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『雨ン中の、らくだ』(立川志らく)

雨ン中の、らくだ雨ン中の、らくだ
(2009/02/19)
立川志らく

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笑って、泣かずに、驚いた。立川談春『赤めだか』も相当な名著であったが、本書はそれ以上の名著と言えるかもしれない。いや、文章としては『赤めだか』の方が、幾分か上だ。エッセイとしても、あちらの方が仕上がっている。しかし。しかしだ。談志という落語家についての分析は、こちらの方が段違いに上だ。半端じゃない。これが正解なのかどうかは分からないが、どれほどの愛を持って談志の落語を観てきたのか、嫌という程に伝わってくる。とある人物が書いた『赤めだか』の感想文を読んだ人が、「立川流ってカルトだよな」という旨のコメントを残していたことがあったが、カルト的という意味では本書の方がずっと上だ。それが良いのかどうかは、知らない。

本書は全十八章で構成されている。各章では志らくが落語家として成長していく様が、エッセイとして綴られている。この辺りは『赤めだか』と同じ。ただ『赤めだか』と根本的に違うのが、各章の終わりで談志の古典落語についての解説がなされているという点。この解説が、実に分かりやすい。談志と他の落語家の違いについて述べるだけではなく、どうして談志がそのように演目を演るのかという意図もしっかりと解説されており、古典落語に詳しくない人間でも納得の出来る文章になっているのだ。いよいよカルト的だが、どっかの大手宗教団体の書籍よりはずっと面白いので、気にしない。

もちろん、エッセイ本として読んでも、ちゃんと面白い。この辺は『赤めだか』と重複しているシーンもあるので、平行して読むと面白いかもしれない。例えば『赤めだか』には、談春を含む前座たちが築地の河岸で働いている最中、志らくが立川流に入門するシーンがあるが、本書にはこれを志らく目線で見たシーンが描写されている。両方を合わせて読むと、双方の見解の違いが面白い。一部、ここで取り上げてみよう。まず、『赤めだか』から。

「お、お、おはようございます」
 第一声から志らくはオドオドしていた。
「おはよう。僕は談春。よろしくね」
「志らくです。よろしくお願いします」
「早速だけど、築地行き断ったんだって」
「はい」
「どうして」
「私は河岸に行くために落語家になったわけじゃありませんから」
 血が逆流した。
「でも、師匠に行かなきゃ破門だって云われたんだろう。それも断ったんだ」
「だって破門も嫌ですから」
「いい度胸だな」
「私は、自分のしたくないことは、絶対にしたくないんです。師匠はわかってくれました」
 僕は自分の全てが否定されたような気がした。


続いて、本書より。まずは、談志が河岸に修行へ出かけた前座たちについて語るシーンがあるので、そこから見ていただきたい。

「いいか、あいつらはな、築地に行けと言ったら本当に行っちまったんだ。まあ、行くのはいい。でも帰ってこようとしないんだ。誰の弟子になったんだ? 俺の弟子だろ。河岸の仕事が終わったら俺のところに来るがいいんだ。来やがらねぇ。ということは、河岸のほうが快適ということなんだ。あいつらをだな、ベトナムに連れて行って置いてきたとするか、半年で皆ベトコンになっちまうぞ」


 この談志の言葉を受けて、志らくは絶対に築地へと行かないのだと心に決める。しかし、前座としての仕事は失敗ばかり。あまりの失敗っぷりに嫌気が差したのか、最初は評価していた談志も、遂に志らくを築地へと向かわせることを決意し、その旨を伝える。しかし、築地には絶対に行きたくなかった志らくは、その築地行きを断る。その時の心境を、志らくは次の様に語っている。

 師匠に逆らうなんてこの世界ではありえないことです。師匠の言うことは絶対というのが不文律。でも、師匠の「師弟は絶対ではない。ケースバイケースだ」という言葉を思い出しました。築地に行きたくないし、破門も嫌なのだから、ここはどんなことがあってもくらいつかないといけない。私は必死でした。


この志らくの判断は正しかった。談志は志らくを許し、笑いながら「お前だけ築地に行かせなかったのだから、その分ちゃんとやらないと俺がエコひいきしたことになるからな。」という言葉を残したのだった。

この件以外にも、本書では『赤めだか』では語られなかったことが、数多く語られている。二つ目昇進の日のこと、朝寝坊のらくと談春と志らくで結成した立川ボーイズのこと、それがきっかけで落語家を廃業してしまった朝寝坊のらくのこと。物語の流れ上、カットされていた場面が面白いくらいに補正されている。流石は隠れタイトル『青めだか』!

『赤めだか』の興奮冷めやらぬ人たちに捧げられたと言えなくもない、『雨ン中の、らくだ』は落語本ブームのカンフル剤だ! さて、次の担い手は誰かな。談四楼はブームとは違うところを歩いているし、志の輔というのも違う。ブームに乗りそびれた談幸はとりあえず置いといて、ここは福岡吉本所属の経験がある談慶か、ネットスターでお馴染み談笑か……って、立川流とは限らないか。次の落語家本ブームを繋いでいくのは、落語界の皆さんと寄席に集まる皆さん、そして書籍を購入する……あなたたちでーす!

……ツマンナイ落とし方をしてしまった。反省。
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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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