スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『人間仮免中』(卯月妙子)

人間仮免中人間仮免中
(2012/05/18)
卯月 妙子

商品詳細を見る

本を開いて、まず驚かされるのは、その稚拙な絵だ。まるで子どもが学習用ノートの隅っこに描いた落書きの様で、なんとなく立ち読みをしてみた人は間違いなく「これが本当に一般流通している本なのか?」とクラクラすることだろう。だが、本書を読み進めていけば、絵が稚拙であるからこそ、その内容の壮絶さに打ちのめされることが分かる。この物語は、あまりにもハードで、とてつもなくディープで、そして驚くことに、真実である。

物語は、作者の卯月妙子が、歩道橋から道路へと顔面ダイブする場面で幕を開ける。それが事実なのか、虚構なのか、この時点では読者に説明が与えられない。ただ、その衝撃的なシーンは、ページをめくるたびに記憶から消失されていく。卯月が老年の男性・ボビーと出会い、半ば強引に同棲生活を始め、心の病と闘いながら日々を過ごす、その破天荒な生き様に心を奪われるからだ。たびたび、卯月はボビーとぶつかり、ボビーも卯月とぶつかる。でも、そこには愛がある。相手のことを思って、しっかりと生きていこうとする気迫がある。それなのに、ふとした瞬間、冒頭のシーンがやってきてしまうのである。それは、「あっ」という声をあげる余裕すらも与えず、とても自然にやってくる。そこからはまさに怒涛の展開だ。一命をとりとめて、入院することになった卯月は、そこでとんでもない妄想に襲われる。はっきり言ってムチャクチャで、道理の通らない内容だ。でも、それを卯月は真実だと思い込み、困惑し、激昂し、涙する。そんな卯月のことを、家族やボビーはしっかりと受け止める。そこにも愛がある。思いがある。気迫がある。

でも、これは「感動の物語」と持ち上げられるものではない。これは、あくまでも「卯月妙子の物語」である。それ以上でも、それ以下でもない。そして、この物語は、これからも「卯月妙子の物語」として続いていく。それだけである。ただ、いつか、その漫画家としての業が噴き出してきたら、また作品にしてほしい。読むから。だから、死ぬなよ。死んだら漫画描けねぇぞ。と、読者の業を以て、記す。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

検索フォーム
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。