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『ぼのぼの』が描く“日常”の苦味

突然だが、あなたは『ぼのぼの』をどこまで知っているだろうか。

ぼのぼの (36) (バンブーコミックス)ぼのぼの (36) (バンブーコミックス)
(2012/05/26)
いがらしみきお

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原作を読んだことのない人にとって、『ぼのぼの』はかわいらしい動物たちが右往左往しているだけの子ども向け日常マンガというイメージがあるのではないだろうか。そして、それはある意味において、正しい認識である。少なくとも、テレビアニメとして放送されていた『ぼのぼの(95年~96年)』は、その趣の強い内容になっていた。テレビアニメ版『ぼのぼの』だけを知っている人にとって、『ぼのぼの』は間違いなく子ども向け作品なのである。

だが、原作はそうではない。

『ぼのぼの』の主人公、ぼのぼのはちょっとしたことを考えすぎてしまうラッコの少年だ。貝を割るための石を探しているときには「ボクはどの石も好きだけど、どの石がボクを好きなのか分からないなあ」と言って友だちのアライグマくんを惑わせたり、自分以外のみんなは普段は皮を被っていて「ボクと会ってない時のみんなは皮をぬいで休んでるんだ」「どうしてボクだけみんなとちがうんだろう」と一人悲しくなったり、「どうして楽しいことは終わってしまうんだろう?」とずーっと考えていたりしている。そんなぼのぼのの純朴な悩みを見て、読者である私は笑う。そして、ふと気付かされる。ぼのぼのが悩んでいることの多くは、私たちが日常を過ごす上で、そ知らぬ顔をして気にしないようにしていることだからだ。でも、ぼのぼのは子どもなので、考える時間がたくさんある。彼は子どもである限り、私たちが見逃している疑問について考え込み続けなくてはならないのである。大変ですね。

そして今、『ぼのぼの』の疑問は更なる境地へと達しようとしている。しかし、その疑問に直面しているのは、ぼのぼのではない。ぼのぼのの一番の友だち、シマリスくんである。

『ぼのぼの』の世界において、シマリスくんは最も多く家族が描かれている。ぼのぼのやアライグマくんは基本的に父親の姿しか提示されていないが、シマリスくんには両親に長姉(ダイねえちゃん)・次姉(ショーねえちゃん)が存在し、作品には準レギュラーとして登場している。テレビアニメ版『ぼのぼの』にも登場していたので、ご存知の方も少なくないのではないだろうか。

現在、シマリスくんの両親は伏せっている。

おとうさんは以前から病気がちだったのだが、それを看病していたお母さんまで倒れてしまったのだ。ダイねえちゃんは結婚して、ショーねえちゃんは独り立ちして、それぞれ家にはいない。それで否応無しに、シマリスくんが両親の看病をすることに。それでも、気持ちだけでも楽しく看病しようと、自分なりに試行錯誤をしてみるものの、病気のせいで陰鬱になっている両親はそんなシマリスの感情を受け止められず、無碍に扱われてしまう。

シマリスくんはクノーする。

シマリスくん「あんなに元気で幸せそうだったものが、たった何年かでなぜあんな風になってしまうのか。なぜそんなに変わってしまうのでぃしょう


ある日、シマリスくんはおとうさんと一緒にテンペロの花を見に行く。年に一度、決まった季節にしか咲かないテンペロの花。その花を目にしたおとうさんは、ぼそりと「おかあさんも連れてくればよかったよ、来年も見られるかどうかわからないし」と口にする。それを聞いたシマリスくんの感情は、それまでのクノーと相俟って大爆発する。

シマリスくん「何度も見れる方がいいではないでぃすか! シマリスだってそのために看病してるのに! それなのに一回でいいとか言われたら、シマリスはどうしたらいいのでぃす! 治してあげたいから看病してるのに! なのにぜんぜんよくならないから苦しいのに!


この後、シマリスくんにかけたおとうさんの言葉が素晴らしいのだが、それは単行本でご確認を。

現在、『ぼのぼの』が描いている疑問は、相変わらず私たちが見逃している疑問である。しかし、それはもう、日常を過ごす上で見逃してしまえるような領域のものではなくなっている。何故ならば、それらの疑問は、いずれ私たちが直面しなくてはならない問題、目を逸らしてはならない現実そのものに直結しているからだ。その意味において、『ぼのぼの』は日常マンガといえるだろう。だが、そこで描かれているものは、穏やかで温もりに満ちた、私たちが理想とする日常ではない。辛くて、苦しくて、でも認めざるを得ない日常なのである。

そんな『ぼのぼの』を、私はもっと知ってもらいたいと思う。
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自分もぼのぼの大好きです。天使のCGアニメと一緒にアニメがやっていた頃から読んでいたので人生で一番長く付き合っている漫画です。ぼのぼのの住む森もどんどん生活環境が変わったり、シマリスくん達が経験により成長をする分、親の世代が老いていったり。最近はシマリスくんがぼのぼのに起こったり、冷静に返すシーンも増え不思議な気分です。色々悲しいことが増えているのに、四コマスタイルでオチをつけるのが(わりとパターン化してますが)すごいですよね。いがらしみきおは「ネ暗トピア」も、作画ですが「羊の木」も最高ですよ。あと、「ガンジョリ―いがらしみきおモダンホラー傑作選」の中に入っている、落語家を主役にした漫画「ゆうた」が奇妙でホラーでなんか色々印象に残る作品でした。もし読んでらしたら、感想などお聞きしたいです。

あの感じを四コマ漫画で続けられていることは、本当に凄いと思います。
むしろ、四コマ漫画だからこそ、あの感じになっているといえるのかもしれませんが。
『羊の木』は立ち読みしましたが、凄いですよね。あの巻き込みっぷり。
『ガンジョリ』は購読済です。ゆうた…いいですよね。また機会があれば!
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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loxonin1000mg@yahoo.co.jp

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