、どことなく従来の古典落語的ではなく、現代的な印象を与えるところも興味深かった。その理由はまだよく分かっていないが。

■九代目鈴々舎馬風
鈴々舎馬風(9代目)(1)鈴々舎馬風(9代目)(1)
(2002/06/21)
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馬風に関しては、どの口演がどうのこうのという説明が出来ない。どれが突出して面白かったとか、そういうのが無いからだ。しいて書くとするなら、“九代目鈴々舎馬風”という芸人そのものが面白い。攻撃的で力強く、それでいて皮肉めいた味わいもあったりして……かなり好みの落語家だ。そんな馬風の口演を収めている数少ない作品が本作なのだが、とにかく聴いてもらいたい。全編を通して、聴いてもらいたい。私は馬風の口演に、芸人としての凄味というか底意地の様なものを感じた。きっと気のせいではないかと思う。が、感じてしまったものは仕方ない。今年聴いた落語から、どうしても馬風は外せない。

■八代目橘家圓蔵『うなぎの幇間』
NHK新落語名人選 八代目 橘家円蔵NHK新落語名人選 八代目 橘家円蔵
(2005/12/07)
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落語四天王といえば、古今亭志ん朝、三遊亭圓楽、立川談志……までは決まっているけれども、最後の一人がどっか曖昧にされてしまっている感がある。モノの本によると、かつては“江戸前の落語家”春風亭柳朝がこの枠に入っていたらしいのだが、師の死後は、月の家圓鏡……もとい、橘家圓蔵がここに収まっている。なにせ、まあ、そういう扱いなので、てっきり先の三人に比べると劣るもんだと思っていたのだが、いざ聴いてみるとこれがモノスゴイ。落語家が、自らが落語を喋る様子を「パーパー言ってる」と説明することがあるが、圓蔵の落語は文字通りパーパー喋る。情緒もへったくれもない。でも、そのパーパー喋る内容が、とんでもなく面白い。古典落語の世界の中で繰り広げられる、ナンセンスギャグのオンパレード! どの口演も平等にバカバカしいが、個人的に師匠の軽さと幇間の軽さに似たモノを感じるので、こちらの演目をチョイス。

■三遊亭白鳥『富Q』
毎日新聞落語会 三遊亭白鳥毎日新聞落語会 三遊亭白鳥
(2012/11/21)
三遊亭白鳥

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酒の上で旦那をしくじってしまった幇間・久蔵が火事で焼失してしまった富くじを当ててしまう古典落語『富久』の舞台を現代に移し、更に主人公を売れない落語家・Q蔵にした改作落語。一見すると、ただ設定を変えているだけに聴こえるのだが、ストーリーが展開するうちに、Q蔵がしくじった相手が池袋演芸場の席亭だわ、Q蔵が住んでいるアパートは様々なアジア系の人たちが暮らしている無国籍的建造物だわ、なかなかのムチャクチャぶり。でも、元ネタである『富久』の根幹にある、貧困と肌寒さ、そして年末の切迫した雰囲気がきちんと感じられるから、なんとも不思議だ。気が付くと、従来の『富久』を正しく現代へと置き換えた作品なのではないか、と思わせられる。いや、実際にそうなのかもしれない。内輪ネタに走っているきらいもあるが、これには間違いなく『富久』の血脈が流れている。

■柳家さん喬『ねずみ』
新潮落語倶楽部 その8 柳家さん喬 「そば清」「締め込み」「ねずみ」新潮落語倶楽部 その8 柳家さん喬 「そば清」「締め込み」「ねずみ」
(2012/10/17)
柳家さん喬

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『ねずみ』は本来、長く語られがちな古典落語だ。その内容は、ある宿屋の主人に訪れた悲劇を中心に描いた人情噺で、その哀愁を伝えるためには、どうしても状況説明・心理描写に時間を取られてしまうのである。その結果、30分~40分の長い口演になってしまいがちだ。ところが、このさん喬師匠の『ねずみ』は、なんと8分を切る。となると、描写云々は二の次に、とにかく説明だけで乗り切ってしまっているのかと思いきや、ちゃんと落語として成立しているのだから、恐ろしい。あくまでもギリギリ不必要な要素だけを排除して、ネタの骨子だけを残し、どうにかこうにか落語としてのアイデンティティを保っているのである。正直、クオリティという意味では、どうしても長尺のそれに比べると弱くなってしまうが、こういう寄席でしか聴くことが出来ないだろう落語家の編集力の凄さを楽しめたという意味では、本作は稀少。ちなみに、今はもっと短く出来るらしい……目指せ限界!

■『SWAのCD FINAL-クリスマスの夜に-』
SWAのCD FINAL-クリスマスの夜に-SWAのCD FINAL-クリスマスの夜に-
(2012/11/28)
SWA(林家彦いち 三遊亭白鳥 春風亭昇太 柳家喬太郎)

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創作話芸アソシエーションことSWAが解散してから、もう一年。それまでの彼らの活動に対して、さほど深い興味を抱いていなかったため、解散が表明された当時も「解散するの!?」という驚きはあったものの、ユニットが解散してしまうことの寂しさはさほど感じなかった。そんな彼らの置き土産である本作では、ある三姉妹を描いたブレイブストーリーが展開されている。正直、これまでにリリースされたSWAのCDには、傑作と呼べるものが無かったように思う。どっかしらかに物足りなさや違和感を覚え、イマイチだという印象を拭えなかった。が、本作は、まごうことなき傑作である。理不尽を笑う彦いち、女の情念をバカバカしく描く喬太郎、果てしなきナンセンスな世界が広がっていく白鳥、爆笑と哀愁が連なる昇太。四人の良さをこれでもかと詰め込んだ、彼らの最後にして最高の一品。これでようやく、私は彼らの解散を惜しむようになった。遅いね、どうも。

2013年も、落語にずぶずぶのめりこめますように……。
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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