テレビの外のラーメンズ
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ネタ見せ、テレビ出演、レギュラー獲得。これが、若手芸人が“芸人”として存在するために踏まなくてはならない、いわば過程だ。これはお笑いブームの最中でも同様だった。『エンタの神様』『笑いの金メダル』『笑わず嫌い王決定戦(『めちゃイケ!』内コーナー)』などのバラエティ番組でネタを披露し、一般の認知度をそれなりに上げて、テレビ芸人としての活躍の場を広げる。その流れは、今も昔も大して変わらない。
ただ、その流れに一石を投じた芸人が、二十世紀末に現れた。ラーメンズである。
かつてラーメンズも、過程の中にいた。『爆笑オンエアバトル』の常連として活躍し、若手芸人が映像コントを披露する『完売劇場』ではリーダー的存在として君臨。『Quick Japan』に対談・挑戦連載を持ち、書籍や単独ビデオも何本か発表した。知的でリーダーシップもある小林賢太郎と、強烈なキャラクターを持った片桐仁のコンビ・ラーメンズは、若手芸人ブームの中においても、その先頭に立つことの出来るコンビだった。
ところがある日、ラーメンズはテレビから去ってしまった。少なくとも、コンビでテレビ番組に出演するということをやらなくなってしまった。後に小林は某雑誌の対談で、当時を振り返り「片桐がバラエティ出演を拒んだ」と発言しているが、事情を知らない観客にとって、それは初めて若手芸人がテレビに対して背を向けた瞬間だった。
勿論、彼ら以前にもテレビに背を向けた芸人たちは、数多く存在していた。ただ、ラーメンズはそのネタの独自性と、単独公演における“唯一無二”な雰囲気が、その孤高さを際立たせていたため、他の芸人よりも余計に「テレビとの決別」というイメージを強めていたのではないか……と今となっては思う。
ラーメンズのコントは、とにかく独特だった。文豪の小説同士を対決させる『読書対決』、外国人に模した二人が奇妙な日本語を勉強する人気シリーズ『日本語学校』、長縄とわらべ唄で独自の世界を形成した『なわとび』……これらの無駄を一切省いたコントは、それまでの王道だったワン・シチュエーション・コントとは明らかに違ったものだった。
彼らが「テレビとの決別」を果たして以後、若手芸人の動向にも変化が見られるようになった。テレビ出演を意識した芸人が減り、ライブ活動に戻っていく芸人が出始めたのである。彼らはテレビでネタを披露し、ある程度の認知を得て、再びライブ活動へと戻っていった。かつて、ラーメンズがそうしてきたように。
現在、ラーメンズは以前ほどに強い独自性のコントを演じていない。むしろ、そういった類いのネタは減少し、やや芝居がかったコントを多く演じるようになった。それでも、いわゆる「ラーメンズの世界」は崩れることなく、現在も継続している。ただ、その世界像は、今のテレビよりもずっと大衆向けなものになっている。これはある意味、皮肉と言うべきなのだろうか?


