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『ひきだしにテラリウム』(九井諒子)

ひきだしにテラリウムひきだしにテラリウム
(2013/03/16)
九井諒子

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イースト・プレスが運営するWebメディア「マトグロッソ」で連載されていたショートショートを一冊にまとめた超短編作品集。マトグロッソといえば、てれびのスキマ『タモリ学』高野文子『ドミトリーともきんす』など、洗練された傑作を世に送り出しているイメージが強い。かつての私は、こういうところで作品を発表できる人間になりたいと思っていたものだが、今の私はすっかり面倒臭がりのひねくれチキン野郎である。何処で道を誤ったんだか。

さて本書。傑作とはいえない。いや、いわせない。いわゆる傑作といわれている作品は、多かれ少なかれ読者にショックを与える。読後、感情を平静に戻すことが出来ず、しばし呆然としてしまう。それが傑作というものだ。しかし、本書はそういった類の衝撃をもたらさない。ごく自然に、そのショートショートの魅惑的な世界へと引き込み、心身に染み込んでいく。だからこそ、後になって気付かされる。その凄味に。

ごく一般的に、長編よりも短編に作者のセンスが多分に反映されていることが多い。今後の展開を踏まえて整合性を保たなくてはならない連載作品とは違い、一球勝負の短編には後先を考える必要が無いからだ。むしろ、その一球で後悔しないようにするために、そこに渾身の力が込められている……というべきなのかもしれない。だが、本書には、作者のセンスといえるものが見受けられない。無論、皆無というわけではないが、そういった側面をなるべく出さないようにしている。なにせ、作風はおろか、画風まで変化している。実をいうと、私は九井諒子の他の作品を読んだことがないので、どれが本当の彼女の画風なんだかさっぱり分からない。それほどに、どの画風も出来上がっている。だから、その凄味に気付かない。おっとろしか話ばい。

どのショートショートも面白いが、とりわけ印象に残っているのは『龍の逆鱗』『記号を食べる』『かわいくなりたい』『夢のある話』などの、現実ではありえないことを徹底的にリアルに描いた作品。かつて、私が愛して止まないコント師の一組であるラーメンズが、自身のコントの中でこんなことを言っていた。「日常の中の非日常ではなく、非日常の中の日常を描く。一見すると異常な世界観だけど、その世界の住人達にとってはいつもの出来事って感じがするのす。それが心地いいのすのすー」(『アトムより』より)。ラーメンズ自身の作風について自己言及しているとも受け取れる台詞回しだが、まさにこれと同じモノを先述のショートショートたちに感じたように思う。

傑作ではない。名作と呼ぶに相応しい。
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No title

九井諒子さんいいですよね。私はひきだしにテラリウムだと「龍の逆鱗」や「スットコ訪問記」なんかがお気に入りです。九井さんが連載中のダンジョン飯も「龍の逆鱗」っぽくて面白いですよね。

No title

「スットコ訪問記」いいよねえ。着眼点の面白さだけで終わらせずに、ちょっとロマンスの味を残しているところがニクい。『ダンジョン飯』って、帯で紹介されているヤツだよね。気になるな…。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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