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『うなぎのダンス』(いしいしんじ)

うなぎのダンス (河出文庫 い 20-1)うなぎのダンス (河出文庫 い 20-1)
(2008/10/03)
いしい しんじ

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いしいしんじという人の本は、なんだか不思議だ。彼の作品はどれも、なんともいえない優しさに包まれているのに、その優しさの中から、目を逸らしてしまいたくなるほどの狂気が滲み出てくる。優しさと狂気。この二つは、相反するようで非常に近い。例えば、宗教に没する人たちの多くは、他人に対する優しさを持っていながら、時に狂気的行為に殉ずることがある。そういうものだ。

そんないしいしんじの対談本は、やはりなんともいえない優しさと狂気に満ちていた。全体を通して見れば、それは単なる雑談にしか過ぎないのに、そのやりとりの一つ一つに目を向けると、じんわりと狂気が見えてくる。ただ、それはいしい氏に理由があるというよりも、対談相手に理由があるように思う。いしい氏は彼らの発言を全て受け入れるだけで、それはいわば鏡の如く、対談相手の存在を倍増させているわけだから。

中でも狂気的だったのが、在日韓国人で芥川賞作家の柳美里との対談だ。「自称ロリコン」「私文書偽造の告発」「妹は部屋で焚き火をしていた」「財布を落としたと偽って見知らぬ人に千五百円頂く」等々、とてもマトモとは思えない言動を繰り出す柳と、それらの言動を全て受け入れてしまういしい氏の、ツッコミの無い狂気の応酬。なんともいえない味わいである。

一方で、ただ単純に正気とは思えない対談も幾つか。例えば、この対談集でいしい氏は故・勝新太郎と対談を果たしている。当時、既にカツシンは亡くなっているので、対談は全て妄想として展開する。また、いしい氏は本書で印刷機と対談する。もちろん、印刷機が喋るわけがない。いしい氏が、印刷機から漏れる機械音を勝手に分析して、無意味に対談を展開しているのである。これを狂気と呼ばずして、何を狂気と言おうか。

そんな本書のシメに書かれている「文庫のためのあとがき」は、いしい氏が親不知を抜いた直後であったために、やたらとマ行とラ行とファ行の多いものになっている。……狂気というか、ただ単に捻くれているだけなんじゃないか、という気がしてきた。うーん。ふぃっふぁいふぁ、ほうふぁんへひょふらふぇれ。

余談。個人的に傑作だと思っている短編集『白の鳥と黒の鳥』が文庫化された模様。じんわりとしたブラックさがたまらなく面白いので、気が向いたら読んでみて、なんて言ってみたり。ぐっつぐつ。
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菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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