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『エレ片コントライブ ~コントの人7~』+『エレ片コントライブ ~コントの人8~』

エレキコミックと片桐仁(ラーメンズ)によるスペシャルユニット“エレ片”。彼らのコントを初めて観たのは、2005年にリリースされた『流出!エレ片ライブ』だった。当時の私は、エレキコミックのこともラーメンズのことも知っていたが、二組が仲良しであるとは知らなかったので、このDVDを目にしたときは非常にコーフンした記憶がある。しかし、蓋を開けてみると、その内容は非常にヌルかった。それぞれのコンビの持ちネタを焼き直しただけのユニットコント、「片桐仁が初めて相方小林賢太郎にキレて言った一言は?」に代表される内輪色の強いお題による大喜利、ライブ映像を無視して片桐が収録に遅刻したことを言及する和気藹々とした副音声……。あまりのヌルさにAmazonレビューでは納得の酷評を受けていたが、それでも、三人が楽しそうに盛り上がっている姿はとても微笑ましくて、鑑賞中は気持ちが和やかになったものだ。

それから三年後の2008年、エレ片のコントライブを収録した『エレ片コントライブ~コントの人~』がリリースされた。『エレ片コントライブ~コントの人~』の記憶が根強く残っていた私は、本作の内容にあまり期待していなかった。むしろ三人のヌルいやりとりを楽しめればそれでいいと、かなりハードルを低めに設定して、鑑賞に臨んだ。しかし、蓋を開けてみると、そのクオリティの高さに驚いた。収録されているコントはオール新ネタ、それぞれまったく違った魅力に満ち溢れ、三人も全力で演じていた。個人的には『リアル湯けむり殺人事件』というコントが大好きだった。温泉旅行にやって来た三人が殺人事件の現場に遭遇し、自分たちの中に犯人がいるのではないかと妄想を膨らませるという内容で、サスペンス調なのにとことんバカバカしくて、三人の魅力を存分に引き出していたように感じた。あの時のヌルいエレ片はそこにはいなかった。そこにいたのは、確固たる“エレ片”というトリオだった。

2015年現在、エレ片は『エレ片のコント太郎』というラジオの冠番組を抱えるほどに、強い人気を集めるユニットとなっていた。先の『エレ片コントライブ~コントの人~』も年に一度の恒例となり、今年で9回目が開催されることとなった。片桐に至っては、本丸である筈のラーメンズとしての活動がすっかり控え目になってしまい(最後の本公演が2009年だと!)、お笑い芸人としての活動の主軸がエレ片になっている感もある。そのため、私は時々「いっそのこと、このユニットで『キングオブコント』に出てみるのはどうだろう?」と考えるのだが……。
 
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(2014/01/24)
エレ片

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2013年の【コントの人】は1月に開催された。会場となったのは、草月ホール(東京)、名古屋中村文化小劇場(愛知)、サンケイホールブリーゼ(大阪)、イムズホール(福岡)の四か所。当初は東京を中心とした一部の会場でのみ上演されていた【コントの人】だが、2009年からはその規模を全国へと拡大し、今現在に至るまで着々と集客数を伸ばしている。本作には草月ホールの模様を収録。まったくの余談だが、東京の芸人はどうして、やたらと草月ホールでライブを開催するのだろうか。

オープニングコントは『ぽい』。巨大な剣で背中を突き刺されて倒れ込んでいる今立が、ナニカっぽい人たちに助けを求めるコントだ。無論、その悲痛な叫びに応えるような人間がエレ片のコントに登場する訳は無く、今立はただただ雑に扱われ、時間だけが刻々と過ぎていく。瀕死の状態にある人間がテキトーな扱いを受けてしまうナンセンスさが、なんとも面白い。……まあ、そもそも剣が背中に刺さっているのに、けっこう平気そうにしている時点で相当に面白い状態なのだが。ナニカっぽい人たちに扮した二人の見た目も印象的。とりわけ、某有名人を思わせる片桐のビジュアルは強烈で、それ以外の何者にも見えない。舞台全体の画が衝撃的な、オープニングに相応しいコントだ。

