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『ラーメンズ第8回公演「椿」』(02年9月)

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人生に躓いたとき、人は自らの原点を振り返るのだという。自分がどのように生きてきて現在の位置に到達したのかを確認し、また新たなる一歩を踏み締めるためなんだそうだ。なるほど。思えば、「歴史は繰り返される」と聞いたことがある。かつて自らが経験した出来事を復習することにより、これから先の人生にも対応できるようにするという考えは、正しく道理に適っている。ならば私も、改めて自らの原点を思い返し、その歴史を未来へと進むための糧としようではないか……と思ったわけではなく、ただなんとなく久しぶりに『ラーメンズ第8回公演「椿」』を観た。なお、冒頭の言葉は私の創作である。むひゃひゃひゃひゃ。

私にとってラーメンズは、とてつもなく重要な存在である。私がお笑いというジャンルに深く興味を抱くようになったのも、お笑いDVDを収集するという偏執的な趣味を始めるきっかけとなったのも、バナナマンやおぎやはぎに代表される関東の若手コント職人たちに注目するようになったのも、全てラーメンズが原因であるといっても過言ではない。それほどに彼らの笑いは当時の私にとって衝撃的で、かつ魅力的だった。

彼らに出会うまで、私にとってのコントは「志村けん」「ウッチャンナンチャン」等のイメージが強かった。個性的なキャラクターたちがバカバカしいやりとりを繰り広げるというような、シンプルで分かりやすい大衆向けの笑い。そんなコントに対するイメージを、ラーメンズは見事にブチ壊してくれた。笑いが生まれるとは思えないほどに洗練された舞台美術、静かにじっくりと展開される面白味を感じさせるストーリー、そして理解できなくても笑ってしまえるナンセンス。そのステージを観た瞬間、私の目からウロコがポロポロポロポロポロポロポロポロこぼれ落ちた。と、同時に、世の中にはこんなにも素晴らしい作品が、殆ど知られていないのか……と驚いた。今のように、レンタルビデオで容易にお笑いのDVDをレンタルできない時代の話である。当時、最新のお笑いはテツandトモであり、ダンディ坂野であり、はなわだった。彼らが若手芸人の代表として奮闘していた最中にラーメンズの舞台を観てしまったのだから、そりゃ衝撃も受けざるを得ないというものである。

『椿』は私が初めてDVDで鑑賞したラーメンズの公演作品である。それ以前に、ラーメンズの公式ベスト盤『Rahmens 0001 select』や『爆笑オンエアバトル ラーメンズ』を鑑賞していたので、いわゆる「ベストからファンになったヤツ」といえるだろう。『椿』が開催された2001年当時、彼らはコンビ結成6年目の若手だった。

今でこそ「完璧な舞台どーこー」言われているが、この頃のコントにはまだまだ粗が見える。例えば、過去の自分と未来の自分に繋がっている糸電話が混乱を生むSF系コント『時間電話』なんか、ちょっとあからさま過ぎてイヤラシイ。ただ、これ以前のライブに、より完成度の高いコントが幾つも観受けられるので、意図的に粗を強めている可能性も否定できない。当時、マスコミでは“アート系”と評されていた彼ら。その印象にあえて反抗したくなったのかもしれない。実際、本作にはバカバカしさを押し出したネタが多い。例えば『心理テスト』というコント。二人の男が心理テストを始めるのだが……。

小林「じゃあ、行くよ」
片桐「うん」
小林「今からオレが言う色に当てはまると思う人を、ちょっと思い浮かべてみて」
片桐「パッと思いついた人でいいのね?」
小林「そうそうそう。……赤!」
片桐「えーとねえ……稲垣先輩!」
小林「うぉー……じゃあね、白!」
片桐「マチコちゃん!」
小林「うわあ、やっぱりなあ。じゃあ、黒!」
片桐「ケースケ!」
小林「オッケー」
片桐「で、で、で、で?」
小林「これで何が分かるかっていうと、あなたの寿命が分かります」
片桐「マジで!?」
小林「マジで。あと60日」
片桐「根拠は?」
小林「医学!」
片桐「医学かぁ~」

(『心理テスト』より)


心理テストを印象付けるフリがしっかりとしているからこそ、最後の裏切りがたまらなく面白い。ここからの会話もとにかく不条理で、ことあるごとに繰り返される心理テストがどんどん破綻していく様はたまらなく爽快だ。興味深いのは、「だるまちゃんとてんぐちゃん」「ダイムラーベンツ社」「木目」など、言葉のセンスで笑いを取ろうとしているところ。こういう貪欲に笑いを取りに行っていたこともあったんだなあ……と、なにやらしみじみしてしまう。この他にも、片桐扮するインタビュアーがスターを相手に大暴走『インタビュー』、ごく普通のサラリーマンの心境を片桐が全力で表現する!『心の中の男』、ある男の部屋に二人の悪魔がやってきて……『悪魔が来たりてなんかいう』など、特異な設定で繰り広げられるバカなコントが多数収められている。

