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『R-1ぐらんぷり2012』がっつり批評

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(2012/09/19)
V.A.

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そろそろマジメに批評してやろうじゃねえか、と、意味無く上から目線。
 
【Aブロック】
■友近『水谷千重子』
演歌歌手が公演で実際に言ってそうなことを話す“あるある”、J-POPを歌う際にこぶしを強調することで演歌歌手のアイデンティティを茶化す“風刺”、豆腐を持って踊る越後前舞踊の“不条理”、それら友近の武器全てをギュッと詰め込んでいるネタ。これがダメだというのなら、もう今の友近には打つ手がないと言っても過言ではない(事実、今年のR-1に友近は出場しなかった)

■野性爆弾 川島『それゆけ大松くん』
野性爆弾のコントがそうであるように、これもまた観客の裏切りを重視したネタになっている。ほのぼのとした絵描き唄が始まったかと思えば、犬が交尾している絵が出来上がる。二回目も同じような絵が出来るのかと思いきや、今度は犬がサメに食べられている絵になる。次の絵描き唄は……と思わせておいて、今度は不可思議な世界へと誘われる展開に。コンビとしてのネタよりも客層に合わせた内容にしているあたりに、芸人としてのテクニックを感じさせられる。しかしなにより、川島の作り出す和製ホラーの様な世界観が、とてつもなく魅力的だ。オチの強引さも含め、個人的に大好きなネタである。

■AMEMIYA『赤ちゃんが乗っています』
日常風景で目にする何気ない言葉から、ドロドロの泥沼劇を思い描いた歌を熱唱する、お馴染みのスタイル。歌詞の展開がより複雑にはなっていたものの、曲の構成が既存の作品とまったく同じなので、さほど新しさは感じさせない。内容よりも、曲の構成を変えていかないことには、どうにもならない。このままだと、マキタスポーツにじゃんじゃん差をつけられるぞーっ。

■COWCOW 多田『五十音ボックス』
ギャグのクオリティに関しては言わずもがな。COWCOW多田がこれまでに生み出してきたギャグの総決算といえるような内容で、古臭さや既視感は否めないが、いずれも安定して面白い。ただ、点で成立しているギャグを線にするための演出が、どうも宜しくない。いつもここからの『悲しいとき』であれ、長井秀和の『間違いない』であれ、点でも成立するものを線にしなくてはならない場合、どうしても構成とフォーマットの問題が生じる。このネタは、それをくじ引きという運任せの演出にすることで、その両方の問題をクリアしている。だが、それがどうにも、気に入らない。というのも、彼の相方であるCOWCOW山田興志が、その構成とフォーマットに固執したピンネタを作り続けていたからだ。運任せの多田のネタが評価されるのであれば、斬新なフォーマットを生み出し続けてきた山田だってもっと評価されるべきである。その評価のズレが、どうも気に入らない。そして、だからこそ、彼らが今『あたりまえ体操』というフォーマット重視のネタで評価されていることを、私は喜ばしく思う。

【Bブロック】
■サイクロンZ『勢いとノリだけのマジックショー』
正確には『まだ人前には見せられない状態のマジックショーを勢いとノリだけで』。要するに、くちゃくちゃの状態でマジックショーを披露するというだけのネタ。成功しても失敗しても勢いとノリで突き進もうとするスタンスには笑ったが、ややスタンスにブレが。くちゃくちゃでテンパっている状態を見せたかったのか、それともくちゃくちゃでも素知らぬ表情で乗り切っている状態を見せたかったのか、はっきりと決まっていなかったように見えた。個人的には後者で押し切った方が、ネタのクオリティを高めたのではないかと思う。バスター・キートンの例もあるし。

■いなだなおき(アインシュタイン)『言い返す言葉』
「誰にでも使える言い返しの言葉」を紹介すると言っておきながら、不細工ないなだ当人を含む一部の人間にしか使えない言葉ばかり取り上げるというベタな導入が堅実で良い。どんどん悪口の対象がいなだに限定されていく構成も堅実。一ネタ終わるたびに挟み込むブリッジも、客を飽きさせない演出として有効に働いている。どこまでも、どこまでも堅実。ただ、あまりにも堅実過ぎるので、何処かで大きなアクセントが欲しいよなあ、という気も。途中で挟み込まれていたイラストがその役割を果たしていたと思うけど、もうちょっと欲しい。

■徳井義実(チュートリアル)『落語家・ヨギータ』
以前、徳井がR-1決勝で披露したキャラクター“ヨギータ”を再利用したネタということで、当時は早々に見捨てたネタ。しかし、今になって見ると、これはかなり面白い。序盤でヨギータお得意の下ネタ漫談で客を惹きつけておいて、途中から「師匠の車の走行距離」を掘り下げていく漫談にシフトチェンジ、最後はショート落語で場を繋ぐという三部構成になっている。とにかく「師匠の車の走行距離」にクレームを入れるという着眼点が素晴らしい。観ている側としては「なんでそんなこと気にするの?」と思うと同時に「……でも、分からんでもないなあ」と思ってしまう、この絶妙さ。このくだりを言いたいがために、ヨギータを落語家にしたんじゃないか。徳井のイラッとくるポイントが垣間見えるショート落語も面白い。大会に呆れたからって、芸人のネタごと否定してしまったことを、深く反省。

