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『オタク成金』(あかほりさとる・天野由貴)

オタク成金 (アフタヌーン新書)オタク成金 (アフタヌーン新書)
(2009/05)
あかほり さとる天野 由貴

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書店で彼の名前を見かけた瞬間、僕が最初に感じたのは「懐かしいな」という実にストレートな感傷だった。九十年代の角川アニメ全盛の時代を体感しているなら、彼の名前を知らない人は恐らく皆無であろう。なにせ当時、彼の名はライトノベルや青年コミックの棚で、かなり目立っていた。どちらかといえば神坂一を愛読していた僕でも、彼の名前はしっかりと記憶に残っている。

そんな彼……もといあかほりさとるが今回発表したのは、なんと新書本。タイトルは『オタク成金』。数ページほど立ち読みしてみると、なかなかに面白そう。流石は九十年代、ライトノベル界を席巻していただけのことはある。難しい単語なんか殆ど登場しないし、言葉のテンポもバツグンに良い。本を買う時は、書かれている情報の興味深さよりも、そこに書かれている言葉のリズムを重要視している僕である。これを買わない理由はない。……ないのだが、その時は購入を躊躇ってしまった。

というのも、この『オタク成金』を発売した新書というのが、あのアフタヌーン新書だったからだ。アフタヌーン新書といえば、如何にもサブカル好きっぽい人を惹き付けようとしているようなオーラ漂う新書。そんなイメージが僕にはあった。そして、そういう「狙ってる感」を漂わせることを、僕は非常に好かなかったのである。しかし。だがしかし。その後も、あの軽妙な文体を読んでみたいという僕の欲望は、頭の中を駆け巡り続けていた。

で、買ってしまったわけだ。そりゃー、あんた。面白そうな本を、たかが出版レーベルに対する嫌悪感だけで買わないだなんて、そんなバカな話があってたまりますかいってんだ。極論、その本が面白いのならば、○日○聞社出版の本だろうが、○文社出版の本だろうが、買って読めば良いのである。フハハハハ! ……と、非常に当たり前の結論に至ったところで、本書の感想を書こうと思う。しかし長い前置きだ。

本書『オタク成金』は、あかほり氏がこの世界に入るまでの経緯について語った「第一章」、エンタメ作品を生み出して大儲けするが、読者に飽きられ始め、どん底へと落ちていった様子を語った「第二章」、エンタメ作品を作るためにあかほり氏が行ってきた作品作りのプロセスを明け透けにした「第三章」、衰退の道を辿っているラノベをどうすれば良いのかについて考える「第四章」の四部構成になっている。「第一章」と「第二章」が思い出話で、「第三章」と「第四章」が自論の展開だと考えて良いと思う

ネット上では、主に「第四章」において語られている「ライトノベルのSF化」という部分について、取り上げられている様だ。それも、とても反発的な意味で。すっかりライトノベルを読まなくなり、最近の青年向けアニメーションに対する興味も無くなってしまった僕には、非常に納得の行く話だったのだが……。ラノベ読者には、ラノベ読者なりの意見というのがあるのかもしれない。ただ、本当に反論したいという気持ちがあるのなら、実際に読んでみないといけないとは思う。実際問題、ネット上で見かけた本書に対する反論の幾つかは、あかほり氏がフォローしている部分を明らかに無視していた。ネットの伝聞だけで読んだ気になっている人が、結構な数いるようだ。ラノベとケータイ小説の類似性については、本書でも触れられてるっての!

そんなこんなで、良くも悪くも話題として取り上げられていることの多い「第四章」だが、個人的には「第三章」に強く感心を覚えた。先にも書いたが、この「第三章」では、あかほりさとるが行ってきた作品作りのプロセスについて語られているのだが、これがまた、かなり詳細に書かれているのである。例えば、読者サービスについて。

「ただ、意識したうえでご機嫌をうかがうってことかって言うと、そうじゃないんだな。例えば、俺、君(注:本書であかほり氏の聞き手役をしているライター・天野由貴)にいつも言うよな。“俺に惚れろ、俺に惚れろ!”って。そのために俺は、いろんな言い方で、俺の魅力を君に伝えるわけだよ! 俺って優しいだろうとか、うまいもの知ってるだろ、とかさ。

 ただ、“俺がこんなに頑張ってるのは、君に魅力を感じてるからなんだぞ”っていう。これが読者サービスなんだな。読んでくれるお前が一番好きだよ、読んでくれるお前のためにこの物語を作ってるよっていう。読者サービスっていうのは、読者を愛することであり、その読者にわかりやすく愛を伝えること。だから、媚じゃないんだよ。いうなればジゴロの心意気だな!」


こういうことを、いともあっけらかんと語ってしまう。こんなことを言ってしまったら、今後のあかほり作品の売り上げに響きそうな気がしないでもないが、当人は今後「いくつかペンネームを使ってやろう」と思っているみたいなので、大した支障は無いだろう。……にしても、ぶっちゃけすぎではないだろうか。この後も、「腐女子は男の友情に燃える」「設定よりも魅力的なキャラを構築しろ!」「デビュー前は人に見せない方が良い」など、自らの経験によって見出した売れるラノベ作りに必要なポイントを、次から次へと語りつくす。

その中でも圧巻だったのが、発想手順の公開だ。なんと本書では、彼がどのようにしてエンタメ系のラノベ作品を生み出してきたのか、その手順まで公開しているのである。これにはかなり驚かされた。どういうことを書いていたのかは、ここでは引用しない。金払って、自分で確認してね。

彼の全盛期に思春期を迎えていた人間としては、色々と興味深い記述が多く、非常に楽しく読むことが出来た。天野女史の存在意義があったのかどうかは、些か考えてしまうところがあったが。『スレイヤーズ』とか、『セイバーマリオネットJ』とか、その辺の作品を楽しく観賞していた人なら、何か感じるところがあるんじゃないかと思う。いやー、面白かった。まんまと釣られたなー。

最後に、個人的にグッときた記述を。

売れなかったけどいい作品なんて、それを言っていいのは、ファンや評論家だけ。“すごくいい作品なのに、なんで売れないんだ”そういうこと言ってる段階で、もうそれはエンタメ業界の人間じゃない。」
(略)
「いい作品なのに、売れない……っていうのは、免罪符になるんだよ。作った人間たちの自己満足、言い訳でしかありえない。じゃあ、売れればすべからくいいのかと言うと、これはすべからくいいんだよ。この業界はまず、売れるか売れないか。売れたら、売れた作品の中で、いい作品か悪い作品かが決められる。売れない作品は、論評の俎上にすら載せられない

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プロフィール

菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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