東京体育館で撮影されたというオープニングムービーを挟んで、続いてのネタは『アイススケート』。先にアイススケートを楽しんでいる友達の悪口を、一緒に遅れてきた友達に対して延々と喋り続ける性格の悪い女を描いたコントだ。随所に散りばめられたギャグで幾らかはマイルドになっているが、その場にいない人間の悪口で盛り上がろうとする人間の姿がとてもリアルに描かれている。でも、その恐ろしいほどに歪んだ性格があまりにもひど過ぎて、ついつい笑ってしまう。トリオの特性を上手く利用した一品だ。友人たちの発言に対して、いちいち屁理屈をふっかけて「ハイ、論破!」とドヤ顔で言ってのける男を描いた『論破』は、インターネット上でよく目にする光景を可視化したかのようなコントだ。ちょっとずつ論理が破綻していく男のみっともなさが滑稽で、そこから更にドイヒーなことになってしまう展開もたまらない。全体的に批評色の強いネタだ。対して、『スパムさま』は女性に対する勝手な決めつけを次々にあげつらう、バカバカしさの際立つコント。人間的にも性的にもバカが渦を巻いている中学生のノリをそのまま持ち込んだような、どうしようもない内容がとにかく下らない。

とりわけ印象に残っているのは『マルチタレント』。駅のホームで電車を待っている片桐に、見知らぬ男が声をかけてくる。男は片桐に握手を求め、写メを求め、メールを覗き見していたことを悪びれずに告白する。間違いなくヤバいファンだ。ところが、会話を交えているうちに、彼が“マルチタレント”であることが分かる。あくまで自称だが、ちゃんと芸能事務所にも籍を置いているらしい。しかし、詳しく話を聞いてみると、これがあからさまに胡散臭く……。はっきりと芸能の世界に身を置いている片桐に対して、さも自分が同格であるかのように堂々と話を進めていく男の対比が笑える……と同時に、不気味にも感じられる。また、その男を見た目が地味な今立が演じているという所が、実に生々しい。後に、副音声のコメンタリーを聴いて、このネタがやついの実体験を殆ど再現しただけだと知ったときは、なかなか驚いた。彼は実際に東京にいるのである。もとい、彼が在籍する芸能事務所が、東京にはあるのである。その乱暴な商売を成立させてしまう都会の激しさに、ちょっとだけ冷汗を垂らした。

特典映像は、ライブの幕間に流された『トミーとマツ』。1979年に放送されたドラマ『噂の刑事 トミーとマツ』をモチーフとしたボードゲームを、エレ片の三人が遊んでいる姿を撮影しただけの映像である。勿論、コントの幕間に流される映像なので、そこまで大笑いするような代物ではないが、三人のメリハリの利いたリアクションを見ていると、なにやらこちらも楽しくなってくる。ボードゲームの自由性に芸人の気質が上手く乗っかった、いい映像だった。


■本編【85分】
「ぽい」「オープニング」「アイススケート」「達人」「マルチタレント」「Persistant Efferonte」「論破」「スパムさま」「ゲレンデの数だけ抱きしめて」「エンディング」

■特典映像【7分】
「トミーとマツ」

■副音声
エレ片3人によるコメンタリー


エレ片コントライブ ~コントの人8~ [DVD]エレ片コントライブ ~コントの人8~ [DVD]
(2015/01/30)
片桐仁(ラーメンズ)、やついいちろう(エレキコミック) 他

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先に言ってしまうと、傑作である。

2014年の【コントの人】は1月から2月にかけて開催された。会場となったのは、銀座博品館劇場(東京)、東別院ホール(愛知)、サンケイホールブリーゼ(大阪)、スカラエスパシオ(福岡)、札幌市教育文化会館(北海道)の五か所。エレ片が北海道に上陸したのは今回が初めて。いよいよ、その人気は無視できないものになりつつある。本作には銀座博品館劇場の模様を収録。ここもよく名前を聞く会場だ。

これまで【コントの人】ではオープニングコントが必ず演じられていたが、本作はいきなり映像で幕を開ける。実際のライブでは『ミラクルガール』というコントが披露されたらしいのだが、諸般の事情により本作からはカットされているとのこと(どうやら楽曲の著作権上の問題が絡んでいるらしい)。なんだか出鼻をくじかれたような気分になったが、このオープニングがやたらと格好良かったので、すぐに気が紛れた。ちなみに、『我々のような職業』というコントも、これまた諸般の事情によりカットされているという(こちらは某有名ゆるキャラをモチーフとしたコントが演じられたらしい)。仕方がないこととはいえ、残念。

というわけで、結果として一本目になってしまったのが、『タワーマンション』というコント。高層を売りにしているタワーマンションの50階にある共用スペースで行われる、一桁台の低層階で暮らしている三人の住人たちによる会合の様子が描かれている。いわゆるヒエラルキー(階層性)をタワーマンションの高さに置き換えた、風刺の色合いの強いコントだ。高層階の住人に対する彼らのコンプレックスがだだ漏れになっている姿はとても面白いのだが、一方で、その矮小な姿に自分を重ねてしまう場面も。笑いの中に含まれた苦味。今回は、これまでのエレ片とは少し違うのではないか、と思わせるに十分なコントだった。