■キャプテン渡辺『ギャンブルで大勝ちしたクズ』
競馬の大穴を的中させたキャプテンの身の周りの反応について、クズの視点で語る漫談。キャプテン=クズという前提があってこそのネタなのだが、それがきちんと観客に伝わっていなかったためか、ところどころで空回っていた印象。それに加えて、「風俗」「トチ狂ってるから」などのワードで、大幅に引かせていた。ここは場馴れしていなかったから……と考えるべきなんだろうか。悪い意味で、先の徳井とは対照的なネタだったといえるのかもしれない。

【Cブロック】
■千鳥 大悟『フリップ漫談』
フリップ漫談を始めようとするも、それとはまったく違ったところで起きたアクシデントを受けて、ネタを放ったらかしに客に向かって怒鳴り散らすというコント。とてつもなくシンプルな構成のネタなので、自身をどれだけ面白く演じられるかが重要になってくるのだが、その意味において大悟はちょっと力不足。キレている様が面白い芸人(例:松本人志)が演じれば、もっとコミカルになったんじゃなかろうか。あえて低レベルなスケッチブックの内容も、あまり効果的に働いていなかった。(余談だが、事前VTRでのイキりぶりから察するに、そもそも決勝戦に上がってきたこと自体が大悟にとって想定外だったんじゃないか?)

■ヤナギブソン(ザ・プラン9)『屁の段取り』
家に帰る前に、ふっと漏らした一言「帰ってメシ食って風呂入って屁ェこいて寝よか」のスケジュールを、どこまでもどこまでも突き詰めていくコント。下らないことを掘り下げていくスタイルのネタだが、その行程が現代的かつ国際的になっていく様がとにかく心地良い。「ワード機能」「USB」「Yahoo!知恵袋」をここまで正しく取り入れたコントって、過去に無いんじゃないか。単なる自分本位な考えかと思わせておいて、外国人から同意するコメントを貰える展開も素晴らしい。オチも絶妙なんだが、もうちょっとキレのある結末を迎えてもらいたかった気もする。

■ヒューマン中村『こと war the 辞典/名言・名台詞shoot』
一般的に知られている日本語の一部を英語に置き換えることで、ニュアンスは似ているけれどもまったく新しい意味の言葉を生み出すスタイルのフリップ漫談。とどのつまりはダジャレなわけだが、言葉を組み合わせることで従来の意味からかけ離れた印象の言葉にしてしまうセンスが、そんな印象を控えめにしている。ただ、構成の練りが甘く、ウケのバランスがあまり良くない。なんで名台詞のくだり、「人の振り見て我がふりNow on sale!」をあの場面でもう一回出さなかったのか……。

■スギちゃん『ワイルドスギちゃん』
自身をワイルドと称し、その根拠となるエピソードを次々に挙げていく漫談。基本的な設定は、オリエンタルラジオ『武勇伝』と同様。しかし、『武勇伝』に垣間見られた中田のブラックセンス的な要素は完全に排除され、徹底して、ワイルドと称して的外れなことをしているギャップに固執している。それ故に、とにかく分かりやすい。それでいて、言葉選びも上手い。観客の予想を裏切る話の構成も絶妙。オーソドックスな設定に頼ることなく、きちんと練られていることがよく分かる。これで、演者に愛嬌があるんだから、ウケないわけがない。

【FINAL STAGE】
■COWCOW 多田『お題ボックス』
予選よりもちょっと間を取ったギャグが増えている印象。五十音ではなくギャグのタイトルそのものを引き出しているので、ちょっと時間に余裕があるからなんだろう。瞬発力を重視しない分、ゆったりと世界観を楽しめるようにはなっている……が、基本的な感想は予選と同じ。

■徳井義実(チュートリアル)『変態漫談』
変態を自称する男が、日常の中でさりげなくパンティを被るにはどうすればいいのかを提案、そのまま様々な現状に対して疑問を呈し始める。頭にパンティを被ったまま正論を語る、そのギャップが主な笑いとなっている……のだが、ギャップだけで乗り切れるほど構成が練られていない。ところどころでパンティを被っている状態と交差するくだりも見られたが、それだけでは厳しい。せめて、「さりげなくパンティを被る」くだりをもう少し引っ張って、下地をしっかりと整えていれば、そのバカバカしさだけで乗り切れていたかもしれないが。友近やキャプテン渡辺、スギちゃんのネタを観た後にこれはちょっと厳しい。

■スギちゃん『ワイルドスギちゃん』
予選で見せたワイルドネタを始めるかと思いきや、中盤からワイルドというキャラクターを前提とした小手先のボケで連発し始めるという驚きの展開に。恐らく、ワイルドネタだけでは優勝できないと思い、ナンセンスなボケへとシフトチェンジしていこうと考えたのだろう。事実、面白かった。ただ、ナンセンスに至るまでの流れが唐突で、あまり観客に伝わっていなかったようにも見えた。そこの押しの弱さが、最後の最後で響いた。個人的に「生まれたてのワイルド」は、かなり好きなボケではあったのだが……。

『R-1ぐらんぷり2013』決勝戦は、2月12日午後7時より放送予定。
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

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https://twitter.com/Sugaya03

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