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『情熱大陸』爆笑問題・太田光編マトメ

五月二十三日放送の『情熱大陸』では、先週の田中裕二に引き続き、爆笑問題の太田光にスポットライトを当てたドキュメンタリーが放送されていた。“あまりにも普通でいられる男”田中裕二とは違い、天才との呼び声高い太田光を取り上げた今回は、通常の『情熱大陸』と同様のテンションで番組が進行していた。が、既に様々なところで、そのスタイルが分析され語られている太田光をドキュメンタリーで取り上げることは、そう容易なことではない。

太田光。1965年5月13日、埼玉県上福岡市(現・ふじみ野市)生まれ。日本大学芸術学部演劇学科在籍中、田中裕二と出会い、1988年3月にお笑いコンビ“爆笑問題”を結成する。結成当初、異色の芸人として注目を集め始めるが、しばらくして当時の事務所から独立し、干される時期が続く。しかし、時事ネタをテーマとした漫才が評価されるようになり、タレントとして確固たる地位を築き上げる。太田が天才と称される所以も、そこにある。時事ネタを手玉に取り、自己解釈の元に笑いへと昇華していくスタイル。今回の放送では、そんな太田の深淵を覗き見る。

番組のオープニング。爆笑問題の二人に“情熱”からイメージされる言葉を、辞書で引いてもらう。先週の放送の通り、田中裕二にとっての情熱は【走る】。「情熱、まっすぐ走る」。競馬好きな田中らしい言葉のチョイスだ。一方、今回の主役である太田の答え。太田はその答えを迷わず、まっすぐに選びだした。「大勢が大声でどっと笑うこと。爆笑の渦に包まれる。爆発させたいんだよね、木っ端微塵に」。太田にとっての情熱。それは【爆笑】。学生時代、既に笑いに対して並々ならぬ熱意を抱いていた太田の情熱は、今もまるで変わらない。
 
十二年前の放送。打ち合わせ中にも関わらず、何処か遠くを見つめている太田光の姿が映し出されている。心、ここにあらず。その間、太田は空想にふけっていた。「昨日も雨降ってたでしょ。あれが……あの……飴玉だったらって、ずっと思ってたんですよ。体中ベトベトでヤだなあって」。あてがわれた控室で寝転びながら、太田は何処かを見つめていた。そして、今。当時の映像を見ながら、太田はつぶやく。「割と衝撃ですよね。こんな……今と変わんないんだっていうのは、予想外っちゃ予想外だよね」「どっこも変わってないような気がする」「これから変わりますよ」

現在、太田は当時と同じ東京の阿佐ヶ谷に住んでいる。自宅から現場へと向かうときは、必ず車内でノートパソコンを開き、最新のニュースに目を通す。「朝日、読売、毎日、産経」「日経は読まないね」「ダウとか日経平均とか一円いくらでどうのこうのって計算して株がどうのっていうのは、もう面倒臭いし」。興味のないことには関わらない性格。その性格は、収録現場でも変わらない。『雑学王』の収録映像。進行は全て田中に任せて、太田は自由にボケまくる。「昔よくね、売店でエロ小説買ってたの。エロ小説なんて普段読まないじゃない。売店だと買っちゃうんだよね」。どんな現場でも、そんな太田のスタイルは変わらない。

カメラが回っていないときは、当時と同じ遠い目をする。空想好きは今も変わらない。パソコンには、撮り溜めておいた雲の写真が幾つも残っている。それぞれの雲の形を見ながら、空想に浸るのだ。「これなんかちょっと龍みたいな」「ゴリラに見える。これが目で、ガッツポーズしてる……」。ラジオの収録現場。新しく事務所に入った後輩、瞬間メタルが顔を出している。そんな彼らのことを、太田はニヤニヤと見ながら通り過ぎていった。あまり興味が無かったのかもしれない。が、ひょっとしたら、他に事情があったのかもしれない。

舞台は幻冬舎へと移る。太田が爆笑問題名義で連載しているコラムの打ち合わせ。今回のテーマは“忠臣蔵”。美談として語り継がれている忠臣蔵について、帰路の車中で太田に尋ねてみた。「忠臣蔵って、つくづく変な話だなあって思うんだけどね。なんでこんなに人気があるのかなあって、俺もよく分からない」「討ち入りっつったって、相手は年寄り一人で。四十七人武装した奴らでボッコボコにやっちゃうわけじゃないですか。酷いなあって思うんだけどなあ」。それを受けて、スタッフが「やっぱり想像ですよね」と繰り出すと、太田は次の様に答える。「発想の転換っていうか、ちょっともう切羽詰まった、こんなにっちもさっちも笑わせどころのないような例えば悲惨な事件でも、この視点だったら笑いが起きる……みたいなところを探すわけですよ」「本当にアクロバットみたいなことで」「あいつ頭おかしいんじゃないかっていうことが、でもそれが全部歴史を作ってるから、そういう奴らの作ってきた歴史だから全部が」。そんな話をしながら、家に帰る。友だちの芸人と食事をするようなことは、まったくやらない。

