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厚切りジェイソン『WHY JAPANESE PEOPLE!?』(2015年6月24日)



外国人の視点から、日本の素晴らしさをアピールするテレビ番組が増えた。空港で日本にやってきた外国人にインタビューしたり、伝統工芸の職人を目指している外国人を追いかけたり、逆に海外で生活している日本人の艱難辛苦の日々を描いた再現ドラマを制作したりして、忘れられてしまった我が国の本来の魅力を再認識させようとしているわけだ。それ自体は悪いことではないが、日本人が「日本は素晴らしい!」と日本人に伝えようとする構図がどうもしっくりこない。かつて、日本人といえば、本音と建前を使い分けた奥ゆかしい人種だといわれていたような気がするのだが。テレビで大々的に取り上げてもらわなくてはならないほど、日本人のアイデンティティが揺らいでいるということなんだろうか。

そんな時代に現れたピン芸人、厚切りジェイソン。生まれはアメリカ合衆国、芸人であると同時にIT企業の役員を務めている。スゴイデスネ。ひょんなことからザブングル加藤と知り合い、「会社を辞めずに芸人を目指すことが出来る」と勧められてワタナベコメディスクールへと入学。2014年9月に卒業し、そのままワタナベエンターテインメント所属となる。その翌年、『R-1ぐらんぷり2015』決勝戦への進出を果たし、その名が広く知られるように。……流石、IT企業の役員を務めている男は、芸人になっても有能だ。

厚切りジェイソンのネタは、漢字をテーマにしたボード漫談だ。「漢字難しいよ!」と嘆きながらホワイトボードに漢字を書き殴り、その内容にツッコミを入れていく。例えば、数字を漢字で書く際に「一」「二」「三」と一定のパターンを見せておきながら「四」と続くことに対して「わざとだろ! この罠!」とツッコんだり、「金」と「同」を合わせて「銅」になることに対して「(金と銅が同じには)ならないから!」とツッコんだりしている。日本人が意味の代用品として取り扱っている漢字を、少し違った視点から改めて切り込んでいるわけだ。

とはいえ、正直なところ、ネタだけだとそこまで面白くはない。もし、このネタを日本人がやっていたとしたら、それほどウケなかっただろう。重要なのは、このネタを演じているのが、アメリカ合衆国からやってきて漢字を勉強中の厚切りジェイソンだという点だ。漢字を勉強中だから、ネタが浅薄でも仕方がない。日本語の意味がズレていても、アメリカ人だから仕方がない。……そこには、漢字を使いこなせる日本人の優越感みたいなものが見え隠れしている……ような気がしないでもない。ただ、率直に面白いネタもあり(「始」のくだりは何度見ても笑ってしまう)、これから更なる進化を遂げる可能性を秘めているのも事実だ。より表現力を高め、よりネタの構成を練り上げ、よりアドリブを増やし……いつかは新宿末広亭でネタをやってもらいたいものである。目指せケーシー。

本作は、そんな厚切りジェイソンのベスト盤だ。


先述したボード漫談『漢字』を中心に、外国人であることを逆手に取った漫談やコントが収録されている。『R-1ぐらんぷり2015』での活躍を受けて満を持してのリリースという印象があるが、本編鑑賞後は、ちょっと時期尚早だったのではないかと思った。普段はやっていないような漫談やコントがイマイチなのは仕方がないにしても、肝心の『漢字』もテレビなどで披露されたバージョン以外はどれも薄味で、急ごしらえに無理矢理作り上げたように感じられた。もっと丁寧に時間をかけて煮詰めていけば、ずっと面白い漫談になっていただろうに。勿体無い。実に勿体無い。日本にやってきた外国人のジョンソンが東京で独りぼっちにされて心細い気持ちになっている姿を描いた『KOKOROBOSOI』は、ちょっと面白かったが。これはまったくの想像だが、構成作家として参加している我人祥太が関わっているのではないだろうか。ネガティブな雰囲気と言葉のチョイスが、なんとなく彼のコントに似ているような気がしたのだが。

あ、ちなみに無観客収録なのでご注意を。


■本編【44分】
「漢字 其の一」「外国人だから」「漢字 其の二」「KOKOROBOSOI」「漢字 其の三」「和菓子のこころ」「漢字 其の四」「2020年オリンピック開催にあたっての諸注意」「漢字 其の五」「ケントくんの憂鬱」
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こんばんは。

厚切りジェイソンさんの漢字ネタ、充分に面白いんですが

最初から怒鳴ると言う、いきなりフルスロットルなテンションに置いてけぼりになる人もいると思うんです。

自分がそうなんですが・・・。

徐々に怒りのテンションが上がっていく、と言うのはやはりセンスがない指摘なんでしょうか。

No title

おはようございます。

いやいや、大事な指摘だと思うよ。やっぱり急にテンションが上がると不自然だし、それに付いていけなくなるのは当然のことだからね。ただ、あえていきなり激怒することで、観客の意識を一気に惹きつけようという計算なのかもしれない。…そこまで考えてないかな、どうだろう。

無観客収録、ホワーーイッ?

お久しぶりです。

昔イギリスで有名なOGWTって音楽番組があったんですが、一時無観客収録があって、アーティスト達は皆文句言ってたのを思い出した。絶対、テンション上がんない。良いパフォーマンス出来ないって。

受け取ってくれる人が目の前にいたら、それが凄いパワーになるのは、お笑いも音楽も同じです。

お笑い賞レースで良かったパフォーマンスには、必ず芸人と客席との対話や一体感があるもので、だから何度でも見たくなるんだと思います。

なので、無観客収録はホント止めて欲しい。一時、ネタ見せ番組で、明らかに別撮りした客席の映像と声をつぎはぎしてるやつがありましたけど、あれも酷かったなー。お笑いを愛する人間がすることじゃない。

って、厚切りジェイソン関係無い話でスミマセンでした。

No title

そうだよねえ。爆笑問題が時代ごとの時事ネタ漫才をパッケージ化している『爆笑問題のツーショット』シリーズっていうのがあるんだけど、これも最初はスタジオの無観客状態での収録(ただしスタッフ笑いはある)で、でも後で観客を入れての収録に変わっていってて、やっぱり漫才のノリが変わっていったもんね。お客さんがいるから芸人はやる気になるし、そんな芸人の姿を見られるからお客さんも笑えるし。そういう関係性は大事にしていってもらいたいんだけど…事務所かなあ。事務所のアレなのかなあ。
プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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