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『笑わせて笑わせて 桂枝雀』

笑わせて笑わせて桂枝雀笑わせて笑わせて桂枝雀
(2003/05)
上田 文世

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“上方落語の爆笑王”と呼ばれた、二代目桂枝雀の人生を綴ったレポート。

落語家には変わり者が多い。もとい、変わり者だからこそ、落語家になったのだというべきか。まあ、卵が先か鶏が先かというような話になってしまうので、そこは掘り下げない。とにかく、落語家には変わり者が多くて、だからこそ珍妙なエピソードに事欠かない。事欠かない、が……こういう時に具体例を挙げるなどという当意即妙の対応を取れるほど、私は器用ではない。まあ、そういったエピソードを集めた芸談本の類いは、それこそバカみたいに世に出回っている。テキトーなのを手にとって、読んでみるといい。何事も勉強だし、なにより私は義務教育じゃないんだから……っと、余談が過ぎた。

桂枝雀のエピソードは、それら既存の落語家たちのエピソードとは少々赴きが違う。これまで、落語家に関するエピソードといえば金とエロスとヒロポンにまみれていることが多かったのだが、枝雀のエピソードはいちいち“天才”じみている。やれ、中学校での成績はオール5だっただの、やれ、養成工の入学試験の成績は最高点(数学と英語は満点に近い)だっただの、やれ、学校の先生に死生観を説いていただの、とにかくとんでもない。それでいて、お笑いのセンスも天才的だった。高校二年生の時には、弟と一緒に視聴者参加ラジオ番組『漫才教室』にて漫才を披露し、あーっという間に人気者になった。また、これが縁となって、桂米朝の元に入門することが許されたというのだから、なんとも恐ろしい高校生である。

その天才ぶりを分かりやすく示したエピソードがある。以下、枝雀の実姉の証言より。

「駅前の本屋さんで、付けで本を買うてました。演芸関係でなくて、哲学書みたいな本だった。ある程度本がたまると、達(※枝雀の本名)はそれを束にして古本屋に持っていく。苦しい家計の中で母親に負担させて、売っても大したお金にはならんのにと非難したら、達がこう言うんです。「活字はもう全部、頭の中に拾うてしまったんやから、この本はもう白紙と一緒や」って。達らしい理屈やなあと思いました」


読み返すという発想が無い!

そんな枝雀だが、とにかく稽古の鬼だったという。

といっても、弟子に対して鬼だったのではなく、自分に対して鬼だった。米朝の弟子だった頃のエピソードとして、米朝夫人・きぬ子さんが言うには「掃除機を使いながらもネタを繰る。そうなるともう、周りが見えませんからね。ホースをガラス窓にぶつけてはガチャーン、花瓶を倒してはガチャーン」と、失敗りもしていた。「繰り始めたらオチまで行かないとやめないんです」とは、米朝事務所の小林氏の談。「店の前に立っても終わらない。着席しても終わらず、店の人がビールを持ってきてもまだやってる」。

四番弟子の桂雀々師匠によると、「師匠はネタを書いた六十枚のメモ用紙を棚に置いていて、それをサッと引き出して、おっ『軒付け』かとか言って、繰りながら家を出る。サゲの時がちょうど家の前で、そこでドアを開けて帰ってくる。そしてまたカードを引いて、今度は『不動坊』かと言って、また家を出る。多いときは、四、五回もそんなこと、やってました」とのこと。

活字を拾ったからと読んでしまった本をとっとと売ってしまう枝雀。にも関わらず、ことあるごとに落語の稽古を繰り返していた。その理由について、枝雀は妻や弟子にこう語っていたという。

「世間の人は一日八時間は働く。我々は一席語って、せいぜい三十分か、四十分。世間さんが働いてる分、我々はちゃんと稽古しとかんと、顔向けが出来ん」


本書には、これら枝雀の天才的エピソードの数々のみではなく、海外公演をするまでに至った“英語落語”の話、理想を追求するあまりに陥ってしまった“鬱”の話、そしてその悲劇的な最期に至るまでのプロセスが、丁寧な取材と調査を元に書かれている。また、妻と長男が語る父親としての枝雀、八人の弟子たちが語る師匠としての枝雀についての対談も収録されている。そこには、筆者の並々ならぬ枝雀への強い想いが溢れている。

最後に、枝雀と親交の深かった落語作家・小佐田定雄氏の言葉を引用する。

「物凄い人でした。理論の裏付けを持って、上方落語を語れる人でした。天才だったという人がいます。確かに天才でしょうが、稽古するのにだれない天才でした。稽古することで、あれだけの大きな成果を獲得していった。私はそう思います」

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No title

僕も最近ちょこちょこ落語を見てます。
桂文枝(三枝)師匠の落語で爆笑したのを覚えてます。

桂枝雀さんは松本さんが好きとよく言ってますね
一度、「時うどん」だったと思いますが見たことあります。
あのうどんとても美味しそうに見えました、素晴らしいです。

最期はなんたる・・・余談ですが父が枝雀さんを見たことがあります。
本当に余談でしたねw

ちなみに落語で現在ハマってるのはキョンキョンですw

No title

当代文枝師匠、実は聴いたことないんですよねえw
関東系の新作派はそれなりに抑えているんですが、どうも上方がアマい。
枝雀師匠の『時うどん』は未体験です。
でも、きっと面白いんでしょうねえ。うどん美味そでしたかw
最期はねえ…最期…うーん。

キョンキョンw いや、なんで笑ったw
いいですよねえ、キョンキョン。上手いし、面白いし。
新作も良いですしねえ。どんなの聴いてます?

菅家さんへ

お恥ずかしいですが、ニコニコ動画で視聴しましたから
ですが、いずれは購入したいと思います。
基本的にお笑いは動画サイトで見てますから、最近は
チョコチョコ購入してますけど・・・

キョンキョンで見たのは「時そば」「夜の慣用句」「ほんとのこというと」
時そば以外は創作落語ですかね。

No title

キョンキョンのネタ、個人的には『いし』がオススメです。ちょっとホラーっぽい。
『時そば』、いいですよね。僕もあの動画で観ました。
コメントの大半がマクラのコロッケそばに対する反応という…w
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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