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さらばウクレレの男。

ウクレレ人生ウクレレ人生
(2005/01/26)
牧伸二

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牧伸二が亡くなったというニュースを目にしたとき、私は高速バスに乗り込んだところだった。学生時代の友人の結婚式に参加し、懐かしの友たちとの再会を果たして、心地良い疲れと共に帰路につこうとしていたためだ。これが単なる“死”であるなら、私もそこまでは衝撃を受けなかっただろう。御年78歳。日本の平均寿命を考慮すると、決して早過ぎるとはいえない年齢だ。しかし、それが川へと飛び込んだ末の死……即ち“自殺”となると、話は違ってくる。78歳という高齢で、どうして自ら死を選んでしまったのか。最近の彼の状況を知らない人間には分からないが……。

牧伸二といえば、なんといってもウクレレ漫談のイメージが強い。「あ~あ~、やんなっちゃった~♪」という歌詞に載せて繰り広げられる時事ネタは、軽快であると同時にシンプルに社会の風刺を描いていた。西条昇『ニッポンの爆笑王100』(白泉社)によると、例えばこういったネタがあったのだという。

フランク永井は低音の魅力
バーブ佐竹も低音の魅力
水原弘も低音の魅力
漫談のマキシンは低能の魅力
あ~あ~ やんなっちゃった
あ~あ~ 驚いた


オリンピック・ブームは家庭の中も
朝の出がけに今日の小づかい
手を出しゃ女房が「ハイ、あなた」
百円亭主じゃ銀メダル
あ~あ~ やんなっちゃった
あ~あ~ 驚いた


このような牧のネタを、西条氏は“歌版の時事四コマ漫画”と評している。なるほど。いわれてみると、確かに原作版『サザエさん』のトーンによく似ている。後者のネタなんか、夫が「ドヒャー」と言いながら卒倒している場面が目に浮かんでくるようだ。このスタイルが、私の様な20代の人間にまで浸透しているということに、改めて驚かざるを得ない。ただ、ウクレレを用いた漫談スタイルは、師匠である漫談家・牧野周一に推奨されて始めたらしい。曰く、「未熟な話術をカバーするため、師匠が発案して下さった」。

そんな牧だが、実は全盛期の頃に自殺を試みたことがあったらしい。牧が司会を務めていた演芸番組『大正テレビ寄席』(1963年~78年)のプロデューサー・山下武による述懐本『大正テレビ寄席の芸人たち』に、こんな記述がある。

昭和三十六年(一九六一)か三十七年のことだ。事務所のスケジュール表にびっしり書き込まれた仕事の量を見て「ゲーッ」となった彼、こりゃあとてもオレのような芸歴の浅いやつにはこなせない、どうしようと思い詰めて、箱根の山の中へ行ったことがある。
 そのときは、本当に“自殺”まで考えたそうだ。が、林の中をどんどん行くと、仔犬が出てきて吠えられた。しかも仔犬に追いかけられて、一目散に逃げ帰ったというところは、甚だシマラナイ結末だ。しかし、本人としては、マジメな話である。自殺を決意した男が仔犬に吠えられて一目散に逃げて帰るのは、いかにも彼らしくもあるが。このとき死ななかったおかげで、日本放送作家協会の「大衆芸能賞」を受賞したことを考えれば、仔犬に感謝すべきでは……。


川の近くに仔犬がいたら、また覚醒してくれていたかもしれない。合掌。
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お悔やみ申し上げます。
自殺であってもウクレレ漫談を嫌いではいなかったことを願います。

唯一無二の芸風でしたねえ。
だからこそ、惜しい。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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https://twitter.com/Sugaya03

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