一方、いわゆるラーメンズの“アート性”を意識したコントもある。『高橋』だ。

小林「おう、高橋」
片桐「おう、高橋」
小林「あれ? 高橋は?」
片桐「うん、まだ来てない。もうすぐ来るんじゃないかな、高橋と一緒に」
小林「あ、じゃあ高橋と高橋はどうした?」
片桐「あ、あいつら来られないって」
小林「マジで? じゃあ、高橋と高橋抜きで高橋行くのかよ?」

(『高橋』より)


ご覧の通り、登場人物の大半が“高橋”な世界を舞台としたコントだ。小林扮する高橋と片桐扮する高橋の会話は一見するとなんとも奇妙だが、彼らの世界ではそれが正当化されているのである。むしろ、違う名字のヤツは、高橋姓から強い差別的感情を抱かれている。一見すると、ただただナンセンスで下らないコントに見えるが、その根底には我々が持っている差別意識に対する疑念が渦を巻いている。……こういう分かりやすいメッセージをさらっと盛り込んでいるところが、いわゆる知識層に人気を集めている理由なのだろう。こういうのが嫌いな人もいるんだろうけどね。

個人的に大好きなのは、『日本語学校アメリカン』というコント。アメリカ人に扮した二人が日本語の授業として歴史上の人物や出来事の名称を読み上げていくのだが、その意味をまるで理解しようとせずに、どんどんニュアンスだけでまったく違う意味の言葉として昇華していく……上手く説明できていない気がしないでもない。とりあえず観てもらうのが一番良いのだが……。

小林「ゴセイバイシキモク!」
片桐「ゴセイバイシキモク!」
小林「ゴセイバイシクル!」
片桐「ゴセイバイシクル!」
小林「五千円バイシクル!」
片桐「五千円バイシクル!」
小林「五千円倍にして返してくる!」
片桐「五千円倍にして返してくる!」

(『日本語学校アメリカン』より)


こういうことばっかりやっているコントだといえば分かってもらえるだろうか? 個人的には、小林演じるアメリカ人教師のビジュアルもたまらないんだよなあ。アメリカ人……なのか、なんなのか……?

それにしても『椿』、久しぶりに観たけれど相変わらずの面白さだった。本当に10年以上前の公演かと疑ってしまうくらい、ネタとしての鮮度がまったく落ちていない。シティボーイズもそうだけど、ナンセンス系のコントはとにかく息が長い。時代を超越して面白い。だからこそ、彼らは常に過去の自分と戦わなくてはならない。戦って勝つことを是としなくてはならない。現在、ラーメンズが2009年4月~6月にかけて開催した第17回公演『Tower』以後、単独公演を行っていない。今、彼らは見えないところで戦っているのだろうか。


■本編(78分)
「時間電話」「心理テスト」「ドラマチックカウント」「インタビュー」「心の中の男」「高橋」「斜めの日」「日本語学校アメリカン」「悪魔が来たりてなんかいう」
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ザブングル×やまもとまさみ ツィッター使えないのでこちらに。ナタリーにあります

すいません、何の話でしょうか?

椿は発想重視型の印象を受けますね。

先に面白い設定を提示してから、そこから捻った展開に繋がるんですけども

置いてけぼり感が無いのは所々にリアリズムが見えるからでしょうか。

「悪魔が来たりて」に見える小さないざこざ感、「高橋」に見える非日常の日常、「時間電話」に見える欲望。

ただ、個人的にはインタビューのコントを見て驚きました。

こんなオーソドックスなコントも出来るのか!と。

何しろ、椿もまた面白いです。

観客への意識の強さを感じますね。
流石は『爆笑オンエアバトル』出場経験者…関係無いか。
『インタビュー』は今観ると凄いですねえ。
このラインナップの中では、どう見ても異質。
どういう心境で作られたネタなんでしょうか。

「椿」はラーメンズさんを最初に見るのに
一番オススメしたい作品ですね。
中にも「心理テスト」はオンバトで初オーバー500という
記念すべきネタ。「心の中の男」は大変分かりやすいので
ラーメンズさんが苦手な方でも楽しめる内容になっている。

ただこの中でよく分からないのは「斜めの日」
斜めというより、片桐さんのキャラの方がおかしくて、
斜めの日がそこまで重要なのかが分からなかった。
不便なのは分かるけど・・・
僕にはよく分からなかった。面白いですけどね。

椿の中で気に入っているのはドラマチックカウントですね。
綻びなく上手いことやっているだけなのに笑える……。数字と50音が収束してるだけなのに何故笑えるのでしょうか。
新しい笑いを生み出したという点でドラマチックカウントは高く評価できるコントであると思います(何様だ)。

>最近どう?さん
『心理テスト』は名作ですよねえ。ベスト盤からは外されましたけど、不条理な会話が広がっていく様子は…って、これは本文に書いたからいいや。『斜めの日』は、あえてその特異な設定を目立たないようにすることで、よりその世界の日常性を強めようとしたコントという風に解釈しております。

>財閥さん
凄いHNだな。『ドラマチックカウント』は不思議なコントですねえ。初めて観たときは笑って、でもああいうネタだからしばらく飽きて、でも久しぶりに観るとやっぱり面白い。ラーメンズのコントには色々なのがありますけど、基本はやっぱりこのネタに見られる「50音」だと思うんですよねえ。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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