そんな太田について、相方の田中裕二は次の様に語る。「太田は基本的にマジメなのは、一番大きいんじゃないですか。仕事とか、ネタ作りも含めて」「要領が悪い人なので」「毎日毎日腹筋とかやってるわけ。腕立てとか。腕立て腹筋を十何年、一日も欠かさずやるタイプなわけ」。国立演芸場の舞台。鳩山兄弟、朝青龍の引退、X JAPANのToshi離婚などの話題を、徹底的にネタとして昇華する。客のウケは良かったが、太田は浮かない表情。「なんか……こう、いつも通りのことしかやってない感じがして」「新しい場所で新しい挑戦をしないと」「行き詰ってる感じはしましたね」。番組冒頭の太田の言葉が蘇る。「これから変わりますよ」

オフの日。本好きな太田を書店に誘い、お勧めの本について聞いてみた。最初に手にしたのは『タイタンの妖女』。現在の所属事務所“タイタン”の名前の由来となった一冊だ。続いて手にしたのは『われはロボット』。SF愛読者として知られている太田らしいラインナップが続く。次は時代小説、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』。哲学書も読む。西田幾多郎『善の研究』。この日、太田が選んだ本は、以下の十二冊。そして、『ドン・キホーテ』(セルバンテス)。

タイタンの妖女』(カート・ヴォガネット・ジュニア)
行人』(夏目漱石)
ガープの世界』(ジョン・アーヴィング)
われはロボット』(アイザック・アシモフ)
惜別』(太宰治)
新編銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)
レディ・ジョーカー』(高村薫)
戦中派不戦日記』(山田風太郎)
善悪の彼岸 道徳の系譜』(ニーチェ)
冷血』(トルーマン・カポーティ)
竜馬がゆく』(司馬遼太郎)
善の研究』(西田幾多郎)


「ドン・キホーテはもう狂っているわけです。だから風車が龍に見えて、そこにこう行くわけだけど……だけど、こんなに面白い物語はないんですよ、読んでいると。言ってみればだって、人間がこんなねえ、経済がこんなんなって、自然が崩壊してとかって、人間はおかしいって言うけど、でも裏を返せば、常に皆狂ってるようなもんじゃないですか」「テレビの世界も全部、お祭りみたいなもんじゃないですか常に。だから、そういうところにいたいとは、思う……」

現在、太田は政治について語る番組『太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。』に出演している。芸人が政治について真剣に語るというナンセンスへあえて臨んでいる太田に、スタッフは「どうして政治を語るのか?」と尋ねてみる。「ピンポイントでいうと、ビートたけしがやらないことだという意識があったんですよね」「やんない方がかっこいいっていう。それは本当に俺が一番思っていて、でもそれはしょうがないっていうか。表現したいっていうのは変わらなくて。ただ、表現の方法は稚拙ですね」

ある日。広いスタジオの端っこで、いつもより少ないスタッフで、爆笑問題がとある番組を収録していた。番組名は『空飛ぶ!爆チュー問題』。かつては地上波で放送されていたこの番組は、現在CSで放送されている。ゴールデンタイムの顔となった太田だが、この番組だけは決して止めようとしない。学生時代、生きててもしょうがないという程に追い込まれていた太田は、かつてある喜劇人に救われた経緯があった。その喜劇人とは、“喜劇王”と呼ばれし男、チャールズ・チャップリンだ。彼の笑いから、笑いでなら全てをくるんで表現できることを、太田は学んだ。時代とともに笑いは変わる。「それでもやっぱり、これ見逃せないみたいなのが、そこまで面白ければきっと見るんだ」「なんか部屋はそれぞれ違っても、その時間に見る筈なんじゃないかという気がしているんだ」。テレビに氾濫する笑いの中心で、太田は自分の足元を見つめている。

番組のエンディング。爆笑問題の二人が、書きためてきたネタ帳の上で一席。お題は【20XX年】。時事ネタという過去をテーマにした漫才を得意とする二人に、あえて未来をネタにしてもらった、といったところだろうか。以下、その短いやりとりを書き起こしてみた。

田中「まあしかし、政治は相変わらずだね。なんにも変わらないね」
太田「共産党になってから良くないよね」
田中「共産党になっちゃった!?」
太田「どうも良くないね」
田中「志位さん頑張ったんだね」

田中「沢尻なんかも、すっかりベテラン女優なんですからね」
太田「今『放浪記』やってますから」
田中「森光子さんの後、沢尻エリカなの!?よく務まったね、あれね」

田中「高城さんはどうしてるんだろうね」
太田「高城さんはまたなんか、来年日食があるつってた」
田中「日食好きだな、しかし!!」

太田「田中くんも再婚してね」
田中「再婚してね」
太田「また離婚ですよ」
田中「うっそォ……(笑)」


太田光はこれからも空想し続ける。この世界に、空想の余白がある限り。

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菅家しのぶ

Author:菅家しのぶ
お笑いDVDコレクター。2014年5月からコンテンツリーグ発行のフリーペーパー『SHOW COM(ショーコン)』で名盤DVDレビュー「神宮前四丁目視聴覚室」を連載中。

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