この後のコントも、とにかく凄い。

『コントオブコント』への出場を考えている劇団員の二人が芸人についている作家に自作のコントを指導してもらう『ねじまきミドリ』は、劇団特有の閉鎖性をテーマにしたコントだ。劇団で主宰を務めているというねじまき(片桐)が決して自らのブスを認めようとしない姿が笑いどころになっているが、話が進むにつれ、その闇の深さがじわりじわりと見えてくる。また「劇団員のコントを作家が指導する」という設定が上手い。本来ならば外からの侵入を許さない空間に、物事を冷静にナナメの視点から切り込む作家が口出しすることを正当化させる。絶妙だ。

おしゃれなカフェを訪れた女性たちのやりとりを描いた『カフェ女子』は、サブカルの要素を存分に詰め込んだ捻くれの逸品。サブカルに対する固定概念に基づいた嫌悪感により、おしゃれなカフェに毒づき、80年代の宝島を読んでいる友人に毒づき、だけどテレビには出演しないことで知られるお笑い芸人・カタギリーズは好きで仕方がないという、とてつもなく面倒臭い女性の姿が描かれている。“サブカル”という漠然としたジャンルを捉えようとしているために、他のコントに比べて内容がやや散漫的な印象を受けるが、その一つ一つのパンチが力強く、時に観ている人間へ強烈な一撃を食らわせる。終盤のブッ壊れた展開も含め、インパクトという意味では史上最大級の一作である。

しかし、今回最も印象に残るコントといえば、やはり『全肯定人間』だろう。かつて一緒にプロジェクトを立ち上げたことのある今立と差をつけられてしまった片桐は、彼が“全肯定人間”という自分が言ったことをなんでも褒めてくれるロボットを引き連れていることを知る。今立が仕事で成功しているのは、そのためか。卑屈に落ち込む片桐に対し、今立は全肯定人間を貸してあげることにする。これで仕事が上手くいくに違いない。ところが、全肯定人間は片桐の卑屈も何もかも全てを肯定してしまい……。過去、【コントの人】のラストには、あだち充を意識したほんわか恋愛ドラマを展開するコントが演じられていたが、この『全肯定人間』は直球のブラックユーモアで、とても面白い……し、ここにもやはり苦味がある。「だってさ! 頑張ったらさ! 差がバレちゃうじゃん!」という片桐のセリフは、ちょっと堪えた。あるあるだ、これはあるあるだ! ……と、そこから更に展開する、まさかのオチ。それもまた人間である、と肯定されたような気がした。

特典映像は、ライブの幕間映像より、『エレ片カードゲーム』『仏跳膳(ファッチューチョン)』『ELE-KATA SURVIVAL GAME』を収録。どの映像も楽しさが伝わってくるが、とりわけエレ片に関するエピソードを存分に盛り込んだオリジナルカードゲーム『エレ片カードゲーム』が面白かった。なんなんだ、ちゃんちゃんちゃんこ鍋……。

バカバカしいコントのイメージが強いエレキコミックと、見た目のインパクトばかりに目がいく片桐仁によるユニットということから、なんとなく評価が低いように感じられるエレ片だが、そのコントはじわりじわりと極みに到達しようとしている。ネガティブな感情が渦を巻いた生々しさと、それに見事に絡まってみせる下らなさが融合した笑い。個人的には、人間関係を描き続けてきた東京03のコントに、決して負けていないように感じられる。

現在、エレ片は『エレ片コントライブ コントの人9』を開催している。今回は東京、北海道、大阪、愛知、福岡に加え、岡山でも上演する予定だという。円熟を迎えつつある今、彼らのコントを観ない理由はない。近隣に住んでいるのであれば、是が非でも行くべきである……私も行きます。超楽しみ。


■本編【69分】
「オープニング」「タワーマンション」「ヘブンアーティスト」「ねじまきミドリ」「リュージュ」「カフェ女子」「全肯定人間」「エンディング」

■特典映像【26分】
「エレ片カードゲーム」「仏跳牆(ファッチューチョン)」「ELE-KATA SURVIVAL GAME」

■副音声
エレ片3人によるコメンタリー
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

連絡用メールアドレス
loxonin1000mg@yahoo.co.jp

Twitterアカウント
https://twitter.com/Sugaya03

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