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『評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」』(横田増生)

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」 (朝日文庫)評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」 (朝日文庫)
(2014/06/06)
横田増生

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さて、『評伝 ナンシー関』である。

ナンシー関と聞くと、どうしても思い出してしまう不愉快な記憶がある。何年か前に、某掲示板で私の文章のことを、「ナンシー関から影響を受けているのが見え見え」と評した輩がいたのだ。無論、実際に私がナンシー関の文章から影響を受けていたのであれば、多少の不快感で済んだかもしれない。だが、そもそも当時の私はナンシー関の文章を殆ど読んだことがなかった(むしろ、知人から「町田康とナンシー関の文体は影響を受けやすいから気を付けなさい」と忠告を受けていたので、読まないようにしていた)ので、「影響もへったくれもあるか!」と余計に激怒したのである。しかし、この件をきっかけに、私はナンシー関のことを意識せざるを得なくなり、彼女の著作をつまみ食いするようになってしまった。だから、もしも私の文章から、ナンシー関の影響を少しでも感じたとしたなら、全てそいつのせいである。ざまあみろ。何が。

『評伝 ナンシー関』は、2002年に39歳で急逝した消しゴム版画家・ナンシー関の人生と実績を、当人の著作や肉親・知人・関係者への取材を元に辿った一冊である。単行本は2012年に発行され、本書は2014年に文庫化された。単行本が発売された当時、何度か書店で本書を見かけたことがあったのだが、「ナンシー関の本をそこまで読んでもいない私が、評伝を先に読むというのも気が引けるなあ……」という理由で、購入を躊躇していた。が、文庫版が発売されていることを知るや否や、当時とさほど読書量が変わっていないにも関わらず、そそくさと購入してしまったあたり、そのポリシーの無さに涙が出そうである。ていうか、単なるケチだ。まったく。

さて、この本。ナンシー関の評伝として読むのも面白いが、ナンシーの著作を熟読していない私には、むしろ随所で引用抜粋されているナンシーの文章に興味を持った。ありきたりな表現になってしまうが、とにかく文章が瑞々しい。何も言わずに今の時代にひっぱり出してきても、遜色無く楽しめるのではないかと思う。本書で取り上げられている文章の多くが現役として活動している人たちだから、というのもあるかもしれないが。挿絵の様に、2ページに一回のペースでナンシーの消しゴム版画が押されているのも、嬉しい要素だ。ライトノベルで育った私には、非常に有難い仕様である。

一番感心したのは、小倉智昭のくだり。小倉が自身の出演番組のショッピングコーナーで見せている、その商品への薀蓄の深さにツッコミを入れ、「いろんなモノに関して『造詣が深い』感じを出している。本当にそうなのか。嘘なら嘘と言って。本当なら何者?」(本文61頁より)と書いたところ、なんと小倉サイドが接触してきたというのである。正直、連絡をする小倉が無粋に見えて仕方ないが、とはいえ、下手に切り返すとナンシーが痛手を負う可能性も否めない。この状況において、ナンシーは小倉の申し出をさらりと断り、次の様に書いている。

「ありがたい事ではあるが、当然連絡はしなかった私である。本当の理由など知りたかないのだ。私は小倉に『何故?』と問いかけたかっただけなのである。いや、本人の目に留まることすら望んではいない。私はただ『私は小倉に「何故?」と問いかける者である』ことを明らかにしておきたいだけなのだ」(本文61~62頁)


「私はただ『私は小倉に「何故?」と問いかける者である』ことを明らかにしておきたいだけなのだ」というくだりに「おおーっ」と感心してしまったのは、私だけではあるまい。多分。ちなみに、この件について話を聞くために、筆者は小倉の事務所へ取材を依頼したのだが、返答は無かったとのこと。しょっぱい。

巻末には、マツコ・デラックスへのインタビューを掲載。ナンシーと一度だけ面識があり、その体格と論調から“第2のナンシー関”との呼び声高いマツコの、ナンシーに対する厚い感情が溢れ出している。「多くの人は、もうテレビ評に関して、高いレベルの作品を求めてないのかなって」以降の発言には、あえて批評をしていないというてれびのスキマ氏のことを思い出してみたり……。媚びじゃないぞ。

知っている人はもちろん知らなかった人にも楽しめるであろう一冊だ、と思う。〆っ。
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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