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『落語CDムック 立川談志3「居残り佐平次」「あくび指南」』

落語CDムック立川談志 3 (Bamboo Mook)落語CDムック立川談志 3 (Bamboo Mook)
(2011/02/15)
立川談志、川戸貞吉 他

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【居残り佐平次】(1968年7月25日)
小学三年生か四年生だった頃、クラス全員が居残りをさせられたことがあった。どういう事情だったのか詳しくは覚えていないが、確かクラス共用のボールを乱雑に扱ったとかいうことで、「これからどう使っていけばいいか、ちゃんと相談しなさい」という担任の指示があったように記憶している。当時、休み時間には本ばかり読んでいた私にしてみれば、これは完全なるとばっちりであったので、話し合いにはまったく参加しようとはしなかった。いや、そもそもの話、話し合いというものは行われなかった。気が付くと、クラスメートのほぼ全員が男子のグループと女子のグループに分かれていて、そこには対立構造が出来上がってからだ。結果、話し合いはまったく噛み合うことなく、無駄に過ぎていく時間だけがそこにはあった。当然のことながら、中には早く帰りたがっている生徒や、何がきっかけだったのか泣き出している生徒もいたが、私はその状況を我関せずを決め込み、むしろそれを楽しんでいた。一見すると、面倒でややっこしいことも、自分が深く関わっていなければ無責任に楽しめる。そんなことを学んだ一幕であった。

学校や会社などで使われているイメージの強い“居残り”というシステムだが、男が女遊びをするために訪れる楽しいトコロ、遊郭でも使われている。つまりは勘定を払えない客を引き止める、居残りさせるわけだ。ところが、この居残りになるために、わざと遊郭にやってくるバカもいる。『居残り佐平次』の主人公、佐平次である。銭の無い連中を「オレがなんとかする」と言いくるめて、一緒に品川の遊郭へと繰り込んだ佐平次。他の連中は先に帰らせ、手前は言い訳だか能書きだかを垂れに垂れて、どうにかこうにか部屋に居座ったが、店の人間に詰め寄られて己の無銭飲食を告白。悪びれもせず、自ら布団部屋で軟禁状態に。ところが、この男が部屋からこっそり抜け出して、店の人間に構ってもらえない客のところに顔を出して相手にし始める。これがまた、バカに評判がいい。気が付けば、店の人間も佐平次のことを頼るようになり、客からの要望があれば「ちょいと、いのど~ん!」とお呼びがかかるほど。仕事を取られた店の連中も困り果て……。

器用に客の要望に答えられる佐平次は、ごく普通に遊郭の従業員としても出世できるんじゃないかというくらいに多才だ。そこに説得力を持たせるためなのか、原点では、胸を患っていて、その治療のため遊郭に居残っているという設定になっている。『居残り佐平次』をモチーフとした映画『幕末太陽傳』に登場するフランキー堺扮する佐平次も病気持ちだ。しかし、談志演じる佐平次は、病気も何もしちゃいない。健康そのもの。では、どうして居残っているのかというと、ただ居残りたいから居残っている。人生成り行きで楽しんでいる。そんな談志の自説を知ってからというもの、『居残り佐平次』を聴くたびに、あの日の居残りを思い出す。無責任だからこそ楽しめた、あの成り行きさ。責任を伴う人生を過ごしている今、あの楽しさはなかなか味わえない。ああ、佐平次みたいに生きられないものか……。

【あくび指南】(1967年11月19日)
以前、小説家でノンフィクションライターの中山涙先生の自宅で、夕飯と晩酌をご馳走になったことがあるのだが、そこで「ダウンタウンの『あ研究家』って、『あくび指南』なんだよねえ」というような話が持ち上がった。当時の私は先生の言い分に対して直感的に違和感を覚え、「そうでしょうか?」と反論の構えを見せたのだが、実はダウンタウンの『あ研究家』をきちんと認識していなかったので、明確に答えを提示することが出来ないまま、気が付くと次の話題へと流れてしまっていた。あれから一年、なんとなく意識はしていたものの、きちんと確認してはいなかったのだが、先日、ようやく動画サイトで『あ研究家』を見ることが出来た。

ダウンタウンの『あ研究家』とは、松本人志扮する異質の研究家“あ研究家”が様々なシチュエーションで発せられる「あ」を紹介するというコントだ。日常的に口にする可能性の高い「あ」を演じることで、観客が「あ」の発せられる状況を思い起こして笑うという、あるあるネタに似た傾向のネタである。しかし後半、「あ」と同じシチュエーションを「み」に置き換えただけの“み研究家”が現れる。“あ研究家”と同じ展開を意識していた観客は、その裏切りに思わず笑ってしまう。そして、更に“フィリピン研究家”という実在しそうな研究家が登場するのだが、これもまた同様の展開を迎える。しっかりと固められたフォーマットを引っくり返してしまう構成は、バカリズムの『トツギーノ』に似ているといえるのかもしれない。

一方の『あくび指南』はというと、こちらもかなり変り種のネタだ。そのストーリーは、近所に“あくび指南所”という場所が出来たから一緒に行かないか、と友だちを誘ってやってきた男が、あくびの先生にあくびの方法を習うというもの。一見すると冗談の様だが、教えるほうも教わるほうもマジメだ。まずは春夏秋冬四季折々のあくびのうち、一番易しい夏のあくびを教えてもらう。あくびが出るシチュエーションを提示し、実際にあくびをぶわぁぁぁぁぁぁっと吐く。男もこれをやろうとするが、急ごしらえで覚えようとしているためか、なかなかシチュエーションを再現できない。そんな様子を何度も何度も見ているうちに、付いてきた友だちの様子が……。元来、生理として吐き出される筈のあくびを習うという無意味さ、これを談志は「倦怠の極致」、そして「最も凄い落語」と語っている。だが、談志自身は、あまりこのネタを演じていない。自分には向いていないという認識があったのかもしれない。

『あ研究家』と『あくび指南』の類似点は、どちらも「あ」という単純な言葉(もとい単語)が出てくるシチュエーションを描いているというところだろう。ただ、次から次へとシチュエーションを提示する『あ研究家』に対し、『あくび指南』におけるシチュエーションは“夏のあくび”のみ。また、先に書いたように、ネタの構成もまったく違う。『あ研究家』はきちんとリアルと直結し、その上で崩壊しているが、『あくび指南』は最初から最後まで完全にナンセンス。だから、『あ研究家』と『あくび指南』はやっぱり違うと私は思います……と、とりあえず自分の意見をまとめてみたんですが、先生どうですか?
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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