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『芸談・食談・粋談』(五代目柳家小さん×興津要)

芸談・食談・粋談 (中公文庫)芸談・食談・粋談 (中公文庫)
(2013/05/23)
柳家 小さん、興津 要 他

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落語家では初の人間国宝に選ばれたことでも知られる五代目柳家小さんと『古典落語』『古典落語(続)』の著者である興津要の対談本。小さん夫婦がお互いのことを綴ったエッセイに始まり、小さんの出生、入門、芸談などが対話形式で展開している。まだまだ落語を聴き始めて日が浅い私には興味深い話も幾つかあったのだが、読了後には殆ど覚えていないという体たらく。私は対談本が好きな人間で、実際にそういう類いの本をよく読むのだが、いつもこういう調子である。読んでいるときは楽しいのに、読み終わったら何も覚えていない。テンポのいい会話が展開されている様子、それだけを楽しんでしまっているきらいがある。まあ、それも楽しみ方の一つとして、自分で自分に納得してしまうしかない。ただ、“花より団子”なタチもあってか、終盤で繰り広げられる食い物屋の話はやけに頭に残っている。欲望に忠実だね、どうも。幾つか抜粋してみる。

小さん「上野・浅草辺でうなぎというと、むかしから食ってるせいか、どうしても伊豆栄にいっちまう」
興津「場所も池の端だし、戦災をうけなかった家だから、建てものにも情緒があるしね」
小さん「かば焼きも、白焼きも、どっちもいいもんだ」
興津「おやじさんが能書きいうだけのことはある(笑) でも、師匠といくと、白焼きで、かなり飲んで、そのあと、がっちりとうどんをやるから、腹が張っちまって(笑)」
小さん「どうして、ああ食えるのかねえ(笑)」
興津「いや、あきれたもんだ、おたがいに(笑)」


小さん「最近流行の炉ばた焼きでは、あづまをわすれちゃいけない」
興津「焼きとり、生鮭、生いか、鯛の粕漬、さつま揚げなんてんで、大衆的で、種類も多いし、第一、値だんが安いのが魅力」
小さん「だから、よけいにうまい(笑)」
興津「おでん、じゃがいもの煮付けなんてものもなかなかいける」
小さん「ここの名物ぞう煮をわすれちゃいけない」
興津「これを英訳して、エレファントボイルド(象煮)(笑) 通称エレファント」
小さん「エレファントっていうと、おやじがすましてぞう煮を持ってくる(笑)」


興津「新橋の烏森のつるやの焼きとりはもつ焼きの根だんでちゃんとした鳥で、安いし気はきいてるし、いいもんだ」
小さん「銀座には目もくれずに、烏森まで飛んでくるところがいいね(笑)」
興津「目はくれたいんだけど、予算の都合で、銀座はオミット(笑)」
小さん「いつもいっぱいなのは、客も味と値だんを心得てるからだ。皮をポン酢で食うのもうまい」
興津「つくねも、すなぎもも一流だ。それに、ここの酒は、一流の銘柄の酒を二、三種混ぜて、独特の味をだすそうだけど……」
小さん「そりゃあ売れるからできることだ」
興津「ここの店は、店の連中も客もジャイアンツファンだから注意しなくっちゃあ……以前、タイガースが勝ったラジオを聞いて志ん馬(※八代目。本書では“六代目”と表記)が拍手して、ひとりシラけたことがある(笑)」
小さん「まぬけだね、あいつは(笑)」


1975年出版の本なので、既に閉店している店もあるようだが、幾つかの店は残っているらしい。東京観光の際には、是非とも伺ってみたいと思う。

基本的には「昔は良かった」という印象の話を展開することが多くて、そういう論調が苦手な私はたびたび苦笑いを浮かべたが、しかし、年を取れば多くの人がそういう思考に到達してしまうのだと思うと、まあそれも一つの考えだなと納得し、気付けば二人の楽しそうな会話を傍で聞かせてもらっている丁稚の気分になっていた。「あ、師匠、そろそろお時間でございます……」。とどのつまり、押しつけがましくない、いい本だ。
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菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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